東方怪獣娘ー怪獣を宿す幻想少女達ー   作:ちいさな魔女

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後日談・その3:怨霊異変

人里に蔓延る人間会。その本拠地は意外と誰も知らなかった。今の博麗の巫女である霊夢への誹謗中傷、妖怪及び妖怪の味方に対する暴力、人間至上主義と掲げておきながら人間にも手出しする過激さから、多くの人達が人間会の拠点を探ってきたのだが、未だに見つかった試しが無い。

 

「ごめんね影狼。付き合わせちゃって」

 

「良いのよ、そういう時は。人間会の奴等にどれだけ苦しめられたか、よく分かるわよ。私も彼奴等に石を投げられたり、妖怪と言う理由だけで殴られたりしたんだから」

 

影狼は鼻で匂いを辿る。人間会にやられた時も、彼女はその時の匂いを覚えていた。しかし、今まで拠点を探る事が出来なかったのは、単純である。報復されるのが怖かった。それに何より、蛮奇とわかさぎ姫に迷惑が掛かってしまうから。

 

しかし、今は麟と萃香、そして嘗て幻想郷を手に入れようとした元エタルガーのエルが居る。エルの存在は影狼は良く思わなかったが、今は戦力が居て頼もしい。そして何より、自分に宿った怪獣の力がある。

 

(ホロボロス。お願いね)

 

影狼は胸に手を当てて、自身に宿る怪獣の名を呼んだ。その時、影狼の脳内に狼の遠吠えらしき咆哮が響いた。

 

「あったわ。此処よ」

 

影狼がやって来たのは、井戸だった。人目につかない場所に建てられた井戸であり、手入れはされてないのかカビや苔が生えている。

 

「此処で匂いは分かりにくくなってるけど、確実に井戸の下へ通じてるわ。この井戸を使って外と地下を出入りしていたのね」

 

「人里の地下って・・・父さん曰く採掘場だったみたいだね。現在は外の世界みたいに紙幣をお金にしてから、採掘場は殆ど使われなくなったみたいだけど」

 

「麟の家って、昔から博麗の巫女と交流があったんだっけな。人里の構造も良く知ってた訳か」

 

「うん。僕は父さんから話を聞いて興味が湧いたけど、母さんから地下は埋められて行けないって言われたよ。でも、今は人間会が出入りしてるんだね」

 

「人間会の連中が掘り返した後に、拠点にしてんだろうな。でもまあ、そのせいで影狼に探知されたけどな」

 

萃香の皮肉に、全員が笑ってしまった。

 

「早く行くぞ。俺は早く奴等を叩きのめしてやりたいんだ。飯の為にな」

 

エルは井戸の中に入る。飛び込んで一気に降りていき、軈て着地する音が井戸から響いた。

 

『早くしろ!』

 

「分かってる!ほら、皆行くよ」

 

「おう!終わったら宴会だ!」

 

「ええっ。人間会を叩きのめしてやるわ!」

 

三人も井戸の中へ飛び降りて、三秒後に地面へ降り立った。三人からすれば大した事ではない高さだ。怪獣を纏わなくとも平気である。

 

そして、四人は長い廊下を見つめる。蝋燭で照らされた長い廊下は、視界が悪くて何処から敵が来るのか解らない。

 

「スンスン・・・此方へ向かってきてるわ。人間の匂いね。それも五人。どうやら偵察みたいね」

 

「上等だ。返り討ちにしてやる」

 

「くれぐれも殺さないようにしなさいよ」

 

「雑魚料理法は心得ている」

 

エルは拳を鳴らす。四人は長い通路を歩く内に、萃香と影狼は不快感に襲われた。

 

「ちっ!何か念仏を唱えてやがる!」

 

「前の私なら近付けなかったわ。でも何かしら?凄く嫌な感じがする」

 

「念仏は妖怪にとって害でしょ?」

 

「それとは違うのよ。退治される時の嫌な感じじゃなくて・・・何て言うのかしら?恨みとか、悲しみとか、そんなのが混じった感じかな?上手く説明出来ないけど、悲しい、苦しい、憎い、そんな気持ちが込められてるのよ」

 

影狼曰く、通路の奥から聞こえる念仏には、何かしらの恨みが込められている。人間である麟と、超時空魔神であるエルには効いてない。どうやら人間や異星人には効果が無いようだ。

 

『我、妖ヲ恨ム事タユル気無シアンダラタウン。我、妖ヲ恨ム事タユル気無シアンダラタウン』

 

念仏がよりハッキリと聴こえるようになった。一人ではなく、何十人もの男女の声が響いていた。

 

「なんか、仏教の念仏を怨念寄りにした感じだね」

 

「なんだこの歌は?こんなのに何の意味がある?」

 

「地球人、特に日本人にはとても意味のある言葉だよ。祝詞、又は念仏と言ってね。言葉を上手く繋げる事で力に変えるんだよ。本来なら死者の魂を成仏させたり、生きてる人達の精神を落ち着かせたり、妖怪や化け物を退治する為にあるんだよ」

 

「ただの言葉がか?」

 

「ただの言葉で片付けない。言葉には、それだけ力が宿る事があるんだよ。数億人の人々を動かすのは、心よりも言葉なんだよ」

 

「・・・ふん。くだらん」

 

エルは鼻で笑う。

 

「でもこの念仏・・・というか祝詞かな?霊夢ならもっと詳しく理解出来るんだけどね。でも、影狼の言う通りだね。特に恨みが強く込められてる。それに何だろう?この気配・・・・・・博麗の巫女?」

 

麟は感じていた。念仏の中に、博麗の巫女独特の力の気配を。しかし、そんな博麗の巫女の力の気配も、怨念が強く宿っていた。

 

そして麟達は、奥にある扉を開けて中に入る。鋼鉄の分厚い扉を片手で開ける萃香。念仏が聴こえているにも関わらず、力はさほど衰えていない。

 

扉を開けて中に入る麟達。

 

その中は、無数の男女がそれぞれ違った印を両手で結び、恨みを込めた念仏を唱えていた。部屋の奥には、人間会の長らしき白髪の高齢男性が此方に背中を向けており、一際強い念仏を唱えている。そんな彼の前には、巫女の石像が血に濡れた布切れを握っており、人間会が唱え続ける念仏と同じ事が書かれた文字が、赤黒く染まっていた。

 

「此れが、人間会?」

 

「・・・どうやら侵入者の様だな」

 

白髪の老人が立ち上がる。

 

「我等の本拠地に自ら入ってくるとはな。我等の掲げる『人間至上主義』に惹かれたかね?」

 

「誰がアンタ達なんかに!」

 

影狼が声を上げながら、麟の前に立つ。

 

「汚らわしき狼に、八岐大蛇の末裔たる鬼か。まさか我等の本拠地に居ながら、その場で立てるとはな」

 

老人は麟達の元を向く。その瞬間、麟達を囲む男女が立ち上がり、それぞれ武器を持って居る。

 

「やれやれ。全くこうなるんだね」

 

「まっ、ハンデにゃ丁度良いや」

 

「行くわよ!」

 

「ふん」

 

四人はそれぞれ身構える。人間会を、この手で終わらせる為に。




この博麗の巫女の正体は、霊夢の前の先代ではありません。
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