「・・・そうか。そんな事があったのか」
「ああっ、慧音殿。スラン星人の背後に居たのは超時空魔神エタルガーだ。奴は強いぞ。モルド姉上は我々を逃がす為に一人奮闘しているが、長くは持たぬ」
人里の中心に存在する寺子屋。其処に人里の有力者が集まっていた。有力者と銘打って居るが、中には麟や萃香の姿もある。影狼とギナは怪我の為にすぐには来れず、二人の見舞いをわかさぎ姫に任せて、代わりに蛮奇が寺子屋へ来た。
スラン星人の対策会議を開く予定だったが、そのスラン星人は少女の姿となり、今は放心状態となっていた為に予定は変更。エタルガーの対策会議を開く。
「超時空魔神エタルガーですか。ジュダさん、エタルガーについて知ってる事を詳しく教えてください」
紫色の頭髪をして、花の髪飾りを着けている少女が話し出す。若草色の着物の上に、袖の部分に花が描かれた黄色の中振袖の着物を艶姿のような感じで重ね着しており、その上で赤い袴を履いている。ルーズソックスのような足袋も履いている。和洋折衷の服装をした彼女こそが、人里の有力者の家系であり、『稗田阿礼』の九代目転生者である『稗田阿求』である。
「エタルガーは時空を超える力を持つ魔神でな。時空城と呼ばれる拠点と共に、様々な次元を渡り歩いている。大物ぶってはいるが、ウルトラマンと人間の絆が起こす力を何よりも恐れているのだ。だが、この幻想郷にウルトラマンは居ない。しかし、その代わりとなれる力はある」
ジュダはエタルガーの全体像が載った写真を見せながら、エタルガーについて簡潔に説明する。
「我々三姉妹は固い絆で結ばれている。お前達は互いの絆と、宿した怪獣と繋がった絆がある。絆の力こそエタルガーの恐れる物なのだ」
「成る程」
「だが、奴は強いぞ。格闘に優れた武闘家であり、エネルギーを放って遠距離攻撃もこなせる程の万能性も持っている。次元を渡る力を持っている為に、追跡も難しい。だがエタルガーの持つ最も恐ろしい力は、我々が一番恐れている存在を幻影として展開し、実体化させる力だ。我々はそれをエタルダミーと呼んでいる」
「お、恐れている存在を!?」
阿求はジュダの説明を聞いて戦慄した。つまり、相手のトラウマを利用し、その原因となる存在を幻影として生み出した後に実体化させるのだ。相手によっては効果抜群な精神攻撃だ。
「・・・ありがとうございます。ですが、村長さん、慧音さん、そして皆さん。エタルガーの対策を打つ前に、此処で放心状態となっているこの方の処遇を決めなくては」
阿求はスランを見る。彼女はまだ放心状態だ。
「・・・おい、お前に聞きたい事がある」
「・・・何だ?」
蛮奇がスランに話し掛ける。
「お前は何故、影狼とギナを攻撃した。あの二人から聞いたのだが、お前は襲撃した時、焦った顔をしていたそうだが?」
「・・・同情するつもりで訊くならやめろ。殺したいなら殺せ」
「・・・いや、お前はあの二人を傷付けたが、殺しはしなかっただろう?殺してもいないのに其処までする理由は無い。答えてくれないか?」
何より、影狼とギナは殺す事を望んで居ないかもしれない。まだ二人から訊いてないが、怪我をさせられた程度で殺すなんて真似はしないだろう。
「・・・私には故郷がある。スラン星ではない。私は彼等の元から離れて、海が殆どを占める海洋惑星で其処の住人と共に、四苦八苦しながらも平和に暮らしていた」
スランは語る。海洋惑星は苦労も多いが、漁業を営み、海の恵みに感謝しながら生きる日々は、荒廃して空気も大して美味くなくなり、高度だが退屈な上にサプリメントを摂取するしかない科学の世界となったスラン星より遥かにマシだったのだ。
しかし、そんな平和な惑星に、エタルガーが攻めてきたのだ。奴はウルトラマン達に復讐する為に戦力を集めているらしく、スランは海洋惑星の住人を人質に取られてしまった事で従ったらしい。
「・・・成る程。それで、『幻想郷を我等の物にしたい。手を貸せ』か。だが、お前は失敗した」
「それで、そのエタルガーって奴に殺されて、何故か少女の姿になったんだね?」
慧音と麟の言葉に、スランは首を縦に振る。
「・・・エタルガーの事だ。故郷は既に滅ぼしてお前をただの使い走りにしただろうな。お前が放心状態になっているのは、恐らくそれだろう」
「・・・ああっ。救う為に約束したというのに」
スランが放心状態となったのは、それを全て察したからだ。エタルガーの性格を考えれば、約束を守る奴ではない事は分かる筈だった。しかし、従わされた時は故郷を救う思いしか無い為に、そんな考えは持てなかった。
「・・・」
蛮奇は、スランに対する恨みは無くなっていた。哀れみを感じてしまい、恨みがどうでも良くなったのだ。
とはいえ、スランは償いをしなくてはならない。沢山ある内の一つの椅子に座る村長の高齢男性が、スランの判決を決める。
「・・・村長として命じます。スランさん。君には人里の寺子屋で教師をやりませんか?」
「教師を?」
「其処で子供達に貴女の知識を教えたり、色んな経験を積ませてください。期間は二年です」
「・・・こんな私に教師が勤まるとは思えないが、引き受けよう」
スランは償いとして、教師を勤める事となった。
「・・・では皆さん、モルドさんの・・・って麟さんにジュダさん!?何をしてるんですか!?」
麟はジラを纏って怪獣娘形態となり、開けた窓から外へ出る。ジュダも後に続く。
「阿求さん簡単だよ。モルドさんの所へ行くよ。僕とジュダさんで援護に向かう」
「駄目だ!計画も無く向かう等!」
「計画ならありますよ慧音先生。戦う!」
「同感だな!」
麟とジュダは走り出す。麟はジュダを超える速さで走り、ジュダはその後に続く。
「そうだな!私も向かわせて貰うよ!モルドも勇儀と同じ飲み仲間だしな!」
萃香は身体を霧状に変えて、その場から姿を消した。
「・・・全く、妹紅もそうだが麟も後先考えないで突っ走るな!」
慧音は自らの身体に、黄金の麟分を纏っていき、軈て繭のような光を纏った後に、その姿を変化させた。
それは美しき蛾を巫女の姿へ擬人化したような着物姿であり、万人を虜にしてしまう天女を思わせる見た目だった。肩には首の付け根に着けた黄金の球体から伸びる半透明の肩掛けを羽織っている。慧音の髪も艶のあるオレンジ色に変化し、髪型は白いリボンで整えたツインテールへと変化している。袖は黒と黄色で彩られた美しき蛾の羽の模様があり、羽を思わせる形状をしている。袴は短めであるが、その下にはドロワーズを履いている。
「蛮奇、阿求、人里を頼むぞ。私はあの三人を追う。村長さんも此処は任せました」
「・・・引き受けよう。影狼や姫が心配だからな」
「分かりました。お気をつけて」
「慧音先生。我々にお任せを」
そして、慧音は腕を振り上げた後、窓に足を掛けて勢いよく外へ向かって跳んだ。その瞬間、窓の縁に頭をぶつけてしまい、そのまま地面に落ちる。
「っ!!では、改めて失礼する!」
慧音は赤面になりながらも、腕を羽ばたかせて上空へ飛んだ。その美しき姿は、蛾というより蝶であった。
「償いか・・・もうこの手で人を傷付けてしまったのだ。逃げる事は出来ん」
スランはその場から立ち上がった。自身に生えた爪を撫でて、決意を固めた凛々しき顔を浮かべた。