澪から後に琴里に譲渡される事となる精製されていない“
隣界に落ちてきた紗和は狂三に殺されたくなかったと涙を流していた所に本来であれば狂三の切り捨てた分身体と出会うのだが、此処から彼女の運命は大きく変わる。
時崎狂三の手で殺された紗和は、狂三に殺されたくなかったと泣きながら隣界を浮遊するように彷徨っていた。
すると、紗和はある咆哮を聴いた。その音に驚きながら咆哮のした方向を向いた。すると、其処には巨大な蛇又は芋虫のような見た目をした、口の中に蛇やミミズを思わせる多数の舌のような器官を持つ怪物であった。それがグラボイズであると、いやその怪物の事を知らない紗和は、突然現れた怪物を見てパニックになる。
「えええええっ!?な、なんですかこの化け物は!?」
しかし、声を出してしまったせいか、グラボイズは声を上げた紗和の元を向いた。器用に空中を泳ぎ、4本の牙をギラつかせながら口を大きく開き、紗和を食べようとする。
(い、いや!私、食べられるなんて嫌!誰か助けて!狂三さん!)
すると、ナラクへの黄金の穴が開いて3人の女性が現れた。
「『
紗和は聞き覚えのある声を聴いた後、突然グラボイズの動きが止まる。グラボイズは紫色の球体に閉じ込められて、そのまま動きが停止している。
「流石ね、狂三。それにしても、この空間にどうしてグラボイズが現れたのかしら?」
「こんな生き物が居るなんてね。世界は広いわね」
ナラクから現れたのは、ヘカーティアと同じ精霊の世界という事で誘った万由里と狂三だ。そして、狂三は自身の能力でグラボイズの時間を止めて、動きを停止させたのだ。
「えっ?く、狂三さん?」
「………ええっ、お久し振りですわ。紗和さん」
ヘカーティアはグラボイズに手を伸ばす。此れから紗和にグラボイズを宿す為だ。
「山内紗和さんよね?貴女に今からコイツを宿して、貴女の傷を治すわ。さあ、動かないで頂戴」
「は、はい」
紗和は目を閉じる。短い間に、ヘカーティア達が信用出来ると理解したからだ。グラボイズに触れたヘカーティアは、グラボイズの体を粒子化して霧状に分解すると、粒子化したグラボイズを紗和の胸元に吸収させる。
すると、紗和の姿が大きく変化する。傷も癒えた紗和の体にミミズのような競泳水着が身に着けられ、四つに裂けた口に鋭い牙を4本も生やしたグラボイズの姿を模した頭巾を頭に被る。それが、紗和が宿したグラボイズの怪獣娘形態であった。
「さて。では山内紗和さん、貴女を私達ザ・キングダムに勧誘したいと思っているわ。私達と共に来なさい。そうすればもうこの世界に囚われる必要は無くなるわ」
紗和はグラボイズの力を感じつつ、ヘカーティアの話に耳を傾ける。
「それは………」
紗和は迷った。果たして本当に勧誘を受けるべきなのだろうか?しかし、狂三とまた居られるならば、もう自分が苦しまなくても良いのなら。
「……分かりました。私を、ザ・キングダムに入れてください」
「そう。ようこそザ・キングダムへ」
「ですが、その前にやりたい事があります。狂三さんと、お話させてください」
「………良いわよ。万由里、少し離れるわよ」
「ええっ」
ヘカーティアと万由里はその場から少し離れて、狂三と紗和の二人っきりにした。
狂三と紗和はお互い気まずい雰囲気になりつつも、それでも大好きだった親友同士話し始めた。
「……どうしてあのとき、私を殺したんですか?」
「あのときは……貴女だと分からずに殺してしまいましたわ。炎を纏った怪物だと思ったら、正体が貴女だったと知らないまま………そして私は決意しましたわ。始原の精霊を殺して、貴女の仇討ちと蘇生をしようと………」
初めこそぎこちなく、お互いまだ気まずい雰囲気を出したままだった。
しかし、30分経過した辺りで会話に変化が訪れる。否、25分頃から徐々に会話の度合いがエスカレートしていったのだ。
「貴女の事を慕ってた!!慕ってたのに!!まさか殺しに来るなんて思いませんでしたよ!!狂三さんの馬鹿!!助けてくれても良かったのに!!」
「なんですのその言い方は!!人が折角助けに来て謝りに来たのに!!」
「今更遅いです!!狂三さんの馬鹿!!大体なんですかその目は!!中二病ですか!?」
「なんでそうなるんですの!?此れは私の天使によるですわ!命が懸かってるんですのよ!!貴女の為にどれだけ苦労してきたと思って――」
「頼んでませんよ!!この中二病ツインテール!!」
「誰が中二病ですの!?このロールパンヘアー!!」
「三つ編みです!!ロールパンではありません!!狂三さんこそその露出癖の変態ではありませんか!!」
「なっ!?煩いのはこの八重歯ですわね!この犬女!」
「な、なんですかこのスケベバイセクシャル!!」
「誰がバイですの!?この百合女!!」
「私はノーマルです!!」
いつの間にか取っ組み合いの喧嘩となっており、それを見ていた万由里は流石に止めようとした。しかし、ヘカーティアに片腕で止められる。
「二人を信じなさい」
「………あっ」
万由里は二人の様子を見た。二人は互いに取っ組み合うままだったが、紗和の方にある変化が訪れる。それは、二人がお互いを掴み合っていた時だった。
狂三の頬を摘んでいた紗和は、その手を離した後に笑い出した。
「フフッ………フフフフ……ハハハハハハハッ!!アハハハハハハハハッ!!」
「な、何が可笑しいんですの!?」
狂三は顔を真っ赤にして怒り出すが、紗和は目に涙を浮かべながら語る。
「だって……またこうして狂三さんと話をしたり喧嘩出来る事が………嬉しいんです」
その言葉を聞いた瞬間、今まで溜まっていた悲しみと後悔が、狂三の中から溢れ出してきた。涙と鼻水として。そして、狂三は紗和を抱き締めて謝罪を紗和に向けて叫ぶ。
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!紗和さん!!あのとき、貴女を助けられず殺してしまってごめんなさい!!」
「ううん。もう大丈夫です。狂三さんのやった事は間違っていません。私も、ちゃんと分かりましたから」
狂三と紗和は抱き締め合う。狂三は親友と再会を果たせた事で、自分の本来の目的であった山内紗和の蘇生は間接的な方法で成功した。始原の精霊はまだ諦めてないが、今は親友に会えた事を噛み締めよう。
二人は暫く抱き合って泣いていたが、万由里は狂三が親友を抱き締めて泣いてる様子を見て、正直驚いていた。
「あの時崎狂三にも、こんな一面があったのね」
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「(本日はダイヤモンドの終盤のサビ)〜♪」
ザ・キングダムの日本街にある紗和の自宅であるマンション。此処で紗和は、購入した鳥獣鬼人のCDで曲をイヤホンで聴いていた。夏前のCDに収録された曲はたまに聴いた事がある曲もあるが、鳥獣鬼人のボーカルである響子とミスティアの歌が上手く、今まで聴いた中で一番かもしれない。
彼女は鳥獣鬼人の隠れファンだ。モンスターバースの幻想郷の事は狂三から聴いており、その時に鳥獣鬼人のライブに連れて行って貰ったのだ。
しかし、此処で思わぬ相手に見られてしまう。
それは、親友の狂三であった。狂三はニヤけており、紗和は顔を真っ赤にしてしまう。
「あらぁ、すっかり好きになっているようですわ♥」
「く、狂三さああああああああああああああああんっ!!」
その日から三日間、紗和は狂三と口を聞かなかった。が、狂三にだけは趣味を話すようになり、自分が鳥獣鬼人好きなのを他の皆に内緒にしてもらった。