第252話
「アハハハハハハッ!いよいよだ!我が愛しい太子様が復活する!太子様ァ♥蘇った暁には、幻想郷も、外も、全てを統べて太子様が支配する世界を築きましょう♥私は、蘇我屠自古は何時も一緒ですぅ♥」
霊廟の地脈を走る青白い光が輝きを増して行く。棺に眠る者に送られる力は、眠る者の肉体を作り替えていく。
「ハハハッ♥ハハ………早くお会いしたいです♥そのためにも……此処へ近付かせるわけには行かない」
すると、屠自古の姿が変化した。両肩や背中、そして四肢に赤い無数の棘を生やし、長い尻尾を腰に生やした。屠自古の怪獣娘形態であり、宿した怪獣は『電撃怪獣ボルギルス』。高エネルギーを好む怪獣で、体からの電撃スパークで相手を威嚇し、ロからは火球を吐く。更に高エネルギーの物体を遠くから見通す優れた視力と装甲の硬さを誇り、「アングラークロウ」と呼ばれる鋭い爪を活かして接近戦や地中移動に活用している。また、エネルギーの補給はツノから行う。更に、心臓部は数ヶ月の間、数十万キロ移動しても疲れない強さを持っている。その時のみ、屠自古は人間の脚となって大地に立てる。亡霊となった時に出来る流動化は出来なくなるが、亡霊形態よりも遥かに強くなれる。但し、生き返った訳ではなく、あくまで怪獣の脚を再現してるだけに過ぎない。
「さて……もう帰ってきたのか?霍青娥」
屠自古がそう背後に話し掛ける。屠自古の背後に、怪しげな雰囲気を放つ青娥と、キョンシーとなった芳香の姿があった。
青娥は不気味な青が基調のローブを肩から羽織り、その下には灰色が基調の不気味な鎧を身に着けている。頭部にはウルトラマンの角に似た角を生やす兜を被っており、肩には揺らめく炎のような青い突起物が付いている。彼女が宿した死霊術師『レイバトス』の怪獣娘形態である、正に邪悪な魔法使いと呼べる風貌をしていた。
一方の芳香は、全身が腐った怪獣の死体のような着ぐるみを纏っており、口の中から顔を覗かせていた。両手は二本の指のみで各指に鋭い爪を生やしている。芳香の宿した怪獣は既に死んでいるが、とある部隊が護送中に地面へ落としたショックで蘇生し、ガスタンクを目指した『ゾンビ怪獣シーリザー』。その怪獣娘形態である。
「屠自古様。仰った通りでしょう?太子様はもうすぐ蘇りますわ。それも………偉大な力をこの身に宿した状態で」
「太子ー?誰だそれはー!」
芳香が太子と呼ばれる者が眠る棺に触れようとする。すると、突然芳香の手に電撃が走る。それは、屠自古が掌から放った雷であった。
「太子様に触れるんじゃねえよ!!私の太子様だ!!誰にも触らせはしない!!」
「あら、失礼しましたわ」
青娥は芳香を離れさせる。青娥は、此処まで屠自古の太子への愛が強く、そして重い物になっているとは思っていなかった。
日に日に強くなっているのは分かっていたが、まさか此処まで強くなるのは、青娥にとって予想外の出来事であった。
「……ですが、私達の目的は達成されつつあります。太子様の復活が間近となる事を示すように、数多の神霊が地上に蔓延り始めました」
「………だが、博麗の巫女は黙って無いだろう。そして、お前が所属したザ・キングダムだっけ?ソイツ等も動き出すぞ?」
「でしょうね」
「訊くが、なんで所属した?お前、何を企んでんだ?」
屠自古が尋ねると、青娥は芳香を撫でながら答える。
「面白そうだから所属したまでですわ。それに、ザ・キングダムの情報を貴女方に提供出来ますから」
「はーん」
「それに、ザ・キングダムのように時空を越える組織は一つではありませんわ。教えましょうか?残り3つの組織について」
屠自古は太子の眠る棺に抱き着きながら、青娥の話に耳を傾ける。
(さて、地上では神霊が湧き始めてる頃ね。博麗の巫女が、動き始めてるかしら?)
青娥は確信していた。ザ・キングダムだけでなく、他の組織も動き始めている事に。
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季節は梅雨。
地上に湧き出す神霊。それは、人間の欲の塊であった。それが幻想郷中に蔓延り、妖精達の凶暴性が増していく。
『ガアアアァァァッ!!』
妖精の群れが人里に迫る。人里に入れる空には空を飛べる者達が防衛に移り、門では妖精を寄せ付けぬよう防衛線が張られる。
「また現れたぞ!!」
「返り討ちだ!」
モルドとジュダが妖精を迎え撃つ。妖精達が血走った目を見開きながら二人に迫るが、二人は妖精達をそれぞれの武器や体術で蹴散らしていく。
「またこんな異変が……」
「幻想郷はどうなっちゃうのよ?」
小鈴と阿求は異変が起きて怯え始めるが、そんな二人に話し掛ける者が現れる。小鈴が逃げる男に突き飛ばされた時だった。
「大丈夫かのう?」
小鈴を抱き抱える、茶髪で季節外れな和装をする眼鏡を掛けた女性。
「は、はい……ありがとうございます………/////」
小鈴は抱き抱えられた時、女性を見た。見た瞬間、小鈴の胸の奥が熱くなる。
「しっかりせいよ。もし不安なら、儂が護ってやる。安心せい」
「は、はい…………//////」
小鈴はそんな女性に顔を合わせられない。そんな雰囲気を見ていた阿求は、見知らぬ女性に一目惚れする小鈴を誑す女に嫉妬する。
(小鈴は渡さない!)
そして、博麗の巫女である博麗霊夢は既に動き始めていた。
霊夢は神霊にしては随分とちゃちで雑多な霊に何らかの危機感を感じ、調査に出かける。同行するのは、霊夢のメイドを務めるユウコであった。
「ユウコ。貴女も感じてるわね?」
『はい、霊夢様。何か、途轍もない存在が蘇ろうとしています』
そして魔理沙もまた、修行の成果を披露する為に動き始める。神霊が人間の欲である事に気付き、好奇心で動き出したのだ。そして、同行者には成美が居る。
「また助けてくれるな?成美」
「うん。霖之助さんからの、頼みだからね」
更に、早苗も動き出す。神霊は神社にとって重要な霊であり、人間の信仰心を得るにはこういった神霊を集める事が重要だと考えている。その為、今回の異変解決に便乗して神霊を集めて、神奈子や諏訪子の為に信仰を集めようとしていた。そして、早苗にも同行者が一人居る。
「ありがとうございますチルノさん。チルノさんが居れば百人力です!」
「アタイは妖精達を狂わせる奴が許せないからな!妖精達のためにも、異変を起こしてる奴を倒しに行くぞ!勿論、早苗もアタイが守ってやる!!」
「ふふっ。頼りにしてますよ!」
そして最後の一人は妖夢だった。突如として現れた神霊は人間の欲の具現した物であった。その存在は希薄ですぐに消えてしまう物だったが、これ以上霊関係で騒ぎが起きて欲しくない彼女は、幽々子に許可を得て調査に出かけた。そして今回の同行者は、彼女がある異変で知り合ってからたまに遊びに行く仲になり、お互いに気になり始めている相手だ。
「ありがとうございます。鈴仙さん!」
「大丈夫よ妖夢ちゃん。師匠や姫様からも異変解決に向かうよう推薦されたし、一緒に行くよ」
こうして、異変解決に赴く幻想郷メンバー。しかし、動き出したのは彼女達だけではなかった。
「さて、ヘカーティア様から援護を頼まれたし、誰の援護に行こうかな〜」
幻想郷の本店で、小傘は新たに鍛え上げた武器を装備していく。右手には光り輝く二本の刃を収納した篭手を填めて、両肩には小型のエネルギーキャノン砲を装着する。そして液体状のエロい衣服を身に付け、彼女の程好く大きく形が整った胸に細いお腹に加えて、丸みのある大きめなお尻が露になる怪獣娘形態に変身した。スケスケな服に加えて、大事な箇所は下に着たマイクロビキニで隠している。傘は一つ目に長い舌のあるクラゲのようになっている。
『ウオオオオオッ!!』
「行くよ!ヤッターゼロ!デクちゃん!」
「うん!ミユちゃん!」
「「ヤッタージャスティス、出動!」」
黄金の穴から現れた、二人の男女と狼の頭を持つ犬型メカ。一人は兎のような帽子を被り、白を基調とした魔法少女のようなスーツを身に纏っている。もう一人は赤と黒めの縁があるヒロイッチックなスーツに黒緑色の帽子を被っている。二人の帽子にはYの字が描かれている。犬型メカは頭部が狼のような形となっており、両足は推進器付きのタイヤとなっており、それぞれの足には筒状のガドリング砲、そしてミサイルランチャーが取り付けられている。
幻想郷、ザ・キングダム、そしめ第三の組織ヤッタージャスティス。三つの勢力が入り乱れる、幻想郷最大の大戦が幕を開けようとしていた。