PhantasyStarOnline2-IF-「裏切りのユウ」 作:あるふぃ@ship10
激しい戦闘を終え、ナウシズ中枢部へと歩みを進める少年。
歩く彼の視界は、無意識に流れる涙で前が霞んでいた。
マトイを手にかけた時を最後に、泣くのは最後だと自分の中で決めていた。
世界を壊すという目的に、感情は余計なものでしかない。
シバのように、仲間がやられても動じることなく、ただ自分の目的のために動く。
たとえそれが、共に過ごした仲間を手にかけることになっても。
「シバもなかなか、酷な指示をしてきますね...」
誰もいない道を、1人歩きながらつぶやく。
ー「いいですかユウ。ナウシズの守護輝士であるあの二人だけは、確実に殺しておきなさい。それが、あなたにとっても良いけじめになるでしょう。」
ここに来る前にシバにかけられた言葉は、冷徹で、残酷な内容だった。
(あれは間違いなく、僕を試しているんだろう。僕が本当に信用に足る存在か。そして、目的のためなら、どこまでも冷徹になれるかどうか。あるふぃさんはなんとか倒した。あとは...)
ナウシズの守護輝士である2人には、その風貌と功績から二つ名がある。
「黒き死神」あるふぃ。
そして、「白き戦姫」まリス。
おそらく当初の指示では、2人でこちらに向かわせようとしたはずだ。
だがそれを、あるふぃさんが断った。
自分が敵になったことを薄々分かっていたから、他の皆に自分の姿を見せず、1人で止めようとしたのだ。
だがその優しさが、かえってその身を滅ぼした。
コートエッジを突き刺した時、掠れるぐらいに小さな声で放った最後の言葉ですら、自分以外のことを気にかけていた。
あの時刺した感触が、今でも忘れられない。
たとえ1人目だろうと2人目だろうと、共に戦ってきた仲間を手にかける辛さは、到底耐えられるものではない。
(それでも...僕がやらないと...この無慈悲な世界を...終わらせないと..)
ユウは自分に言い聞かせる。
これは、救いようのないこの世界を終わらせるための犠牲。
たとえこの手がかつての仲間の血に染まろうとも、進まなければならない道。
でも、それでも理解できないことが1つだけある。
「どうして2人とも、僕のことを恨まないんだ...」
コートエッジで突き刺した時、彼女たちから流れ込んでくるフォトンに、恨みや憎しみといった負の感情は一切なかった。
赤く染まったコートエッジを見ると、マトイが最後に放った言葉が再び頭の中を駆け巡る。
ー「.........これがユウの選んだ道だから.......私は恨んじゃいないよ.........だから.........生きて.......?」
「どうして...どうして2人とも......最期まで僕に優しいんだ...」
その優しさがかえって残酷なことを、彼女たちは知らない。
ユウは溢れ出ようとする涙を必死に抑え、なおも自分に言い聞かせる。
(でも....これでいいんだ...この道が、皆を救う未来に繋がるんだ...)
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しばらく進んだ先で、ユウは2人の少女と出会う。
少女たちは足を止め、ユウへ話しかける。
「どうして....どうしてなんですか.....ユウさん.........!!」
2人の少女は、目の前の光景に動揺を隠せずにいた。
「皆を救うためですよ、フィムさん、クオンさん。」
変わり果てた姿に、信じられないとばかりに言葉を失うセラフィム。
代わりに、クオンが口を開く。
「シエラさんからの通信で、新手のフォトナーの元へ向かったあるふぃさんの位置情報が突如消えたと連絡がありました。...念のため聞きますが...あるふぃさんはどこにいますか?」
位置情報が消えた。
おそらくシバが、あの場周辺に通信障害を引き起こしていたのだろう。
そして、念のために聞いた質問。
きっと返ってくる答えは予測済みだろう。
ユウの手に持つ血塗られたコートエッジが、すべてを物語っている。
嘘をつく必要はない。
真実を伝えればいい。
「...僕が殺しました。今さら救助に向かっても、手遅れですよ。」
ユウの返答に、再び2人は明らかな動揺を見せる。
「あるふぃさんが......そんな......」
ついには膝を崩し座り込むセラフィム。
その様子を見ながらクオンは言葉を返す。
「....そうですか.....分かりました。では、一緒に戦った友として.....ユウさん.....ここであなたを止めます。」
状況を素早く飲み込んだクオンは、武器である桜剣プルクラケウスをユウへ構える。
「フィムさん、いつまでそうしているつもりですか。目の前にいるのは私たちが倒すべき敵、フォトナーです。ここで止めなければ、さらに被害が広がりますよ。これ以上、仲間たちを危険にさらすわけにはいきません。私たち2人で、止めるんです。」
座り込むセラフィムへ冷たく言葉をかけるクオン。
もちろん、今まで共に過ごし戦ってきた仲間と、こんな形で刃を交えるのは間違っていると分かっている。
だがこの状況で、そんな甘いことは言っていられない。
今もなお、市街地での閃機種の攻撃は続いている。
たとえ相手が友であっても、この状況を打開するには戦うしかない。
クオンの覚悟を感じ取ったセラフィムは、意を決し、立ち上がる。
「分かりました.....自分は後方から支援します。それと、他の人たちにも連絡を.....」
セラフィムも自身の武器であるモタブの禁書を構える。
「はい、お願いします。それと....危なくなったら、迷わず逃げてください。そうなった場合は、私が時間を稼ぎます。」
クオンの言葉に一瞬ためらいを見せたが、セラフィムは自分たちが置かれている状況を理解し、小さくうなずく。
「作戦会議は終わりましたか?それでは、始めましょうか。」
今まで共に過ごし、共に戦ってきた仲間同士が争う。
これより先は、連鎖する絶望の追憶。