博麗神社では、大きな宴会が行われた。今回の主役は麟とクロエの二人、そして異変の首謀者側でもあったグア三姉妹である。三姉妹は、事件を起こした自分達を宴会に招く彼女達の度胸の広さに驚いていた。
「まさか我等がこうも手厚く歓迎されるとは」
「モルド兄・・・いえ姉上・・・やはり呼びにくいです」
「ギナ姉上、無理はなさらぬように」
「しかしやはり、この様な歓迎は・・・何とも言えんむず痒さがある・・・」
モルドを含めたグア三姉妹は、元々侵略こそが生き甲斐であった。宇宙の歪みから生まれた彼等にとって、侵略し蹂躙する事はとても喜ばしい事だ。その為に、誰も彼等を歓迎しようとはしなかった。故に、この様な宴会の場で飲み食いして交流を深める事は、彼等には不向きであった。
「貴女達が、幻想郷に攻め行った三兄弟・・・いえ、今は三姉妹ね」
三姉妹の元へ、日傘を差した一人の少女がメイドの女性と共に現れた。
「初めまして。私はレミリア・スカーレット。紅魔館の主を務めさせて貰っているわ」
「私はモルド。私が此処に居るギナとジュダの・・・姉である。我等に何用だ?」
「ただの挨拶よ。霊夢達が戦った相手が気になってね。咲夜、例の物を」
「はい、お嬢様。では皆様、此方を」
咲夜は三姉妹に、三枚の皿を配る。其処には豪華に彩られた西洋菓子があった。
「此はなんだ?」
「ケーキ、という物では?モルド姉上」
「ギナ姉上から聞きましたが、地球人の好物らしいですぞ」
「お嬢様からご挨拶を兼ねた贈り物ですわ。ゆっくりとお召し上がりください」
そして、三姉妹はレミリアと咲夜が用意したケーキを食べた。初めて味わったスイーツの甘さに、三姉妹は片目から一滴の涙の粒を流し始めた。美味であった事も含むが、こんなに甘くて優しい、まるで抱き締めて貰ったような温かさに、思わず泣き出してしまったのだ。
その頃、宴会のメインである麟とクロエは、共に宴会料理を味わっていた。
宴会料理は博麗の巫女である霊夢が用意するのだが、今回は人数も多い為に麟や異変参加者全員が手伝った(因みにチルノは遊んでただけです)お陰で、沢山の宴会料理を用意出来たのだ。
クロエは春巻きを食べた後に、麟にある事を問い掛ける。
「ねえ、麟さん。麟さんはどうしてあの時、私に強く食い付いたの?」
「あの時?ああっ、もしかして君とモンスターバトルで戦った時?」
「ええっ。普通の人生を歩んでたらあんな暴力的な言葉、早々出る筈が無いもの」
「・・・えっとね、実は僕、途中から何を言ってるか自分でも分からなくなったんだよ」
「はぁっ!?」
クロエが立ち上がる。あまりにも衝撃的な返答に、怒りが込み上げてきた。あんなに散々言っておいて、覚えてないとかふざけるな。
「僕、昔からそうなんだ。スイッチが入ると自分でも何を言ってるか分からなくなるんだよ。だから、後から尋ねられても、覚えてないから答えられないの」
「・・・まあ良いわ。そのお陰で、私は変われたんだもの」
「ごめんね。覚えてるのは、『殺した過去は変えられない』って所と『本物になる必要は無い』と言った後。その間は覚えてないんだよ」
「別に良いわよ。ありがとう、麟さん」
寧ろ下手に慰められたら、クロエは益々自分を責め続けてただろう。落として上げてきたのは予想外だったが、余計な気遣いが無い分上手く伝わったのだ。
「それと、自分の命が偽物と呼ぶのが気に食わないのはね。実はもう一つ理由があるんだ」
鮪の刺身を沢山口に頬張り、大好物を味わう麟。クロエは思う。もう少しマナーを護れないのか、と。
「此を知ってるのは僕の両親と、人里の長である村長さん、阿求さんと小鈴ちゃん、そして紫といった妖怪の賢者達しか知らない。本当は話したいんだけど、霊夢や魔理沙には言わないよう紫に口止めされてる。あっ、勿論ザ・キングダムの皆には話してるよ」
麟の表情は真剣だ。
「僕が君に食って掛かったのは、君がちょっと似てるからなんだよ。僕と境遇が」
「・・・えっ?」
クロエは箸を落とす。
「でも、君と違って僕は自分を偽物とは思ってない。そして、君と同じように周りの助けがあって今僕は此処に居る」
クロエは話を真剣に聞いた。
「『冴月麟』は、僕が両親から貰った名前。僕の本当の名前を教えてあげる。本当の名前は───
『博麗霊夢』だよ」
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クロエとの別れの日が来た。ヘカーティアがノアと共に元の時空へ帰してくれるそうだ。
「・・・麟さん、後、幻想郷の皆さんも、今までお世話になりました」
お出迎えをしたのは、麟や霊夢、萃香に紫、文にチルノの六名だ。クロエがナラクに通じる穴に入る前に、四人に挨拶をする。
「あややや、外の世界から来た皆さんは新聞の良いネタになりますからね。でも今度は記者としてではなく、個人的に貴女とお話がしたいです」
「クロエー!今度はあたいと遊ぶぞー!」
「何時でも歓迎するわ。幻想郷を害さない限りは」
「今度は酒飲める歳になってから来いよ。その時は一緒に飲もうぜ」
「何時でも来て頂戴。あっ、その時はお賽銭入れてってね」
「霊夢ったらもう。クロエちゃん、君は君なんだ。君の道を進んで生きて」
それぞれが別れの言葉を告げる。
「・・・ありがとう。私、幻想郷に来て良かった。今度は仕事じゃなくて、マイ・ロードやお義父さん達と一緒に観光したいわ。でも私には帰る場所があるの」
そして、クロエは穴に向かって歩き出す。
「皆ありがとう!さようなら!」
そして、クロエがナラクの中へ入り、軈て幻想郷へ通じる穴が閉じる。穴が閉じる間、見送った者達が全員手を振ってくれたのだ。
「はぁ~い。それじゃあ、私が送ってあげるわよん」
其処へヘカーティアが現れる。その隣にはノアが居た。
「ヘカーティア様、マイ・ロード」
「どうでしたか?幻想郷は」
「はい。素晴らしい世界でした。しかし、私の知る幻想郷とは違ってるようですが・・・」
「ええっ。スペルカードルールが存在せず、己の強さと力、賢さ等を競う、某武道大会にそっくりなルール。ですが、その方がある意味世界が成り立つのかもしれません」
「ふふっ、そうよねん。じゃあクロエちゃん、貴女を元の世界へ送るわ。此処から帰れるわよん」
ヘカーティアがナ両手の宝石を光らせ、ナラクに穴を開ける。
「ありがとうございました。ヘカーティア様にマイ・ロード。また今後も宜しくお願いします」
そして、クロエは穴に入る。元の世界は帰って行ったのだ。
こうして、とある少女の物語が終わる。しかし、この話はまだ終わらない。
「ねえノア。頼みがあるのよん」
「何ですか?」
「ええっ。クロエちゃん、イリヤちゃん、美遊ちゃんの過去にね───」
そして、地獄の女神は過去に飛ぶ。過去の少女達の、運命を変える為に。
コラボ本編は終了します。しかし、コラボはまだ終わりません。此処からは、クロエ達の過去に干渉する話になります。