シャインナックルさんが世界をぶっ壊してみるテスト 作:偽馬鹿
人選を誤った模様(瞬殺的な意味で)
「……」
タレイアは困惑していた。
今日は騎空団の仕事の手伝いをすることになっていた。
しかし、その場所にいつも一緒にいる青年はいない。
それどころか初対面の人間がいたのだ。
ベアトリクスにナルメア、それにニオである。
タレイアは全く面識のない面子であった。
「どういうこと……?」
タレイアはこの面子を集めたグランに睨みを利かせた。
グランは軽く笑うだけでしっかり返事をしてくれなかった。
何か理由でもあるのか。
そう思ったところで、タレイアの意識は別のことに割かれることになった。
「なあグラン、今日はどんな仕事なんだ?」
割り込んできたベアトリクスに気を取られたからだ。
なんというか、タレイアとグランの会話を遮ってきたように思えたのである。
「グランちゃんグランちゃん! お姉さんに任せてっ!」
それと一緒にグランに抱き着いたナルメアにもだ。
その様子にベアトリクスがむすっとしたが、その理由はタレイアにはわからなかった。
「……」
そんな様子を、ニオは少し離れたところから見ていた。
観察しているような気がする。
タレイアはそう思った。
「水源の調査……」
今回の任務は、水源が枯れてしまっているかもしれないから調査してほしいというものだった。
タレイアは呼ばれた理由に合点がいった。
恐らく、グラティエの能力によってどうにかできるかもしれないと考えたのだろう。
「……なあ」
「……何?」
グランを先頭に歩いていると、ベアトリクスがタレイアに話しかけてきた。
何やら深刻そうな顔だった。
タレイアも少し緊張した様子でその次のセリフを聞こうと身構えていた。
「タレイアだっけ? お前って……す、好きな人とかいるのか?」
ガクン、とタレイアの肩が落ちた。
まさかの質問だった。
まさかそんな質問をしてくるとは思わなかった。
タレイアは面倒臭いと思った。
それと同時に、どうしてそんなことを聞くのかとも思った。
なので、ちょっと思考を読んだ。
するとどうだ。
ベアトリクスがそんなことを聞いた理由があっさり分かった。
なんてことはない。
ベアトリクスはグランが好きなのだ。
それがわかったから、何となく優位な気がしたタレイアだった。
「……いませんよ」
「ほ、ホントか!?」
「本当ですよ」
そっけなく答えるタレイア。
少なくとも、彼女にとっては事実であった。
すると、ベアトリクスの顔がぱぁっと明るくなった。
ちょろい……とタレイアは思って、口を押さえた。
危うく口に出すところだった。
そしてタレイアは気付く。
この調子で他の人の心を読んでしまえばいいんだと。
「グランちゃんグランちゃん!」
次に狙いを定めたのはナルメアだった。
ニコニコと笑いながらグランに構っている彼女の心を、タレイアは覗いてみようとした。
したのだが…………特に変わりがなかった。
「グランちゃんグランちゃん! 何かして欲しいことある? あ、この間作ってあげたチョコレート! また作ってあげるね!」
そのままこのまま、心の声も一緒だった。
表裏のない性格なのだろうと思ったタレイア。
まあ、この人もちょろいんだな……とも思った。
そして知らない相手である最後の一人、ニオの心を覗こうとして……失敗した。
「……!」
まさか、自分の……というかグラティエの能力が通用しないとは思わなかった。
驚いたものの、何とか表情に出さないように努めるタレイア。
ばれたら何を言われるかわからない。
そう思ったからである。
「……悪戯は、駄目」
「っ!」
ニオが小さく呟く。
気付かれた。
タレイアは直感的にそう思った。
「ここが水源……?」
「だった、みたいだね……」
一同が辿り着いた先には、まるで水の気配のない大きな空洞があった。
既にひび割れ、砂もあるような場所。
そこが村の人たちが言う水源だった場所。
「……微かに水の気配があるけれど、もう力は残ってないわね」
タレイアは言う。
グラティエの反応からそう断じた。
「星晶獣の気配はありませんね……」
グランの中から現れたルリアが言う。
その様子に驚いていたタレイアだったが、周りがまるで驚いていないことで無理矢理冷静なふりをした。
嘘だ。
心臓がバクバク言ってる。
「あーうん。じゃあどうしてこうなったんだ?」
ベアトリクスは疑問をぶつける。
それはそうだ。
原因がわからないのだ。
それがわからなければどうしようもない。
「……いるわ。こっち」
それに答えたのは、ニオだった。
ふわふわと浮かんでみんなを先導していく。
タレイアはニオに警戒しつつ、その後ろについた。
警戒している理由はもちろん、自分の能力が通じなかったからだ。
いや、あんまり通じない相手はそこそこいるのだけど。
それでも、完全にシャットアウトする方法で無効化されたのは初めてだった。
「……来た」
「っ!」
突如、森の奥から何かが飛び出す。
それは水の塊だった。
というか超巨大なスライムか。
それが、勢いをつけて飛び出してきたのだ。
各自散開、即座に戦闘態勢に入った。
タレイアはその様子に感心した。
動きが洗練されている。
訓練でもしているのだろうか。
タレイアはそんなことしたことないからか、かなり驚いていたが。
巨大スライムは触手のようなものを射出して、全体に攻撃をしようとした。
かなり早い。
いつも出てくるようなスライムとは桁が違うようだ。
「お姉さん、頑張っちゃうね!」
しかし、その全てをナルメアが斬り裂いた。
一瞬だった。
まるでコマ送りのような速度で次々と触手が断ち切られたのだった。
……タレイアはその間に何度も変形する刀に驚いていただけだったが。
「グラティエ!」
とはいえ、それだけではただのお荷物である。
流石にそれは困るということで、タレイアも働く。
グラティエの能力を使って水の動きを把握して、操作する。
巨大スライムがその能力に抵抗しようともがくが、それが狙いだった。
別にタレイアひとりでどうにかする必要はなかったからだ。
「エムブラスクの剣よ!」
ベアトリクスが大きく巨大スライムの身体を斬り裂く。
かなり踏み込みの深いそれは、身体が巨大スライムにめり込みそうなくらいだった。
「止まって」
悲鳴を上げて暴れようとした巨大スライムを、今度はニオが動きを止めた。
巨大スライムから流れる旋律を、ニオがコントロールしたのだろう。
まるで自分から動きを止めたようだった。
少なくともタレイアにはそう見えた。
「とどめだ!」
そして最後には団長、グランによる一撃。
ルリアの力を借りた、強力な一撃が巨大スライムに放たれた。
「タレイア! お前凄いな!」
ベアトリクスが大きな声を出しながら、タレイアの背中をバシバシと叩く。
なにしやがるのか、とタレイアは思ったが実はそれどころではなかった。
あの巨大スライムの大半は水源から吸い上げた水だったが、その成分には多少の酸が含まれていた。
その酸は割と強力で、ただの服であれば即溶かしてしまうものだった。
「……服」
「ん? ……あ」
単純な話である。
ポロリだった。
「……ああああ! 見るなぁ!!」
放たれるエムブラスク(投擲)
グランに刺さるエムブラスク。
非難の目がグランに刺さる。
災難な……。
タレイアの感想だった。
「……そういえば」
「え? お姉さんとお話し?」
タレイアはナルメアに声をかける。
その理由はあんまりなかったが、あえて言うのならば助けてもらったからだった。
例の触手の攻撃の際、ナルメアが対処しなければ確実にタレイアは攻撃を受けていた。
だからこう、感謝したいのだが。
タレイアはプライドが邪魔をして口に出せないのだった。
「……ええ、助かりました! 感謝してます!!」
何とか口に出したそれは、まるで怒っているかのようだった。
その感謝を受けて、ナルメアは一瞬きょとんとして、すぐにニッコリと笑った。
「うふふ、どういたしまして。タレイアちゃん」
「……ちょっと」
「え、何かしら?」
そして、タレイアは最後にニオに声をかけた。
苦手意識は芽生えかけていたが、流石にあのまま苦手になってしまうわけにもいかない。
そう思って声をかけたのだ。
とはいえ、まずはあの読心術を防御した方法が知りたかった。
タレイアの生命線のひとつ。
それを無効化する手段がいくつもあっては困るのである。
「……ああ、心を読もうとしてたのね。残念ね」
そう言って、ニオはあっさりその手の内を明かす。
タレイアから発せられた旋律を読み取って、それと正反対の旋律を生み出して相殺したのだという。
タレイアは驚いた。
単純な方法だ。
それでいて、難易度の恐ろしく高い技術であった。
「……凄いのね」
「十天衆だもの」
ニオは若干自慢げな顔をしたが、タレイアにはわからない程度の変化だった。
タレイアは十天衆を知らなかったが、凄い人物が十人いることはわかった。
そして、タレイアは気付かなかったが。
当然ながらニオはタレイアの心を読むことができるのであった。
「……まあ、グランに危害を加えるような子じゃない」
タレイアがサラに連れていかれる様子を見ながら、ニオはふらふらとグランに寄り添うのだった。
「――というわけで、お仕事してきたわ」
「お疲れ様です」
プリンを食べながら、タレイアはサラに報告した。
まあ、プリンを持って出迎えられたら仕方ない。
タレイアは内心でそう言い訳しながらプリンを口に運ぶ。
「ふふっ……」
「……何かしら?」
その様子にサラが笑う。
そして若干不機嫌そうな顔で、タレイアが頬を膨らませる。
「お友達、増えたんですか?」
「…………」
その膨らませた頬をゆっくりとすぼませる。
ノーコメントである。
ついでについっと顔を逸らした。
「別に、知り合いが増えただけよ」
「それにしては、楽しそうでしたよ?」
つまりは図星なのだった。
タレイア的にはなんとなく認めたくない感じなのだ。
あんまり友達が増えても、面倒臭いと思っているからだ。
とはいえそれは寂しさの裏返しなのだろう。
とある青年がそう呟いたところで、がっつり剣が突き刺さったが些細な事。
「今度紹介してくださいね!」
「ああもう、わかりました! わかりましたから離れてください!」
まあ結局のところ。
完全に拒絶できない彼女は、色んな人が集まるグランサイファーに馴染んでいくのだった。