午後十二時半。二日後、紅魔館の中庭に七名の男女が集まっていた。霊夢、魔理沙、レミリア、咲夜、ベル、カルナ、天子の七名である。七名の男女と言ったが、男はカルナ一人だけだ。
カルナ、ベル、天子はヘカーティアが展開した黄金の穴から現れ、それぞれ自己紹介を行った。
中でも天子の自己紹介は個性的であった。
「私は比那名居天子だ!私は婆羅護吽を、この緋想の剣は魏怒羅を宿してる!暇だから大暴れしたくて来てやったぞ!アッハハハハハッ!」
あまりにもぶっ飛んだ自己紹介だが、霊夢やレミリアは天子がその傲慢ぶりに似合う実力者だと直感的に見抜いていた。
「レミィ。無理はしないで頂戴」
「分かってるわ。愛しいパチェが帰りを待ってるんだもの。死んで帰ったら、パチェが悲しむじゃない」
「も、もう!レミィの馬鹿!」
レミリアの告白に、パチェは顔を赤くした。あまりにも恥ずかしいからだ。
「やっほー!」
すると、紅魔館に意外な来客が訪れた。
「麟!?どうして此処に?」
「あっ!お姉様、此から行くの?」
それは、麟だった。彼女は美鈴に案内されて、霊夢達が此から乗り込むロケットを見にやって来たのだ。フランも麟と一緒にやって来た。
「妹様?寺子屋は・・・あっ、今日は午前中で終わりでしたね」
「うん。で、麟先生に人里で料理をご馳走してもらったんだよ。人里じゃあ紅魔館が月に飛んでくって噂があったから、麟先生と一緒に来たの!」
「そうでしたか。麟先生、妹様の我が儘に付き合って頂き申し訳ありません」
「大丈夫だよ咲夜さん。フランちゃんは大事な生徒だからね。こうやって話し合うのも教師の役目だから。それに、僕も霊夢達がロケットに乗って月に行く様子を見たかったからね」
麟がそう言った。
「霊夢、魔理沙。無理はしないでよ」
「分かってるわよ。紫に神降ろしの術を覚えさせられたから、何とかなるわ。あれからしっかり修行もしてるし」
「私もちゃんと修行してきたんだ。初めはパチュリーの魔道書で色々増やそうと思ったけど、やっぱり私は火力によるごり押しが似合うからな!一つの事を極めまくってやるぜ!」
「成る程なぁ。僕も行きたいけど、この後『鳥獣鬼人』のライブがあるからね。頑張ってね。こんなに素敵な美少女が帰りを待ってるよ」
「「はいはい」」
「酷くね?」
「でも、頑張ってくるわ」
「じゃあ、行ってくるぜ。麟」
「うん。行ってらっしゃい」
そして、霊夢達はロケットに乗り込んだ。霊夢が最後に乗り込み、ロケットの扉が閉まる。
「フランちゃんは行かなくて良かったの?」
「ううん。行きたかったけど、私はこの後お友達と遊ぶんだ。変な羽を生やした子と、紫の閉じた眼を持つ子と!」
「そうなんだね。どんな子か、僕にも紹介してよ」
「うん!とても良い子達だからね!」
そして、霊夢達の乗るロケットが空中に浮き始める。ロケットに装着された三機の小型装置がロケットから離れ、ロケットから一メートル離れた位置で浮いた。そして、ロケットの周りを回転し、軈て紅魔館の中庭から勢いよく空へ向かって飛んで行った。
「行っちゃったね」
「レミィ・・・」
「パチェ、どうしたの?」
「な、何でもないわよ」
パチュリーが顔を反らす。その顔は赤くなっていたのだが、麟がそれを見る事は出来なかった。
「・・・ベルやカルナ、それにあの天人さんが一緒だから大丈夫だと思いたいけど・・・何だろう?この胸騒ぎは・・・」
麟は、月に行った霊夢達が心配になってきた。よく分からないが、何かが起きている。
すると、突然麟とフランの両腕に取り付けられた腕輪が震え始める。『ブー、ブー』という音と共に小刻みに揺れる腕輪に触れた二人。すると、腕輪から掌サイズの画面が飛び出してきた。
それは、ザ・キングダムが肌身離さず持ち歩いている通信装置だった。此れを装着する事で、ザ・キングダムのメンバーは例え次元越しでも通信が可能になる。例え異次元空間に閉じ込められようと、強力な通信機能及びGPS装着によって通信及び追跡が可能だ。
『麟、フラン!緊急事態よ!スペースビーストの大群を発見したわ!』
「スペースビーストっ!」
「分かったよ!で、スペースビーストは何処に居るの?」
『ええっ。奴等の出現した時空は多くあるわ。貴女達に行って欲しい世界は───────』
その様子を見ていたパチュリー、こあ、美鈴の三人は、フランが誰かの為に戦いに行く事を誇りに思った。
「フランお嬢様。ご立派になられましたね」
「はい。美鈴さん!」
「ふふっ。あの子は産まれながらの天才よ。まだ子供染みた所はあるけど、レミィも認める程だわ」
こうして、霊夢達の知らない裏側で、麟が厄介者を倒していく。そして、霊夢達はどうなったかと言うと、月に到着した後、猛烈な大歓迎を受けるのだった。勿論、争いという形で。
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ロケットから降りた霊夢達は、突然飛んできた光線の嵐に驚き、防御が取れなかった。ただ一人を除いて。
「成る程な。八雲から話は聞いていたが、俺達を穢れと見なして襲ってきたか。そうでなくとも、侵入者は始末するのだろう」
カルナだ。彼は分厚い氷の壁を生成して、光線を全て防いだ。
「怯むな!地上人達を返り討ちにしろ!」
その敵の正体は、人の姿をした兎達であった。リーダー格であろう青い短髪をした兎耳を頭に生やす少女を中心に、多数の玉兎達が霊夢達を取り囲んでいた。全員、両手が大きなハサミとなっており、特徴的な衣服を纏っていた。その衣服はまるで、バルタン星人である。
「元々は俺達が始めた戦争だ。とはいえ、俺も相手をしてやろう」
「カルナ、手を貸すわ」
「なら私も、退屈凌ぎになれば良いな!」
ベルは干将・莫耶を両手に持ち、兎達に向かって走り出す。天子は鞘から緋想の剣を抜いて金色の電撃を纏わせ、兎達に向かって走り出した。
そして、霊夢と魔理沙も怪獣娘形態に変身するのだった。