PhantasyStarOnline2-IF-「裏切りのユウ」 作:あるふぃ@ship10
―ナウシズには、とてつもなく腕の立つ、ヒーローの守護輝士がいる。
昔、そんな噂がウルにも届いた時があった。
各艦にはそれぞれ、アークスの中でも特に実力に優れ、多大な功績を立てた者に、「守護輝士」という役職が与えられる。
指示がない限りは各惑星の調査も探索も自由。専属のオペレーターもいて、衣食住も他のアークスたちより優れている。
そんな夢のような役職を与えられたばかりの僕のところに、例の噂が流れてきた。
僕は噂を確かめに、姉ちゃんのミカエラに無理を言って、ナウシズへの一時渡航許可を貰った。
ナウシズに来て、初めて出会った人は、姉ちゃんの知り合いで、蝉時雨という女性だった。
彼女はたまに怖い部分があるが、普段はとても優しく、来たばかりの僕にとても親切に接してくれた。
ナウシズに滞在してから2日目。
さっそく、腕の立つヒーローと噂の守護輝士の元へ案内されることになった。
蝉時雨に案内され、訓練用のVR空間へと足を運ぶ。
そこには、僕より小柄ではあったが、自身の一回りも二回りも大きなソードを軽々と振り回す一人の少女がいた。
「あの人が.....ナウシズの守護輝士ですか?」
「そうですよ。さぁ、挨拶に行きましょう。」
再び、僕は蝉時雨に連れられ、訓練場へ降りる。
「ふぅ、今日はこのぐらいにしておこうかな...」
ちょうど訓練が終わったようで、彼女は一息ついていた。
「訓練お疲れ様ですまリス。あなたに会いたいという人がいましたので、連れてきましたよ。」
蝉時雨は労いの言葉を彼女にかける。
「ありがとう蝉。ん?あなたもしかして....」
彼女はまじまじと僕の顔を見つめ、必死に思い出そうとしている。
うーん...と悩む彼女に対し、蝉時雨がそっとフォローをする。
「彼は最近ウルの守護輝士になった、ユウといいます。この前のアークスの定例会議で、顔と名前が挙がっていた人ですよ。」
蝉時雨の言葉に、彼女はぽんっと手を叩く。
「あーーーっ!!!!そうそうそうウルの!!!!あたしはこのナウシズの守護輝士で、まリスっていうの。よろしくね!ユウ!」
「えっと....ウルの守護輝士になったユウです...こちらこそよろしくお願いします。まリスさん....」
これが、僕と蝉さんとまリスさんの、最初の出会いだった。
お互いに挨拶を交わしたのち、僕とまリスさんは、蝉さんの提案で、エキシビションマッチをすることになった。
強さを知りたいのなら、直接戦うのが手っ取り早いと、蝉さんは言った。
結果は、まリスさんの圧勝。
僕の攻撃がまったく当たらず、ヒーローの使用武器であるソード、ツインマシンガン、タリスを巧みに使いわけ、終始一方的な展開だった。
訓練後の疲れもあったはずなのにこの実力差...噂は本当だったと、その時確信した。
それ以来僕は、まリスさんを目標に、守護輝士として、ヒーローとして、自分を磨き続けた。
その後、度々ナウシズへ出向くことがあって、蝉さんやまリスさんの他に、いろんな人に会うことができた。
あるふぃさん、セラフィムさん、クオンさん、アリシアさん、ALiCiAさん.......そしてろん.........
まリスさんを中心に広がる輪に、僕が入れることになったのは、とても嬉しかった。
なかでもろんとは、とても仲良くしていて、彼女の声を聞くたびに、不思議と気分が落ち着いて、安心できていた。
こんな幸せな日々がずっと....ずっとずっと続いてくれればいいと.....願っていた......
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「ユウ.......あなた......泣いてるわよ....」
「っ!?」
幾度となく刃を交え、激しい戦いを繰り広げていたまリスが唐突に放った言葉に、僕は咄嗟に距離を取った。
言われるまで気づかなかった....僕は...戦いながら.....泣いている......?
「ねぇユウ.......あなたがしたいことって、本当にこんなことなの.....?」
まリスは武器を降ろし、話し始める。
「マトイとあるふぃを殺して、セラフィムにクオン、アリシアやALiCiAを傷つけて、あたしや蝉と戦って.........ろんを泣かせて......」
「..................」
返す言葉が浮かばない。
確かに僕は、シバの手をとった。
でも本当は......なんとかできる未来があったのではないか?
こんなことにならずに済む方法が、あったのではないか?
本当にこれが、僕の望んだ道なのだろうか?
「あたしはねユウ。こんなことにならずに済む未来が、絶対あると思ってる。だってあたしたちアークスは、どんなに無理と言われても、どんなに不可能と言われても、なんとかしてみせるって思いで、今までの窮地を乗り越えてきた。」
まリスの足元から、バチバチと稲妻が走る。
「だからねユウ......本当のことを言って。あなたの本当の願いを。あなたが望もうとした未来を。」
「僕は..............」
今まで生きてきた中での大切な思い出が頭の中を駆け巡る。
どれも全て、かけがえのない、決して捨てることのできない思い出。
まリスさんは言った。
どんなに無理と言われても、どんなに不可能と言われても、なんとかしてみせるという思いで、アークスは今までの窮地を乗り越えてきたと。
僕だってそうだ。
アークスになってから様々な困難にぶつかってきた。
それでも僕は諦めず、抗い続け、困難を乗り越えてきた。
なんでこんなに大事なことを忘れていたのだろう.......
そう、僕の願いはいつも変わらない。
「僕は..........皆と........アークスの皆と.......楽しく笑って過ごしたい.......!!ろんにマトイ、まリスさんに蝉さんにあるふぃさん、フィムさんにクオンさん、アリシアさんにALiCiAさん.......ナウシズの皆とも......もっとたくさん笑い合っていたい!!!!!!!!」
泣きながら叫ぶユウの周りに、衝撃波が発生する。
「よし!!!!ならその思いをすべて、あたしと蝉に思いっきりぶつけてみなさい!!!!!!蝉!!!!!!準備はいいわね!!!!!!」
周囲に稲妻を走らせながら、まリスは蝉に問いかける。
「えぇ......!!枷をすべて外します.....!!!!ユウ........あなたにはこのあと、私の気が済むまでお話に付き合ってもらいますからね......!!!!!!」
見た目こそ変わらないものの、蝉時雨のフォトンが、大きく膨れ上がったのを感じた。
「それじゃあ........行くよ!!!!!!」
まリスの掛け声を合図に、3人は一斉に足を踏み込み突撃する。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
3人の思いが、願いが、全身全霊の一撃が、奇跡を引き起こそうとしていた。