..........何が、あったんだろうか。
何が、起こったんだろうか。
僕は、あの後マザーシップ・シバからアークスシップに乗り込んで......それで、それで........
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辺りが真っ暗だ。
何も見えない。何も、感じない。
あぁ、そうか。
これは報いなんだろう。
シバの言葉に納得してしまって、アークスを.....みんなを裏切って、みんなを傷つけて.......そして......大切な人をも..............。
.............なんだろう、これ............。
冷たかったのに..............段々暖かくなって.............。
僕はゆっくりと暗闇から目を開ける。
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閉じられていた瞼は光を指し、開けた世界は少しボヤけていた。
僕は仰向けに倒れてる。
..........誰か、いる。
誰かが、僕を見つめてる..............。
僕の名前を.........呼んでるのかな..............。
................マト...........イ.............?
「.........ウ.........ユウ君........!」
耳に確かに聞こえた僕を呼ぶ声。
それは、マトイのものではなかった。
.........マトイは.........僕に敬称は付けない...........でも.............。
僕はゆっくりと力の入らない手を持ち上げて、目の前の人物に触れようとする。
「...........マト......イ.........。」
掠れるように発した声に返事が返ってきた。
それと同時に僕の伸ばした手はその人にしっかりと握られて頬に触れさせてくれる。
「.........ううん、違うよ。ユウ君。........."ろん"だよ。」
ようやく視界がはっきりと見え、僕の目の前にいる人がろんだと分かった。
「なん.....で、ろん.....が.......?」
思考が回らない。何があったのかも、分からない。
「まだ、喋らないで。今から傷口を治すから。」
そう言うと、ろんは両手をユウの腹部にできた深い切り傷をレスタで治していく。
あぁ......そうか、さっきの暖かい温もりは.......これだったんだ......。
傷口が治るにつれて、意識もはっきりとしてくる。
「........うん、これで大丈夫だよ。起き上がれる?」
傷口が完全に塞がるのを確認すると、ろんはユウの身体を起こす。
僕は辺りを見渡した。
「........ここって.......ナウシズのショップエリア.........?」
「うん、そうだよ。」
建物や壁、ガラスが崩壊し激しい傷跡を残している。
.........そうだ、思い出した。
あの後僕は直接ナウシズへ乗り込んで.........その後、まリスさんとあるふぃさんと対立して........その後は、あまり覚えていない。
だけど、何があったかは周りの光景で分かる。
戦ったんだ。記憶が飛ぶほどに。
目の前にはボロボロの状態で倒れているまリスとあるふぃの姿があった。
2人の傍にはセラフィム、クオンが駆けつけており、傷の手当をしていた。
「私が駆けつけた時には戦いは終わっていて......3人とも、倒れていたの。状況を考えると、相打ちだったんだと思う。まリスさんとあるふぃさんは身体中の骨が折れてて......しばらくは目覚めないかも。でも、命に別状は無いって。.........でも、ユウ君はかなり危険な状態だった。さっきのお腹の傷、内蔵部まで深く届いてて.......あのままだったら.........死んでた。」
「..........そぅ。」
僕はろんの話を聞いて倒れている2人を見つめていた。
よかった.......と思うべきなんだろうか。僕はアークスを裏切って、今はろん達の"敵"として存在する。なのに.........
「.........なんで、僕を助けたの......?アークスを裏切って.......みんなの敵となったのに。」
僕の問いにろんは迷うことなく返事した。
「助けるよ、だって......ユウ君は私たちの大切な仲間だから。」
「..................。」
ろんの言葉が暖かかった。間違いを犯しても尚、僕のことを仲間だと言ってくれる。
「........それに、ユウ君は誰一人命を奪ってないじゃん。」
「..........たしかに、そうだけど........。」
敵になっても.......情けない結果だなぁ、僕って.......。
そう思いながらユウは苦笑した。
「ろん〜!こっちは今からまリスさんとあるふぃさんをメディカルセンターに連れていくから、後はよろしくね〜!」
大きな声でクオンはろんに叫ぶ。
「わかった〜!」
それに答えるようにろんも元気に返事を返す。
クオンとセラフィムが2人を連れていったら、この場所にはユウとろんだけになった。
「「................。」」
お互いに沈黙が続いている。
目を合わせることなく、ろんはユウに寄り添っていた。
だけどその沈黙を破ったのはろんだった。
「......ねぇ、ユウ君。聞かせて?どうしてシバの元についたのか。」
「...............。」
しばらく考えたあと、僕はマザーシップ中枢での出来事を思い返した。
そして、その場での出来事をろんに伝えた。
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「かつて貴方たちが闇へ転じようとしたとき、そちらの管理者は貴方がたを切り捨てようとした。結果として貴方たちご自身の奮闘により、事なきを得た。」
「アークスは何もしていません。貴方たちを見守るだけ。見捨てるだけ。」
「そしていずれ、彼らは貴方たちを排斥するようになるでしょう。.......そのあまりの力を恐れるあまり。」
そのシバの言葉を聞いて、僕は揺らいでしまった。
その時のシバは自分が経験してきたからこその振る舞いだった。
悠然としている彼女自身の裏に隠していた、憎しみや復讐心という強い意思で深く覆い隠していた"悲しみ"という心。
それを僕は感じてしまった。
気づけば僕は、シバの手を取っていた。
そしてシバは僕とマトイにこの世界の均衡を話した。
この戦いで僕たちが勝とうがシバが勝とうが、結果は同じで全て"繰り返して"しまう、と。
その瞬間から、僕は何のために戦ってきたんだろう?と感じた。
全てが無になり、必死に守ってきたものが全て崩れ去る。
.........だったら。
..........だったら僕は、シバと共に歩む。
僕の行動に当然マトイは反対した。
必死で僕を止めようとした。
けど、僕は。
.................その後のマトイは血を流していた。
僕も......視界がうまく映らなくて..........あまり見えていなかった。でも。
「.........これがユウの選んだ道だから.......私は恨んじゃいないよ.........だから.........生きて.......?」
最後に聞いた彼女の言葉は僕がアークスを攻撃する時からずっと頭の中で響いていた。
この声が聞こえていなかったら.......蝉さんやアリシアさん、ALiCiAさん、まリスさん、あるふぃさん、そして.....ろんを平気で殺していたかもしれない。
...........自分で決めたからこそ。マトイを殺めてしまったからこそ。その責務として感情を殺してまでアークスに攻撃を仕掛けた。
なのに、今はどうだ。
何にも成し遂げてない。敵になってもなお皆に救われている。
実に哀れでカッコ悪くてつまらない人間だ。
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僕が話したことをろんは静かに聞いていた。
そして、再び沈黙が訪れた。
だけど先に動いたのはまたろんの方だった。
彼女はその身体で力いっぱいユウを抱きしめる。
「..........く、苦しいよ.......ろん.........。」
ユウは苦しいのと恥ずかしさで抵抗しようとする。
が、ろんは離さなかった。
「ダメ.......。しばらくは、このまま。」
僕の耳に届いた彼女の声は少し震えていた。
「........泣いてるの?」
「........ばか。」
「.........ごめん。」
彼女の心境を察したユウは抵抗をやめて、ろんの腰に手を回した。
辛かった。恐怖を目の当たりにした皆の顔を見るのが。
隣で笑いあってた人達に武器を向けて傷つけるのが。
.........マトイ、僕は........もう少し、頑張ってみるよ。
「.........ろん。」
「なぁに?」
返事をした時、ろんの手が緩まった。
その瞬間にユウはワープし、ろんの背後を取った。
右手を振り下ろし、ろんのうなじを叩く。
「─────......。」
彼女の身体から力が抜ける。
ユウはその身体を支え、壁にもたれさせる。
「..........ごめんね、ろん。僕は........」
少年はゆっくりと立ち上がり、ろんに背を向ける。
「..........僕は、もう一度だけみんなの為に頑張るよ。」
『..........認.........シ............!』
雑音のように何かが聞こえる。
『.........滅を確認!.......返す!』
通信で何かを言っているらしい。起きないと.......。
ろんはゆっくりと瞼をあげ、意識を取り戻す。
『終の女神、シバの消滅を確認.....!繰り返す!終の女神......((』
通信を聞くと、戦いが終わったアナウンスが繰り返されていた。
私が眠っている間に何があったんだろう?
.......あれ?たしか私ってユウ君と一緒に.......。
それを思い出した時、ろんは急いで辺りを見渡す。
いない。
どこにもいない。
「ユウ.....君......?」
何処を探しても彼の姿は見当たらない。
そうだ、ユウ君のバイタル反応を..........あれ?
マザーシップからここまでの座標マップにユウの反応は何処にもなかった。
「.......なん......で?」
そして私は思い出した。気を失う瞬間に微かに聞こえた言葉。
「.........『もう1度だけ、みんなの為に頑張るよ』........。」
ユウが告げたその言葉とシバ消滅の通信、そして.........
彼を探すのに必死で気づかなかった。
ろんは左手に何かを握っている感触に気づき、ゆっくりの開いてそれを確認する。
「.........これって.......ナベリウスの花.......?」
その瞬間、全てを理解した。
頭の中が真っ白になり、目の周りが熱くなる。
視界がボヤけ、何かが頬を流れるのが分かった。
「......あ.......あぁ...........。」
私は膝から崩れ落ち、大きな声をあげた。
それは悲しみに溢れた涙の叫びだった。
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「...........っていう、もしかしたらの話を作ったんだけど、どう?」
ユウの言葉に一目散に彼に駆け寄りビンタをかます少女がいた。
バチンッと大きな音をたてて、ユウは大きく仰け反った。
「いっ.....たい.....!今のは.......ヒーローウィルが発動したかも......!」
目尻に涙を流したがら痛みに耐える。
だけどそれ以上にビンタをかました少女は泣いていた。
「内容が!内容が切なすぎるよッ!!!」
その少女は、ろんだった。
「ご、ごめんってば......で、でも!もしもの話だから!だから.....そんな泣かないで.......!」
自分がやり過ぎた事を反省してユウはろんの頭を撫でたり肩をポンポンと叩いたり背中を摩ったりと必死で慰めようとする。
「あらら〜、ユウ。君女の子を泣かせたねぇ〜?」
まリスが嫌味たらしくユウを煽る。
「ほんと反省してます.....。」
まリス以外にも、この部屋にあるふぃさんやアリシアさん、ALiCiAさん、セラフィムさんにクオンさんもいた。
皆がこのやり取りに笑っていた。
ようやく泣き止んだろんはゆっくりとユウに寄り添った。
「もう、これ以上私を泣かせたら承知しないからね.....!」
「........ごめんなさい。」
苦笑しながらユウは返事をした。
僕達は、今を生きている。
誰一人欠けることなく、あの日からずっと。
そしてこれからも、みんなと一緒に新しい未来へと歩むだろう。
『これは、もしかしたら起こりえたかもしれない、可能性の1つである物語。』