PhantasyStarOnline2-IF-「裏切りのユウ」 作:あるふぃ@ship10
「ぐっ...........」
ユウは1人、足を引きずりながら、ナウシズの奥へと進む。
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アリシアとALiCiA、本気の2人の攻撃は、直前までの戦闘よりも遥かに激しく厳しい攻撃だった。
2人の連携にユウは防戦一方。
ここに来てから連戦だったことによる疲弊もあり、攻撃を凌ぎ切ることに精一杯だったユウは、ついに膝をつく。
(....!!)
その勝機を見逃さず、ALiCiAはアリシアに声をかける。
「アリシア!!!!!!」
アリシアも、今が全力を叩きこむ時と、ALiCiAに小さくうなずく。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」
ALiCiAは持っていたシエンノオオダチを大きく振り回し、渾身の一振りをユウへぶつける。
咄嗟にコートエッジで防ぐユウだったが、背後に回ったアリシアの攻撃を受け止められる余裕はなかった。
「ユウ君..........これが私たちの..........思いだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
両手に持つ剣を1つに合わせ、纏わせていた光の刃をさらに大きなものへと変化させる。
アリシアの渾身のフルコネクト。
その一撃は確実に、ユウを捉えていた。
はずだった。
ガキンッ!という大きな音と共に、辺り一面に煙が舞い上がる。
舞い上がった煙がおさまっていき、視界が晴れた3人の目の先には、見覚えのある創世器が、アリシアのフルコネクトからユウを守っていた。
「これは......明錫クラリッサⅢ.......?」
アリシアが、信じられないとばかりに声を発する。
「はは..........そう.......なんだね..........ユウ君........君はもう..............本当にもう.......あとに引けないんだね..............」
納得したように話すアリシアの声は震えていて、泣いていた。
明錫クラリッサⅢとぶつかりあっていた大きな光の刃は形を崩し、それと同時にアリシアはその場に倒れこむ。
「ふふ........馬鹿だよユウ.............そこまでされちゃったら.............もう私たちだけじゃ...........どうしようもないじゃない..........」
アリシアと同じく、状況を理解したALiCiAも、声を震わせていた。
手に持つシエンノオオダチは、グレンノオオダチへと姿を戻すと同時に、アリシアと同じように、その場に倒れこんだ。
「マトイ..........ありがとう.........」
突如目の前に現れた明錫クラリッサⅢに礼を言うと、出現した時と同じように、パッと目の前から消え去った。
2人はおそらく、体内のフォトンを使い切ったのだろう。
ー「.........これがユウの選んだ道だから.......私は恨んじゃいないよ.........だから.........生きて.......?」
マトイにかけられた最後の言葉が、再び頭の中を駆け巡る。
「そう.....僕は、生きなければならない.....僕にはもう.....戦い続けることしか.....許されていない.......」
ボロボロの体に鞭を打ち、再び立ち上がる。
たとえこの身が果てようとも、僕は戦い続けなければならない。
それが、僕が進むと決めた道だから。
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「見つけたわよ、ユウ」
足を止め、声のする方へ向く。
その声は、僕が一番尊敬していて、一番憧れている、ナウシズ最強のヒーローだった。
「まリスさん.......蝉さん.......ろん.......」
「シエラから聞いたの。あるふぃの位置情報が消えたって。それに、ここに来るまでにもいろんな情報が入ってきた。あなたは本当に、戻ってくるつもりはないのね。」
簡潔に、淡々と話すまリスの言葉には、憤りなどといった感情は一切なく、ただ重く、冷たかった。
「......はい。僕はもう、そちらに戻るつもりも、引き返すつもりもありません。」
僕も簡潔に言葉を返す。
「分かったわ。武器を構えなさい。始めるわよ。」
不安や動揺など微塵も感じさせず、まリスは素早く、エクスカリバーを構える。
「割り切るのが早いのは、さすが守護輝士といったところですかね.....こちらとしても、助かります。」
こちらも持っていたコートエッジを、3人に向け構える。
「.....ユウ.......最期にもう一度だけ聞きます。これが本当に、あなたの望む道なのですか?」
今まで口を開かなかった蝉時雨が、ユウに質問を投げかける。
「蝉さん.......そうですよ.....これが僕の......僕が望み、歩む道です。」
蝉時雨は少し目を閉じ、しばらくして言葉を返す。
「分かりました。こうなってしまった説明はあとで、ゆっくりと聞かせてもらいます。まずはユウ、あなたを止めます。」
蝉時雨も覚悟を決め、光跡剣ディメシオンを取り出す。
「ユウくん......やっぱり私.....信じられないよ......だってついこの前まで......皆で笑って過ごしてたじゃん.....」
声が震えている。今にも泣きだしそうなか弱い声に、僕は冷たく言葉を返す。
「ろん、僕はシバの手をとったあの時から、変わったんだ。僕はもう.......この前まで皆で過ごしていた僕じゃない。」
「でも.......やだよ......私..........こんな形でユウくんと戦いたくない....!!!」
それでもなお、目の前の状況を受け止めきれないろん。
震えて動けないろんに、蝉時雨は声をかける。
「ろん、戦えないのなら、下がっていなさい。あなたまでもが無理して戦う必要はありません。」
「どうして蝉さんもまリスさんも、そんなすぐに受け入れられるの!?だってユウくんは.......この前まで一緒に過ごしてきた仲間なんだよ!?」
ろんの感情が爆発する。
涙を流し、声を荒げる。
「ろん、仲間だったアークスが、敵対するようになったのは今回だけではないのはあなたも知っているでしょう。もはやこれは、感情論でどうにかなる問題ではありません。」
「でも.......でも........!!!」
反論する言葉こそ出てこないが、それでも納得はしたくない。
ろんはもう、戦意を完全に失くしていた。
「これ以上の話し合いは時間の無駄です。ろん、あなたは下がっていなさい。ここは私とまリスで戦います。まリスもそれでいいですよね?」
「えぇ、大丈夫よ。問題ないわ。」
蝉時雨の問いかけに、まリスは簡潔に答えた。
だが、答えると同時に、武器を持つ手が震えていたのを、蝉時雨は見逃さなかった。
(まリス........やはりあなたも......)
彼女は、守護輝士であるが故に、自身の感情を押し殺している。
本当はまリスも、ろんと同じぐらいに戦いたくない気持ちでいっぱいのはずだ。
それでも.....ユウを止められるのは、現状まリスをおいて他にはいない。
それを理解しているからこそ、余計な言葉を交わさず、守護輝士としての責務を全うしようとしている。
ならばできる限り早く、この地獄を終わらせなければならない。
長引けば長引くほど、それぞれの心に傷をつけていくだけだ。
「お待たせしました、ユウ。始めましょうか。」
蝉時雨の言葉に、ユウも淡々と返す。
「.....はい。行きますよ、まリスさん、蝉さん。」
(お願いです......2人とも.......僕を早く......止めてください.........これ以上の悲劇はもう.......耐えられない.......!!!!!)
ユウ、まリス、蝉時雨。
誰よりも早く出会い、誰よりも早く深まった友情。
3人のそれぞれの感情が、刃を通してぶつかり合う。