その頃、睦美は無縁塚にやって来て居た。途中で木々が途切れて移動が難しくなった為、与えられたアブソリューティアンの力で空を飛んでいた。
ゴマ夫さんから取り出した双眼鏡で周囲を見渡し、漸く目標の人物を発見する。リグルは今、無縁塚にやって来て無数のソルジャー達と共に、無縁塚に落ちているガラクタを漁っていた。
「ふぅ。やっと見つけたよ」
睦美はリグルの傍に降り立つ。ソルジャー達は睦美を見つけると一斉に襲い掛かるが、リグルが制止した。
「皆止めて」
「リグル・ナイトバグさんですね?織部睦美です。貴女に異変解決のお願いに来ました」
「私に?」
「はい。妖怪の山に出来た神様の一人である洩矢諏訪子。彼女に唯一対抗出来る怪獣を宿しているのが貴女と聞きました。貴女に、異変解決のお手伝いをしてほしいのです」
「それって、レギオンの事?」
リグルが宿した怪獣。それは、地球全てにとって絶対の天敵であり、自衛隊の一斉砲撃すら通用しなかった頑丈な肉体を持つ。更にリグルの記憶では、ガメラだけでなくイリスすらも圧倒したのである。そのイリスがもし地球上の生命体を喰い尽くした上でレギオンに挑めば、結果は変わっていたかもしれないが、それでも互角を強いられるのは間違いないだろう。
「レギオンは、イリスが唯一遺伝子情報を取り込めない相手です。しかし、イリスを宿す洩矢諏訪子は祟り神の頂点に立つ土着神。レギオンを宿す貴女は蛍の妖怪。八百万の神と虫の妖怪では圧倒的な力の開きがあるかもしれません。ですが、宇宙生物を宿した以上、貴女は少なくとも洩矢諏訪子にとっては天敵でしょう。お願いします。力を貸して───」
「うん、良いよ」
「・・・えっ?」
「君、なんだか他人とは思えないんだよね。何だか、近くで虫と寄り添った感じがするんだよ」
「・・・やはりリグルさんは──」
「リグルで良いよ。変に敬語じゃなくて良いからね。此から宜しくね。睦美」
「っ!うん、リグルちゃん!それと、敬語は元からです!」
「あっ、そうなんだ」
睦美とリグルは握手を交わす。その手から感じた温もりから、睦美はリグルから『蟲の王』としての素質を感じ取った。宿したモンスターの本能故か、全ての蟲を統べる力を宿していると、直感で解るのだ。
(もしリグルちゃんがあの巨蟲達の島に・・・いえ全ての昆虫怪獣達と出会わせたら・・・リグルちゃんはもしかしたら・・・)
全ての昆虫怪獣、モンスターの目の前に出したら、リグルが進化するのではないのか?この世界には信仰が存在する。それは、王を敬う気持ちでも同じ事。もし、リグルが全ての蟲達の信仰を受け止める事が出来たら?それはきっと、この世全ての生き物を超越した存在となれるのではないだろうか?
睦美はそう考えた。実際リグルの言葉を聞いた睦美は、彼女に付き従う事を良しとしたのだ。
リグルがただの野良妖怪で良いのか?いいや、そんな筈が無い。
虫とは、忌み嫌う者が多いイメージはあるが、忌み嫌うのは人間のみだ。動物達は捕食対象として見るものの、嫌ってるかと言われればそうではない。でなければ虫を食べる生き物なんて、この世から居なくなってる筈だ。
虫こそ世界の裏の支配者と呼べる。虫が居なくなれば動物は虫を食べて生きられなくなるし、植物の受粉も不可能になる。人間の食べ物の殆どが消えてしまい、食糧難の時代が訪れてしまう。結果、世界は滅びてしまう。正に虫は世界を実質支配する存在であり、世界を保ってくれている大切な存在でもあるのだ。
そしてリグルは、その蟲達の頂点に立つ存在。睦美はリグルに是非とも蟲達の王として君臨してほしい。
(ヘカーティアさんに相談してみますか。この地球、いや宇宙、いやいっその事あの島の蟲達に加えてありとあらゆる時空から・・・ふふふっ!ふふふふふっ!)
「あはははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!」
「む、睦美、どうしたの?」
「・・・あっいえ、何でも・・・//////」
リグルが王として君臨した姿を妄想し、思わず笑ってしまった睦美。
「取り敢えず、移動します。リグルちゃんは私に掴まってて」
「うん。空を飛ぶの?」
「ううん。ハイゼンベルクさんから頼まれてるんだよ。使えそうな人工物、特に金属物を集めて欲しいって。そして此処には丁度良い人工物があります。そして私にヘカーティアさんが与えてくれたモンスター『アトラル・カ』の建築能力で形成出来る『アトラル・ネセト』に乗ります!」
睦美は両手から無数の糸を、無縁塚に散らばる様々な人工物にくっ付け始めた。冷蔵庫や台所、ヤカンに鉄骨、古い自動車やヴィクトリア時代の馬車、宇宙に散らばったスペースデブリ、更には何かの宇宙船と呼べる円盤等々、ガラクタから乗り物までかき集めて、睦美とリグル自身を包み込んでいく。
軈てその姿は、一体の巨大な怪獣へと姿を変えた。四足歩行の巨大な竜のようであり、鉄骨で構成された翼は円盤が取り付けられている。また、その頭部は一つではなく複数に分かれており、その内の一体には巨大な槍が搭載されている。
「足に自動車や自転車を使用し、円盤付きの翼も形成したから、即興ではありますがアトラル・ネセトではなく『アトラル・ヒドラ』と名付けましょう。名前の由来はギリシャ神話の怪物ですが」
「ギリシャ神話?」
「あっ、この世界には無いんでしたね。まあ飛ぶ間に説明します。行きます!」
睦美は糸で構成した操縦桿を握り締めて、その近くにあるレバーを押す。その瞬間、翼の円盤が起動し、アトラル・ヒドラを浮かせた。150メートルもある巨大な要塞竜をも浮かせる円盤の科学技術には驚きを隠せない睦美とリグル。睦美にとっても予想外だったが、此は有難い。
睦美はアトラル・ヒドラにアブソリューティアンの力を流し込み、妖怪の山に向かってアトラル・ヒドラを羽ばたかせるのだった。
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その頃、霊夢、魔理沙、ユウコの三人はどうなったのかと言うと?
「何よこの竜巻はぁーー!!?」
「吹き飛ばされるー!?」
『風力測定不能ですぅ!体がバラバラになっちゃいますよぉー!!』
無数の竜巻に巻き込まれて苦戦していた。その竜巻の中心に居る、朱鷺子より青い翼を腕から生やした雛人形のようなゴスロリの少女に苦戦していたのだった。
オリジナル怪獣(というかモンスター)図鑑
アトラル・ヒドラ
体長:150メートル
体重:8万トン
アトラル・ネセトの上位互換である姿。自動車を足に付けて機動力を増している上に、翼には何処の星から来たのか宇宙船もあり、それを起動する事で空も飛べる仕組み。操縦は睦美次第であり、やり方次第で強くも弱くもなる。頭は無数の首に分かれており、口からは電撃光線を放てる。