地上では、ルナサとレイラの二人が劣勢になっていた。魔理沙と咲夜の二人に、自分達の切り札が全く効果が無いのだ。
硫酸の涙を目から放ち、魔理沙の皮膚に当てても、魔理沙の皮膚は溶けない。毒ガスを含めたあらゆる攻撃を放っても、何故か魔理沙と咲夜は後ろに回り込んでくる。彼女達は知る由も無いが、咲夜が時間を止めて魔理沙を抱えて移動しているのだ。それで攻撃を避けているのを、レイラとルナサが知る由も無い。
「しまった!?」
「終わりですわ!」
咲夜はルナサの隙を突き、両肩の龍から引力光線を放つ。ルナサに直撃しそうになるが、レイラが庇うように前に出て引力光線に直撃する。そして、レイラは身体が爆発して吹き飛んでしまった。
「吹き飛んだ!?」
「あっ・・・やってしまいましたわ」
咲夜は冷や汗を流す。モンスターバトルルールで殺しは認められていない。それはつまり、咲夜はルール違反を犯した事になる。
「おいどうすんだよ!?」
「・・・どうもこうも無いわ。ルナサと言いましたか?貴女の妹様を───」
「あっ。それなら心配無いわ。レイラは既に死んでるのよ?」
「「えっ?」」
すると、近くを通り掛かった妖精に異変が起きる。突然妖精の身体が、レイラの姿へと変貌を遂げた。勿論、怪獣『フェミゴンフレイム』を纏った状態で。
『私は既に死んでるから死なないよ。それに、妖精なら自然があれば何度だって蘇るから大丈夫』
「私やメルランは兎も角、リリカとレイラは死なないわ。でも、このまま戦っても貴女達に勝てないのは解ったわ。毒ガスも効かないし、攻撃も避けられる。降参よ」
『うん。ルナサお姉ちゃんの言う通りだよ』
ルナサは降参した。それは、レイラも同じだ。
「よっしゃあ!」
「一時はどうなることかと思いましたわ」
魔理沙と咲夜が勝利した。
「さて、勝ったからには通してもらうぜ」
「そうね。モンスターバトルルールで負けた私達は貴女達の言う事を一つ聞く必要があるわね。どうぞ。通って構わないわ」
『ねえ。メイドのお姉ちゃんは?』
「私からはありませんわ。強いていうなら、魔理沙と同じよ」
『うん。良いよ。でも、幽々子様と幽々子様の怪獣は強いから、気を付けて』
「「おう/ええ」」
こうして、魔理沙と咲夜は空へ飛んでいく。ルナサは元の姿に戻り、レイラは妖精に憑依したまま、冥界の入り口に通じる穴へ向かう魔理沙と咲夜を見つめたまま、ルナサの元へ近寄る。
『お姉ちゃん、大丈夫なの?幽々子様は・・・』
「心配無いわ。あの方は生者をすぐに殺したりしないもの」
そして、メルランとリリカは、リリーホワイトを抱えながら二人の元へ来た。
「姉さん、レイラ。春告精の顔色が悪くなってるわ。幽々子様を早く止めないと、流石に危険ね」
「ルナサお姉ちゃん!」
「大丈夫。博麗の巫女に、魔理沙とメイドを信じましょう。あの三人なら、きっと勝てるわ」
ルナサはそう言った。博麗の巫女だけならいざ知らず、魔理沙と咲夜が加われば、勝てる筈だと確信したからであった。
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「アンタがあのルナサっていう騒霊が言ってた、幽々子かしら?」
「あらあら。博麗の巫女がわざわざ冥界まで来るとはね」
冥界の白玉楼。古風の日本らしい貴族の屋敷の隣にある巨大な桜の木。その桜の木には、青い仮面のような模様に赤と黒の縞模様が着いた角を二本も生やし、閉じた目が存在していた。そして、幻想郷中から光の川が桜の木に集まっている。葉っぱなのか、刺々しい青い突起物が枝から生えている。
「私は西行寺幽々子。あのプリズムリバー四姉妹からもう聞いていると思うけど、白玉楼の主にして冥界の管理者よ」
「・・・成る程。それで、アンタの後ろにある桜の木。なんか嫌な感じがするのよね」
「あら?解るかしら?あの咲かないとされる桜の木はね、『
つまり、西行妖を咲かせて木の下に眠る存在を目覚めさせようとしているのだ。更に、桜の木は目を閉じている所を見るに、未だに眠っている。春を西行妖に集めて封印を解放しようとしている。
しかし、霊夢には勘で解った。あれは封印を解いて良い存在ではない。
「言っておくけど、巫女の勘が告げているわ!それは絶対に解き放っては駄目よ!」
「あらあら。今更止める訳には行かないわ。知りたくて知りたくて、しょうがないもの」
「話しても無理そうね!ユウコ!」
『了解。戦闘モードへ移行します』
「モンスターバトル!スタートよ!」
こうして、幽々子対霊夢&ユウコの対決が始まった。
「いきなり全力でやらせてもらうわ!『業火・夢想封印』!」
霊夢はガメラを纏って怪獣形態となり、甲羅を背負った巫女服を纏う。そして、炎に包まれた陰陽玉を無数に展開した。プラズマ火球を合わせた霊夢の技である。相手を封印するだけでなく、業火で焼くのが目的だ。勿論モンスターバトルルールに則り、殺傷力は無く気絶する程のダメージを与える程度である。陰陽玉は幽々子を取り囲むが、幽々子は冷静な表情を浮かべたままである。
「あらあら、私も舐めては困るわよ?」
すると、幽々子の姿がその場から消えた。無数の陰陽玉は先程まで幽々子が居た場所で一体化するようにぶつかり、大爆発を起こす。
「なっ!?」
『霊夢様!後ろです!』
ユウコが霊夢の背後に腕を翳し、レールガンを撃ち放つ。しかし、突然現れた幽々子の身体に当たらず、すり抜けるだけであった。幽々子は霊夢とユウコを蹴り飛ばした。霊夢とユウコは背中から地面に倒れた事で、幽々子の今の姿を見る事が出来た。
幽々子は両腕が黒い虫の骨格のようなデザインのスーツを着ており、腕の先端は金色に輝く剣のような突起物となっていた。更に背中に翼を生やし、腰には細い虫のような尻尾を生やしている。斧のような角を頭に二本生やし、額には十字型の発光器官が備わっていた。胸には二つの発光器官が備わっており、幽々子の豊満な胸に合わさって輝いている。
自分より胸がある上により象徴するように輝いている幽々子の胸を見て、自分の胸を触った後に怒りが込み上げてきた霊夢であった。
『霊夢様。女性は胸ではありません』
「う、煩いわよ!」
顔を赤くした霊夢は、そのまま幽々子に向かって飛んで行った。ユウコも地面を走りながら、幽々子に向かってレールガン及びミサイルを撃ちまくるのだった。ミサイルはユウコの指定した所へ飛んでいくようにしている為、幽々子の姿を捉えてる限りは其処まで飛んでいくのだ。
「あらあら、楽しくなりそうね」
額の発光器官を輝かせて、『ピポポポ』と不可思議な音を鳴らしながら、幽々子は霊夢とユウコを迎え撃つのだった。