リア充という単語を聞いたら、一体どういう存在を思い浮かべるだろうか? 恐らく大多数を占めるのがカップルとかの事を指すと答える勢力だ。俺もその勢力だしな。
リア充という単語は、リアルが充実しているの略で、それは恋人がいるいない関係なしに、リアル(現実)が充実していればそれだけでリア充だ。だから、リア充リア充と怨嗟の声を撒き散らす奴らも、高確率でリア充だったりするのかも知れない。
まぁそんなことはどうだっていい。正しい意味とかで考えていたら範囲が広すぎるから、今回は利便上、リア充を交際関係にある男女とする。
そのリア充に、俺は今一歩近づいているのかもしれない。テーブルの向こう側にいる、APP推定17越えの(魔法)少女達を見ればそう思うだろう。おまけに、そのうちの一人が俺をどういうわけか信頼の目で見ているのだから、勘違いだとしても仕方がないだろう。
というか、この構図を見たらもうアレでは? 合コンでは? 何? 来ちゃうの俺にも、春って奴が。マジかテンション上がるわー。これで俺もリア充の仲間入りかーやったー。
「一条、アホな考えは早く捨てたほうがいいんじゃないかな?」
うるさい。しかし、アホな考えであることは否定できないので大人しく先程の考えは捨てておくことにした。
「とりあえず、まずは料理食べちゃおうか」
「そうですね。いただきます」
目の前に陳列されているのはラーメン、青椒肉絲、麻婆豆腐と定番の中華料理達。そのいずれもが美味しそうな見た目をしており、食欲を誘う香りで俺を誘惑してくる。
いただきます、とボソッと呟いてからレンゲを取り、自分の目の前に置かれている麻婆豆腐の皿からひとすくい、そしてそれを口に含む。
口の中に滑らかな豆腐の舌触りと、ピリッと辛い麻婆の味が大変好ましく、一口、また一口と食べ進んでいく。レンゲを動かす手が止まらなくなる程には美味い。
成る程、これが万々歳の実力か。俺は俺たちと年齢ががそう変わらないように見える少女が作った料理に舌鼓を打った。
チラリと他の連中を見ると、どうやら他の連中も大体は同じような感想を抱いているらしい。
「それで、どうだった? 万々歳の料理は」
「これって、正直な感想を言っていいんですか?」
「うん! 正直に言っちゃって!」
暁と少女──環いろはは一度眼を合わせてから頷くと、暁が口を開いた。
「この青椒肉絲……味はそこそこいいんですけど、自分には濃すぎますね。あとは単純にピーマンの切り方が大きすぎです。まぁ、大体49点くらいですね」
「やっぱり普通か! しかも微妙だよぅ! い、いろはちゃんは?」
「えっと、50店、ですね」
「これも普通!? 果たして、その理由は!?」
「スープが濃いっていうのがポイントですね……それが強すぎて具材の味がしないというか」
「それだけじゃ20点だよぅ……」
「あー、その……まぁ、はい……」
「感想を言ってよ!?」
「ヒェッ! ……51点……です」
「ぐっ! まさかの全滅!」
「あの、えっと、その、はい……」
「一条、僕にLINEで感想送って。僕が読むから」
すいませんねコミュ障で……こちとら対人経験をドブに投げ捨てまくってるんだよ畜生……
「ほうほう、『味は好みだが濃すぎ。豆腐が大きめに切られてるっていうのがちょっと……』ですって。味が濃いのが原因では?」
「うう、お爺ちゃんが作ってた時は評判が良かったのになぁ……」
「元気出してください」
「そうですよ、決して味が悪いわけじゃ無いんですから。ただ普通ってだけで」
「ガハッ!」
あ、暁がトドメ刺した。多分気にしてるであろう事を敢えて言ってトドメ刺すとかさすが暁だな。ロリ以外には容赦がねぇ。いやロリにも割と容赦がないけども。
てか、なんで俺ら今日ここに集まったんだっけか……え? 何合コン? いや、絶対ないわ。そもそも俺が合コンになったら一瞬で終わるぞ。どんな意味かは敢えて言わないが。
「それじゃあ本題に入ろうかな。解兎とやちよさんは仕事だからいないっていうのが気になるけど、まぁ仕方がないよね」
「はい。私の記憶と、一条さんとの関係についてですよね?」
「うん。君が思い出した範囲でいいから教えてほしい」
関係、と言われても全然ピンとこない。正直俺はこの環いろはと会話した記憶もなければ、出会った記憶もない。彼女はつい先日まで記憶を失っていた、それを最近になって思い出したという事らしいが、その思い出した記憶の中におれがいたとのことだ。
もういうわけか忘れていた記憶、これは結構怪しいが、かと言って、それを否定する事は俺にはできないかも知れない。
そもそもの話、俺は転生者、というものだ。前世の記憶と知識を引き継ぎ、強くてニューゲーム状態で第二の生を謳歌している存在というやつだ。今の世界では異世界に転生する奴が流行っているらしいが、それに近いんじゃないか? 知らんけど。
俺はこの転生者というアドバンテージを、知識面だけでしかいかせていない。確かにそれだけで日常生活には不便しないが、時たまふと思ってしまうのだ。「あれ? 前世の自分ってどんな奴だったっけ?」と。思ってしまうのだ。
いやいや、最初から覚えたないだけだろ? という声も上がるかも知れないが、この記憶、俺は
こんな感じで、どういうわけか記憶を失ったりすることは俺にもある。どっかのウニみたいな頭してる主人公とかも記憶を失ったりするから間違い無いだろう。おいそこ、認知とか言わない。俺はまだ高1だぞ。
何? これだけならこの環いろはとかいう淫ピと関係ないジャマイカだって? というかものが違うだって? ……返す言葉がねぇな。うん。
「──というのが、私たちの関係でした」
「成る程……でも、一条の様子を見ると、一条にはその記憶がないみたいだね」
「んー? いろはちゃんと同じく忘れちゃっているのかな?」
「或いはその記憶が偽物だという考え方もできますね。一条は何か感じたこととかないの?」
やべ、考え事していたら話聞くの忘れてた。ていうかいつの間にか話が終わって、俺に感想求められてるし……やっべーななんで答えようかなー……まぁ、適当にそれらしい事をでっち上げてこの場から退散するか。
「……ま、今のところは謎だらけだな。少なくとも、まだ俺は信用できない」
「そうですか……」
「気を落とさないで、大体この帰宅厨が悪いんだから」
「や、俺が悪いのかよ……」
なんでだよ……俺は悪くねぇだろ。そもそも俺は本当に覚えてないというか知らないだけだっての。過去にあってるかどうかはともかく、今の俺はこいつのことなんて知らないぞ。
「あれ? いろはちゃんって、ちっちゃいキュウべぇ……モキュちゃんだっけ? それと接触して思い出したんだよね?」
「あ、はい。あの時はいきなりでした」
「ならさ、モキュちゃんを輝夜君に近づけたらいいんじゃないかな?」
「あなたが天才でしたか」
「最強だからね!」
モキュちゃん、という謎の単語を聞くと、俺の体はビクッと震え、次の瞬間には鞄から財布を取り出して、その中に入ってある
このまま俺はこの場から撤退しなければならないという謎の意思に突き動かされていたが、それを止める声が俺の耳に入ってきた。声の主はこの場にいる人間のものではなかった。では何者か? 答えは……
「モキュ! モキュモッキュ!」
「ナズェミテルンディス!」
「モキュッ!?」
「一条!?」「モキュちゃん!?」
そう、白い謎の小動物だ。……いや待ってくれよ、これは仕方ないんだ。いきなり背後から謎の声が聞こえてきたら誰だって顔面を鷲掴みにしてどこかへと投げたくなるだろう? 不可抗力なんだ。そうに違いない。そうに違いないんだ。
「ああ怖かった……」
「その様子を見ると、どうやら記憶の方に変化はないようだね」
「そりゃそうだろ。これで記憶を思い出したらこいつは一体何者なん──」
──瞬間、俺の脳内に溢れ出した
嗚呼……そうだったのか。俺は、俺たちは過去に知り合っていて、堅い絆で結ばれていた親友だったんだな……そうだろ?
ようやく思い出すことができた……なるほど、これが答えだったか。感謝してもしきれないし、ひたすら謝ることしか、今の俺には出来ねぇよ。
「そういうことだったのか……」
「思い出したの?」
「嗚呼……完全にな。俺は過去に出会っていたんだ……コイツとな!」
「モキュ?」
「「「ゑ?」」」
いつの間にか近くにきていた白い奴を持ち上げる、高い高いをしてやる。はは、確かコイツはこんな事をしてやれば喜んでいた筈だ! ああもう可愛い奴め!
「……ごめんね二人とも。どうやら一条はちょっと、その……切れてるみたい。薬が」
「あはははーって、やっぱり違うな」
「モキュッ!?」
危ねぇ危ねぇ……危うくあいつの精神操作に敗れるところだった……おのれ白いの。隙を晒したらすぐに攻撃してくるとは侮れんな。
しかし、だ。俺に対してこんな攻撃を仕掛けてくるくらいだ、覚悟は済んでいるだろうな? たとえ泣いて謝ったとしても絶対に許さないが。絶対にだ。
「オレァクサムヲムッコロス!」
「モキュ!?」
「ドゥーシテワガッテクレナインダァ!」
「モキュッ!?」
「な!? アレはオンドゥル一人二役キャッチボール!」
「何それ!?」
「ボールを投げて、投げたホールが空中にある間に投げた先に向かいそれを取って投げる。その作業を延々と繰り返すキャッチボールで、その間オンドゥル語という不可解な言語を発しなければいけない技だよ! 解兎でギリギリだっていうのに、あんなに早く、それでいて店のテーブルとかに一切触れずにやっている! 常人にできる技じゃない! やはり一条は変態だった!」
「あの、今はお客さんがいないからいいけど、それって営業妨害になるんじゃ……」
「あ、確かに」
「いろはさんの言った通り、普通に店の邪魔になってるね。他にお客さんがいないからいいけど」
「いや、良くはないよ!?」
一通り投げ終わったから、最後に思いっきり地面に叩きつける。しかしこの白いのは相当頑丈らしく、こんだけやったってのに傷一つない。おいおい、今時のギャグ漫画ですらもっとダメージを負うってのに。インフレしたバトル漫画の敵キャラか何かかよコイツは。
「……ふぅ、スッとしたぜ」
「いや、スッとしたぜじゃないよ!? はぁ、一体どうしたっていうのさ」
「唐突にコイツと幸せな学園生活ってやつを過ごした記憶が流れ出したな。本来は存在しないはずの、よくわからん記憶がな。ちょっと怖かったからついやってしまった。反省も後悔もしていない」
「いや、反省はしたほうがいいんじゃないかな?」
「嫌です」
「か、固い意志を感じるよ。ポイント10倍の時のししょーなみの決意を感じるよ」
その後は数分間グダグダと他愛のない会話が続いたので割愛。好きな曲は何かだとかプリ○ュアで一番好きなのは誰かだとか結の近況はどうだとか好きな漫画は何かだとか最近学校はどうだだとか、まぁそんな感じの世間話的な何かだ。深く気にすることではないだろう。ぶっちゃけ中身までは覚えてないし。
「ひとまずこの時点での話を纏めると、一条にはいろはさんと出会った記憶はなくて、いろはさんの記憶が正しいのなら、一条も記憶を失っているっていうことだね」
「付け加えるなら、暁はきのこ派とかいう少数派の敗北者だということが分かったな」
「はぁ、はぁ、敗北者? 取り消してよ……今の言葉!」
「取り消せ? 断じて取り消すつもりはない」
「あの、また話が脱線してませんか?」
「ごめんごめん。僕達の悪い癖なんだ」
俺たちがこうやって話を脱線させていることもあり、会話がグダグダとしている感じがあるが、結果として分かったことは“なんの成果も得られませんでした”ってことか?
俺の記憶が正しいのなら、いろは──本人の要望によりそう呼ぶこととなった──の記憶は偽物、植え付けられたものであるということになる。しかしその逆、俺がその記憶を忘れていて、いろはの記憶が真実だとした場合、俺は自分の過去ですら信用できなくなるってことだ。
俺としては前者であって欲しいが、もし後者だったらという事を考えると恐ろしいな。人一人だけならともかく、俺やいろは含めた数人の記憶に干渉している存在があるというのだから……ま、そんなことできる奴いないだろ。
「ま、とりあえずこれで話も一区切りついたし、そろそろ解散するか。今日みたいな話ならいつでも……とは言えないが、たまには聞いてやる」
「お願いします。できれば記憶を思い出して欲しいんですけど……」
「それが正しい保障がねぇからな……幸い暁が協力してくれるって言ってるんだろ? ならまあいつか決着つくだろ」
「ふっふっふっ! 探している子の特徴は覚えたから、僕のセンサーで捉えてみせるよ!」
「気を付けろいろは、仮にういって娘が見つかったらコイツからすぐに遠ざけろ」
「は、はい」
「いろはちゃん、私も手伝うからね!」
「鶴乃ちゃん、ありがとう!」
うっ、眩しい……これが友情ってやつか? かーっ、若いってのはいいね、こうやって純粋に信頼関係を築いてすぐに和気藹々とするんだから。
ま、だとしたら手助けしない部外者はとっととお暇するとしますか。代金を財布から取り出して会計を済ませて外に出る。その時だった、他愛のない話であった筈だが、その中の話題の一つを唐突に思い出し、同時にその話題について違和感を感じた。
「そういや、結って誰のことだったんだろうな」
◆
「よぉ、元気にしてるか?」
「お陰様でね。そっちの調子は?」
「少々厄介な案件が出来たってこと以外はなんら変わりねぇよ。ま、これでテメェの支援をやめるとかってことはねぇから安心しとけ」
「そう……ならいいわ。“今回”もまた頼らせてもらうわよ」
「ああ、任せろ。にしてもあれだ、“今回”はやけにイレギュラーな展開が多いな」
「神浜市の問題、壁を抜ける変態、男の魔法少女、それだけならともかく、巴マミが神浜市へと調査へ向かったこと。この時点でいつもの“ループ”とはかけ離れてるわね」
「何より問題なのが、テメェが“二人”いるってことだ。どういうわけかしらねぇけどな」
「……お陰でまどかに直接接触しにくくなったわね。少なくともアレは私の偽物ではなく、間違いなく過去の私よ」
「そら見ればわかる。他の問題は、今回のまどかは既に魔法少女だったってことだ」
「ループの時点で契約が完了していた。それを知った時は軽く諦めを覚えたものね……」
「だが、いきなり諦めるってわけにはいかねぇからな。全く、“今回”は本当にイレギュラー続きだな」
「だからこそ、今回でこのループが終わるかもしれない。──“奴”を倒せるかもしれない」
「だな。今度こそ奴を倒して掴み取ってやるか。テメェの希望を、“ 暁美ほむらが願った未来”をな」
●今回のお話
1クールに一回はあるようなお話会。尚ギリ未成年さんと刀鍛冶さんは不在の模様。話し合ったことは一条及びいろはの過去だったり暁くんのスリーサイズだったり50点の秘訣だったりと、割と脱線したりもしたそうな。
●暁美ほむら
どういうわけか二人いるらしい。暁美ほむらが二人、来るぞまどか!
一条君たちの設定いる?
-
いる
-
いらない
-
そんなことよりおうどんたべたい(いる)