「うっわぁマジ疲れた本当ありえねぇです」
まさかの二回連続で貞操の危機が訪れるとは思いませんでした。しかもどっちも相手は女です。その中でもだいぶ頭のネジが飛んでしまっていた二人でした。
正直、まだまだ恐怖に体が震えている状況です。それだけ怖い思いをしてきました。
さて、全力で学校の廊下を駆け抜け、何故か開いていた放送室の中に逃げ込み、テーブルの下で、怯えながら体育座りをしている美少女生徒会長は、一体誰でしょう?
そう、私です……
* * *
ふう。放送室の機器が置いてあるテーブルの下でしばらくうずくまっていたら、流石に体の震えはなくなりました。なので、まあ恐る恐るですが立ち上がります。
ちなみに、この放送室のテーブルの下は、こたつみたいに布で中が見えないような仕様になっているのです。なので隠れ蓑としては割と安心感のある場所でした。
「……でも、どうして放送室の鍵が開いていたんでしょう」
頭が冷静になってくると、当然の疑問が頭をよぎり始めます。本当なら、放送委員や先生くらいしかこの部屋の鍵を使いません。私が入れたということは、誰かしらこの部屋にいたはずなのですが……
疑問に頭を悩ませながら、ふと機械に目が移りました。
「へぇ、こうなってるんだ」
生徒会でも見たことがないとは言いませんが、なかなかこうやって放送室の設備を間近にする機会はありませんでしたから、私としても珍しさでそれなりに心躍り始めます。
「えっと、これが電源? で、これが音量……ほうほう……まあ、電源くらいなら入れてもいいよね」
つい、出来心で機械にスイッチを入れてしまいます。
「あとは、、あ、そうか。このボタン一つ一つを押せばその場所のスピーカーから放送室の音が入るんだ」
2階廊下、やら、視聴覚室など、機械には学校中のそれぞれの場所のスピーカーに音声を届けるためのスイッチがあることに気がつきます。スイッチいれればその下に書いてある場所にここの声が届くみたいです。
「で、これが音量と……」
ここで、いろはちゃん気づいちゃいました。
音量をゼロのままにしている状態ならば、いくら学校中のマイクをオンにしても別にここの音が聞こえないんじゃないのかと。
「ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ」
一通り押しちゃいました。
まあ、違ってて音が流れちゃっても謝ればいいだけです。
それにしても面白いですねこの機械。あとこの背徳感といいたまりません。
「さあ、一通り遊んだから、もう帰るかな」
流石にポチポチするのにも飽きたので、私は全部のスイッチを押し直し、電源を消そうとしたのですが……
「なあ、本当にここ大丈夫なのか? 雪ノ下」
「ええ、だから奉仕部にインタビューの依頼が来たと言っているでしょう比企谷君? 先に言っておいて開けておいてもらったのよ。放送委員や小町さんに由比ヶ浜さんも、あと10分もすれば来るわ」
なんとせんぱいと雪乃先輩が、放送室に入ってきます。
あまりに突然なことに、私はついテーブルの下に素早く隠れてしまいました。雪乃先輩に見つかったら多分私殺されますから。
さらに、、、一番やっちまったのがですね。
……びっくりしすぎて、他のスイッチや電源そのままに、音量上げちゃったんですよね。
そうとは知らず、せんぱいと雪乃先輩は二人の会話を続けます。学校中に会話がon airなことも知らずに
「でも、なんで俺たちだけこんな早く来たの? 小町とかみたいに時間通り来ればよかったんじゃ」
「……あなたと、二人の時間が欲しかったから」
「……そ、そうか」
「……ええ、そうよ」
……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
なにイチャコラしてんですかマジヤバいですよ。今あんたたちの会話は学校中にon airなんですから。学校中の人を糖尿病にでもするつもりですか。
ですが、そんな私の危機感虚しく、二人はエスカレートし始めます。
「なあ、雪乃」
「っな、なによ、、八幡。いきなり抱き締めたりして。それに名前……普段はあんまりこういうことしてくれないのに、どういう風の吹き回しかしら」
「雪乃が可愛いことを言うのが悪い」
「か、かわっ……うぅ、もう……。ねぇ、可愛いのは、私の言葉だけ? 」
「いや、お前が言うから可愛いんだよ。雪乃……顔、こっちに向けろ」
「……うん」
ハワハワハワハワハワハワ。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
これはこれはマジですかもしかしなくもいえもしかしていや明らかにこの流れは……
『んっ……♡ チュパっぶちゅっ……んん!! ぁんっ♡ ハァハァ……ちゅぷちゅっ……ああんっ♡』
ああ。やっちまいましたね。
そのあと、この私にとっては、いいえ、全校生徒にとって地獄の時間は約1分ほど続き、勢いよく放送室のドアを開けて凍えるような声を二人に浴びせた結衣先輩が来るまで、全校生徒凡そ1000人超はそれに耐えなければなりませんでした。
その後、後から来た放送委員やお米ちゃんらとともに、二人は職員室へとりあえず連行されていきます。
私は誰もいなくなった隙に、忍者のように放送室から逃げ出し、自分の教室に帰るのでした。
さて、悠々と廊下を歩きながら、自分がやってしまったことの重みを冷や汗ダラダラで思い直す美少女は、一体誰でしょう?
そう、私、一色いろはなのでした。
「」