レミリアと咲夜はてゐを連れて永遠亭の中を移動していた。
「それで、もうすぐ会えるのかしら?」
「・・・会えるよ。この先に姫様が待ってる」
「案内ご苦労ですわ。それで、お嬢様。霊夢は──」
「平気よ。一度負けても、霊夢は必ず立ち上がる。例え屈したとしても、それでも立ち上がる。今の霊夢なら平気よ」
「・・・愚問でしたね。失礼しました、お嬢様」
「ええっ、咲夜。それで、彼処で戦っている二人のどちらかが、異変の元凶ね」
レミリアと咲夜が中庭に出る。てゐも見つめる。三人が見つめる先には、可憐な女性と炎とマグマを操る女性が空中で戦っていたのだ。
それは、霊夢を口説いた輝夜と竹林の案内人兼人里の自警団団長の妹紅だ。
「『フェニックス大噴火』!」
妹紅は鳥の姿をした溶岩流を背中から放ち、輝夜にぶつける。しかし、輝夜は片手で溶岩流を止めた。
妹紅の姿は黒のシャツとジーンズを来ており、両肩からは竜の頭を生やす。背中にも竜の翼を生やしている。それは正に、竜が擬人化したようなラフな現代風の衣装である。
対して輝夜は片手に短剣状のアイテムを握っており、赤黒い槍に変えて妹紅の放つ攻撃を全て相殺する。アイテムを持ってる事を除けば、輝夜は変身していない。即ち、輝夜は楽しんでいるのだ。妹紅が自分を殺そうと攻撃し続ける様子を。
「加勢しますか?」
「・・・いいえ。見守りましょう。それに、私達が例え彼女を倒しても意味が無い」
「・・・無理だね。お前等じゃ姫様は倒せないさ。姫様は怪獣娘形態になってないし、何より切り札を使ってない。即ち、手加減されてんだよ」
てゐが言葉を漏らす。
「あら?私達はまだ戦ってもいないのよ?」
そして、妹紅の炎を受けながらも輝夜は妹紅の後頭部に手刀をぶつけた。妹紅は一瞬にして意識を刈り取られて、そのまま落下してしまう。
「・・・で、貴女達はどうするのかしら?」
すると、輝夜の声がレミリアと咲夜の背後からした。
「なっにぃぃぃっ!?」
「そんな!?いつの間に背後へ!?」
咲夜は時間を停止させて、輝夜に向かってナイフを振り下ろそうとした。しかし、時間が停止しているにも関わらず輝夜は動き、咲夜の手を掴んで止めた。
「そ、そんな!?何故時間が止まっているのに動けるんですの!?」
「貴女は時間を停めたり、加速させる能力を持ってる。それを応用して空間を自在に操れるのね。教えてあげる。“時間に干渉出来るのは貴女だけじゃないのよ”」
そして、輝夜は咲夜の頬を撫でる。
「んー。貴女も悪くないわね。ねえ、私の物にならない?私の元に来れば、永遠を与えてやるわよ?」
「っ!嘗めるな!」
咲夜は輝夜に蹴りを入れて、更に両肩から生やした黄金の竜の口から引力光線を放って輝夜に直撃させる。
そして、時間停止が解除されて時が動き出す。
「あら?霊夢とは違うのね。フフフッ」
「私はお嬢様に仕えるメイド長、十六夜咲夜!例えお嬢様に捨てられようとも、貴様に何度口説かれようと、私はお嬢様に永遠にお仕えし、幾らでも尽くし、時に導く為に私は居る!貴様の言葉に屈するものか!」
「咲夜・・・流石は私の誇り高きメイド長ね。私は貴女が居てくれて幸せだわ」
レミリアは咲夜の言葉を聞いて赤面になるが、咲夜の肩を叩いて彼女を鼓舞する。
「お嬢様。この姫と闘う許可をください」
「ええっ、良いわよ。モンスターバトルの審判は私が務めさせて貰うわ」
レミリアはその場で、咲夜と輝夜は対決を見守る事にした。
「では、咲夜と・・・「輝夜で良いわ」ありがとう。では改めて、咲夜対輝夜のモンスターバトルを開始するわ」
そして、輝夜は元の姿のままだが、咲夜はメカキングギドラを纏った怪獣娘形態へ変身した。
「よーい・・・始め!!」
その瞬間、咲夜が輝夜の目の前に出現し、ナイフを振り下ろす。その腕を輝夜は掴んで止めた。
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「ウオオオオオオォォォォッ!!霊夢、目を覚ませええええええ!!」
魔理沙は尻尾を縦に振って、プラズマの刃を放つ。通り過ぎただけで廊下や障子を破壊し、後から来る衝撃波が地面も吹き飛ばす。
しかし、霊夢は魔理沙の背後に回り込み、彼女の周りに無数の陰陽玉を展開し、其処から炎を纏った札型の弾をマシンガンのように放つ。魔理沙の身体に次々と直撃していく。
「背鰭を壊す気か!そんな事させるか!」
魔理沙は箒を手元に引き寄せた、のだが魔理沙の機動力は流れ弾の札に当たって爆発し、箒が焼き尽くされてしまう。
「・・・今ね」
霊夢はフード口から霊夢の顔の二倍もある巨大なプラズマ火球を放ち、魔理沙の背中に直撃させる。霊夢がやったのは、魔理沙の全身に張られた『非対称性透過シールド』を無力化する事だ。背鰭から全身に張られているシールドは、如何なる物理干渉も無効化してしまう。
しかし、霊夢のプラズマ火球は赤黒くなっており、爆発も赤黒くなっている。
「がああっ!?」
魔理沙は大爆発に巻き込まれて、その全身が業火に包まれる。更に、爆発は部屋も廊下も吹き飛ばす。見学を務めていた永琳やアリスの元にも迫るが、二人は全身に結界を張って爆発から身を守る。
紫も結界を自分の周りに張って身を守る。
こんな戦い方、明らかに霊夢の戦い方ではない。
「霊夢!お前、自分が何してるのか分かってんのかよ!」
魔理沙は霊夢に掴み掛かる。背鰭の再生まで時間が掛かる為、自身のタフさで勝負するまでだ。どんなに身体を損傷しても、持ち前の再生能力で肉体は元に戻る。
「分かってるわよぉ。私は姫様の物なのよ?それを邪魔する奴等なんか要らないわよぉ」
「お前っ!ふざけんなああああ!!」
魔理沙は全身の分子運動を加速させた。そして、自分を中心に周囲の分子運動を加速させていき、周囲を高熱で包み込んでいく。
「目を覚ませよ霊夢!!私達は友達だろ!?私には分かるんだよ!!お前は心の何処かで必死に抗ってるって!!」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさああああああい!!私は姫様の物として生きるのよ!!邪魔するなら魔理沙も此処で殺してやる!!」
霊夢は魔理沙の頭に袖の爪を振り下ろした。流石にアリスや永琳、紫が止めに入ろうとする。しかし、霊夢の爪を振り下ろす速度が速かった。
「霊夢ー!!やめてーー!!」
「なんて事!」
「霊夢!!」
そして、霊夢は魔理沙の頭に爪を振り下ろした。
その爪は、虚空を斬るだけで、魔理沙に当たらない。
「・・・・・・えっ?」
霊夢は驚愕した。自分は殺すつもりで魔理沙を狙った。にも拘らず、霊夢の攻撃は魔理沙に当たらなかった。いや、二人は掴み合っている。その上近距離攻撃を霊夢は放った。当たらない筈が無い。
「・・・へへっ。やっぱり霊夢はまだ残ってたんだな!」
「・・・違う!私は・・・私は・・・」
すると、アリスが霊夢を背中から甲羅越しに抱き締めた。
「霊夢!さっきの告白、嬉しかったけど悲しくもあったわ!私の事好きと言ってくれて、本当に嬉しかったの!だからお願い・・・もうこんな事はやめて・・・」
「アリス・・・」
「霊夢。異変が終われば貴女にはお説教をしなくちゃならないわ。でも今は、戻ってきて頂戴。霊夢だって本当は、大切な友達を傷付けたくない筈よ」
その時、霊夢の中で砕けた何かが、再び集まって来る音を、霊夢は聴いた。
「霊夢!私達、友達だろ!だから!戻って来いよ!!霊夢ううぅぅぅぅぅ!!」
そして、霊夢の中で砕けた筈の何かが再び集まり、光を放つ。
「ううぅうぅぅぅぅ・・・・・ああああああああああああああああああぁぁぁぁっっ!!」
そして、霊夢の身体から温かく眩い光が放たれて、彼女の身体から黒い煙のような物が抜けていく。赤と黒の色から、元のガメラを模した色の巫女服に戻って来た。
「「霊夢・・・」」
魔理沙とアリスは、霊夢が漸く戻って来た事を確信した。
「・・・ごめんなさい。皆。そして、ただいま」
彼女を包み込む優しき光のオーラの中には、まるで夜空の星々のような輝きを発していた。
「霊夢!!もう心配したんだぜ!!」
「馬鹿!!敵に屈してどうするのよ!?」
魔理沙とアリスは泣きながら、霊夢に抱き着いた。
「・・・まさか姫様の誘惑を振り切るなんて」
「・・・それで、続けるかしら?」
「・・・いいえ。私達の負けで良いわ。もうこの異変も、終わらせないと」
永琳が降参を宣言。目の前で厚い友情を見せられて、感動のあまり闘う気が失せたのだ。
「それで、私達に一回だけ命令するのよね?何を命令するの?」
永琳が魔理沙達に尋ねる。
「んじゃあ、親玉の所へ案内してもらおうか」
「私も同じよ」
「輝夜の所ね?解ったわ」
「輝夜の居場所なら知ってるわ。此方よ」
こうして、霊夢は魔理沙達を案内する。
永夜異変に、終止符を打つ為にも。
オリジナル技図鑑
『フェニックス大噴火』
妹紅のスペルカード『フェニックス再誕』のマグマバージョン。