いろはの旅々   作:shushusf

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溜まっていたストレスからのいきなりの解放は人をおかしくする

 

 

「……っク……どうしてこんなに、手も足も出ないの」

 

 

 

 雪乃先輩は、ハルさん先輩に蹂躙されていました。

 結局、せんぱいを守りながら戦う雪乃先輩では遥か上位互換の姉には敵わないのか、割と最初の方でもう大勢は決していました。

 

 

 

「もう……実力差を考えないで私に挑むからだよ雪乃ちゃん。でも、彼を無事にここから逃したことだけは評価してあげる」

 

 

 

 

 屋上で息を切らしながら膝をつく雪乃先輩に、余裕さを崩さずハルさん先輩は歩き言います。

 その目には……欲望に忠実なハルさん先輩の狂気がハッキリと浮かんでいて……

 

 

 

 

「……も、う……ここまできたら、、我が姉ながら……呆れたと言う、、しか」

 

 

 

 

 その言葉を最後に雪乃先輩は倒れました。

 ……これ、結構やばいです。

 せんぱいがどこまで逃げているのか分かりませんが、今のハルさん先輩は授業中の教室であろうとも突撃していきかねない怖さがあります。

 自身の解き放たれた性欲に歯止めがかからず暴れ回る、悲しきモンスターがそこにはいました。

 

 

 

 

 はぁ。やだなぁもう。

 

 

 でも、ここは私の城なのです。私の領地でやりたい放題やられるのも、見過ごすことはできません。

 

 

 

 

「ちょっと待ってください。これ以上好き勝手 やらせるわけにはいきません」

 

 

 

 

 私は屋上の安全スペースから降りて、性欲モンスターと同じステージに立ちました。

 さあ、いろはちゃんだってやる時はやるってところを見せてあげましょうか。

 

 

 

 

「……あら、もしかして雪乃ちゃんを呼んで私の邪魔をしてくれたのはあなただったの? ……あなたがいらないことをしなければ、今頃私は比企谷君に跨っていたはずなのに……覚悟はいいかな?」

 

 

 

 

 うっわぁ。

 

 人って欲望に支配されるとこんなんになるんですね。

 こうはなりたくないです。嫌悪感とかやばいです。

 

 

 

 

「ハルさん先輩、自分で自分の欲望を抑えられなくなったら、それはもうただの獣ですよ? 家畜同然な人に私の城を荒らされるのは我慢ならないんです。どっか行ってくれませんかねこのメス豚が」

 

 

 

 

 精一杯、強がりと共に私は目の前のモンスターに吐き捨てました。

 ……正直、雪乃先輩さえも倒された今、私単体でなんとかなる相手だとは思えないのですが……

 

 

 多vs一人なら、勝機はある。

 

 

 

 

 

「……ひっきーは渡さない」

 

 

「ヒキガヤ、ヒキガヤ、アイシテル……ユキノシタのネーちゃん、コロス」

 

 

「いろは先輩のお願いいろは先輩のお願いいろは先輩のお願いいろは先輩のお願いいろは先輩のお願い」

 

 

「いろははあーしが守るいろははあーしが守るいろははあーしが守るいろははあーしが守るいろははあーしが守る」

 

 

 

 

 

 

 屋上に続々と入ってくる歴戦の猛者たち。

 いやあ我ながら人望が厚いですね。録音と簡単な状況説明、あと私があのモンスターを止めると書いたらすぐに来てくれました。

 

 さあ、少なくともこれで戦いにはなるでしょう。

 私は、モンスターの方を見ました。

 

 

 

 

 

「……ねえ、いろはちゃん今私になんで言ったの?」

 

 

 

 

 モンスターは、顔を下に向けながら私に聞いてきました。……家畜とかメス豚発言は流石に気分を害しましたかね? まあ、今の私にはたくさんの盾があることですし、訂正の必要もないでしょう。

 

 

 

 

 

「家畜にメス豚って言ったんです。それとも暇人クソ乳ババアって言った方が良かったですか?」

 

 

 

 

 私の言葉を聞いたハルさん先輩は、ゆっくりとその下を向いた顔を上にあげました。

 その顔は、さぞかし怒りに支配されているのだろう

 

 

 と思ったのですが

 現実はそれなりに厳しいものだったみたいです。

 重責から解放され、恍惚の表情をした頭のおかしくなったお姉さんがそこにはいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アアン……いい♡」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「いい、いいよいろはちゃん……なんだか私すっごくゾクゾクしてきちゃった♡♡♡♡♡ ねえ、もっと言って? いや、もっと罵ってください……ご主人様ぁ♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 顔を上げたハルさん先輩は、目がイッちまったドMの悦ぶ顔をしていました。両手で自分の頬を両サイドから挟んで、悦びに満ちた顔をしていらっしゃいまして

 

 

 そのハートが浮かんだ目はたしかに、私にロックオンしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その顔を確認し、

 冷や汗をダラダラ流しながら、

 すぐに屋上から脱兎の如く逃げ出した亜麻色の髪を持つ知的な美人は、一体誰でしょう?

 

 

 

 

 

 

 そう、私なのでした。

 

 

 

 


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