東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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後日談・その4:麟の正妻

麟は目を覚ます。起きた後にベッドから立ち上がって朝の日差しを浴びる為にカーテンを開ける。朝日が昇り始めた為、日差しが彼女の体を照らす。

 

「んん〜!今日も僕は美しい♥えへへっ♥昨日は最高だったなぁ♥皆が僕にいっぱいエッチな事をしてくれて♥触手モンスターに無理矢理されるのも良いけど、やっぱり愛し合う皆とエッチするのが一番だね♥」

 

昨日の出来事を思い出し、麟は両手を頬に添えて顔を赤くする。その時の麟の顔は喜びに満ちていたが、すぐに気持ちを切り替えて食堂に向かう。此れから朝食を作るのだ。

 

キッチンに着くと、既に朝食の用意をしてる者の姿があった。よく見ると、ぬえとラステルだ。二人は共に朝食を作っていた。ラステルはネギを切っており、ぬえはフライパンで厚いベーコンと目玉焼きを人数分焼いている。

 

「昨日は大変だったね………ぬえさん」

 

「ホントよ!麟の奴が受け側だったなんて!でもまあ、私達を求めてくれる彼奴のイキ顔、結構可愛かったわよ///////」

 

「でも……あまり盛んだと………此方が悶々としちゃうのよ……/////」

 

麟はその会話を聴きながらも、二人に声を掛ける。

 

「あーっ、ラステルさんもシズさんも聞こえてたのかな。ごめんね」

 

 

その後、居候や泊まりの少女達が起きてきて、全員で朝食を食べ始める。

 

そんな中、フランが麟にさり気なく訊いた。

 

「麟お姉様って、誰かに強い恨みを抱いた事は無いの?“コイツだけは生かしておかない”とか“コイツは必ず殺す”とか」

 

「こらフランちゃん。そんな事言っちゃ駄目だよ」

 

シズさんが頬を膨らませながら注意すると、フラン「うん、ごめんなさい」と素直に謝った。

 

しかし、麟は一度食事の手を止めてその顔を今まで見た事の無い程に怒りの顔を浮かばせる。本人にそのつもりは無いが、麟の事が好きな者達は、初めて見る麟の恨みや激怒に満ちた顔に、恐怖又は驚きを感じていた。

 

「………うん。居たね。でも、それはジラが過去に戦ってただけで僕には関係無いよ。でも……やっぱり許せないし殺したい気持ちも大きいよ………ジラの妻であるコモディスラックスや彼等の子供を殺したあの怪獣がもし現れたら、僕はそいつだけは生かさない。絶対殺してやる!彼奴だけは絶対に殺してやる!絶対に!絶対に―――」

 

「麟!!」

 

萃香が麟の手を握る。麟は味噌汁の入ったお椀と箸を素手で握り潰しており、右手はお椀の破片と飛び散らずに残った味噌汁が残っていた。テーブルは味噌汁が飛び散り、テーブルから溢れた味噌汁が床に流れ落ちている。

 

「あっ」

 

麟は周りを見た。フラン、こいし、サニー、ルナは泣きながら麟を見て怖がっている。響子や恵里、ミスティアも同じだ。朱鷺子と大妖精、スターは心配の眼差しで麟を見ており、ぬえは顔を青褪めている。萃香は眉間にシワを寄せながら怒っていた。

 

その場が気まずい空気に包まれる中、突如として里全体に危険を知らせる鐘が鳴り響く。

 

『怪獣だー!!怪獣の襲撃だー!!』

 

その瞬間、麟達は食事を止めて席を立った。

 

全員がすぐに外へ出て、人里の見張り塔に向かって走っていく。

 

同行したのは、大妖精と光の三妖精の4名だ。他は避難誘導と人里の警護に回ってもらった。

 

人々がフラン達や自警団、人里を守る極道組織や人里に潜む忍び達の手で地下への避難を進めていく中、麟達は慧音や赤蛮奇と出会う。

 

「慧音さん!ばんきさん!」

 

「麟!それに、お前達も揃ったか!」

 

「今、人里に向かって巨大な怪獣が迫ってきて居るんだ!今、妹紅率いる自警団とモルドさん達グア三姉妹が対処に動いた!」

 

赤蛮奇の説明を受けた麟。

 

「どんな怪獣ですか?」

 

「ああっ。巨大な亀のような怪獣だ。ソイツは真っ直ぐ人里へ向かっているが、目的や思考は一切不明だ」

 

「亀………」

 

麟は嫌な予感がしていた。もしその怪獣が霊夢の宿すガメラではなく、自分の知る怪獣だとしたら?もしそうなら、ソイツだけは他者に殺させない。自分の手で殺したい。

 

「麟先生〜!!」

 

すると、麟達の元へ卵を抱えなから子守が走ってきた。

 

「子守ちゃん!どうしたの?」

 

「何か胸騒ぎがするのよ!間違いないわ!奴がこの幻想郷に現れたの!アナタは知ってる筈!」

 

「……そうなんだ。なら行かないとね」

 

麟は笑う。その笑みは、今まで無い程に狂気に満ちていた。このままだと、麟は一人で襲撃してきた怪獣を倒そうとしている。嘗てコモディスラックスとその子供を殺した、憎き怪獣を。

 

「待ちなさい!私も行くわ!」

 

「駄目だよ。子守ちゃんは此処に居て」

 

「奴はこの子を狙ってるわ!私だって戦える!」

 

「もう君を失いたくない!!守りたいんだ!!」

 

「私も、アナタとこの子を守りたいの!それに、アナタ一人だけじゃない!ここには皆が居るわ!」

 

子守の言葉を聞いて周りを見た麟。復讐に囚われた麟であったが、子守の言葉で目を覚ます。

 

「麟ちゃん!私は別に復讐なんて止めてとかそんな事は言わないけど、一人で無茶させるなんて絶対に許さない!私も、麟ちゃんと一緒に闘うよ!」

 

大妖精が涙目になりながら、麟の裾を摘む。

 

「麟!一人で行こうなんてそうはさせないわよ!」

 

『ああっ!一人で何でもやろうなんて、大事な事が分かってない奴のやる事だ!』

 

サニーとタイガがそう告げた。二人は、ルナやタイタス、スターやフーマの言いたい事を全て言葉に込めたのだ。その言葉は麟に届き、麟は自分の愚かさに気付く。その上で全員に語り掛けた。

 

「………僕がこれからやる事は、らしくない事だよ。子守ちゃんというかコモディスラックスやその子を殺したあのジャイアントタートルを殺す為に動く。二人は目の前に居るけど、それでも仇討ちだけはしたいというただの私念で動くんだよ。それでも、僕を手伝ってくれる?」

 

『本当なら止めたいが、俺もその気持ちはよく分かる。大切なものを奪われて、復讐したい気持ちが』

 

『だが、タイガは乗り越えた。ヒロユキが君を戻してくれた』

 

『あん時はどうなるかと思ったぜ。それより、麟だったな?お前はどうして復讐がしたいんだ?』

 

フーマが問う。

 

「……そりゃあコモディやこの子が死んだあの時の事を、助けられなかった事を無かった事になんて出来ないし、許してやるのが良いのかもしれない。それに、子守ちゃんや卵として生まれ変わってきてくれたからもう良いのかもしれないね………でもごめん!無理!僕の大好きなコモディや僕達の子供を殺した彼奴を許すなんて、愛する人を道連れにされて、愛する人達をドブ沼に捨てられてそれを無理矢理忘れて生きるなんてまっぴらごめんだよ!それに、奴を放っておいたらまた子守ちゃんやこの子が殺されるかもしれない!僕は皆から優しいとかお人好しとか言われるけど……僕は自分の大切な人達を殺した奴を許せる程お人好しじゃない!それに、僕は覚悟をして復讐をやる!彼奴に死を持って償わせる!!自分と、子守ちゃんと、そしてこの子の運命に決着を着けるためにも!」

 

麟の覚悟が伝わる。それを聞いていたタイガ達は、麟の事を止めたい気持ちがあった。しかし、それを止める権利が本当に自分にあるのだろうか。迷ってしまうが、サニー達は決意を固めていた。

 

「タイガさん。ごめんなさい……」

 

「……麟が此処まで覚悟をしてるなら、無理に止めたって意味がないわ」

 

「それに、終わったら麟も落ち着く筈よ………」

 

少なくとも、麟はジャイアントタートルのみを憎んでる。タイガは無力な自分を呪う。タイタスにフーマ、三妖精も同じだろう。しかし、三妖精は麟の意志を尊重することにした。無理矢理復讐を止めても、麟の心は余計に苦しくなるだけだ。

 

麟は走り出す。子守は慧音に自分の抱える卵を預ける。

 

「慧音先生。この子をお願いします!」

 

「話は分からないが………麟を頼む。この子は責任を持って守ろう」

 

慧音は卵を抱えて、赤蛮奇と共に避難場所の地下へ走り出した。

 

『………ヒロユキ………お前ならこんな時、麟になんて言ってやれるんだ……俺は、なんて言ってやれば良いんだ……』

 

タイガは、嘗ての相棒に語り掛ける。すると、サニーはタイガに語り掛ける。哀しくも慈愛に満ちた笑顔で。

 

「見守ってあげるのよ。ただ正しい事を言って無理矢理止めれば良いんじゃないの。大好きな人がなにをしたとしても、時には止めるだけじゃなく見守ってあげる事も大事。変な事かもしれないけど、大好きな人の良い所も悪い所も受け入れる事も必要よ」

 

『……ああっ、そうだな。なら俺達は見届けさせてもらうぜ。麟が本当にどうしたいのか』

 

タイガは感じていた。麟は復讐を行うつもりだ。しかし、その本心は復讐ではなく別の事を求めている。タイガだけでなく、大妖精や三妖精、タイタスやフーマも感じていた。

 

()()()()()()()()()という、麟の光の感情を。

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