二人の少女が、崩壊した瓦礫の中でお互いに手を繋ぎ合う。とある強大な魔女を打ち破り、それぞれが代償として背負っているソウルジェムも黒く染まろうとしている。
お互いに最善を尽くした。しかし、それでも魔女は強大であった。お互いに死力を尽くして
その時だった。時間を操る魔法少女『暁美ほむら』のソウルジェムに、鹿目まどかは自身が取っておいたグリーフシードを重ねた。そして、まどかはほむらに対して願う。自らの願いを親友に託し、世界を救う為に。
「キュゥべえに騙される前の、馬鹿な私を助けて上げて……」
「約束するわ!必ず貴女を救って見せる!何度繰り返す事になっても!」
そして、再び魔法少女に変身したほむらは、悲しみの涙を流しながら左腕に装着された円盤型の盾から銃を一つ取り出し、まどかのソウルジェムに向ける。そして、まどかはソウルジェムをほむらに撃ち抜かれて死亡した。
そして、ほむらは再び立ち上がる。魔法少女の力で過去に戻り、過去のまどか達を救う為に突き進む。
しかし、その時間軸のまどかは息を吹き返す事になる。ソウルジェムを撃ち抜かれて死体となったまどかの体の前に、黄金の穴が展開され、其処から三人の女性が姿を現した。
「さあ、やりなさい。青娥」
「勿論ですわ」
「おっ、おー」
そして、青娥は唱える。レイバトス、そして自らの蘇生術、更にアブソリューティアンの力によって得た、完璧な死者の蘇生を可能とする呪文を。
「“ウジュイカ、レエガミヨ”」
そして、青娥が目の前に手を翳し、まどかの遺体に紫色のオーラを流し込むのだった。
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「――――んっ」
まどかは重い瞼を開けた。そして目を覚ました時に見たのは、自身を囲むように掛けられた緑色のカーテン。そして、首を少し上げてみると、自身がベッドで眠っている事を知る。
「えっ!?」
まどかは起き上がる。そして周りを見れば、自分は病室のベッドで眠っている事がすぐに理解出来た。そして自分は患者の衣服を身に着けている。
「どうして?」
すると、緑色のカーテンを開けて、一人のシスターがカーテンを開けて入ってきた。美少女のシスターを見たまどかは「綺麗」と呟くと同時に、シスターはまどかに近寄ってきた。
「おはようございます。漸く目を覚まされましたね」
「お、おはようございます………あの、此処は……」
「此処はザ・キングダムのアブソリュート宮殿にある医療室です。私はザ・キングダム医療班班長のアーシア・アルジェントと申します」
「か、鹿目まどかです…………えっ?ザ・キングダム?」
まどかは混乱していた。混乱するのも無理は無かった。その疑問を浮かべて胸元を触る。しかし、ソウルジェムが何故か無い。
すると、アーシアの後ろから一人の少女が姿を現した。
「あっ!やっと目を覚ましたんだね!」
「あっ!しおちゃん駄目ですよ!まだまどかさんは目を覚ましたばかりですから!」
「えっと………貴女は何ていうの?」
まどかはしおに尋ねる。
「私、神戸しお!宜しくね、まどちゃん!」
「まどちゃん……ふふっ!うん、宜しく!しおちゃん!」
「うん!あっ、テラスに居る皆を呼んでくるね!」
しおは走って医療室から出ていった。それを見つめながら、自身のソウルジェムが無い事に再度疑問を抱く。
「どうしてソウルジェムが無いのに生きてるんだろう?」
「ソウルジェム?それが何かは知りませんが、まどかさんが運び込まれた時にはセーラー服のままでしたし、所持品はお財布や携帯電話を除けば何もありませんでした」
「………もしかして、元に戻ったの?」
すると、開きっぱなしの扉の向こうから誰かが走ってくる音が響く。そして、医療室に入ってきたのは、しおの配下にしてアブソリュート宮殿の食事担当である巴マミである。
「鹿目さん!」
まどかにとって既に死亡した筈のマミだが、目の前に現れた事に理解が追い付かない。
「良かった………目を覚ましたのね」
「マミ……さん?マミさん………良かった………また会えて良かった……うあああぁぁぁぁっ!!」
「ええっ。私も、貴女に会えて良かったわ」
まどかの傍にやって来たマミは、抱き着いてきたまどかを抱き締めて慰めた。
そして其処へ、さとうやしお、ヘカーティアが入ってきたのだが、マミとまどかの再会に水を差さないよう誰も声を掛けなかった。
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落ち着いたまどか。全員がそれぞれまどかに自己紹介を済ませ、逆にまどかも全員に自己紹介を済ませて、ヘカーティアが漸く本題を話した。
場所は医療室から食堂に移動しており、それぞれマミの作った料理を堪能している。
「さて、まどかちゃん。貴女は暁美ほむらによって魔女になる前にソウルジェムを撃ち抜かれて死亡した。そして貴女の知ってるマミちゃんは魔女との戦いで生命を落とした。それで間違い無いわね?」
「はい」
「でも貴女は生き返った。私達が貴女を蘇生したのよ。魔法少女になる前の、普通の女の子としてね」
「そうだったんですか………でも、ほむらちゃんに重いものを背負わせちゃった……私は助かったのにほむらちゃんは…………」
まどかは罪悪感を懐き始める。自分はあの時助かる見込みは無かった。魔女になる前で仕方無かったとはいえ、ほむらに辛い選択をさせてしまった。
「まどかちゃん。貴女に訊くわ。貴女はほむらちゃんを助けたい?」
「………はい!」
「その代わり、貴女には私達ザ・キングダムに所属してもらう事になるわ。勿論可能なら、ほむらちゃんも一緒に所属してもらうわよん」
「構いません!お願いします!私はほむらちゃんを助けに行きたい!そして、さやかちゃんも杏子ちゃんも、ほむらちゃんの事も助けたい!そのためなら私は、貴女達ザ・キングダムに入ります!お願いします!!」
まどかは頭を下げる。ヘカーティアは感じ取った。とても若い少女とは思えない覚悟の強さを。
「強欲ね。でも嫌いじゃないわ。ようこそ鹿目まどかちゃん。私達のザ・キングダムへ」
ヘカーティアは手を差し出した。まどかはそれが握手を求める手であると理解し、ヘカーティアの差し出した手を握る。
こうしてまどかは、ヘカーティアが率いるザ・キングダムに所属した。
しかし、此処でとある問題が発生する。
「でもどうするの?今の鹿目さんは魔法少女じゃあ無いのよ?」
「それに、さとちゃんから聞いたけど、まどちゃんに合う怪獣が無いんだよね?」
マミとしおの言うとおり、まどかは魔法少女では無くなっている。おまけに最悪な事に、まどかに合う怪獣が全く無いのだ。どの怪獣も『不適合』の数値しか叩き出せない。
「試しに私以外の八王や猛獣も試したけど、全て『不適合』みたい」
さとうに宿る狼王ギネスは、グルメ界を統べる八王の一体だ。他の八王もギネスと同格かそれ以上の力を持つ。しかし、そんな八王すらまどかには適合しなかった。
「私が宿すピグモンちゃんの同族も駄目、でしたね……一体何がまどかさんに合うのでしょうか………」
すると、食堂へ一人の少女が入ってきた。ヘカーティアの直属の部下である地獄の妖精クラウンピースだ。ザ・キングダムの大半は親しみを込めてピースちゃん、又はクラピちゃんと呼んでいる。
「ご主人様ー!諜報班と一緒に探してた奴、やっと見つけましたよー!」
「おおっ!ナイスよクラピちゃん!」
「はい♥えへへっ♥」
クラウンピースはヘカーティアに頭を撫でられて満足する。
「ねえクラピちゃん!探してた奴って何?」
「おう!鹿目まどかに合う奴が見つからない時の保険として探してた奴だ!此れから会いに行くぞ!」
しおの問いに答えるクラウンピース。
「皆、此れから会うのは、鹿目まどかがこの世で唯一似合う力を持つ、宇宙の天使よ。まどかちゃん。貴女の願い、きっと叶えてくれる筈」
「本当ですか!?」
「ええっ。さあいらっしゃい」
ヘカーティアが椅子から立ち上がり、そのままナラクへの穴を開く。食堂に居たメンバー全員、即ち、まどか、さとう、しお、アーシア、マミ、クラウンピースはヘカーティアが開けた穴を歩いて通り、ナラクを伝ってとある場所に辿り着く。
其処は一つの小惑星で、空気は存在せず、重力も無い。にも関わらずまどか達が呼吸が出来るのは、ヘカーティアが到着した瞬間結界を張ったからである。
「クラピちゃん。探してもらった相手は何処かしら?」
「はい、彼処です」
クラウンピースが宇宙空間を指差した。全員がクラウンピースの指の先を見る。その瞬間、全員が言葉を失った。その、あまりにも神々しく美しい存在に、誰もが見惚れてしまったからである。
BGM:『ひかりふる:オーケストラver』
それは、オタマジャクシのような見た目をした神々しい生命体で、宇宙を自在に浮遊していたのだ。その大きさは150又は200メートルと巨大な体を持ち、近くで見ればその大きさを目だけでなく肌でも感じられる。
「………綺麗だわ♥此れが宇宙の天使、ユーゼアル♥情報で知っていたけど、生で見るとこんなに美しいなんて♥」
ヘカーティアが声を出した事で、まどかがヘカーティアに説明を求めた。
「ヘカーティアさん。あのオタマジャクシみたいな生き物はなんですか?」
「あれはユーゼアル。宇宙の天使と称される怪獣だけど、あの子はこの世で最も優しい生命体よ。困っている人達を本能的に助ける善意の存在で、過去にユーゼアルによって宇宙で遭難した旅人を母星に送り届けたり、飢えた星の住人に食べ物を与えたりといった例もある。困っている人達を救い続ける、正に本当の意味で天使の名に相応しい存在よ。様々な星で伝説として語られてるし、神と崇める人達だって居るわ」
「そうなんですね………あっ」
まどかを含めた全員が気付く。ユーゼアルは何時の間にかまどか達の元を向き、そしてまどかを見つめながら真っ直ぐまどかに向かって来た。
「こ、此方に来る!?」
マミが変身しようとし、他の皆も怪獣娘形態に変身しようとし、まどかは困惑し続けるが、ヘカーティアは手を上げて全員を言葉一つで止めた。
「“大丈夫よ”落ち着いて」
ヘカーティアの言葉で全員が落ち着きを取り戻す。
「さっきも言ったけど、ユーゼアルは困っている生命体を本能的に救出する善意の存在。まどかちゃんの思いにユーゼアルが反応してるのよ。まどかちゃん、貴女の友達も魔法少女も救いたいという、その思いにね」
「私の思い………ッ!!」
ヘカーティアの説明を聞いたまどかは走り出す。ヘカーティアを含めた全員が驚く中、まどかはユーゼアルに向かって叫んだ。己が成そうとする事、叶えたい願い、友達を救いたいという思いを。
「ユーゼアル!!私に力を貸して!!私は救いたい!!ほむらちゃん、さやかちゃん、杏子ちゃん、私の大好きな友達を!!」
まどかは小惑星から跳んだ。ユーゼアルはまどかに向かって真っ直ぐ飛んでいく。まどかは息苦しくなるのも構わずにユーゼアルに向かって手を伸ばし、ユーゼアルはまどかに応えるように己の額を近付ける。
その瞬間、まどかとユーゼアルがお互いに触れ合った途端、まどかと指とユーゼアルの額の間を中心に光が放たれる。
軈て、宇宙全体を照らし、しかし優しく眩しくない光がヘカーティア達を照らす。光は強くない。しかし、その光はその場に居る者を全て、時が止まったように思考や動作すら停止させる。
そして、光が収まった後にまどかは魔法少女としての姿を現した。目を潰さず、寧ろ見れば見る程に視力が良くなりそうな優しい光を全身から放ち、その手には神々しい花を咲かせる弓を手にしていた。
ヘカーティアはまどかの姿を見た時、此れまでの怪獣娘形態や怪獣装甲形態とは完全に違う異質なまどかの姿に、ただただ驚くしか無かった。
「ご主人様……!彼奴の適合率、見てください!」
クラウンピースがタブレットに映し出された、融合した怪獣と宿した生命体の適合率をヘカーティアに見せる。
鹿目まどかとユーゼアルの適合率を見て、此れまでの適合者とは格が違うと思い知る。
「適合率……無限大!?」
99999999999999999999999999999999…………と数値が続いていき、軈て機械は『∞』と叩き出した。
適合率を見るだけでも、人造人間の16号やセルを含めた適合率の高いザ・キングダムメンバーと比べても遥かに格が違う。
それだけでも分かる。まどかがどれだけ格の違う存在なのか。
「…………ヘカーティアさん」
「は、はいぃ!!」
流石のヘカーティアも、突然まどかに話し掛けられて体を震わせてしまう。
「私、ほむらちゃんを助けに行きたい!お願いします!私を、ほむらちゃんの元へ!」
「……ええっ、分かったわ」
そして、ナラクへ全員を連れて戻ってきたヘカーティア。ナラクにまどかとマミを待機させた後、ザ・キングダムへ穴を開いて中に入って行く。因みに、まどかは元の制服姿に戻っている。
そして、数分後にヘカーティアは新たなメンバーと共に戻ってきた。
「我が主から話を聞いた。私の知識にも、ユーゼアルは記されていたが、まさか実在していたとは驚いた。だがそれ以上に、ユーゼアルと完全融合出来るとは思わなかった」
リインフォース。ヘカーティアが新たな主となり、超大魔王獣マガタノオロチを宿す魔導書。
「私の知識だと、ユーゼアルは確か酸素に弱い筈だけど、どうなってるのかしら?」
「俺はユーゼアルの事は知らんが、彼女の力を推し量る事が出来ない。もしや、父上をも………」
ベルとカルナのコンビだ。
「俺も呼び出された以上、その世界は過酷なんだな」
エレンもやって来た。
そして、さとうとしお、そしてアーシアもやって来た。圧倒的な力を持つ者達が集う。ヘカーティアはほむらを助け出す為に強い力を持つ者達を集めたのだ。
「さあ、準備は整ったわ。それにしても、本来なら酸素に弱いユーゼアルが崩壊を起こさないなんて、まどかちゃんと融合した事で克服したのね」
まどかがそれ程までに器として、あまりにも完璧としか言い様が無かった。
「さあまどかちゃん。行くわよ。親友達を助けにね」
「はい!待ってて、ほむらちゃん!さやかちゃん!杏子ちゃん!」
こうして始まる、ほむらの救出作戦。大規模な軍勢で挑む作戦に、全員がヘカーティアの開いた穴を通って向かう。
ほむら達の待つ、まどかやマミの居た世界へ。