人間会に属する人間達が武器を持ち、麟達に迫る。数は多いが、武器を持った程度の人間では麟達に勝てる筈も無い。
麟は武器を避けながら、拳で殴ったり、蹴り飛ばしたりして人間達を倒していく。勿論殺してはいない。但し、骨折はしているだろう。霊夢や美鈴に格闘を教わっていた事が、此処で活きてきた。
萃香も同じだ。人間を殺さずに倒す方法を心得ている為、麟と同じ戦闘スタイルだ。但し、萃香はあくまで身体能力と力に任せたごり押しである。
影狼は野生の第六感、そして優れた五感によって相手の動きを読み、鋭い爪で人間達を斬る。しかし、殺してはいない。傷口は浅くしている。
エルは何もしていない。人間達は彼女に武器を振るうのだが、剣、刀、槍、鉄砲、手裏剣、その全てはエルの体や鎧に当たって砕けてしまう。拳で殴った者は、その腕が砕けた。
「まあこんなものか」
「私、こんな奴等に今まで怯えてたのね」
地面に倒れる人間達を見下す萃香と影狼。しかし、此処で予想外の事が起きる。
「やるではないか。だが・・・まだ倒れておらんぞ?“妖を恨む者達よ”」
リーダーの男が何かを唱え始める。
「邪魔をするな!ふん!」
エタルガーが赤い光弾を胸元の円から放つ。しかし、光弾はリーダーの男に当たる直前で結界に当たり、爆発を起こす。
「“我は妖憎む事絶ゆる気無し”!“我、妖憎む事絶ゆる気無ああし”!」
その瞬間、麟達に倒された人間達の肉体に異変が生じた。肉体が膨張し、ぶよぶよの不快な肉塊に変化してしまう。肉塊は一ヶ所に集まっていき、軈て一つのさなぎのような形になる。そして、さなぎのような肉塊を突き破って中から異形の腕が生えてきた。
『グェロロロロロロロロロロッ!!』
それは、骨で出来た異形の腕だ。肉塊の一部である血肉が、骨に付着している。
そして、肉塊から姿を現したのは、巨大な骨の異形であった。骨に出来た亀裂からは無数の血を流している。
「あれは、がしゃどくろ!?」
「無数の怨霊が集まって生まれる妖怪!?何で人間会がこんなのを!?」
「いや、こいつは人間の死者の怨霊が集まって生まれたわけだから、こいつは人間とも呼べるんだろうな」
『グェロロロロロロロッ!!』
がしゃどくろが麟達に向かってくる。麟は怪獣娘形態に姿を変えた。ビキニと仮面を身に付け、尻尾を生やし、四肢を異形化させた麟。二代目ジラを纏ったのだ。
「取り敢えず、此れで吹っ飛べ!」
麟は蹴りを放ち、がしゃどくろの肋骨に当ててがしゃどくろを吹き飛ばした。
『グェロロロロロロロッ!!』
がしゃどくろは起き上がる。麟は後方に下がりながら、口から『パワーブレス』を吐いて牽制する。
「麟ちゃん!援護するわ!」
影狼の体も光に包まれて、軈て怪獣娘形態に変身した。衣服が消えて一瞬全裸になった後、大きな巨乳や細いお腹を覆うように体のラインをハッキリと表す青いスクール水着を身に付けて、モコモコする毛皮のフードを頭に被る。両手には、オレンジ色の長い爪を手の甲から生やす狼の前足を模した手袋を装着する。ライオンと狼の外見を足して2で割ったような姿となった影狼。影狼の尻尾も、青く長い尻尾に覆われた。両肩にオレンジ色の刃を二対六枚も生やし、太股にオレンジ色の爪を生やす青い指のような装甲を纏った。
「行こう!ホロボロス!」
影狼は走り出す。がしゃどくろは影狼に手を伸ばすが、影狼はがしゃどくろの指を掴み、そのまま背負い投げの要領でがしゃどくろを背中から地面に叩き付ける。更に、影狼はがしゃどくろの頭に飛び掛かるように乗っかり、そのまま拳で眉間を殴り続ける。
『グェロロロロロロロロロロッ!!』
がしゃどくろは起き上がって影狼を吹き飛ばすが、影狼は四つん這いになって壁に着地する。そして、壁を狼やライオンのように素早い動きで走り回り、がしゃどくろの頭に向かって跳んだ。そして、両手の爪『ホロボロクロー』でがしゃどくろの頭を切り裂いた。しかし、がしゃどくろの頭はすぐに再生した。
「無駄ですなぁ。怨念尽きぬ限りがしゃどくろは死なぬ」
そして、リーダーらしき男は更に念仏を唱え始める。
「あの男、やっぱり博麗の巫女の力を持ってるね。子孫だったりするのかな」
麟は男に向かって、口から『パワーブレス』を吐く。男に放たれた熱線は再び結界に塞がれるが、エルが光線を胸元の円から放ち、萃香が怪獣娘形態となった後に『マガ迅雷』を口から放って、男に攻撃する。
直撃した瞬間、結界が砕けて大爆発が起きる。そして、男の背後にある博麗の巫女の像が、爆発に巻き込まれて砕けてしまった。
「ぐああっ!おのれ貴様等!我の母の像をよくも!だが、我にはまだ切り札がある!我が母の怨念が封じられし宝玉と、この先にある親王様がな!」
爆発が収まる前に響いた声。そして収まった頃には、崩れ落ちるがしゃどくろと、先程まで男が居た場所には大きな穴が出来ていた。
「・・・逃げたわね」
「うーん。母って言ってたけど、あの男は誰なんだろ?像も壊れちゃったし、手掛かりとか無いかなぁ」
「これじゃないか?」
三人は元に戻り、その場にある物を探っていると、萃香がある物を見つけた。それは、大きな巻物だった。博麗の巫女が身に付けているリボンで結ばれている。
「此さ、タイトル見て解ったけど、二代目博麗の巫女の記録だよ。此処になんか記されてないか?」
「二代目博麗の巫女・・・最も妖怪を殺し、そして妖怪を庇った人間にすらも手に掛けた、最も残虐な巫女。そして彼女のお陰で、霊夢の先代まで、博麗の巫女が人間からも恐れられる原因になったんだよ」
「そうだったのね・・・で、何が書かれてるの?」
麟と萃香は、読み始めた。其処には二代目博麗の巫女の名前と出生、そして妖怪や妖怪を庇う人間をも殺し続けた彼女の思いが、長く綴られていた。途中で赤い血に濡れた所はあるが、それでも大筋は理解出来た。そして、あの男の正体も、巻物には記されていた。
次回、巻物の内容と人間会のリーダーの正体に迫ります。