PhantasyStarOnline2-IF-「裏切りのユウ」 作:あるふぃ@ship10
シエラから受信した指定ポイントまで駆け抜ける。
ここまでの道中に閃機種の反応は無く、はるか遠くからアークスと閃機種の戦闘音が聞こえてくるぐらいには静かなものだった。
(まるで招かれているような...)
そんな不安を抱きながら進んだ先に、1人佇む少年。
「まリスさんも来ると思っていたのですが...あなただけでしたか、あるふぃさん。」
背を向けていて顔は見えなかったが、その聞き覚えのある声に、彼の名前を呼ぶのは容易かった。
「ユウ...」
必死に"あり得ない"と否定し続けていたものが崩れ去る。
今まさに最悪の状況が目の前で起きている。
《 ユウの裏切り 》
ウルからの通信、アークス間で浮上する噂、シエラの言葉...
今まで必死に否定してきたものを、目の前の現実が確かなものにしていく。
だが、覚悟していなかったわけではない。
あるふぃは振り返ったユウに語りかける。
「君は最奥に向かったと通信があった。その場で何があった?シバに何を吹き込まれた?」
「あるふぃさん、僕はただ、この世界に絶望しただけです。シバに何かを吹き込まれたわけではありませんよ。」
「...マトイはどうした?」
あるふぃの質問に、ユウは一瞬沈黙する。
「...マトイは、僕がこの手で殺しました。」
「っ!!」
ユウの衝撃的な言葉に、思わず感情が揺れる。
心拍数が上がり戦闘意欲が高まる。
沸きあがる感情を抑え込み、あるふぃは会話を続ける。
「...君はそれでよかったのか?愛し合っていた人を手にかけ、共に過ごしてきた仲間を裏切る。それが本当に君が望む姿なのか?」
「僕は知ってしまったんですよ。この世界の虚しさを。繰り返される悲劇を。これ以上この世界に希望が宿ることはないんです。だからせめて、僕自身の手で壊すんです。この不完全な世界を。」
ユウの"世界を壊す"という意思に、迷いは無かった。
もはや、私がどんなに声をかけたところで、何かが変わるわけでもない。
「そうか...ならばナウシズの守護輝士として、君の友人として、私には君を止める義務がある。」
背に携えていたグリムアサシンを手に持ち、武器を構える。
「僕を止める、ですか。ナウシズの"黒き死神"と言われたあなたが、そんな甘い考えでいいんですか?殺す気で来てください。僕もあなたを、殺す気でいかせてもらいます。」
どこからともなくコートエッジを出現させ、ユウも武器を構える。
フォトンコートで包まれたその刃は、かつてユウが扱っていた色とは違い、血のように赤く染まっていた。
ひしひしと伝わってくる殺気。間違いなく彼は、私を本気で殺そうとしてきている。
もはや時間稼ぎなどと言っている場合ではない。
手を抜けば、確実にもっていかれる。
「...そうだな。今の君を相手に、手加減をする余裕はないだろう。ならばこちらも、初めから本気でいかせてもらう。」
目を閉じ深呼吸をする。
抑えていた感情を解放させ、心拍数を再び跳ね上げる。
目の色は赤く染まり、開けた瞳に若干の稲妻が走る。
高まる戦闘意欲とは裏腹に、冷静に自分に言い聞かせる。
なんとしても、ここで止めなくてはならない。
なんとしても、ここで負けるわけにはいかない。
なんとしても、"あの頃のユウに戻す"。
「覚悟はできたようですね。」
「あぁ...ここで必ず、おまえを止める!!!!!」
絶対に起きてはならない死闘が、始まる。