シャインナックルさんが世界をぶっ壊してみるテスト   作:偽馬鹿

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とりあえずの区切り。
タレイアちゃんはこんな感じです。


デッドリーレイブ

タレイアは悩んでいた。

それもこれも少し前に出会った青年のせいである。

 

「……いえ。別にあれがどうとかこうとかではないのですが」

 

誰に言い訳しているのか、などと呟きつつ。

タレイアはむすっとした顔でプリンを食べる。

今日のおやつだ。

ローアインに作ってもらったものである。

こういう時は子供の姿も悪くない、と思ったり思わなかったり。

 

「……それにしても」

 

タレイアはこのグランサイファーに集う団員の数に驚いていた。

正確な数は把握していないが、見ただけで百人はいるのではないか。

 

「烏合の衆……というわけでもないですね」

 

もう一口、プリンを食べる。

これだけの人数だ。

トップが余程の人物でない限り、簡単に崩壊することはないだろうと思う。

そして、このトップの人物はその余程の人物であることも分かった。

 

「……まあ、それにしてもお人好しですが」

 

また一口。

タレイアはグランの人となりを見ていたが、お人好しが過ぎる以外はかなりの好感触であった。

お人好しだが。

 

かたり、と食べ終わったプリンの容器を片付けるタレイア。

まあこれくらいならこなせますと、どや顔のタレイアだった。

 

 

 

ぐちゃあ。

 

 

 

「……ん? あ?」

 

一瞬死んだ。

文字通りである。

タ(・)レ(・)イ(・)ア(・)は(・)今(・)こ(・)の(・)瞬(・)間(・)死(・)ん(・)だ(・)の(・)で(・)あ(・)る(・)。

しかし、タレイアはその場に倒れ込むことはなく、立ったまま蘇(・)っ(・)た(・)。

 

「そんな……どうして……!」

 

そんな様子を見ていた誰かが叫ぶ。

タレイアが振り向くと、その人影は即座に消えてしまった。

 

「ふぅん」

 

タレイアは考える。

どうやら流石に完全な一枚岩ではないらしい。

いや、一枚岩だからこそか?

そんな風に考えたタレイアは、周囲の様子を見た。

 

「…………これ、わたしが片付けないと駄目?」

 

辺りは血まみれ。

かなりの出血量だった。

 

 

 

「…………はぁ」

 

 

 

タレイアはため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

にゃーん。

 

甲板に、猫がいた。

 

タレイアは猫があまり得意ではなかった。

自由で囚われることのないその姿に憧れたりすることもあったが、それはそれとして苦手だったq。

 

にゃーん。

 

「う……」

 

苦手だ。

寄ってくる猫をじっと見ながら、少し後退するタレイア。

いつものことだ。

気圧されるタレイアを見ていたあの少年が笑っていた時は、容赦なく剣を叩き込んだが。

 

「あ……」

「むっ……」

 

そこに、洗濯物を運んでいたサラが通りかかる。

タレイアは誰かに猫に気圧されてる姿を見せるつもりがなかった。

なので、即座にすっと背筋を伸ばして猫を睨みつけた。

 

にゃーん。

 

駄目だった。

すぐにその鳴き声と姿に気圧された。

やはり何となく苦手なこと即座に変えることはできないようだ。

 

「ふふっ……」

 

サラが笑う。

微笑ましいと思ったのだろうか。

タレイア的には死活問題だったのだが。

 

「誰にも言わないで」

 

少しむすっとした表情で、タレイアは口にする。

その様子に、サラはもう一度笑顔を浮かべた。

そしてその顔を見たタレイアは、更に表情をむすっとさせた。

 

 

 

タレイアが猫と同じくらい苦手な相手がサラであった。

何故かというと、かつてグラティエの能力によって見ることがあった巫女の一人だったからだ。

 

タレイアの能力は水に由来する。

その水が関与することであれば、割と万能であった。

その万能な能力を使って、少し前にタレイアはサラのことを知ったのである。

 

その結果があの島の惨劇であり、あの青年と出会った原因。

そして自分が旅に出ることになった理由。

 

かつて巫女という立場に囚われていた彼女に共感していたタレイア。

そして、巫女という存在ではなくなり、自由に生きるサラ。

その生き方に、タレイアは憧れながらも苦手意識を感じていたのだ。

 

 

 

なので、タレイアはサラを敵視していた。

何となくだが。

自由な存在が苦手である、という面倒臭い性格なのであった。

 

当然のように、自由の伝道師たるダーントは苦手の極みだった。

というか猫多い。

あんなの近寄りたくないわ。

顔を合わせたこともないのにこの嫌われようである。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

とにかく。

苦手なサラとあまり会話がしたくなかったタレイアは、その場を去る。

すっとサラが向かう方向とは反対側へと歩いていき。

 

 

 

「あら―――――?」

 

 

 

そ(・)し(・)て(・)ま(・)た(・)死(・)ん(・)だ(・)。

 

 

 

「あ……だ、大丈夫ですか!?」

 

その時に何かを察知したのか、サラが寄ってきた。

心臓がぐちゃぐちゃになっているタレイアを見て、サラは顔を青くした。

出血も止まらない。

このままでは死んで―――――

 

 

 

「……っ」

 

 

 

―――――しまうことはなかった。

 

タレイアの身体は時間が巻き戻るかのように修復されていった。

星晶獣の力だと、直感で思った。

 

それは、タレイアを殺したそれに対して感じたことであり。

同時に、タレイアを生かしたそれに対しても感じたことでもあった。

 

確かにこのグランサイファーには多くの星晶獣がいる。

彼らはとても強く、そして多彩だ。

その力さえあれば、ただの人間はごみくずのように殺されてしまうだろう。

まあ、そんなことをするような人(?)たちではないが。

 

その力が、今タレイアを殺したのだろう。

サラは直感的に感じた。

というよりは、サラと一緒にいるグラフォスが感じ取ったのかもしれないが。

 

 

 

「……また、同じ人?」

「え?」

「何でもない」

 

タレイアの呟きは、サラに届くことはなかった。

それよりも、タレイアが喋ったこと自体に驚いていたからだ。

 

タレイアは血だらけで、服は真っ赤だ。

そういえば、朝見たときはもっと淡い色だったような気がするな、とサラは思った。

 

タレイアはすっと立ち上がり、グラティエの能力で水を呼び出して血を押し流した。

先程はモップでせっせと拭き掃除したが、ここならグランサイファーから流してしまえばいい。

 

「あ、あの」

「何?」

「大丈夫……なんですか?」

 

サラは心配だった。

流石に目の前で死にかけた人間を心配しない人などいないだろう。

気味が悪いと思うことはあるかもしれないが、サラはそう感じることはなかった。

 

タレイアは、そのサラの態度を少し面倒臭く感じていた。

別に死んでも問題ないからであった。

 

タレイアは死ぬことはない。

否。

死んでも蘇(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)構(・)築(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)のである。

それはサラがグラフォスとともに生きているのと同じように、彼女が生まれ持っていた機能であった。

それが理由でタレイアはグラティエの巫女として祭り上げられたのだが、今は関係ないだろうか。

 

「気にしないで」

「ええ……?」

「ええ、気にしないで大丈夫よ」

 

何となく、こんなことをする相手にも見当がついたからだ。

次出会ったときに問い詰めるだけだ。

 

「で、でも!」

「……」

 

それよりもまずは、サラを説得するのが先であった。

面倒臭そうな顔で、タレイアはサラを見る。

いや、実際面倒臭かったのであるが。

 

そもそも、タレイアはただの居候みたいなものである。

野垂れ死のうが関係ないだろう、というのがタレイアの言い分だった。

それが通じないのがこのグランサイファーなのだが、タレイアはそのことをよく理解していなかった。

 

「あんな怪我をした人を放っておけません!」

「………………面倒臭い」

「めんど……!?」

 

しまった、つい口に出してしまった。

タレイアは口元を押さえた。

反省である。

 

「とにかく! 私は放っておけないんです!」

「…………」

 

しかし、それでもサラは頑なだった。

どうやらタレイアについて回るつもりのようだ。

あっちにとことこ、こっちにとことこ。

先程まで洗濯物を運んでいたことも忘れて、タレイアの後ろをついていく。

 

「めんど……」

 

おっと。

タレイアは口を押さえてセリフを止めた。

どうせ意味がないからである。

 

 

 

「とにかく」

「?」

「まずは洗濯物を片付けましょう?」

「……あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――で、貴女でしょう? わたしを殺したのは」

「っ!」

 

それから数分後。

タレイアは容疑者を問い詰めていた。

というかニーアだった。

 

最近、騎空団に合流したエルーンである。

タレイアの印象はそれだけだが、危険人物っぽいということをあの青年から聞いていた。

まさかここまでとは思っていなかったが。

 

「ニーアさん……?」

 

ニーアの顔は青かった。

それはそうだ。

こんなことが団長、グランに知られたらグランサイファーから降りなくてはいけなくなるからだ。

 

そこまで把握しておきながら、タレイアはこの状況が良くわかっていなかった。

何故ここまで執拗に殺されたのか。

彼女にとっては謎だったのである。

 

 

 

「……もうしないっていうのなら、黙っていてあげます」

「ええっ!?」

「ほ、本当……?」

 

タレイアのセリフに、サラとニーアは驚いた。

それはそうだ。

ただ殴られたりされただけならともかく、タレイアは殺されたのだ。

その殺された本人が、殺した相手を許すというのだ。

頭おかし……変である。

 

「ど、どうしてですかっ!?」

「え、いや。めん……っと」

「面倒臭いって言おうとしましたね!?」

 

既にサラはタレイアのことを理解し始めていた。

そう、タレイアは面倒臭がりである。

それも極度の。

 

タレイアは殺されること自体は気にしていないのだった。

ただ理由だけが知りたかった。

それだけである。

 

「だから教えて? どうして殺したの?」

「…………」

 

ニーアは黙る。

それもそうかとタレイアはため息をつく。

人を殺した理由を、殺した相手に言うことなんてないからだ。

 

いや、その理屈はおかしい。

サラはタレイアの横でそんなことを思っていた。

 

 

 

「え……と」

 

しかし、ニーアは口を開いた。

まさかの展開に、サラはともかくタレイアも驚いた。

 

 

 

「だって……グランと仲良くしてたから……」

「は……?」

 

 

 

そして、その口から出てきたセリフに、タレイアは心底呆気にとられた。

まさか。

まさかそれが理由なのか。

タレイアは呆れた。

 

そして、その横でサラは戦慄していた。

もし。

もし自分に目を向けられていたら。

自分が殺されていたかもしれないからだ。

 

「ふぅん、そう」

「痛っ」

 

肩を抱えて震えているサラの頭を軽く叩いて、タレイアはニーアの顔面を掴んだ。

自分の身長に合わせて引っ張ったので、ニーアはかなり前傾姿勢になっていた。

 

「もう一度言うわ。もう二度としないなら、黙っていてあげる」

「あ、う……」

 

顔面同士がぶつかり合うスレスレの距離で、タレイアはニーアに言い聞かせるように話しかけた。

念押しだ。

タレイアが死んでも蘇る以上、ニーアは黙っていてもらう方法がひとつしかない。

それを言い聞かせているのである。

 

「返事は?」

「は、はい!」

 

タレイアが凄むと、ニーアは気圧されて返事をした。

これでいい。

タレイアは満足そうにニーアの顔を離すと、すぐに踵を返した。

 

「え、ええ?」

「い、いいんですか……?」

 

ニーアもサラも困惑気味である。

それに対して、タレイアは頷くだけだ。

そして、そのままタレイアは一目散に走り去っていった。

 

「……」

「……」

 

残されたのは、無言の二人。

顔を合わせて、何も話すことはできなかった。

暫くすると、二人はゆっくりとその場を離れた。

二人とも怪訝そうな表情を浮かべたまま。

 

 

 

「……あの男」

 

一方、タレイアは激怒していた。

その矛先は例の青年である。

まさかあんなに危険人物だとは思っていなかった。

 

もしちゃんと知らされていたら、タレイアはもっと慎重に動いていただろう。

流石に殺人鬼と仲良しこよしするつもりはなかったからである。

 

しかし、お世話になっている身である。

相手が譲歩するなら、こちらも譲歩する。

そんな思考がタレイアにはあった。

 

 

 

「……」

 

タレイアは考える。

グラティエは水を操る。

その水を操る能力で、タレイアは自身の身体に巡る水をコントロールして蘇生した。

 

もし、概念的な死を与えられていたら。

タレイアは死んでいたかもしれない。

まあ、そんな相手が早々いるとは思えなかったが。

 

 

 

とにかく。

タレイアはあの青年を見つけて、水の剣で串刺しにしたのだった。

 

 

 

 

 

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