その頃、スバルは梨花や羽入を連れて基地の中へやって来た。魔法陣のようなワームホールを展開し、其処から基地の中へ入り込んだのだ。バリアすら無視して入れるトレギアの移動能力に、プリカーサー達は椅子から立ち上がって三人を見る。
「此処は恐らくプリカーサーの指令室だろう。機械を使わずにモニターを映している」
「あうあう〜。此処で色々な世界を覗き見していたのですね〜」
しかし、プリカーサー達も侵入されて何もしない訳ではない。彼等は両腕の上腕を覆うキャノン砲を両腕に着けると、砲口を三人に向けた。
砲口を向けられた梨花と羽入はそれぞれ走り出し、スバルはゆっくりと歩く。プリカーサー達は砲口から青白いエネルギーの光弾を放った。光弾の雨が三人に降り注ぐが、プリカーサー達は驚愕する事になる。
スバルは全身から闇のオーラを放った後に全身にウルトラマンを思わせるような装甲を纏い、光弾を片手で弾きながらプリカーサー達に歩み寄る。
羽入は光弾が当たる前に紙一重で回避しており、プリカーサーの懐へ誰よりも速く入り込む。そして、羽入は片腕を黒い無数の糸に変えて、プリカーサー達を5体も捕まえる。そして、羽入の全身から吹き出た黒い粘液が彼女を包み込み、軈て胸に蜘蛛のマークを浮かべた異形の怪物へ変身した。此れが羽入と共生関係にあり、羽入にとっての悪友でもあるシンビオート『ヴェノム』であった。
ヴェノムは鋭い牙を生やした口を蛇のように大きく広げて、そのままプリカーサー達の上半身を喰らい千切った。
そして梨花も、光弾の雨が自分の周囲に降り注いで発生した爆発と砂煙の中に入り込み、そして姿を消した。
プリカーサー達は梨花が消えた事に驚き、周囲を見渡した。すると、一人のプリカーサーが突然口元を両手で掴まれ、そのまま片手の爪を頭に刺されて即死する。そのままプリカーサーは倒れてしまい、その音に反応したプリカーサーが背後を振り返る。しかし、一人、また一人、今度は二人と次々と見えない存在に殺されていくプリカーサー。最後の一人になった時、彼等が探していた相手が目の前に現れた、瞬間にプリカーサーは頭を片手で刺し貫かれて、そのまま床に倒れて絶命した。
「そのまま眠っているが良いのです」
梨花はニパァッと笑いながら、床に倒れるプリカーサーにそう告げた。両手の不気味な色の血を見た後、両手を振って床に血をばら撒いた。
「中に連れてくるなんて、何を考えてるのです?」
「此れを君は…………いや、君達は知ってるだろう?」
元の姿に戻った羽入がスバルに尋ねると、スバルは近くの装置にあるボタンを押した。その瞬間、プリカーサーの指令室は忽ち別の部屋へ姿を変えていき、そして蜂の巣のような培養器の塔が指令室の真ん中の開いた穴から出現した。天井に届く程の長さを持つ塔の中には、蜂の巣のように小型生物収容ケースが収められている。
そしてその中の物を、羽入、いや正確には羽入に宿るヴェノムが知っていた。
『此奴等は、俺の星の同胞達か!?』
「ヴェノムの同胞………確かヴェノムは隕石に乗せられてスパイダーマンと融合して、その後エディという男に寄生して闘い、敗れたのです?」
『………そういえば、俺が隕石に乗せられた理由を話してなかったな。俺は、追放されたんだ。『お前のような落ちこぼれは宇宙の塵になれ』とな。俺は元の星では負け犬だった。ライオットは特に俺を嘲笑っていた』
「そうなのですね。そちらの星も、人の子と同じ様に負け犬だからと差別するだけに飽き足らず、島流し同然の刑にするなんて………遠い星でもそれは変わらないのですか」
『そうだな。だが、俺はお前達に出会えた。蘇った俺は、お前を通して運命さえも変える強い意志を持つ奴等を知った。まるで、スパイダーマンのようにな』
「ええっ。彼等は凄いんですよ」
『………おっと悪いな、話が逸れた。俺の元居た星に居た此奴等が何故此処に居るのか、だったな。聴こえているだろうトレギア。お前は何を知っている?』
ヴェノムが羽入の肩から首だけを出す形で飛び出し、スバルに話し掛ける。スバルは怪獣装甲形態を解かないまま、ヴェノムの質問に答えた。
「私も全て解ってる訳ではない。だが恐らく、彼等は連れてこられたのだろう。この中で今は眠っているが、解き放たれればこの星の生命は丸ごと乗っ取られる。いや、違うな?この星に生命の痕跡は殆ど無い。となれば……彼等の利用出来る器は他にもある。人間より強く、尚且人間よりも体は大きい、最高の器が」
スバルはケースの硝子を撫でる。そんなスバルの言葉を耳にしたヴェノムは、ある仮説を立てた。
『成程な。怪獣に此奴等を寄生させればデカいだけでなく、デカさに速さと再生能力、そして肉体変化能力が加われば、そんな怪獣は手に負えねぇな。況してやこのプリカーサー共が産み出す怪獣は俺達が宿主とするにはピッタリだ。凶暴性を考えれば尚更だ』
「そうなのですね」
「………おや?そのシンビオートの一人が外に居るようだな」
スバルはある物を見ており、羽入と梨花は彼の視線の先にある物を見た。それは一枚のモニターであり、其処には二人の男女が戦っていた。一人は恵里だ。そしてもう一人は女性の体をしていたが、銀色の体であり、巨大なハンマーや鉄球に加えて自身より遥かに長く大きい刃等のあらゆる武器を体から生み出している。恵里の炎を受けて居るが、何故か効かない。宿した存在の影響か、克服してると見て間違い無い。
『此奴!?ライオットか!?』
「ライオット?奴の名前なのです?」
『そうだ羽入。奴は俺達のチームリーダーだ。だが奴が何故此処に居る!?』
「………恐らく、プリカーサーと組めばより効率的に獲物を食べられると思ったのでしょうね。プリカーサーの目的は侵略だから、獲物が欲しいシンビオートにとっては利害一致で都合が良いのよ。況してや怪獣だけでなくスペースビーストも居るわ。ゴーデス細胞やスフィアが見当たらないのは気懸かりだけど」
ヴェノムの声は、梨花にも聞こえていた。人造人間の肉体を得た羽入と味覚は共有してないが、それでも羽入に宿るヴェノムの声を聴く事が出来る。
「それにしても、エンドロスだったか?あの大魔獣を宿した恵里を圧倒するとはな。ライオットはそれ程までに強いのかい?」
『そうだトレギア。奴は桁違いの強さだ。あらゆる武器を全身から繰り出す』
「僕達が戦って勝てますか?」
『………殆ど不可能だ。況してや彼奴は、以前にも増して戦闘力が上がっている。取り憑いた宿主が強いんだろうな』
「……なら、僕達で足して百にするのです!!」
『僕達?』
すると、羽入の肩を梨花が持つ。
「私も手伝うわ。羽入、ヴェノム。貴方達の闘うライオットの討伐、私も手伝わせて」
梨花がそう告げると、ヴェノムの心の中から温かい何かが溢れ出てきた。それは炎と違う、心地良い温かさだ。スパイダーマンやエディに寄生した時とは違う温かみ。
「ヴェノム。僕達は二人で一人。そして此処には、ザ・キングダムには仲間がいっぱい居ます!僕達で勝てなくても、皆で闘えば、きっと勝てるのです!」
『………俺と羽入では無理でも、皆でやれば、か。悪くない』
ヴェノムは理解する。此れが、仲間が居る喜びなのだと。絆は脆いが、何度でも治す事は出来る。
「私は少し此処を探る。君達にシンビオートを見せる目的は果たしたからね」
スバルは再び闇の中へ消える。二人はスバルを追いたかったが、先にライオットを倒さなくてはならない。奴を野放しにしてはおけない。
二人は駆け出して、ライオットと恵里が闘う場所へ向かった。
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一方スバルは、更に研究所の奥へ足を踏み入れた。
しかし、彼は一つの扉の前で止まり、自分の背後に居る存在に話し掛ける。
「……私の背後を取れる者はそう居ない」
現れたのは、フランとこいし、そしてぬえであった。三人はこいしの能力を受けて潜んでおり、そしてぬえの能力で正体を隠していたが、スバルには気付かれてしまった。
「でも分かってたのよね?自分に監視が付けられてる事を」
ぬえが尋ねると、スバルは臆する事無く答える。
「その通りだ。だが私はこの先にある物に興味があってね」
そう言った後、スバルは扉を殴って破壊。そして、その先の部屋へ三人を招き入れた。その部屋は、なにかの生き物を培養する施設のようだ。
「何?此処は………」
「此処は外で闘っている怪獣達を培養する施設だよ。先程、君達も見ていたであろうシンビオート達は、此処で怪獣と融合して外へ放たれる。だが、この部屋の惨状を見るに、上手くいかないようだ」
スバルの言う通り、周りには怪獣の死体とその体から腸が飛び出たように死んでいる生命体の姿があった。
そして外では、ライオットとの闘いが始まろうとしていた。