永夜異変。それは、月の住人が幻想郷へ来れないようにする為に永淋と輝夜が仕込んだ偽の月を使った結界を張り、明けない夜を幻想郷全域に展開した異変。
しかし、その夜の異変の最中、八雲紫とその式の隙を突き、幻想郷に宇宙人の侵入を許してしまった。永淋と輝夜の結界をどうやって突き抜けたのかはまだ明かされてないが、侵入したスラン星人は幻想郷で暗躍しようとする。
しかし、スラン星人には誤算があった。それは、グア三姉妹の長女モルドと、末っ子のジュダに見つかってしまい、彼岸花の咲く無縁塚と呼ばれる共同墓地に追い込まれたからだ。
無縁塚。縁無き者が弔われる共同墓地であり、録に管理されている訳ではない。また、この共同墓地で埋葬される縁無き者は、『迷い込む』『食料として連れて来られる』外の世界の人間である事が多い。
また、外の世界の物が幻想郷に入ってきた時は、高い確率で無縁塚に落ちて居る。
そして、スラン星人はこの共同墓地で、モルドとジュダに追い詰められたのだ。
「貴様は我が妹ギナを、その友人である影狼を傷付けた。万死に値する!」
モルドは腰に掛けたバットアックスを手に取り、スラン星人に向ける。
「まさかお前達は、あのグア軍団侵略軍団長のグア三兄弟か!?此は傑作だ!宇宙を侵略する武闘派兄弟がまさか女になっているとはな!」
スラン星人は高らかに笑う。しかし、モルドとジュダはスラン星人の挑発を鼻で笑う。
「何べんでも言え!我等の目的はギナ姉上を傷付けた貴様の首を、この手で狩り取るのみ!」
ジュダは腰に掛けた鞘に収めるバットキャリバーを抜いた。そして、モルドとジュダはスラン星人に向けて走り出す。スラン星人は早速無数に分裂し、モルドとジュダを取り囲む。
「貴様等の高速移動等、無駄だ!」
モルドはバットアックスを縦に振り下ろして車輪のように回転する斬撃を放ち、スラン星人の分身を次々と切断していく。しかし、スラン星人も馬鹿ではない。何度も同じやられ方をした同胞の失敗を知っていたスラン星人は、クハハと笑う。
「同じ手が通用するものか!」
「いいや、狙い通りというもの!」
スラン星人はその場から跳んで真上に逃げるが、跳んだ事によって分身が全て消えてしまい、本体が露となってしまう。ジュダはその隙を見逃さず、剣を振り上げて斬撃を放ち、スラン星人の身体を斬ろうとする。スラン星人にとって予想外の出来事であり、同胞と同じ死に方をするのだと悟った。
しかし、突然スラン星人の身体が真上に浮いた。
「お、お待ちください!私はまだお役に立てます!どうか!どうかお慈悲を・・・ぎゃあああああっ!!」
スラン星人は空中に出来た謎の裂け目に吸い込まれた。その裂け目からスラン星人の悲鳴が響く。
「なんだあの裂け目は!?モルド姉上!」
「くそ!スラン星人は囮か!人里に早く戻り、ギナ達に緊急の通告をせねば!!」
モルドとジュダは走り出そうとした。所が、その途中で空から光弾の雨を受けてしまう。光弾には当たらなかったが、二人は地面に光弾が当たった事で生じた爆発に怯む。
「「誰だ!?」」
二人は上空を見上げる。空から降りてきたのは、黄金の鎧を纏い、赤い衣を羽織り、仮面を身に付けた異形の巨人だ。巨人は二人を見下ろした瞬間、二人の姿を見て「フハハハハハッ!」と笑い始める。
『此は傑作だ!あの名高いグア三兄弟が、よもやこんなチンケな小娘の姿となるとは!フハーハハハハハハハハハハハハッ!!』
「貴様は、エタルガー!?」
「何故『超時空魔神』と呼ばれる貴様が幻想郷へ!?」
時空を越えるエタルガーの力は、この永夜の結界では防げないのか?先程スラン星人を派遣したのは彼だろうか?モルドとジュダの二人の頭に、そんな疑問が浮かぶ。
『怪獣墓場の怪獣達が消えたと様々な宇宙で噂が絶えんのでな。調べた結果、この幻想郷であったか?幻想郷の存在する地球に怪獣墓場の怪獣が集まっていると情報を聞き付けたのだ。それも、奴等の魂のみがな。あのような結界程度、私の手に掛かれば突破は容易い』
そして幻想郷にスラン星人を派遣して調査させようとしたが、スラン星人は勝手に動いた為に用済みとして処分したのだ。
「ん?」
ジュダは気付く。彼女の足元に、見覚えの無い女が倒れている光景に。
十代後半の女子高生らしい体格に、黒いスーツを頭以外の全身に着込み、両手の甲には紫色の装置が嵌め込まれ、其処から灰色の太い爪が生えていた。顔付きは端正で、オレンジ色のボブヘアーを生やしている。額にはオレンジ色の球体を取り付けた白い装置を着けており、スラン星人の目を模したヘッドホンを耳元に着けている。
その姿はまるで、スラン星人を擬人化したような姿であった。
『む?こやつは、私が先程処分したスラン星人か?ハハハハハッ!此また傑作だ!!私の言う通りにすれば故郷を救えると思った奴の末路に相応しい!!』
エタルガーは足を上げる。少女の姿となったスラン星人を踏みつける気だ。
その時、モルドがバットアックスでエタルガーの足を止める。
『ぬっ!?』
「この様な姿とはいえ、力の大半は失っておらぬぞ!」
そして、ジュダがスラン星人──スランを肩に担ぐ。
「・・・んあ、なっ!?何だ此は!?離せ!何をする!?」
「抵抗するな。貴様は放っておけばエタルガーに殺されるぞ。後で我々が貴様に鉄槌を下すがな」
「離せ!くそ!そして何故私の声はこんなに高くなっている!?まるで女ではないか!?」
高速移動も使えない。ジュダに捕まっているからだ。それに、何故か声も変化している。そして先程から感じる身体の違和感。両手を見て理解する。自分は人の姿となっているのだと。擬態したのではなく、本当に人間の姿となっているのだ。
更に、故郷を滅ぼされぬようエタルガーに忠誠を誓ったのに、エタルガーによって捨てられたという事実が、スランを傷付けた。
その間、モルドはバットアックスを振り上げて、エタルガーを吹き飛ばした。
『ぐおあっ!?貴様!!』
「ジュダ!お前は人里へ戻り、戦える者達を連れて来い!エタルガーは私が抑えよう!ぬおぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!』
モルドの姿が変化する。軈てモルドは巨大化し、嘗ての巨人の姿に戻り、声も男性の物に戻る。
『ほう!ウルトラマン共のように巨大化も出来るか!』
『貴様等、我等グア三兄弟の長男モルドの敵ではない!』
『ほざけ!』
エタルガーが走り出し、モルドも走り出す。
「モルド姉上!必ず戻ります!スラン星人、貴様も着いて来て貰うぞ!」
「・・・」
ジュダはスランを抱えて走る。肝心のスランは、放心状態となっていた。
ジュダが人里へ到着した時も、モルドはエタルガーと戦い続けていた。
スラン星人はとても好きです。