私って、そういえばこの学校の生徒会長じゃん。
この事実に気づいたのは、2年生になってからすぐのことでした。いや自分が生徒会長ということ自体はとっくに認識していたんですけど。
そう、そうなんです。生徒会長。うん。いわばこの学校のエンペラー。せっかくこんな都合のよくて素晴らしい特権があるんだから、もうちょいその権力を使ったり自由奔放に振る舞ったりしてもいいと思うんですよね、私。
うーむ。どうしましょうか。
権力を盾に好き放題やるといっても、なかなかいい案が浮かびませんね……
あ。
よし、思いついた。
この学校の長として、下々の一般生徒がちゃんと楽しい学校生活を送れているかどうかパトロールしてみることにしましょう。
さあ、ここで問題です。
1限の授業を受けながら朝の日差しを受け、アンニュイに窓の外を見つめて、たった今、薄くニコッと笑い今日1日のスケジュールを決めた亜麻色の綺麗な髪を持つ超絶美少女は、一体誰でしょう?
そう、私ですっっ♡
* * *
1限が終わりました。少し早く授業が終わってくれたお陰で短い休憩時間に貴重な追加タイムが訪れます。
そうだなあ、、せっかくだから普段は行けないところに行きたいなあ……
うーん……とりあえずは、、あそこに行ってみよう。
思い立つと私は歩きます。歩きます。歩きます。
目的地は、何しろ学年も違うわけで、結構時間がかかるところだし用がなければ向かうことなんでまずない場所なんですが……
その場所とは、最近優しくなった元氷の女王様がいるあの教室です。
私はルンルン気分で、3年生の国際教養科・J組に向かいました。
* * *
「ゆっきのせ〜んぱいっ♡ 」
「あら、一色さん……どうしたのかしら」
やっぱり最近柔らかくなった雪乃先輩が、少し驚きながらも優しい微笑を浮かべて私を迎えてくれました。
いきなりの年下美少女生徒会長のご来訪に、雪乃先輩以外の先輩方にはそれなりの動揺が広がっているようです。
まあ無理もないですね。私、美少女ですし。
3年J組は、どうやら1限が体育の授業だったみたいです。先輩方は体育着から制服に着替えている途中だったみたいですね。ちなみに教室を使っているのは女子のみだったので、少ない男子だけ他の場所に追いやられているんですかね。まあどーでもいいですけど。
「雪乃先輩のとこに遊びにきちゃいました! 」
明るく可愛く私は雪乃先輩に近寄ります。すると雪乃先輩は少しびっくりした後に、テレテレし始めました。
「あ、あなたも2限の授業があるでしょうに……」
「それでも、雪乃先輩に会いにきたかったんです! 」
「んなっ……何を言い出すのかしらこの後輩は……あざとい」
「あざとくないですぅ! ……だって、雪乃先輩は私の尊敬する先輩で、、無性に甘えたい時もあるんですから」
雪乃先輩はその私の言葉を聞くと、顔を赤らめて視線を下に落として恥じらいの様子を見せます。全く、ちょっと前までの『雪ノ下先輩』だったら私の魂胆を見抜こうとつまんない反応をしていたであろうに、色恋はここまで人をポンコツにするんですね。
「やっぱり雪乃先輩って肌綺麗ですね〜、、うわ、白! ってスベスベ! くびれヤバ! ……つーか本当にスタイル良すぎてちょっと引く……」
おっと、いろはちゃんのスイート甘々ボイスが最後だけ見る影もなかったですけど、まあ大丈夫ですよね?
「ちょ、、ちょっと……一色さん恥ずかしいからそんなに触らないで……あっ」
あ全然大丈夫でした雪乃先輩めっちゃ恥ずかしがってます。この手の攻撃は結衣先輩で慣れっこかと思ってましたが、全然タジタジになりますね雪乃先輩。っていうか最後色っぽい声出したな雪乃先輩。
「どうしたんですか雪乃先輩? なんか色っぽい声出ましたけど」
雪乃先輩は顔を真っ赤に染めてプルプルしています。私のことを睨んでいるつもりなのかもしれませんが、普通に可愛いです。これ写真に撮ったらせんぱいいくらで買うんだろうって思考が出てくるくらいに。
すると雪乃先輩は真っ赤になっているまま私にボソボソと呟きます。
「だ、だって……あなた、、今私の胸……直で触ったじゃない」
あ、言い忘れてましたが、私は雪乃先輩がブラを取った段階で教室に乱入したために今雪乃先輩は上半身裸です。さっきから雪乃先輩の態度が柔らかかったり妙に顔が赤いのはそういう意味もあるのかもしれませんね。
ん〜でも、胸? 当たった?
「あれ? 胸なんて当たりました? 」
あ、やった。
そう本能が告げたのは発言の直後でした。
さっきまで優しい陽だまりの中のような空気だったのに、段々教室に吹雪が吹いてきています。周りにいるお姉様方も『お前言いやがったなっ!? 』的な目線を私に向けてきていて、明らかに私はやっちまってしまったようです。
さあ、悪い時には焦ってどんどん変なことをしてしまうのが人間の性なのでしょうね。
たまたま雪乃先輩の机の上にあったブラに手が触れて、止せばいいのに私は焦りと純粋な驚きからかそのカップ表示を音読してしまいました。
「と、AAAカップ……? 」
周りのお姉様方の視線が諦めのそれに染まってしまったことを身をもって感じた時。
今度こそ私はえげつない身の危険を感じました。
即座に私は身を翻し、今年1番の俊敏性でスパっと教室からの離脱に成功します。
「じゃ、じゃあ雪乃先輩また会いましょう〜私2限に遅れちゃうから行かなきゃあー!! 」
さあ問題です。
身の危険を素早く察知し、亜麻色の髪を靡かせ風の如く去る美少女生徒会長は、一体誰でしょう?
そう、私、一色いろはなのでした。
「覚えていなさい。一色さん」