いろはの旅々   作:shushusf

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ふみふみ

本当にやばかった。

 あそこで私がいたことがバレたら、色々と終了してしまうところだった。

 雪乃先輩にお米のダブルパンチだけでオーバーキルなのに、不機嫌になった結衣先輩とか怖すぎて多分ちびる。

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、問題です。

 

 

 廊下を青い顔をしながら歩いていても、今も周りにいる一年生男子くんたちの目線を釘付けにしてしまう、可愛いだけでなく年上の魅力まで最近身につけてしまい、なんならちょっと前に一年生のイケメン君に告られ、お陰で一年生女子たちからも妬まれ始め、そしてさらには同級生女子からの怨念がもっと強くなってしまったこの完全無欠な美少女は、一体誰か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、私です⭐︎⭐︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「い、いっしきせんぱい!」

 

 

 

 

 廊下を歩いていたら、なんだか知らない一年生男子君たちに呼び止められました。私としては早く教室に戻って休みたいところなのですが、生徒会長なんてしてる手前、なかなか一般生徒の皆さんを無碍にもできません。

 

 

 

 

 

「はい。なんですか?」

 

「え、えっと……俺たち、一色先輩にお願いがあるんです」

 

「お願い、ですか? 」

 

「は、はいっ! 是非、お願いしたいです!!」

 

 

 

 

 

 

 はあ。

 十人ほどの一年生男子君たちは、一斉に私に向かって頭を下げました。腰の角度は90度。しっかりしたお辞儀です。人に何かを頼む態度としては申し分ないのですが、何がこれほどまでに彼らを駆り立てるのでしょうか。

 

 

 

 

 

「あ、申し遅れました。俺たちは、一色先輩のファンクラブやらせてもらっています。クラブ名を聖水いろはすと申します! ちなみに自分は団長です! よろしくお願いします!」

 

 

 

 は? ファンクラブ?

 

 

 

「は? ファンクラブ?」

 

 

 

 おっといけないいけない。思わず本音と建前が一緒に出ちゃいましたね。つーか団体名舐めてんのかコラ

 

 

 

 

「はい! つきましては、俺たちは一色先輩にふみふみして欲しいっす!」

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 何言ってんだこいつら。ふみふみ?

 

 

 

 

「ふみふみっていうのはですね、今から俺たちが全員廊下に横になるので、その上に乗って俺たちをふみふみして欲しいんです!」

 

 

 

 

 

 頭沸いてんのかこいつら。

 

 

 

 

 

 

「お願いします! 俺たち、このままじゃあ比企谷……一年のアイドル、比企谷小町のファンクラブ、小町米との抗争に負けちまうんです!」

 

 

 

 

 

 それは、無視して歩き出そうとしていた私の足を止めるには、十分な一言でした。

 

 

 

 

 

「あいつら……比企谷さんに蔑まれながら順番に顔を叩かれるっていう動画をとって、自分たちの信仰心を広く世に広げているんです! この前、小町米の団長である川崎大志にも上から目線で信仰心についてマウントとられて……だから、俺たちも負けるわけには行かないんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷小町、ファンクラブ?

 

 負ける? 

 

 私が?

 

 お米に?

 

 ほう。

 

 はあ。

 

 そんなことが許されるはずないじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな……いますぐそこに寝転びなさい」

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

「一色先輩! 準備できました!」

 

 

 

 

 

 廊下に響く団長の声。廊下に丸太の様に寝転ぶ九人の一年生男子。一人は動画を撮っています。準備万端です。

 

 

 

 

「じゃあ、いきますよ?」

 

 

 

 

 静かに上履きを脱ぎ、私はゆっくり、彼らの上に乗りました。

 

 

 

 

 

 

 小町米だかてんてこまいだがなんだか知りませんが、私がお米に負けるなんて、あっていいはずがないでしょ?

 あ、もしかして今日のアレもなんか裏があるの?

 私を自分のものにしてペットにでもしようとか?

 

 

 想像してしまう。私を蔑んだ目で見るお米を。

 薄ら笑いを浮かべながら、あいつはこう言うんだ。

 

 

 

 

 

『ふっ。所詮いろは先輩なんて、小町に好きかってされるのが似合ってますから……大丈夫ですよ。優しく扱ってあげますからね……ふふふふふふ、アハハハハハハ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その想像が、私に火を点けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しぃねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっいい、いいです!」

 

「ああ、俺たちは今一色先輩にふみふみされている!」

 

「ああ! 幸せ!」

 

「最高だぜぇ!」

 

「もう俺風呂はいらねぇ!」

 

「すごぉいのぉ」

 

「す、素晴らしい、素晴らしい感情の昂ぶりです!」

 

「あっあっあ」

 

「至上の幸福にござるゥゥ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、問題です。

 

 鬼の気を放ちながら、全身全霊をかけて年下の男の子たちをふみふみしている、最近大人の魅力をつけてきた美女は、一体誰でしょうか?

 

 

 

 

 

 

 そう、私、一色いろはなのでした。

 

 

 

 

 

 

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