「うおぇぇ……」
ひどい経験でした。そのせいか、保健室から教室へ帰っている最中の今でも、軽い吐き気がします。女の子らしからぬ声まで出てしまいました。いけないいけない。
私がいくら美少女だからって、女までもを虜にしてしまうだなんて……美しすぎるというのはやはり考えものですね。
さあ、アンニュイにため息をつき、いつもとは違った大人の魅力を解き放っている色気のある美人は、誰でしょう?
そう、私です☆
* * *
はぁやれやれ。にしてもテンションが上がらないです。
そんなふうにトボトボと歩いていると、なんだか糖分をたっぷり含んでいそうな炭水化物の声が聞こえてきました。
「あ、いろは先輩じゃないですか」
「む……お米どうしたの? あららついに授業バックれた? 不良米になっちゃったの? 」
「いやいやもう昼休みですから。それより保健室の方からやって来たということは……またですかね、、生徒会長がサボりってこんなんでいいんです? つーか不良米ってなんですか」
まったく、水分を過剰に取り込んでジメジメ育ってしまったのか知りませんが、本当に出てくる感想や質問が多い子です。
「ふむ。でも、もう4限も終わって昼休みですか。それはちょっと時間を無駄にし過ぎた感がありますね」
そう。下々の一般生徒たちの様子を眺めるという生徒会長の仕事1時間分が失われたということです。ほんっとにあの百合子は……
「ん? どうしたのお米ちゃん」
突然、米が私に近づいてきます。距離はもうすぐそこで、抱きしめようと思えばすぐできてしまうレベルに近いです。
近づいていた時は下を向いていた米でしたが、今はそっとその鼻を私の肩あたりに向けてクンクンしだしました。なんですかね。私の犬への志願ですかね。
「……やっぱり。いろは先輩、誰か女と抱き合ったりしました? 」
「ゔっ……」
抱き合ってはいないけど襲われかけたなんて言えないので、私は目を逸らしてしまいます。正直あまりいい思い出でもないので、思い出したくもないです。
「答えてくださいっ!! 」
「え、えぇ? 」
米は、下に向けていた顔を上に向け、私と目を合わせます。
そのおかげで見えた米の目からは、涙が2.3滴現れていました。ちょっと余裕もないようです。
「……ねぇえ、いろは先輩答えてくださいよどうなんですかこれ小町の知らないところで誰と会ってたんですか雪乃さんと結衣先輩は今日の休み時間にむしろ喧嘩売ってましたから違いますよねじゃあ誰なんですかいろは先輩に匂いを移すくらい密着して長い時間いろは先輩を拘束していたなんて何してたんですかいろは先輩に限って私以外の人に体を許すわけないですもんねそうですもんねいろは先輩私のこと大好きですもんね素直になれないだけですもんね私も普段からずっと頑張って調子を合わせてるのにこの仕打ちはないんじゃないですかあそうか無理矢理やられたんですねそうなんですねならそうだいろは先輩小町と結婚してくださいそれならもう離れませんしいろは先輩のことなら小町が守れますから全部小町に任せてください大丈夫です小町もいろは先輩意外に体は許しませんから安心してくださいいろは先輩いろは先輩いろは先輩いろは先輩いろは先輩いろは先輩いろは先輩いろは先輩」
さあ、問題です。
目のハイライトを無くした後輩の熱い目線に耐えられなくて、その場から走って割とガチで逃げ出した魔性の可愛さをもつ美女は、一体誰でしょう?
そう。私、一色いろはなのでした。
そういえば、私がサボり常習犯とか雪乃先輩や結衣先輩と今日会ってたってあのお米どうやって知ったの?