時は遡り、霊夢達がロケットに乗って月へ旅立った頃に遡る。
その時、麟とフランはザ・キングダムのメンバー全員が所有する腕輪型の通信装置から連絡が来て、通信に出た後だった。
『麟!フラン!緊急事態よスペースビーストの大群を発見したわ!』
「スペースビーストっ!」
「分かったよ!で、スペースビーストは何処に居るの?」
『ええっ。奴等の出現した時空は多くあるわ。貴女達に行って欲しい世界は、フューチャーアースよん!』
「フューチャーアース?それって、宴会で幽々子さんがたまに話してた、バット星人が支配してた地球だよね?」
「バット星人?」
「僕もよく分からないけど、なんか三人のウルトラマンが合体してバット星人と、幽々子さんが宿したハイパーゼットンを倒したんだって。そんな地球にスペースビーストが・・・此は行くしか無いね!」
「うん!私も行くー!」
『それは何よりよん!じゃあ、そっちに穴を繋げるから、其処でフューチャーアースに向かうメンバーと合流して!以上、通信終了よん!』
そして、両腕の腕輪から出てきた映像は消えた。へカーティアが通信を切ったのだ。
その後、麟とフランの目の前に黄金の穴が開いた。フランは美鈴達の方を向いて、手を振った。
「あっ!美鈴!パチェ!こあ!私、行ってくるわ!」
「ええっ、行ってらっしゃいませ!妹様!」
「今の貴女なら、きっと大丈夫よ」
「行ってらっしゃいませ!妹様!」
三人が見守る中、麟とフランはお互いに手を握って穴へ向かって歩き始めた。
そして、二人は穴から『ナラク』の中に入る。穴が閉じた後、二人はフューチャーアースに向かうメンバーと合流した。
「よお麟!フランも一緒か!」
始めに二人へ挨拶をしたのは、萃香だ。萃香が伊吹瓢に口を付けて酒を飲み始めた時、残りのメンバーも挨拶を始める。
「ベルやカルナ、天子さんは月に行ったから、代わりに私達が行くよ」
「私達も初めてだけど、せめて死なないよう頑張る」
エリス(元イリヤ)とエミリー(元美遊)は、初めて怪獣と戦うのだ。人間サイズとは比べ物にならない相手だが、二人も怪獣を宿している。怪獣と言うより、片方は光の巨人、もう片方は闇の女巨人だが。
「全く、ここは騒がしいわね」
そう言ったのは、死神のような黒いワンピースを着て、金髪の髪に赤い瞳を持つ少女だった。獅子があしらわれたブーツを履いており、頭部と背中に翼が生えた異形の姿をしている。
「ん?ねえ萃香、この人は?」
「ん?ああっ、彼女は万由里。へカーティア様が連れてきたんだ」
「万由里よ。私はあのへカーティアって奴に連れて来られたけど、彼女がアブソリューティアンの力を与えて消滅から救ってくれたわ。今は世界のシステムとしてじゃなく、万由里という個人として生きてるのよ」
「うーん。分からないけど、助かったのなら良いね。此れから宜しく」
「ええっ」
万由里は麟と握手を交わす。
「よぉ。準備出来たか?」
「・・・じゅんびは、できてる」
「クワイエット、この世界のニホンゴ?は苦手らしいな。俺達と話す言葉は同じなんだが」
現れたのは、帽子とサングラスを身に付けて、更に大槌を持ったダンディーな男性。二人目は殆ど水着姿で足に茶色のタイツを身に付けて、更にスナイパーライフルを所持する女性。最後の一人は何処か冷たく、しかし誰にも縛られない自由の意志が伝わる強い瞳を持つ青年。
「紹介するわ。このひげの男がカール・ハイゼンベルク。際どい女性がクワイエット。で、最後の冷たい男がエレン・イェーガー。まあエレンはこんなんだけど、根は良い奴よ」
「万由里。お前の説明は雑すぎるんだよ」
「ただの事実じゃない」
無論、彼等も怪獣を宿して貰った。望んだ訳ではないが、以前より強くなったのは明白だった。
「やっとミランダから解放されたと思ったら、へカーティアに縛られるかと思ったぜ。でも、へカーティアは俺に力を与えた後、自由にしろと言ってくれたぜ。俺の工場も、改良を加えた上で提供してくれたしよ。ミランダがああだったら良かったと今は思ってるよ」
「俺もな。地鳴らし起こして、ミカサにトドメを刺される直前で連れて来られたよ。よりによって俺だったのが驚いたが、俺は漸く自由になれたな。心残りがあるなら、彼奴等がどうなったかだな・・・」
その時のエレンは、何処か哀しそうな目をしていた。
「ホームシックって奴か?俺には理解出来ねぇけどよ」
「お前は前の世界には未練が無さそうだな」
「あるとすりゃ、最新の映画や観てない映画を観れなかった事ぐれぇだな・・・っと!」
突然、ナラクの奥から強いエンジン音と鳴き声が響く。ナラクにある窓にハイゼンベルクが近寄り、怒鳴る。
「静かにしてろ!今大事な話をしてんだ!」
ハイゼンベルクが怒鳴った後に、エンジン音と鳴き声が静まる。
「・・・悪かった」
「何?今の音と鳴き声?」
「まあ俺の愛する失敗作と合体した、俺が死体を改造したサイボーグ怪獣だな」
死体を改造。聞く限りはかなり恐ろしい事だ。
「・・・あっ。皆待って。行く前に僕から贈り物があるよ」
「あれ?麟先生何かやるの?」
「うん。でも、僕が前にやらなかったのは加減が難しいからなんだよ。僕が“祈る”事で、皆を強くするよ」
『祈る事で?』
全員は耳を疑った。しかし、麟は構わずその場である動きをした。それは、外の世界や幻想郷では“神楽”と呼ばれる舞であった。
「祈りとは、心の所作。祈りは届く。祈りは信じる事。祈りは力となり、形を結ぶ」
それは、麟に後天的に、そしてある出来事を切っ掛けに発現した能力であった。
「皆、受け取って。僕の“祈り”を」
その瞬間、麟の全身が輝き始める。一分間の短い神楽であったが、白銀の光が麟の体から漏れ出ていき、ナラクに居る者全員の体を包み込んでいく。
「おっ?うおおおおおおおおおっ!?スゲェ!?何だこりゃあ!?」
「何だか、力が溢れて来る!でも暴走する気配が無いわ!」
萃香やフランも、麟の能力によって強くなった。その力を受けたにも関わらず、暴走の兆候は見られない。
「麟さんにこんな力が!?」
「凄い・・・」
「あんた、こんな能力を持ってたの!?」
エリスとエミリー、万由里も同じだ。
「おおおおっ!お嬢ちゃん中々スゲェ能力持ってんだな!俺は神を信じちゃいねぇが、お嬢ちゃんの祈りは本物だぜ!」
「ああっ・・・俺も驚いたな」
「にほんじんは、とてもしんしんぶかいな・・・」
ハイゼンベルクやエレン、クワイエットも同じくパワーアップした事を自覚した。今なら山をも持ち上げられそうだ。
「僕の能力だよ。『祈る程度の能力』。別に神楽を舞う必要は無いけど、祈り方にも色々あるんだよ。さっきのように神楽を舞ったり、祝詞を使ったり、座り方や風水等を利用したりして、効率良く祈りを届けるのが良いんだよ」
「そりゃあ良いな!私みたいな鬼や妖怪、更には神々が最も欲しがるぞ!っていうか麟!お前の祈りは人間一人分所か一万人分位じゃねえか!?」
祈りとは、彼等にとっては強い糧となる。信仰を得て強くなる神々にとっては、特に必要とする能力だ。特に麟の祈りは、まるで一万人に祈られたような性質らしい。
「さあ皆。行こう、フューチャーアースへ」
(麟・・・お前、本当は何を隠しているんだ?)
萃香はそんな疑問を抱きながら、フューチャーアースに向かって開いたナラクの穴へ麟達と共に歩き始めた。
オリジナル能力
『祈る程度の能力』
保持者:冴月麟
文字通り、誰かに対して祈る。普通なら祈るだけなのだが、麟の祈りは格別であり、彼女一人で一万人分の祈りに相当するらしい。その祈りを受けた相手は強化が施されるが、種族によっては進化する事もある。強化状態は、麟が途中から止めても消える事は無い。また、普通に座って祈っても効果はあるが、神楽を踊りながら祈ったり、祝詞にして祈ったり座り方や風水等を利用すれば祈りの効果は更に強くなる。但し、自分には効果が無い。