シャインナックルさんが世界をぶっ壊してみるテスト 作:偽馬鹿
ぐちゃりと壊れた音がした。
拉げた音がした。
砕けた音がした。
「―――――!」
誰かが叫んでいる。
動けない。
動かない。
どうして。
おかしい。
今動かないでどうする。
今戦わないでどうする。
死ぬかもしれない。
それは本当にそうなのか。
わからない。
わからないが。
死ぬのは今ではない。
そう思った。
思ったところで目が覚めた。
変な夢だ。
それと同時に。
変な状況だった。
右手がタレイアにしっかり抱き着かれていたからである。
「……」
「……」
目が合う。
タレイアはぼーっとしていたようだが。
すぐに今の状況に気付く。
目を見開き。
顔を赤くし。
そして俺に剣を大量に降らせた。
痛い。
気付けば。
近くにフワフワ系少女がいた。
というかヴェトルだった。
「ふふふ。楽しんでくれたかしら?」
「?」
「え、あれ? 楽しい夢だったはずなんだけど」
どうやら。
あの変な夢はヴェトルのせいらしい。
とりあえずほっぺたを引っ張って伸ばす。
「いひゃいいひゃい」
何やら手違いがあったらしい。
この子が意図した夢ではないらしい。
それはそれとしてどや顔がむかっとしたので引っ張る。
「……」
そして。
さっきから無言のタレイアが圧力を出している。
目標はヴェトルのようだが。
「あれが」
「?」
「あれが楽しい夢、ですか?」
ニッコリと。
タレイアが切れていた。
切れたナイフだ。
ザクリと刺さった剣を抜きながら。
俺は二人の様子を見る。
タレイアは切れていて。
ヴェトルがおろおろしていた。
ついでにサラが遠くからこちらを見ていた。
しかし。
タレイアはどんな夢を見たのか。
気になったが。
降り注ぐ剣を避けるのに必死でそれどころではなくなった。
「あの……」
「ん?」
じりじりと詰め寄るタレイアと。
少しづつ逃げていこうとしているヴェトル。
そしてそんな二人を避けるようにこちらに来たサラちゃん。
どうやらこの惨状を見て怯えているようだ。
「あの、どうしてこんなことに……?」
「わからない」
わからないが。
わからないなりに解説してみた。
「なるほど……」
すると。
合点がいったのか。
サラちゃんは頷く。
結構乙女なんですねーとか言っている。
ちょっとよくわからないが。
飛んでくる剣の数が増えたから。
何かがタレイアに引っかかったのだろう。
結果的に。
ヴェトルは見事に逃げ切って。
俺達は見事に穴だらけだった。
いや。
サラちゃんは一応グラフォスが守ったけども。
「知らない」
「ええータレイアちゃーん」
「ちゃん付けはやめて」
サラちゃんは何やらニコニコしながらタレイアに抱き着いている。
なんだろう。
どうしてなのかいまいちわからない。
ちなみに。
タレイアの機嫌はプリンで直った。
「ふんふふん」
サラは自室で日記と向かい合っていた。
ボレミアが買ってくれた日記帳である。
鼻をならしてふんふんふん。
すらすらと日記にペンを走らせる。
サラはボレミアがいない間のことをこの日記帳に書き留めている。
そして、ボレミアが帰ってきたらその内容を話すのだ。
勿論、ボレミアがいるときの日々も書き留めているが。
「ただいま、サラ」
「おかえりボレミア!」
今日はちょうどボレミアが帰ってくる日であった。
なので今日はお休み。
サラはボレミアとお話するのである。
「あのねボレミア。私友達が増えたの!」
「そうなのか、よかったな」
サラはタレイアのことを話す。
かなり面倒臭がりで、それでいて可愛らしい。
そんな女の子。
「ほう」
「それでね、今日は不思議な夢を見たみたいなの」
サラは今日あった出来事を聞かせる。
興奮している様子のサラを、ボレミアは優しい顔で受ける。
しかし、話を聞く内に少しづつ顔が強張ってきた。
「……サラ」
「なに、ボレミア?」
「大丈夫なのか……?」
「うん!」
元気な笑顔。
その顔に、ボレミアは何も言えなくなった。
まあ、サラがいいならいいか。
げろ甘である。
「というわけで紹介するね! この人がボレミア!」
「や、やあ」
「ど、どうも……」
サラが素晴らしい笑顔でタレイアにボレミアを紹介した。
にっこにこである。
サラを挟んだ二人は、なんとも言えない笑顔で挨拶をすることになった。
「私の大切な人なの!!」
「笑顔がまぶしい!」
タレイアもいつもは言わないようなセリフを言う。
それくらい、サラ笑顔はいい笑顔だった。
サラはニコニコしながら二人の様子を見ている。
二人は何となく、それとなく息を合わせて、サラが悲しまないように話を合わせることにした。
「ご趣味は……」
ボレミアの一言目である。
見合いか。
「裁縫を少々……」
嘘だった。
何となく少女っぽい趣味を言っただけである。
そして何となく目線をやる。
今度はそっちの番だと言いたい感じである。
「あ、ああ。私はパズルを少々」
ちらちらとサラの方を見ながら話す。
最早授業参観である。
「では、今日はこの辺りで……」
「ああ。それでは……」
それから少しして。
二人は少し疲れた様子で解散した。
一方サラはにっこにこである。
大好きな人と友達が知り合いになって嬉しいようだ。
「ふふっ……」
「……嬉しそうだな、サラ」
「うん」
日記に書くことが増えた。
そう言いながら、サラは笑った。
「はぁ……」
一方、サラと別れたタレイアはがっくりと肩を落とした。
今になって疲れが襲ってきた感じである。
「どうだ?」
「何が……?」
ひょっこりと顔を出した青年に、タレイアはもたれかかる。
心底疲れたようだ。
「かなり疲れてるみたいじゃないか」
「それはまあ、慣れないことをしたから」
歯切れの悪い感じのタレイア。
いつもならばっさりと切り捨てるところである。
「だけど、まあ……友達ですから」
しかし、サラは彼女の友達なのである。
そのための苦労なら、少しはしてやってもいい。
そう思っているタレイアなのであった。
そんなタレイアの頭を、青年は撫でる。
タレイアはその手を払いのけることなく、甘んじて受けていた。
タレイアは暇だった。
また暇なのか、と思わないでもないが、タレイアの代わりに青年が働いているのである。
その分タレイアは暇なのである。
「タレイアちゃん!」
「ちゃんはやめて」
タレイアがローアインズにプリンをねだろうとしたところで、背後からサラに声をかけられた。
振り向くと、サラがぎゅっと抱き着いた。
それをタレイアは甘んじて受ける。
先程のタレイアのセリフも、なんとなく言っているのである。
「どうしたの?」
タレイアが聞いてみたが、サラはご機嫌のまま何も答えない。
ただ近くにいたから抱き着いただけなんだろう。
そう思ってタレイアは好きにさせることにした。
面倒臭いからだ。
「今日は、新しいお友達を紹介します!」
「……」
最近、サラがちょっと面倒臭い。
そう思いつつ、タレイアは付き合っている。
面倒臭いが、嫌ではないからだ。
「はい! ごしょうかいにあずかり? ました! ルリアです!」
「……」
嫌な顔。
これ以上人が近くにいるのは面倒臭いと思ったからだ。
「あ! タレイアちゃん面倒臭いって思ったでしょう!」
「うわめ……そんなことない」
「このー!」
「こ、このー?」
タレイアが口走ると、サラがタレイアに絡みつく。
そのまま倒れ込んだタレイアに、追加でルリアが飛び込む。
もみくちゃだ。
「あははは!」
「えへへ」
「……ふふ」
まあ、そんな感じでも楽しくなった。
それもこれも、あの青年のおかげだろうか。
タレイアはふと思ったのだった。