無縁塚にやって来たチルノと文。すると、其処には既に二名の先客が居た。
「ん?あっ、文屋の文に氷精のチルノじゃん」
「はたて君から話を聞いて興味が湧いてね。僕は朱鷺子と一緒に様子を見に来たんだよ」
其処に居たのは、『香霖堂』の店主である森近霖之助と、彼の店によく来ている妖怪『朱鷺子』であった。
「おやおや、霖之助さんに朱鷺子さんではないですか?デートですか?」
「何でそうなるんだい?」
「霖之助と私はそんな関係じゃないよ。私にとっては弟みたいなもんだよ」
「朱鷺子も何を言ってるんだい」
霖之助にツッコミを入れられても、朱鷺子は「にしし」と笑うだけである。
「それより、こーりんととっきーは何をしてるんだ?」
“こーりん”とは霖之助の事だ。“とっきー”は朱鷺子の事である。
「無縁塚には外の世界から流れ込んで来る物があるからね。商人としての血が騒ぐんだよ。僕の店のラインナップが増えるし、時々だけど客足も増える。一石二鳥なんだ」
「まあ外の世界から流れ込んで来た物だから、誰に拾われても文句は言えないからね。で、私は霖之助の手伝いに来たんだよ」
「朱鷺子は僕を手伝ってくれるからね。ホントに僕に姉が居たら、きっとこんな感じなんだろうなって思うよ」
「人の恋心に気付きながら答えようとしないけどね」
「余計な事は言わないでくれるかい?」
「へーい」
「全く・・・で、チルノ君に文君、改めて訊くけど君達はどうして此処に?」
霖之助がチルノと文に尋ねる。
「アタイ達は、この写真の機龍みたいなロボットを探しに来たんだ。無縁塚にあるんじゃないかと思って、文と来たんだぞ」
チルノが霖之助と朱鷺子に写真を見せる。
「なんだか恐竜みたいだね。でも、あちこち壊れてるようにも見えるよ」
「待って霖之助。これ、私見たかも。かなり大きかったから店にも入らないだろうと思って黙ってたけど」
「何だって!?朱鷺子、それは言って欲しかったよ!」
「悪かったよ。相変わらず現金だね」
霖之助が目を輝かせながら朱鷺子の肩を掴む。
「おおーっ!何処で見たんだ!?」
「あやややや!此は素晴らしい記事が書けそうです!はたても勿体無い事をしたわねぇ!こんな大スクープを私に手渡すなんて!」
「・・・」
チルノは、はたてにあまり会ってる訳ではないが、それでも文が認める記者である事は解る。しかし、文が認めるはたてがこんな大きなスクープを文に渡すのは可笑しいと思った。つまり、はたては同じ位、又はそれ以上のスクープを見つけたのだろうと、チルノは予測した。
(この写真以上のスクープって何だろ?外の世界にでも行ったのかな?確かに外の世界の情報は気になるからね。でも狡いよねそういうの)
「それでとっきー、ロボットの所へ案内してくれる?」
「良いよ。此方だよ」
朱鷺子が三人を案内する。歩いて数分が経過した時、ロボットの元へ辿り着いた。
「此れだよ。これこれ」
朱鷺子に案内された場所にあった物、それは横向きに倒れる巨大な機械の怪物だった。手は四本の指で構成され、関節が丸い物で出来ている。板状の背鰭を背中に多数生やし、尻尾の先は鋭い突起物が複数付いたアンカードリルとなっている。
「此は、メカゴジラだね。大手テクノロジー企業『エイペックスサイバネティクス』がギドラの頭部を利用して、ゴジラというタイタンを模して建造したバイオメカだね。以前はギドラの頭部を利用した遠隔操作だったんだけど、地球のエネルギーを受けたせいでギドラの自我が芽生えて暴走したようだよ」
「そっかぁ。機龍と似てるんだね」
チルノは思い出す。機龍の記憶を。かつて機龍は、ゴジラの咆哮を聞いた瞬間、ゴジラの遺伝子を利用していた為に自我が芽生えて、エネルギーが切れるまで暴走してしまった。このメカゴジラも、似たような感じで暴走してしまったのだ。
「同情はしない方が良い。ギドラは地球を侵略する為にやって来た邪悪な宇宙生命体だよ。メカゴジラに宿った自我は、ソイツの自我その物なんだ」
「そうなんだな」
「こんなもの造っちゃうなんて、外の世界の人間って案外馬鹿なのかな」
「朱鷺子、それは言わない方が良い」
「あやや~。ですが、此れが妖精達が興奮し始めた原因ですか・・・ん?」
文は空を見上げた。その瞬間、空からある物が勢いよく降りてきたのだ。歪な円盤の形をした飛行物体だ。一つではなく、八つも現れた。更に再びスフィアが現れ、大群となって押し寄せてくる。
「あれは、スフィアですか!?」
「えっ!?それって前に幻想郷に来た!?」
チルノも上空を見上げた。しかし、八つのスフィアがメカゴジラの元へ向かって降りてきた。
「させないよ!」
朱鷺子が片腕を振るう。その瞬間、強い風が吹き荒れてスフィアを吹き飛ばした。
「グエバッサーを宿した私の風、受けてみなよ!」
そして、朱鷺子は姿を変える。霊夢や麟のような脇を露出した巫女の服装だが、袖は大きな翼となっていた。赤と白のデザインをしており、白い鱗のような甲冑を胴体に身に付けている。両足は鳥の脚のようなブーツを身に付けている。頭には鳥の頭のような帽子を被っている。
朱鷺子の宿した怪獣『グエバッサー』。魔王獣マガバッサーとは全く違う亜種の存在である怪獣だ。風を操る力は強力で、高いビルをも根こそぎ引っこ抜いて吹き飛ばす程である。
「チルノさん!」
「うん!スフィアはメカゴジラに取り憑く気だぞ!」
文とチルノもそれぞれ怪獣娘形態となる。
「このメカゴジラに取り憑かせたら駄目だよ!取り憑かれたら、もっと最悪な出来事が起きる!」
霖之助はその様子を見守るしか無かった。多くの幻想郷の住人が怪獣を宿す中、自分だけは怪獣を宿していないからだ。
しかし、ならば自分に出来るのは、近付いてきたスフィアを迎撃する事。自分もそれなりに戦える。スフィアを斬って追い払う事は出来る。
『霖之助!霖之助!』
「・・・えっ?」
突然、霖之助を呼ぶ声が聞こえる。スフィアと戦っている三人からではない。
『霖之助!今向かう!』
「やっぱり、遠くから聞こえる!でも誰が・・・えっ?」
それは空からやって来た。スフィアとは違う、赤い光の玉。それは空からスフィアやチルノ、文に朱鷺子の元を掻い潜って、霖之助を覆い被さる。
「う、うわっ!?」
その瞬間、霖之助は光に包まれた。
という訳で、霖之助も怪獣ではありませんが、ある存在に変身出来るようになります。