二代目博麗の巫女。名前は『霊亜』。
初代博麗の巫女の実子にして、歴代最悪にして哀しき博麗の巫女である。
彼女は初代博麗の巫女と、両性具有の鬼の少女が禁断の恋の果てに産まれた、謂わば博麗の巫女と鬼の混血である。
母である博麗の巫女は、霊亜にその事を打ち明けた。霊亜は鬼の血を引いている事に驚いたものの、父である鬼の少女と博麗の巫女に愛されて育てられた為、初代が掲げる人と妖怪が共に在る世界を夢見るようになる。
しかし、そんな幸せは続かなかった。まだ幼かった霊亜の心を傷付け、彼女を変えてしまった出来事でもあった。
『お父さん!?お母さん!?』
父である鬼の少女と母である初代博麗の巫女が、何者かによって殺害されてしまった。幼い霊亜にとっては、とてもショックな事だった。
後から調べて分かったのだが、二人は妖怪によって殺されたのだ。妖怪達の中でも過激派であり、初代を昔から憎んでいた過激派に襲われたのだ。加えて、鬼と交わりあったならば、そんな巫女を妖怪達は許す筈も無かった。
幼い霊亜はただ泣き続けた。葬式の間も、博麗の巫女に就任する儀式中も、彼女は泣き続けた。
しかし、泣いていたって何も変わらない。涙で救えるのは自分だけ。泣いてる間も時間は止まらない。今も人間が妖怪の餌食となっている。
そして霊亜は誓った。
妖怪達は潰す。例え誰であろうと、妖怪ならば必ず殺すと。
霊亜は博麗の巫女となってから、常に妖怪達を見つけては殺し続けた。
中には命乞いをする者も居た。ただその場に居続けた奴も居た。眠ってるだけの奴も居た。家族連れも居た。人間を案内する奴も居た。仲良くなろうとする奴も居た。
そんな妖怪達も殺した。理由は無い。妖怪だから。
それが、人の為にもなる。そう思っていた。
しかし、そんな彼女が、最悪の巫女と呼ばれる出来事が起きてしまう。
ある日、霊亜は目撃してしまった。人間の子供と妖怪が仲良くしているのを。何時ものように、霊亜は妖怪を退治した。しかし、退治したにも関わらず、霊亜は人間の子供に石を投げられてしまう。それだけなら我慢出来た。しかし、霊亜は子供にこう言われた。それが、彼女の運命を大きく歪める。
『化け物!何が博麗の巫女だ!お前の親もお前みたいな化け物巫女だよ!』
仲の良かった友を目の前で殺され、犯人を罵倒する子供の何気無い悪口だった。しかし、霊亜は子供の胸を拳で殴って砕いてしまう。それほどまでに、親を馬鹿にされたのが許せなかった。強い父を、優しき母を、侮辱されたのが許せなかった。
その日から、霊亜は歪んだ。妖怪だけでなく、妖怪と仲良くする人間にすら手に掛けた。当時は妖怪の賢者たる八雲紫は冬眠中だった。八雲藍の元に、もう一人の賢者から連絡が行き届くまで、悲劇は続いた。
霊亜は妖怪だけでなく、妖怪を庇う人間すらも殺した。男も女も、子供も老人も、障害者や妖怪を匿う人間まで、彼女は昼夜問わず殺し続けた。
もう一人の賢者より報告を受けた九尾は、八雲紫を無理矢理起こして、事情を説明した。そして八雲紫は、霊亜の──
(途中から血で汚れて読めない)
『遺書』
私は、父と母を殺されてから、私は復讐の為に生きてきた。妖怪を目にすれば、何時だって蘇ってくる。父と母が、妖怪達に殺された光景を。心に宿る憎しみと嫌悪感が胸の奥から溢れ出てくる。その度に私の胸が苦しくなる。でも、妖怪を殺したらそれが無くなった。
私は妖怪を殺し続けた。こんな苦しみから、憎しみから、兎に角解放されたかった。
妖怪を殺した後、彼等の最期の顔を見た。人間と仲良くしたかった妖怪達は、私に殺されながらも泣いていた。その度に私は、彼等を父や母と重ねてしまう。解放されたのにまた苦しくなる。
そんな時、人間の子供と仲良くしていた妖怪が居た。私は嫌悪感や憎悪、苦しみが再び沸き上がり、逃れたい為に妖怪を殺した。そしたら、子供から自分だけでなく母の事も侮辱させられた。
そして、私の視界にはある光景が映った。
それは、今まで殺してきた妖怪達からの罵倒の声。そして私の視界には、殺した筈の妖怪が居た。
今度は過呼吸になった。私は嫌悪感と憎悪を込めた叫びを上げながら、妖怪を殺した。しかし、殺した後に妖怪の姿が消えて、現れたのは妖怪と同じ殺され方をした子供だった。
私は走った。人間の子供を手に掛けた。博麗の巫女なのに、やってはならない事をした。
私は、子供を殺してしまった時から、既に壊れてしまったのだろう。もう今は復讐の為ではなく、ただ妖怪と、妖怪と仲良くする人間を見る度に見てしまう幻、それらを見た苦しみから逃れたいという、馬鹿な快楽目的で動いてしまう。
それが行けなかった。
八雲紫、八雲藍、そしてもう一人の賢者にして秘神である『魔多羅隠岐奈』に捕まった。戦ったけど無駄だった。
私はどうなるのか、大方予想は出来ていた。人里で多くの人や妖怪達に恨まれ、石を投げ付けられながら、業火に焼かれてしまうのだ。
だから、私の血を引く息子の為にも、この遺書を残しておきたい。八雲紫に檻へ閉じ込められた事で、私は狂気から解放された。八雲紫から遺書を渡された私は、遺書をこうして書いている。
息子の『道尊』。どうかこの遺書を見てほしい。私の記録が綴られたこの巻物と共に、私の事を知って欲しい。
私はもう長く生きられません。
私はこの命と引き換えに、息子へ私の本当の願いを託します。
何時か──妖怪達が────────、世界にしてください。
道尊。お願い───
(最後は血で濡れており、なんて書いてあるのか読めない)
──────────────────────
「・・・我が母よ。貴女の願い、この道尊が叶えて差し上げます」
道尊はボロボロになり、焼け焦げた皮膚や衣服のまま、洞窟の中を進んでいた。洞窟は複雑な構造をしているが、奥にある祠へ辿り着く手順は道尊のみが知っている。
奥に封印されているのは、かつて長岡京を滅ぼした罪を兄である桓武天皇に着せられ、不遇の死を遂げた哀しき者。軈てその魂は怨霊となり、帝の親族を次々と呪い殺し、疫病を流行らせ、淀川を氾濫させ、都全体に雷を落とした。封印されても尚、帝の子を呪い殺す程に強かった。
そんな哀しき男『早良親王』の怨霊が封印されているのだ。
「母よ。貴女様は今の幻想郷に失望していましょう。人間と妖の共存等、不快!真に不快!!母には地獄でしょうな!ですが、ご安心くだされ!」
道尊は祠の扉を開けた。
「そして、漸く時が到来されましたぞ!早良親王様!今宵、この道尊が貴男様の怨念を解き放ちまする!我が母とこの道尊、そして早良親王様の強き怨念さえはあれば、この腐った幻想郷を全て!全て!全て!未来永劫に続く闇の世界に出来ますぞ!幻想郷を、全て滅ぼそうではありませんか!」
道尊は祠へ入っていく。その手に宝玉と、紫色に輝く邪悪な細胞を挿れた注射器を持ちながら。
最悪の異変が、今、起きようとしていた。
此処でネタバレします。此から出すのは、戀鬼です。コスモスやオーブの戀鬼も強かったですが、もし早良親王が戀鬼になったら、きっと歴代最強の戀鬼が産まれると思いますよ。
しかも、この組み合わせ。
早良親王+道尊+二代目博麗の巫女の怨念(?)×とある邪悪な細胞=戀鬼(歴代最強)
こんな感じです。何この悪夢・・・。