PhantasyStarOnline2-IF-「裏切りのユウ」 作:あるふぃ@ship10
「.......ウ.......ユウ........ユウ君..........ユウ君!!!!」
僕を呼ぶ声が聞こえる。
戻ってきた意識をバネに、ゆっくりと目を開ける。
「...........ろん.......?」
自身の名前を呼ぶ声を聞いて、彼女はほっと息をつく。
「うん......私だよ......ろんだよ......ユウ君......」
ゆっくりと起き上がり、周りを見渡す。
おそらく、あの時ぶつかりあった衝撃波で、相打ちになったんだろう。
近くに、蝉さんとまリスさんが倒れこんでいる。
「蝉さんもまリスさんも、体内のフォトンを使い切って気を失っているだけみたい。市街地の各所で出現した閃機種も、今はいなくなって、被害を受けたアークスたちの救助活動が行われている。救難信号を送ったから、ここにもじきに、他のアークスが救助に来てくれるよ。それと...」
ろんは話を続ける。
「ユウ君が去ったあと、こっそりあるふぃさんの後ろをついていってたもちさんが、急いで救助してくれたみたいで、メディカルセンターからの話だと、一命を取り留めたみたい。なんでももちさん、迷子になってるところにあるふぃさんが一人走っていくのを見かけて、あとを追っていたみたい。」
ろんの言葉を静かに聞く。
「そう.......あるふぃさんが......」
良かった....本当によかった.....
ユウは思わず、安堵のため息を漏らす。
「でも.......よかった.......いつものユウ君に戻ってくれて.........」
「えっ.....?」
どうやら僕の目は、フォトナーになる前のいつもの青い目に戻っているようだ。
コートエッジのフォトンカラーも、赤からいつもの水色に戻っている。
「たぶん、まリスさんと蝉さんとぶつかり合った時に、ユウ君の中にあった、フォトナーとしての力を形成していたダーカー因子が浄化されたんじゃないかな....」
確かに、フォトナーになるために、僕はシバから深遠なる闇の因子の一部を貰い受けた。
その因子が、あの時の衝撃で浄化されたというのか...
それになんだろう.......力がみなぎる.......まさかこのフォトンの流れは.......
「まリスさん......蝉さん......?」
3人の剣がぶつかり合ったあの時、もしかしてあの2人は、僕にフォトンを託していた....?
狙ってやったのか、それとも奇跡が起きたのか。
この力なら....きっと.....
「まリスさん.....蝉さん......少し、力を借りますね。」
小声でつぶやいた声はろんには聞こえず、無反応だったが、改めてユウは、ろんに呼びかける。
「ねぇろん」
「なぁに?ユウ君」
隣に座り込んでいるろんに、僕はそっと抱擁をする。
「っっっ!?!?!?!?」
ろんの心臓の鼓動が早くなっているのが伝わってくる。
顔は見えないが、きっと赤面しているんだろう。
「ろん.........ごめんね.........心配かけちゃって........」
「うっ........うっ........ばか!....ばかばか.....!!ユウ君一人で抱え込もうとして....」
耳元でろんが泣いているのが分かる。
「もうあんな無茶したら、絶対に許さないんだから.....!!!」
ろんは力いっぱいユウを抱きしめる。
「ちょ.....苦しいよ......ろん.......」
「だめ........しばらくこのままでいて.........」
しばらくの沈黙のあと、ろんが口を開く。
「ねぇユウ君、これからはずっと一緒にいてくれる.....?」
「..................」
「.........ユウ君?」
返答が来ないことに、ろんは不安を感じる。
「.......うん.......これからはずっと一緒にいてあげる。」
少し間を置いて、ろんの質問に返答する。
「だから今は.........少しだけ.......眠っていて?」
「......えっ?」
ユウはろんの首のうしろをトンッと叩き、ろんの意識を失わさせる。
「あっ.......────────」
意識を失ったろんを、ゆっくりと横にさせる。
「ごめんねろん........僕....."もう1度だけ、みんなの為に頑張るよ"......」
────────────────────────────────────────
ピッ......ピッ......ピッ.....
無機質な音が、脳裏を通り抜けていく。
ゆっくりと目を開けると、そこは、メディカルセンターのベッドだった。
心拍計の音とは別に、ロビーで流れているアナウンスがかすかに聞こえる。
『終の女神、シバの消滅を確認.....!繰り返す!終の女神、シバの消滅を確認.....!』
シバを....倒した.......?いったい誰が.....
起き上がろうとしたろんは、自分の首に、身に覚えのないネックレスがかけられていることに気づいた。
「このネックレスは......なに.......?」
ネックレスにぶらさがっている金属をてのひらに乗せると、かすかにだが、とても大事な、とても大切な人のフォトンを感じられた。
それと同時に、気を失う直前の言葉が、記憶によみがえってくる。
─「.......うん.......これからはずっと一緒にいてあげる。」
─「ごめんねろん........僕....."もう1度だけ、みんなの為に頑張るよ"......」
「そんな.......違うよ.......ユウ君..............そんなの........ずるいよ.........」
少女はメディカルセンターのベッドルームで1人、泣き崩れる。
少年の思いが籠った、サクラを象った金属のネックレスをその手に握りしめながら。