「では、今日の音楽の授業は此処まで。皆、良い演奏だったよ」
九月上旬。秋の季節に入り始めた頃。麟は生徒達に音楽の授業を教えて職員室に戻ろうとしていた。すると、生徒の一人であるフランが麟の女袴を引っ張る。
「ねぇねぇ、麟先生~。今度の日曜日に紅魔館へ来てくれる?お姉様が麟先生に日頃のお礼がしたいんだって。これ、招待状」
「分かったよ。ありがとね、フランちゃん」
「うん♥️えへへ♥️」
フランは麟に招待状を渡した。招待状を受け取った麟はフランの頭を撫でると、フランは顔を真っ赤にしながら笑った。
そして、寺子屋の授業が全て終わり、下校時間になった。麟はフランを寺子屋の入口前で見送った。
「じゃーねー!麟先生!」
振り返ったフランは麟に手を振った後、翼をはためかせた後に空へ向かって飛んでいった。
「またねフランちゃん。あの子には気に入られちゃったなぁ」
麟は寺子屋の教師で達の中で二番目に人気だ。特にフランは、教師達の中では麟に一番なついている。なついてると言うより、恋をしてると言った所か。
麟は教師と生徒が恋をするなんて、ご法度だと思っている。しかし、フランの好意を無下にしたくない。寧ろ答えてやりたい。萃香からも好かれており、フランからもアタックされている。モテてしまって仕方無い。何故なら自分が可愛いから好かれるのだ。それは自分も解ってる事実だ。
しかし、麟は知らない。図々しくも親しみがあり、優しくて厳しいその性格のお陰で、麟を好いている者達が増えて行ってる事を。
「お疲れ様~麟」
「うわっ!?か、輝夜さん!?」
麟に背後から抱き締めてきたのは、麟と同じく寺子屋教師を勤める輝夜だ。彼女が担当するのは国語であり、その教え方の上手さや理解のしやすさは寺子屋随一であり、容姿も優れてる事から、寺子屋教師の中で最も人気のある教師となった。
しかし、麟を含めた幻想郷の住人は知っていた。輝夜はSMの極みであり、レズビアンでもあり、そして特に霊夢を愛し過ぎる変態である事を。しかし、子供や人妻、家族には手を出さず、その上相手を口説く時は真剣に口説く変な真面目さがある事を。
「もう!いきなり抱き着かないでください!」
「いやね~。私とキスした仲じゃない。美味しかったわよ。貴女のく・ち・び・る♥️」
「ッッ!は、恥ずかしいから止めてください!///」
麟は顔を真っ赤にする。輝夜にキスされた時、洗脳されたとはいえ気持ちよさが込み上げてきた。しかし、それを思い出す度に、喜びではなく恥ずかしさが心の奥から込み上げて来る。
「それより麟。霖之助の所に居た朱鷺子が、貴女の事を訪ねて来たわよ」
「霖之助さんが?」
「何やら渡したい物があるみたい。今日の夕方に香霖堂に来て欲しいって」
「は、はい」
自分に渡したい物とは何だろうか?麟は典型的な疑問を頭に浮かべた。幸いにも今日の仕事は後少しで終わりだ。
「ありがとう輝夜さん。教えてくれて」
「ふふっ。お礼に私とデートしてくれる?いえ、私が前にやったみたいに唇にキスしてくれたら───♥️」
「あ、いや結構です!!//////」
麟は輝夜の顔を直視出来ず、職員室に向かって早歩きで向かった。
輝夜は「あらあら、ふふっ」と笑う。
(あ、危なかった・・・輝夜さんったらあれでも真剣なんだから質が悪いよ!//////)
輝夜に落とされそうになった麟だが、鋼の精神で耐えた。
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教師間の会議が終わり、麟は寺子屋を出た後、香霖堂にやって来た。出入口の扉を開けて中に入り、中に居る人物を訪ねる。
「霖之助さん、朱鷺子ちゃん、ヒカリさん、来ましたよ」
「やあ麟。君を待ってたよ」
「ごめんね呼び出しちゃって。でも霖之助とヒカリが、どうしても麟に渡したい物があるんだってさ」
『君が冴月麟か。以前から思っていたが、確かに博麗霊夢その者だ。霊夢は魂と謎のエネルギーで体が出来ていたが、君は彼女の肉体その物か』
ヒカリは麟を見て、霊夢と同一人物である事を見抜いた。霊夢が霊力と龍神の加護を受けた魂で出来ており、霊夢の肉体を麟が持っている事も。
「流石はウルトラマンですね。それより、僕に渡したい物って何ですか?」
「ああっ、此れだよ」
麟は霖之助と向かい合うカウンターに近付くと、霖之助がカウンターの上にある物を置いた。それは、半月型の形をした装置であった。メダルも幾つかあり、その中には様々な生き物が写っている。
「此れはなんですか?」
『それは私が以前に開発したウルトラゼットライザーだが、霖之助と改造を重ねて別の装置へ変化させた』
「君の新たな力としてある為に、このライザーには君の宿す怪獣の名前を与えたんだ。その名も『ジラライザー』。そしてこの『ゲンソウメダル』を使う事で、君は様々な形態に変身する事が出来るようになる」
「す、凄い!本当に貰って良いんですか!?」
『ああっ、君の為に開発したのだからな』
麟はライザーとメダルを手にした。
「あ、お代です」
「いや、お代は良いよ」
「駄目。どんな関係でも、お金に関しては全く別。良いです?」
「全く、ホントに良いって言ってるのに・・・」
霖之助は渋々お金を受け取った。霖之助からすれば贈り物のつもりだったが、麟からすれば霖之助にただ働きさせたようなものだ。況してや霖之助は外の世界の道具を扱う店主。どんな関係であれ、関係ある人間に対して商品はタダなんて成立させてはならない。
「でもありがとう。霖之助さん、ヒカリさん、それに朱鷺子ちゃんもね」
「まあね~。霖之助とヒカリはこの店を離れる訳には行かないからね」
「朱鷺子ちゃんがこうして気を使ってくれるから、霖之助さんも商売が出来るんだね。ホントに朱鷺子ちゃんは、可愛くて気遣いの良いお姉さんだよ」
「っ!?あ、ありがとう・・・/////」
朱鷺子は麟に褒められた瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。更に、麟の顔を直視出来なくなる。
「じゃあ霖之助さん、ヒカリさん。僕は此れで」
「ああっ。修理してほしくなったら言ってね。料金は本当に要らないから」
「それは駄目だって!」
「ホントに良いのになぁ・・・」
『まあ良いではないか霖之助』
こうして麟は、新たな力を得た。この力をどう扱うのか、麟自身に掛かっている。
今日も幻想郷は平穏だ。モンスターバトルルールがある世界とは思えない位に。
しかし、平穏は何時も崩れ落ちてしまう。ある世界の者はこう言った。
“災厄は突然来るのではなく、前兆がある”と。
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妖怪の山の頂上。其処にある巨大な神社が現れた。建てられたのではない。まるで何処からか召喚されたように、突然姿を現したのだ。
「やっと入れたな。この世界なら、我々の信仰を集める事が出来るぞ。諏訪子」
無数の御柱の中でも、一際大きな柱の天辺に座る一人の女性。背中に輪の形となった注連縄を装着したその女性からは、圧倒的武人のオーラが放たれていた。一目で睨まれれば、あっという間に蹂躙される。まるで目の前に聳え立つ山脈のような、不動の威圧感を女性は放っていた。
「あははっ。此処に居るんだねぇ♥️ガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラガメラァ♥️それを宿してるのが博麗の巫女なんだ♥️どんな娘かなぁ♥️別嬪さんであって欲しいなぁ♥️欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい♥️」
危険な言葉を紡ぎ続ける、目を持ったカエルのような帽子を被る小柄な少女。女性と違うのは、美しき愛らしさと吐き気を催す不気味さ、言い知れぬ恐怖と沸き立つ好奇心を引き立てる雰囲気を纏っている。まるで、カリスマ溢れる道化師のようだ。
「諏訪子。私達が幻想郷の支配権を握れば博麗の巫女はお前の物になる。その時に好きにすれば良いだろ?」
「・・・うん、そうだね♥️ガメラァガメラァ♥️それを宿した女の子♥️私がずっと愛して上げるからね♥️他の女の物になってる?なら私が助けて上げる♥️此からはずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずうううううっと一緒だよ一緒一緒一緒一緒一緒一緒♥️早く会いたいなぁ♥️」
「神奈子様。諏訪子様」
そして姿を現したのは、緑色の長髪に揉み上げには蛇を巻き付けた美しい少女。
「早苗、お前は博麗神社を含めた幻想郷中の勢力に、我等守矢神社が幻想郷の支配権を握る事を伝えよ」
「それと、博麗の巫女は必ず来るようにね♥️」
「はい。神奈子様、諏訪子様。御心のままに♥️」
早苗と呼ばれた少女は深々と頭を下げる。二柱の神の決定に従う事を、喜びとしているが為に。
神奈子の背後には三つの首を生やす四つ足のドラゴンが、諏訪子の背後には四つの触手を持つ異形が、そして早苗の背後には巨大なロボットが、それぞれ幻となって出現した。
次回から、風神録編に入ります。