東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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今回で春雪異変の章が終わります。


第27話

紫が鎌状の手から光線を放つ。しかし、幽々子は両腕を自身に寄せる。その瞬間、幽々子の目の前に黒い渦が現れて紫の光線を吸収していく。しかし、紫は想定していたのか余裕の笑みを崩さない。幽々子の身体を突然、雷状の光線が直撃する。咲夜が両肩の竜に撃たせた光線だ。

 

「ぐっ!流石にやるわね!」

 

幽々子は後方へ浮いた。吸収した光線を打ち返そうとしたのだが、突然自分の元へ青白い電光の刃が迫ってきたのだ。幽々子は刃を身体を横に倒して避けるが、刃から降り注ぐ星の形をした弾が、まるで雨のように大量に降り注ぐ。魔理沙が尻尾を横に向けて振り翳す事で放つ電光の斬撃『プラズマスターブレイド』だ。更に斬撃から星の弾幕が大量に吹き出し、周囲に降り注ぐのだ。幽々子は刃と弾幕を難なく避けていく。

 

霊夢は隙を着いて、フード口から『ハイ・プラズマ』を放ち、幽々子に直撃させる。幽々子は胸元の発光器官から火炎弾を放ち、霊夢の一撃に当てて爆発させ、相殺した。

 

「ハイ・プラズマを相殺した!?」

 

「慌てるな霊夢!幽々子様はこんなものでは止まらぬぞ!」

 

藍が触手を伸ばし、幽々子の足を捕まえようとする。しかし、幽々子はテレポートを使って藍の背後に回り込み、蹴りで吹き飛ばす。藍は蹴り飛ばされて地面を転がった後、肩からミサイルのように刺を放つ。

 

「そんなもの──」

 

幽々子はテレポートを行おうとした。しかし、霊夢が幽々子の背中を炎を纏った足で蹴り飛ばす。

 

「逃がさないわよ!」

 

「そのままだぜ霊夢!『マスタービーム』!」

 

箒に乗る魔理沙は、ミニ八卦炉に背鰭から展開した輪の形を形成した電光を纏め、そしてマスタースパークと合わせる事で放つ技だ。フィリウスと魔理沙の合体技とも呼べる熱光線を放ち、幽々子に直撃させる。霊夢に背中を蹴られて防ぐ暇も無かった幽々子は、爆発と共に吹き飛ばされてしまう。流石のハイパーゼットンでさえ、魔理沙の宿す怪獣の火力を防ぎ切れなかった。更に藍は術式を身体に組み込み、拳に宿らせて幽々子のお腹を殴る。紫も空間を操って結界を張る。先程の霊夢の結界ではテレポートで逃げられてしまった。ヤプールの力で構成した結界ならば、テレポートは不可能だ。

 

「・・・幽々子、ごめんなさい。貴女は亡霊だから死ぬことは無いわ。だから全力で─────」

 

紫が言葉を続けて結界の中を炎で満たそうとした、その時だった。西行妖に生えた目玉から、閃光の如き光が放たれる。春を吸収し続ける西行妖に生えた一つ目が大きく開き、光を放ったのである。光は熱光線に直撃した幽々子に当たり、西行妖から紫色の煙状の帯が伸び始める。その帯は六つも出てきて、霊夢達の動体視力すら超越する速度で伸びていき、幽々子に当たる。その瞬間、幽々子を囲む結界が硝子のコップのように、粉々に砕け散った。

 

「なっ!?」

 

「あの桜の木・・・西行妖と言ったかしら?」

 

魔理沙は熱光線が効かなかった事に驚いた。霊夢は西行妖と西行妖に宿る何かが、幽々子を意図的に改造したのだと理解する。

 

「幽々子!まさかもう目覚めてしまったというの!?」

 

「紫様!お下がりください!あれは──」

 

『・・・スプリング・グリムレイ』

 

そして、幽々子は胸元の発光器官から、此まで以上に巨大な炎の波状攻撃を生み出した。そして、煌々と輝く炎の津波は幽々子を巻き込んで大爆発を起こし、白玉楼を含めたその場に居る者全員を巻き込んだ。

 

そして、西行妖の見開いた目は再び閉じる。閉じた瞳が見る事は無かったが、爆発が収まった頃に広がっていたのは、焼け焦げた地面、地面に大怪我を負って倒れる霊夢達、そして焦土となった白玉楼であった。しかし、霊夢は起き上がり、全身から火花を散らして損傷が激しいユウコを撫でながら、魔理沙と共に立ち上がったのだ。魔理沙は咄嗟に身体をシールドで守ったのである。霊夢は気合いと先程の爆発による炎を吸収し、回復を謀ったのである。そして二人は、重い足取りのまま、幽々子の元に近寄ったのだった。

 

──────────────────────

 

春雪異変。春が訪れなくなる異変は、意外な形で幕を閉じた。

 

西行妖から何かしらの力を受け取ったと思われる幽々子は、目を覚ました時に霊夢達によってその事を問い詰められたが、西行妖から力を受け取った後の事を一切覚えてなかったらしい。

 

謎はまだ残っているものの、幽々子は敗北を認めた。霊夢と魔理沙はまだ立ち上がって気絶しておらず、降伏を認めて無かったからだ。

 

モンスターバトルルールにより、幽々子は霊夢達から異変を止めるよう命令される。紫からは、妖夢に負担を掛け過ぎないようにと言われる。藍も同じだ。

 

こうして幽々子が幻想郷に“春”を返した事で、幻想郷の冬が終わって春が戻ってきた。遅すぎる春ではあるが、桜が満開になった光景を見て、幻想郷の人々は漸く見れた桜や春の名物を堪能した。

 

そして、博麗神社では宴会が行われた。気合いと再生能力で立ったとはいえ、それでも大怪我をした霊夢に変わって、紫と藍が宴会用の料理を振る舞ってくれたのだ。

 

そして、宴会中に起きた出来事を少しずつ見ていこう。

 

「・・・うぅ、ごめんなさいアリス。貴女からユウコを貰ったのに・・・」

 

包帯を腕に巻き、ガーゼや絆創膏で傷のある箇所を覆う霊夢は、アリスに頭を下げながら涙目になっていた。二人の間には、全身の至るところに損傷が見られるユウコの姿があった。ユウコは春雪異変の間とはいえ、共に戦った仲だ。自分の未熟さと、アリスに顔向け出来ない後悔で泣いていたのだ。

 

「まさかユウコが此処まで壊れるなんて・・・大丈夫よ霊夢。私には膨大なナノメタルが宿ってるわ。街をすぐに建設するのは無理でも、ユウコはすぐに治せるから安心して」

 

「・・・ありがとうアリス。迷惑掛けるわね」

 

霊夢は頭を上げた。涙目のままだが、顔は澄ました笑顔になっていた。

 

「修理ならお安い御用よ」

 

アリスにとってお安い御用であった。その際にアリスが見せた聖母のような笑みを見た霊夢は、何故だか顔が少し熱くなった気がした。

 

その頃、橙は藍と共に料理を運んでいた。その際に二胡を披露し終えた麟と出会う。

 

「あの、冴月麟さん!初めまして!」

 

「ん?君達は・・・霊夢と魔理沙の言ってた式神?」

 

「ああっ。君の事も聞いているぞ。冴月麟。私は八雲藍。紫様の式神である九尾の狐だ」

 

「橙です!化け猫であり、藍様の式神であります!マヨヒガで修行をしています!」

 

「そっか。僕は冴月麟。麟で良いよ」

 

「はい!宜しくお願いします!」

 

「宜しく頼む。それはそうと、先程の二胡の演奏は見事だった。良ければもう一度聴かせてくれないか?」

 

「うん!二胡の演奏もっと聴かせて上げるね!」

 

すると、麟の元へプリズムリバー四姉妹がやって来た。レイラに関しては、妖精に憑依したままである。

 

そして、ルナサが燐にある提案をする。それは、プリズムリバー四姉妹への介入であった。

 

「貴女の二胡の演奏は見事だったわ!どう?私達と組まない?」

 

「私達で幻想郷の音楽界に革命を起こすのよ!」

 

「麟さんならきっと出来るよ!」

 

『私もお姉ちゃん達と一緒に音楽で成功したいの!一緒にやらない?』

 

「誘ってくれてありがとう。でも、僕は既にバンドを組むと決めた相手が居るんだ」

 

麟がそう言った後、麟の元へ二人の妖怪がやって来た。いや正確には、鬼と妖怪である。

 

一人は萃香。もう一人はウェーブの掛かったショートボブは緑青をしており、緑色の瞳を持ち、茶色に薄く斑点模様の入った大きな垂れ耳と小さな尻尾を持つ少女の妖怪だ。小豆色のスマートで少し短めな長袖ワンピースを着ている。そんな二人を追うもう一人の妖怪は、八ツ目鰻をメインとする屋台を経営するミスティアであった。

 

「おーい麟!外の世界で採れた魚で寿司を握ってきたぞー!」

 

「麟さん!バンドの件で話に来ました!」

 

「響子ちゃん!待ってよ~!」

 

プリズムリバー四姉妹は、響子と呼ばれた少女の口から発せられた『バンド』という単語で全てを理解する。麟にはもう組むと決めた相手が居たのだ。

 

「寿司!?ありがとう萃香!あっ、四人共紹介が遅れたね。萃香とミスティアは知ってるかもしれないけど、この子は山彦の妖怪の『幽谷響子』って言うんだよ」

 

「幽谷響子です!ミスティアちゃんや麟さん、萃香様とバンドを組む事になりました!」

 

「萃香からの紹介で知ったんだよ。萃香がドラム、ミスティアがギター兼バックコーラス、響子がメインボーカル、僕が二胡を担当するんだよ」

 

「・・・そう。なら、同業者ね!負けないわよ!」

 

「うん!」

 

此方では音楽業界を巡る戦いが始まっていた。

 

そして、異変の首謀者である幽々子と妖夢も宴会に参加していた。

 

「それにしても、宜しかったのですか?」

 

「何がかしら?」

 

「西行妖です。それに、西行妖に宿ったあの──」

 

「妖夢」

 

幽々子が妖夢を真剣な眼差しで睨む。真剣な眼差しを向けるという事は、とても重要な事を話すという事。妖夢は幽々子と共に過ごしたお陰で、雰囲気を見ただけですぐに理解出来る。

 

「その名前を知っても口にしては駄目よ。私に何をしたのかは分からないけど、紫曰く『名前を口にしただけで呪われる』らしいわ。ウルトラマンすら呪われたのよ?私達ではとても振りきれないわ」

 

「も、申し訳ありません」

 

「それはそうと、白玉楼の復興は明後日になるわね。映姫の部下達の仕事ぶりの凄さよね」

 

「ええっ。死神達も宿してたのですから」

 

「・・・そうね」

 

幽々子は扇子で口を覆いながら、ある事を考えていた。

 

「それはそうと、今回紫が用意した料理は何かしら?」

 

「はい。お花見専用の料理を用意されています。至高の一品も用意されております」

 

「まあ。美味しそうな刺身の盛り合わせね」

 

幽々子は大食いではないが、とてもグルメだ。死者なのにグルメというのは少し変な気はするが、兎に角グルメだ。勿論好き嫌いはしないのだが、美味しい物は好きなのである。

 

こうして、春雪異変は終わりを迎えた。宴会も充分な賑わいを見せた後に終わりを迎えた。

 

そして、それから数日後の幻想郷で、大きくなくとも新たな異変が起きようとしていた。

 

──────────────────────

 

「此処が、マイ・ロードとヘカーティア様の言っていた幻想郷」

 

とある草原にて姿を現したのは、燐が以前に出会ったクロエという少女と瓜二つの少女。

 

「・・・此処に歪んだ転生者が一人、暗躍していると言ってたわね。現地の協力者に早くしないと」

 

そして、少女は走り出す。幻想郷に必ず存在する、人里に向かって走り出すのだった。




次回からクレナイクレハさんと再びコラボします。コラボする作品は『なんで他の転生者は家があるの?』です。
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