東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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勧誘編・その12:リインフォース、鹿目まどか、暁美ほむら、朝霧彩・後編

まどか達はナラクを経由して、元の世界に戻ってきた。其処はまどかが見慣れている光景であり、何時も友達のさやかと歩んだ通学路だ。

 

しかし、その道は人通りが無く、車が通る気配すら無い。空は雲行きが怪しく、此れから台風でもやって来ると言わんばかりの気配を漂わせる。

 

「誰も居ない……そうか。もうそんな時期なんだね」

 

まどかはこの時間軸がどの辺りなのか理解した。この時間軸では、残った魔法少女はほむらだけ。まどかはまだ変身していない。そしてこんな台風を思わせる風と共に現れる、最強の魔女。

 

「………ワルプルギスの夜!」

 

「まどかと言ったか?ヘカーティアから話を聞いたが、お前の知る限り最強の魔女だろ?」

 

「はい、エレンさん。でも、皆さんが一緒なら、怖くありません!」

 

エレンの後に、ベルがまどかに一言告げる。

 

「今更かもしれないけど、この時間軸だと、その杏子やさやかはもう亡くなってるんでしょう?間に合わなくて、ごめんね」

 

ベルは申し訳ない気持ちになるが、まどかは首を横に振って気持ちを切り替える。

 

「さやかちゃんと杏子ちゃんは後で助けに行くよ。先ずは、ほむらちゃんを助けに行こう!」

 

その瞬間、まどかは魔法少女の姿となった。その姿こそ、まどかのユーゼアルの怪獣娘形態である。ユーゼアルの姿ではなく魔法少女の姿になった事に、誰もが驚愕を感じる。

 

「我が主……これほどの力を持つ者が居たとは……」

 

「驚いてるわ。彼女にユーゼアルを宿して正解だったわね。さあ皆、仕事の時間よん!暁美ほむら救出、及びワルプルギスの夜の討伐、開始!!」

 

ヘカーティアが手を2回叩いて、ほむら救出に動くよう宣言した。

 

こうして、暁美ほむら救出に動くザ・キングダム。まどかはヘカーティアやリインフォースと共に、ほむらが居る場所に向かって走り出した。他のメンバーは、ワルプルギスの夜に立ち向かう為に、それぞれ怪獣娘又は怪獣装甲形態となって走り出すのだった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

ほむらはロケットランチャーを撃ちまくる。時間を停止させて、軍の施設から奪ってきた数多のロケットランチャーを全て撃ち尽くし、時間を動かした。

 

その瞬間、ほむらが放ったミサイルは全てワルプルギスの夜に命中した。しかし、爆発が収まった後に現れたのは無傷のワルプルギスの夜であった。

 

ほむらは構わず予め設置した数多の迫撃砲から砲撃を始める。迫撃砲の弾はワルプルギスの夜に当たって爆発するが、ワルプルギスの夜には効果無し。燃料タンク車をぶつけたり、ミサイルを直撃させた後に大量のC4爆弾を爆破させるが、ワルプルギスの夜には効果無し。

 

ワルプルギスの夜はほむらの攻撃に介さず、避難所に向かって突き進む。

 

ほむらは使い魔達をマシンガンで倒しながらワルプルギスの夜に向かって突き進むが、ワルプルギスの夜から反撃を受ける。ワルプルギスの夜の周りに浮かぶビルの一つが、ほむらに向かって真っ直ぐ飛んでいく。ほむらは時間を止めて避けようとするが、魔法が発動しない。その間にビルがほむらの近くに落下。衝撃波がほむらを吹き飛ばし、軈てほむらは瓦礫に叩き付けられる。足が瓦礫に挟まって出血している。

 

(何で……何度やっても、彼奴に勝てない………)

 

ほむらは再び過去へ戻り、やり直そうとする。しかし、此処で気付く。もしまたやり直してしまったら、それだけまどかの因果が増える。

 

ほむらは絶望する。自分のしてきた事は無駄である。そんな悲しい現実に打ちのめされそうになったほむら。ほむらのソウルジェムは、ほむらの絶望によって黒く染まろうとしていた。ほむらは全てを諦めようとした。

 

しかし、本来ならば此処でまどかが助けに入り、まどかは因果律すら超越した魔法少女となる筈だった。

 

「ほむらちゃあああああんっ!!」

 

「…………………………………えっ?」

 

しかし、ほむらの耳に、大好きな友達の叫び声が響く。ワルプルギスの夜が大爆発と共に吹き飛ばされて、避難所から遠退いた。

 

そしてほむらは、目の前に降り立った親友、鹿目まどかを見た。但し、魔法少女の姿として。

 

「………ほむらちゃん。迎えに来たよ」

 

「まど……か?」

 

ほむらは、目の前に避難所に居る筈のまどかが居る事だけでなく、そのまどかが魔法少女へ変身している事に驚いた。

 

「ほむらちゃん。約束守ってくれてありがとう。キュゥべぇに騙される前の私を、ずっと守ってくれて」

 

「どうしてそれを………」

 

「私は、ほむらちゃんのソウルジェムにグリーフシードを重ねながらこう言ったよね?『キュゥべぇに騙される前の馬鹿な私を助けてほしい』って」

 

「………まさか、あの時のまどか!?どうして!?」

 

すると、まどかが答える前に、背後の空中で大爆発が起きる。

 

それは、ワルプルギスの夜と戦う複数人の男女。

 

「『マガタノバスター』!」

 

リインフォースは青い触手を両腕に生やし、胸の谷間が丸出しのドレスを纏っていた。ドレスは濃い血液のような赤黒さが基調である。また、赤黒くなっている髪は先が蛇のようになっており、7つに分かれている。そして、リインフォースの両手を合わせて放つピンクと紫の色が二重螺旋を描いた光線が、ワルプルギスの夜に当たってその胴体を貫通した。

 

『――――――――ッ!!』

 

ワルプルギスの夜は笑っていたが、何処か悲鳴のようにも聞こえる声だ。

 

リインフォースは、己に宿った怪獣の力を改めて理解する。自分は今、下手をすればナハトヴァールを超える強大な魔女を相手に、光線を軽く放っただけで断末魔を上げさせた。

 

リインフォースに宿る怪獣は、星を喰い尽くす超大魔王獣マガタノオロチ。今こうして光線を放つだけでも、意識を奪われそうになる。

 

「だが、ダメージは与えた。私は更に力を使えばマガタノオロチを抑えきれん。後は頼むぞ」

 

リインフォースは元の姿に戻り、その場から飛び去った。

 

『ウオオオォォォッ!!』

 

上空から両腕を羽ばたかせて、翼をはためかせながらワルプルギスの夜の歯車に降り立つ『進撃の巨人』。それは、進撃の巨人に変身したエレンだ。エレンはそのままワルプルギスの夜を踏み付けた後に、拳を握り締めて殴る。

 

しかし、ワルプルギスの夜は炎を放って進撃の巨人の両腕を焼き払う。しかし、進撃の巨人の口から光線が放たれて、歯車に当たって歯車の一部が砕け散る。

 

更にエレンの追撃は続く。拳でワルプルギスの夜の歯車を破壊した後、上空に向かって投げ飛ばした。

 

「さとちゃん!」

 

「うん!しおちゃん!」

 

そして、しおはフォーティンブラスを纒って、四肢や胴体に蛇のような鱗に覆われた半人半蛇の怪獣娘形態となった。さとうも髪の毛が白くなり、狼の耳と尻尾を生やした怪獣娘形態となる。しおはフォーティンブラスの怪獣娘形態に変身し、さとうは狼王ギネスの怪獣娘形態に変身した。

 

「『フォーティンブラスター』!」

 

「『ギネスラッシュ』!」

 

二人の放つ光線はワルプルギスの夜に直撃して吹き飛ばしていく。さとうの連打する拳から放つ無数の狼の頭部のような衝撃波と、しおの放つ赤黒い雷を纏う光線が混ざり合い、一つの光線となってワルプルギスの夜を宇宙へ打ち上げていく。狼のような衝撃波は全てワルプルギスの夜に向かって飛んでいき、しおの光線を囲むように飛んでいた。

 

「……嘘」

 

「うん。驚いちゃうよね」

 

ほむらは、自分が全く倒せなかったワルプルギスの夜を圧倒する者達の強さに、ただただ感服するしか無かった。

 

「はぁい。始めまして、暁美ほむらちゃん。私は究極生命体アブソリューティアンの戦士アブソリュートタルタロスの契約者にして、地獄の女神ヘカーティア・ラピスラズリ。まどかちゃんの頼みで、貴女を勧誘しに来たのよん」

 

更に、ヘカーティアがマミとアーシアを連れて現れた。

 

「久し振りね暁美さん。貴女の事は鹿目さんから聞いているわ」

 

「巴マミ……!どうして………」

 

「ヘカーティアさんが助けてくれたの。今はザ・キングダム所属の魔法少女よ。鹿目さんと同じね。まあ、今はあの子の部下であり、教育係でもあるけど」

 

マミは、さとうと共に戦うしおを指差した。マミが幼い子の部下となってる事に、益々驚くほむら。

 

そして、ワルプルギスの夜はまた新たな相手に体を損傷させられる。

 

「カルナ!」

 

「ああっ」

 

ベルとカルナだ。ベルは、胸元にVともYとも取れる結晶を填めた黒が基調で赤い線のあるスーツを身に着けた『ダークザギ』の怪獣娘形態となっている。カルナは白い軽装の鎧を身に着け、赤いマントを風で揺らしている。更に頭部には赤と白のグローザムのような兜を纏っている。

 

ベルは黒いエクスカリバーでワルプルギスの夜の腕を斬り落とし、カルナは炎を纏った氷の槍を放ち、ワルプルギスの夜を串刺しにする。

 

更に、空へ飛び上がった進撃の巨人は飛び蹴りを放ってワルプルギスの夜の腹を蹴り飛ばす。

 

そして、エレンの胸元に存在するマジャバの頭部から放つ次元崩壊光線『デストルドD4レイ』を放ち、ワルプルギスの夜に直撃し大爆発を起こした。軈てワルプルギスの夜は歯車だけの姿となり、向きを変えようとする前に歯車も朽ち果てていく。

 

「ほむらちゃん。私のせいでつらい目に遭わせてごめんね。でも、もう大丈夫!ほむらちゃんをもう一人になんて、させない!」

 

まどかはその手に弓を持ち、光の糸で作った弦を引いて離し、そのままピンク色の光の矢を放つ。その瞬間、光の矢は天を覆う魔法陣となり、魔法陣から無数の光の矢が雨のように降る形で放たれていく。

 

『――――――――ッ!!』

 

ワルプルギスの夜は人形の部位が消えても尚その体を起こそうとするが、まどかの放つ光の矢の雨を浴びていき、軈てその体は大爆発と共に消えていく。

 

「くっ!」

 

ほむらはまどかの攻撃による大爆発の衝撃波によって吹き飛ばされそうになるが、マミとヘカーティアが両手を掴んでくれた事で吹き飛ばされずに済む。

 

「……ほむらちゃん。行こう。私達の新しい居場所へ」

 

「………ええっ。まどか」

 

衝撃波が収まり、まどかはほむらの元を向いた。しかし、ほむらは瓦礫に足を挟まれて動けない。まどかは瓦礫を押して退けた後に、ほむらに手を差し伸べた。ほむらはまどかが差し伸べた手を、ゆっくりと手に取った。しかし、立ち上がる前にアーシアがほむらの足に手を翳す。

 

「ほむらちゃん。私が治療しますので、動かないでくださいね」

 

「貴女は、シスター?」

 

「はい。アーシア・アルジェントと言います。まどかちゃんの頼みで貴女を助けに来たザ・キングダムの一員です。医療班の班長を勤めています」

 

「あ、ありがとう……」

 

すると、損傷した足が瞬く間に治っていく。アーシアの手から放たれた光はとても優しく、ほむらも安らぎを感じていた。

 

そしてほむらは、魔法少女とはいえ怪我の治りの速さに驚く。

 

「治った………貴女って、凄い能力を持ってるのね」

 

「『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』です。病気や欠損部位の再生は出来ませんが、それでも傷を癒やす事は出来ます」

 

「……ありがとう」

 

そして、ほむらはまどかに片手を持ってもらいながら立ち上がり、そしてまどかに抱き締められる。

 

「えっ!?」

 

「………ありがとうほむらちゃん。今まで頑張ってくれて。ほむらちゃんに重たい物を背負わせてごめんなさい。でも、一人で私達の為に頑張ってくれてありがとう」

 

まどかは不器用ながらもほむらに声を掛ける。

 

「ほむらちゃん。本当にありがとう」

 

「う、うわあああああああああっ!!」

 

ほむらは目に涙を浮かべながら、声を上げて泣いた。此れまで泣く事が無かった分だけ、そして今まで溜まっていた物を吐き出すように泣いた。

 

そしてほむらは、まどかと共にザ・キングダムへ入る事を条件に、ザ・キングダムへの介入を決意した。

 

――――――――――――――――――――――――

 

数年後。まどかとほむらは、マミを含めたザ・キングダムの『プリカーサー惑星拠点制圧メンバー』と共に、出撃準備に入っていた。ナラクには多数の戦力が集まっている。

 

「まどか。相手はカイジュウや超獣を率いた大軍よ。準備は出来てるかしら?」

 

「うん。ほむらちゃんも準備出来た?」

 

「ええっ」

 

まどかは魔法少女の姿となり、ほむらも新たに手に入れた姿となっていた。ほむらの服は金色のスーツに透明な上着を羽織っていた。そして、昆虫の眼のようなヘルメットを被り、無数の穴が開いたゴーグルを身に着けていた。

 

そして、拠点制圧メンバーのリーダーとサブリーダーが台に乗り、演説を行う。

 

『では此れより、プリカーサーの惑星拠点の制圧に向かう!敵は私達より数が遥かに上の軍勢であるが、お前達の力は一人一人が千を超える軍勢にも勝る!奴等を此処で倒さねば、プリカーサーもヤプールもまた星々や次元を制圧し続けてより戦力を増していくだろう!』

 

『そうなる前に、アタイ達が拠点を制圧して、奴等の戦力を落とすんだ!此処に選ばれた勇敢な戦士達、そしてザ・キングダムで帰りを待つ家族や親友、愛する皆を護るためにも、此処で奴等の惑星拠点を制圧しに行くぜ!!』

 

リーダーの純狐とサブリーダーのクラウンピースが演説を行う。

 

『全員!出撃!奴等に反撃の一矢をぶちかましてやれ!勇敢なる戦士達よ!』

 

その瞬間、全員が歓声を上げる。

 

「しおちゃん、行こう!」

 

「うん、さとちゃん!マミちゃん、ニコちゃん、くろちゃんも!」

 

「ええっ。今行くわ。しお」

 

「ニコちゃんか。ふふっ、しおにそう言って貰えて嬉しいよ」

 

「白音~私、もう一人妹が出来たにゃ〜♥」

 

さとうとしお、そしてしおの部下のマミ、ニコル、黒歌もナラクから黄金の穴に向かって歩き出す。

 

「いよーしっ!暴れるぞ勇儀!」

 

「おう!久々の大仕事だ!たっぷり暴れるぜ!」

 

萃香と勇儀は盃を飲みながら穴を潜っていく。

 

「こいしちゃん!ぬえちゃん!恵里ちゃんも!一緒に頑張ろうね!」

 

「うん!それに、帰ったら麟お姉ちゃんとご褒美貰うんだ♥!」

 

「アンタ達、ホントにあの女が好きなのね。まあ格好良かったけど………/////」

 

「うん!僕も麟の元に帰る為に頑張るよ!エンドロスの力、完全体まで使うからね!」

 

フラン達もナラクからプリカーサーの惑星拠点に通じる穴へ入る。他のメンバーも次々と出動する中、まどかとほむらも出撃に入る。純狐やクラウンピースと共に。

 

「さあ、行くわよ。二人共」

 

「此れから戦う奴等に情けは不要だぜ!」

 

「分かってます。純狐さん。ピースちゃん」

 

「彼等と戦う理由がある以上、覚悟は出来てるわ」

 

そして、4人も惑星拠点に通じる穴を潜ろうとした、その時だった。

 

「おやおや。私達も交ぜてくれないかな?面白そうな事をしてるようだからね」

 

四人の元に、あまり関わらせたくなかった相手と、その彼が襟を掴んで連れてきた二人の少女達が現れた。それは、トレギアが憑依した菜月昴と、スバルによって襟を掴まれてぶら下がっている古手梨花と羽入であった。




新技集

『マガタノバスター』
使用者:リインフォース
高町なのはの魔法とマガタノオロチの光線を合わせて放つ魔法光線。爆発は発生しないが、貫通力が増している。

『フォーティンブラスター』
使用者:しお
フォーティンブラスの力を破壊光線にして放つ遠距離攻撃光線。宇宙に届き、天の川に数秒で届く。

『ギネスラッシュ』
使用者:さとう
両手に狼王の爪や牙を生やした後、両拳のラッシュを放つ。一発でも宇宙に届き、隕石群を破壊し続ける『ギネスパンチ』を連続で放つ為、大抵の相手は生き残れない。

次回、番外編『プリカーサー活動拠点制圧』。そしてその次には、麟に『旦那様』と呼んだ少女の話と、さやかと杏子の勧誘編、そして古明地さとりは動かないの『ザ・ラン』。ゴジラ・ザ・シリーズの怪獣もとことん出していきたいと思います。

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