ライオットの右手がトゲの生えた丸い槌に変化し、腕を鞭のように撓らせながらヴェノムに向かって振り下ろす。槌が床を陥没させ、陥没した床から青い血液が噴き出した。更にライオットの追撃は続き、槌から2メートルの長く大きい刃に変形させてヴェノムに振り下ろす。ヴェノムはスパイダーマンの能力をコピーしており、片手の手首から糸を飛ばしてライオットの顔に付着させる。そのお陰かライオットの狙いは外れて、ヴェノムの顔のすぐ真横の床に突き刺さる。
『強いですね!』
『言ったろう!』
ヴェノムは足を突き出すように蹴り上げて、ライオットを吹き飛ばす。更に空中へ浮かび上がったライオットの頭に向かって腕を伸ばして掴み、そのまま床に叩き付ける。そしてライオットの頭を蹴り飛ばした途端、ライオットは10メートルも床を転がったがすぐに起き上がる。
『強力な宿主だな!私が戦ったあのヴェノムより遥かに強い!』
ライオットは嘗てヴェノムと闘った。目の前のヴェノムはそのヴェノムより遥かに強い。シンビオートは宿主に応じて強くなるが、宿主が残虐であればある程強くなる。しかし、稀に宿主が残虐でなくてもシンビオートの強さが上がる時がある。ライオットが闘ったヴェノムもそうだった。あのヴェノムが自分と渡り合う程に強くなった。力不足だったとはいえ、ライオットも驚いている。
『地球の辺境の神とはいえ、神とヴェノムの適合が良かったらしい!だが、力不足だ!』
ライオットが両腕を広げる。その瞬間、ライオットの四肢や胴体が銀と黒の縞模様に変化して、胸の中心にV又はY型のコアが出現する。その瞬間、ライオットから衝撃波が発せられて、ヴェノムは衝撃波に吹き飛ばされる。恵里もまた、衝撃波によって吹き飛ばされ、建物から落下していく。幸い二階であった為、地面に叩き付けられてもダメージは無い。
『『鶴翼三連』!』
其処へ、ベルが加勢しブーメランのように投げた4つの短剣と、両手に持つ剣でライオットに斬り掛かる。しかし、柔かそうな見た目とは正反対に金属音が響く。ベルの放った短剣が全て砕け散り、コアに当たったベルの両手に握りしめている二つの短剣も粉々に砕けた。ライオットはベルの体を見て「ほぅ」と感心するが、すぐに片手を伸ばして判子状に変化させるとそのままベルに当てて、更に壁へ叩き付ける。ベルは口から血を吐いて、朦朧とする中でライオットを見る。
『ダークザギの宿主か!お前が宿していたのは驚いたが、我々の足元にも及ばん!』
ライオットはベルの顔を踏み付ける。ベルの目や鼻から血が流れ出て、前歯も折れて床に落ちる。ライオットが足を離した後、ベルの顔は鼻が潰れて目は充血し、開いた口から見える歯は、前歯は全て無くなっており、口からは出血しているという痛々しい顔になっていた。
「……乙女の顔を台無しにして………許さないわよ」
すると、ライオットに向かって炎の線が飛んできた。炎の線はライオットを狙っていたかのように飛んでいく。しかし、ライオットは全身にバリアを張って炎を防ぐ。
「マスター!すまない!遅れた!」
「遅刻よカルナ。乙女の歯を折った責任、取らせてやるんだから!」
カルナだ。カルナは起き上がったベルの頬を撫でた後、氷柱を掌から生み出してライオットに向けて放つ。冷気に乗せて加速させた氷柱は更に増えて、マシンガンのように連射されている。一発一発が鋭く尖っている為、当たれば体を貫通される。
ライオットは氷柱を避けようとするが、冷気が体に当てられてそれどころではなかった。。シンビオートは超音波と炎、そしてシンビオートを産み出す親のような存在であるKnullの他にも、実は氷にも弱い。それは、冷気とて例外ではない。ライオットは氷柱のマシンガンを全身に受けて、氷柱によって体を貫通される。しかし、黙ってやられる程ライオットは弱くない。
ライオットは両腕を広げた後に前へ突き出し、超重力光線『グラビティ・ルシフェル』を放った。光線は冷気や氷柱を破壊してカルナに向かって突き進む。しかし、ベルも黙ってやられる少女ではない。
「だあああっ!!」
『まだだ!』
更に戻ってきたヴェノムも加勢。ベルが片腕に炎を纏ってライオットの背中を殴る。ヴェノムも拳でライオットの頭を殴って首を180度回転させる。しかし、ライオットは背中から無数のトゲを生やして、二人を串刺しにする。ベルは心臓や頭への直撃は逃れたが、全身開いた穴から出血が止まらない。
ヴェノムが立ち上がるが、ライオットはヴェノムの頭を踏み付けて更に片手の爪を数メートルも伸ばした後に、ヴェノムの顔を斬る。斬られたヴェノムは床に倒れた。
『ぐっ!やはり強いな!ライオット!』
『大丈夫です!此処に居るのは、僕達だけではないのです!僕達皆で、勝てる確率を100%に!』
ライオットがヴェノムの元へ向かって歩くが、今度は背後から炎の剣トワイライトを振り下ろす結芽が現れた。炎を纏った彼女のトワイライトによって背中を斬り付けられた事で怯む。
『今だ羽入!ライオットを引き剥がすぞ!』
『はい!ヴェノム!』
ヴェノムはライオットの胸を掴んだ。更に、結芽がトワイライトをライオットのお腹に突き刺し、炎で全身を炙る。お腹を貫かれた上に全身を焼かれたライオットの頭が燃えて蒸発し、寅の頭が出てきた。
そして、ヴェノムはそのままライオットを引っ張り、結芽がライオットから剣を引き抜いた後、結芽が寅の肩を掴んで引っ張る。
『裏切り者がぁ!!』
『良い人生をな!』
そして、ヴェノムは冴月寅からライオットを引き剥がし、寅は結芽に引っ張られて抱き締められた後、結芽と共に床を転がった。
そして、ライオットはヴェノムに掴まれて無数の触手の塊となる。寄生前の状態だ。
ヴェノムは口を大きく開き、そのままライオットに喰らいついた。そして、ライオットはそのままヴェノムに食べられてしまい、ゴクリと飲み込んだ。
ヴェノムはその場で歓喜の咆哮を上げる。
『ウワハハハハ!!勝ったぞ!!俺はあのライオットに、遂に勝ったぞ!!』
『僕達で戦っても勝てる確率が殆どゼロでも、皆で戦えば百になるのです!』
『そうだな!お前の言う通りだ!』
そして、ヴェノムの姿が解けて羽入に戻る。以前より力が増した事を実感するヴェノムや羽入。
「歯が………此れは、どうしようかしら?」
ベルは何処から取り出したのか、手鏡で自分の顔を見た。元の綺麗な顔が少し崩れており、前歯は全滅だ。
「後でティアーユやアーシアに治してもらおう」
カルナが布巾をベルに渡す。
「ありがとう」
ベルは顔の血を拭き取る。
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その頃、トレギアは培養施設の奥へやって来た。フラン、こいし、ぬえはトレギアに警戒しつつ歩き続ける。
トレギアが一つの扉に辿り着き、その扉に触れる。触れた扉が砂状に崩れ落ちて、その部屋の全貌が明らかとなる。
部屋は人が入るのが二人までであろう狭さであり、その真ん中には肉の繊維や血管で構成された三つの台がある。その台の上には、それぞれ一つの蓋の仕舞った瓶が乗っていた。瓶の中には、白い液体が入っており、ミルクのようである。
「何これ?」
「此れはゴーデス細胞のワクチンだ。ゴーデス細胞はどんなに抗体を作っても、一人一人違う抗体を用意しなくてはならない。いや、仮に抗体を作っても感染者諸共殺してしまうのが殆どだ。ウルトラマンマックスも嘗て、ゴーデス細胞に感染して怪獣になりかけたが、その時は上手く間に合ったから良かったが、間に合わなければ、な?」
「……とんでもないわね。ゴーデス細胞って」
ぬえはトレギアの話を聞いて、自分は今とんでもない作戦に参加してる事を改めて思い知る。
「うーん……つまり、ゴーデス細胞に感染したらどうすれば耐えられるの?」
こいしがトレギアに尋ねる。
「抑える術があればな。だが、完全に止めるのは不可能だ。ワクチンでも無い限りな」
「それが、ゴーデス細胞のワクチン?」
ゴーデス細胞のワクチンは、そもそも作る事自体不可能の筈だ。トレギアが求めていたもの、それはゴーデス細胞の完全なワクチンである。カオスヘッダー無しでもゴーデス細胞に感染することが無く、その上どんな生き物にも有効なワクチン。もし量産する事が出来れば、様々な世界に配り、ゴーデス細胞を本当に壊滅させる事が出来る。
「その通りだ。この世でたった一つの、ゴーデス細胞のワクチンだ。そして隣がスフィアのワクチン、もう一つがスペースビーストの完全駆除を可能とする血清だ」
何れもザ・キングダムや他の世界に限らず、あらゆる世界が、宇宙が、喉から手が出る程に欲しい物だ。
「さて、そろそろこの拠点も陥落する。この三つは君達に任せるとしよう」
「えっ?何処行くの?」
「何処でも良いだろう?私には、私のやる事があるからね」
「待て!」
ぬえが駆け出す。フランやこいしも遅れて駆け出すが、トレギアはその場から消える。
「クソ野郎!」
「口悪いよぬえちゃん!」
「………二人共、取り敢えずワクチン持って帰るわよ」
「うん……」
ぬえをゴーデス細胞のワクチンを。こいしがスペースビーストの血清を。フランがスフィアのワクチンを持った。
(トレギア………彼奴次会ったら顔をぶん殴ってやるわ!)
ぬえはトレギアを殴る事を決意。大妖怪としてのプライドである。
(落とさないようにしないと……)
こいしは血清を持って慎重に飛ぶ。
(トレギア………あの男は何をしてるんだろう?屁理屈述べて場を掻き乱すのは十八番だけど、今は解らないな〜。うーん解んないよー……)
フランはトレギアが何かをやろうとしてると感じていた。
三人は抗体を持って飛び、上空に浮かぶ船に向かって行った。
次回、古明地さとりは動かない。
新しく人里に出来たザ・キングダムお手性のトレーニングジム。さとりも通い、霊夢と鈴仙も王様ゲームでの命令の為に利用。ジュダや麟、そしてザ・キングダムに雇われた専門トレーナー達や見知ったメンバーもトレーナーとなる。そんな中、『橋本陽馬』もまたジムを利用する。そして、さとりと些細な出来事を機に勝負することになるのだった。