変態だけど異世界で美少女になったので赤髪少女や巨乳エルフ、その他大勢とたわむれます。 作:ナムヲ
ここはアステロイドから近い、鉱山。
この場所に移送された俺に言い渡された刑罰は『1週間の鉱山労働』だった。
本来なら1ヵ月ほどの予定だったらしい。
だが留置所で夜な夜な侵入してくるアンネへと『お金貸してくだしゃい……』とダメ元で頼んでみた所。
アンネは下心有り有りで『フヒヒ!! これで良いか?』と言いながら、金貨200枚、200万を肩代わりしてくれた。
そのおかげで刑期が短くなっている。
ありがたいけど後が怖い……、まるで闇金から借りたお金のような心境。
取り立てなどはどうなるのだろうか……。
そんな一抹の不安を抱えつつも、今日も元気良く鉱山労働に従事していた。
◇
『おはようございまーす!! 今日も安全第一で作業を行いましょう!! アステロイド式体操始めまーす!!』
現場監督からの大きな掛け声と、体操を終えて早数時間……。
周囲の作業員は各々の鉱山作業を行っている姿が垣間見える。
籠を背負い運ぶ者。
ツルハシやピッケルを持って鉱石を掘る者。
休憩している者。
他人にダイナマ岩を運ばせて、腰をクネクネしつつ、キャバ語録で応援している者等、様々だった。
俺の担当する仕事は、ダイナマ岩業者が搬入したダイナマ岩置き場から、ダイナマ岩をコロコロして、ダイナマ岩を鉱山内の所定の位置に、ダイナマしていくお仕事だった。
再度、ダイナマ過ぎてダイナマがなんなのか分からなくなって来る。
だが、ダイナマはダイナマなのでダイナマなのだろう。
そんな脳内でダイナマが埋め尽くされた俺は、作業着姿で腰をクネクネ動かしつつ、隣のドワーフのダンチさんへとウィンクしている所だった。
「私ぃ~、ダンチさんのぉ~、……このぉ~? 腕とかぁ~、すっっっごくぅ~、逞しいなってぇ~? ……キャピ☆」
「そ、そうかのう? ……フヘヘ、もう3日目か、慣れたかのぅ?」
「はい~、ダンチさんとかぁ~、皆さんのお陰でぇ~す! ……キャピ☆」
問題ない、俺のキャバ語は今日も通用している。
ノーパンバニーやらメイド服やらで鍛えた図太い精神。
そして上司につれられたキャバクラでのキャバ語録。
それらが合わさり、混じり合い、驚異的な速度で俺は成長しているのを実感する。
……まぁ、あんまり嬉しくないけども。
「ありがとうございますぅ~!! ……キャピ☆」
感謝しつつ、ウィンクを欠かさない。
そして頬を赤らめるダンチさん。
彼の見た目は、筋骨隆々で長いヒゲを生やし、俺より低い背丈。
他のドワーフさんの見分け方等は……ヒゲの長さ位しか分からない。
典型的なイメージと、そう変りないドワーフと言う種族。
どっかの体臭で強くなったり弱くなったりする、青髪エルフとは大違いだ。
腕を組み『うんうん』と頷く俺に、ダンチは不思議そうな顔で聞いてくる。
「どうしたんじゃ? なんかあったんかのう?」
「いえ~、私ぃ~、全然力がなくてぇ~? すっごくありがたいって言うかぁ~。そんな感じですぅ~、……キャピ☆」
作業着を腕まくりしつつ、白く細い腕をアピールする俺。
それを見るダンチさんは納得したようだった。
「……お嬢ちゃんは非力じゃのう! 仕方ない、こういうのは俺達ドワーフの仕事じゃからな!」
「わぁ~……、逞しいですぅ~!! ……キャピ☆キャピ☆」
さらに腰をクネクネしつつ、さらにパチパチとウィンクをする。
それを見たダンチさんは『フン!』と言いながら、ダイナマ岩に力を籠めてコロコロする。
「いいって事じゃ! 女の子を助けるのに理由何ていらんのよぉ!」
恰好良い事を言うのだけど、その視線は俺の腰や胸へと釘付けだ。
だが気にするほどの事ではない、バイトのお陰でもう慣れた。
だから俺はさらに。
「キャ~、ダンチさん素敵っ!! もうそのヒゲがダンディでぇ~、そこはかとなくぅ~、……なんかこう……素敵っ!!」
「それ、褒めてるのかのう……」
「勿論ですぅ~!! すっごく素敵ですぅ~!!」
何となく褒める。
俺だって褒められたら嬉しい。
フレイとアイギスも褒めると嬉しがる。
そんな適当な誉め言葉に、満更でもないダンチさん。
出会って3日なのだけど、俺の分のダイナマ岩を、ダンチさんが代わりにコロコロしてくれている。
……初日は、岩を一人で運んでみようと思ったのだけど、無理だった。
真面目に罪を償うつもりで、働いていたのだけど、マジで重い。
もう完全に動かない、これでもかって位に『グヌヌ……』と力を籠めるも、俺のクソ雑魚腕力ではピクリとも動いてくれない。
勿論、ステータスさんに頼もうと思ったのだけども『留守です、折り返しお電話ください』と取り合ってくれない。
そして途方に暮れていた俺に、他のドワーフさんが『どうしたのじゃ?』と声を掛けられて、今に至る。
だから俺は、腰をクネクネして
「私のぉ~、仕事を~、代わりにぃ~、やってくれるなんてぇ~? 素敵っ!!」
さらに腰をクネらせつつ褒めて褒めて、褒め捲る。
ダンチさんも満更ではないようで、『フヘヘ』から『グヘヘ』に変わっている。
……便利すぎるだろう、このウィンクと腰クネクネとキャバ語録。
マジで便利すぎて、もう癖になっちゃいそうだった。
今の俺なら連続で☆が飛ばせると思う、やってみるか……。
そんな事を考えながら俺とダンチさんは、鉱山内へと入って行った……。
……中は薄暗く、ジメッとして、足場が悪い。
壁に埋まる鉱石の大半は、オスタイトのようで純度が低いのだろう。
誰も採掘する様子はなく、放置されている。
最奥には、超希少な鉱石とかが壁の中に埋まっていると聞いた。
それはミスリルやオリハルコン等、アニメやゲーム等の超有名な鉱石。
俺にとって、興味をそそられるのは仕方ない事。
ミスリルで出来た剣とか、オリハルコンで出来た剣とか、凄くカッコいいと思う。
アンネが持って居た恰好良い剣なんか、ミスリル製らしく『スパスパ切れる』と本人談。
……羨ましい事この上ない。
そんな事を考えながら俺は、ダンチさんへとついて行く。
足場が悪いのに、器用にコロコロとダイナマしていくダンチさんは突然、足を止めた。
何やら真剣な面持ちで、俺に聞きたい事があるようだ。
「それで、お嬢ちゃんはどうしてこんな男ばっかりの所に来たのかのう、何かやったんかのぉ?」
「……」
なんだろう、凄く答えにくい、いや、言いたくない。
……鉱物偽造で取っ捕まりましたとか、恥ずかしくて言えない。
さらにヤバイ奴からお金を借りて、刑期を短くしましたなんて言える訳がない。
引き攣る顔面を無理やり抑えながら俺は。
「えぇ~、それはぁ~、……色々ですっ! ……キャピピピピ☆」
「色々かぁー、なら仕方ないのぅ!」
ちょっとだけ顔に影を作りながら、連続ウィンクで誤魔化す。
「……そうですぅ~、乙女の秘密なんですぅ~! ……キャピ☆」
乙女とか言っておけばなんとかなるだろう……多分。
そんな事情を知らないダンチさんは『ムホホ!』と笑いつつ、ゴロゴロとさらにチカラを増して、鉱山内の奥までダイナマしてくれた。
◇
荒れた岩場へと来ているアタシ達、今は二人でクエストの真っ最中。
ミソギが離脱して3日程が経った今、二人で散歩がてら、ゆっくり歩いてここまで来ていた。
今は、アイギスに索敵して貰っている最中。
先ほど、アイギスの感知スキルに引っ掛かったモンスターがいるようで、瞬時に戦闘態勢を取っている。
「フレイさん、ダイナマイーター見つけました! ……あそこです! 擬態が解けてます!」
アイギスが指を差す先、そこにはダイナマ岩を鋭い牙でガリガリと削って食べる、赤銅色の大きなトカゲ。
いつもなら擬態して見つけにくいモンスター。
だけど食事中は擬態を解いて無防備な姿を現す事は知っている。
アタシの隣で、アイギスはしゃがみ込み、背中から新調した鉄の弓と矢を番えつつ、ぼそりと呟く。
「……ミソギさんいないと、寂しいですねぇ……」
「そうねぇ……あの子が居ないと寂しいわねぇ……」
萎びた耳がアイギスの心境を読み取れる。
明らかに元気がない……。
それもそのはず、この子はミソギに懐いているみたいで、いつも一緒にいる。
『仲間だから!! 仲間だから!!』と言われながら、野菜を口にねじ込まれて涙目になるのに、決して酷い事などを言わないアイギスは、いい子だと思う。
「ホントですねぇ……、ミソギさんが居ないと物足りないですねぇ……えいっ!!」
アイギスは、引き絞った弓から矢を放つ。
空を斬りながら、それはダイナマイーターの胴体へと『プスッ』と刺さる。
すると『ギョエェェ』と鳴いて、二足歩行になりながら、アタシ達へと向かって来るのが見えた。
杖を左手に、そのままの状態で、右手を前に突き出す。
念じるは、火の中級魔術。
「アタシがやるわ、……ファイアーボール!!」
火球はダイナマイータへと直撃する……。
そして火だるまになって、転げまわり、煙を放つダイナマイーター。
まだピクピクと動いているのだけど、一応トドメの為に2~3発、ファイアーボールを打ち込んだ。
アイギスが若干引きつつ、アタシへと振り向く。
「結構、念入りにやりますね……、けどさすがです! あの威力の火球は、やっぱりそのメスタイトのお陰ですか?」
「……ありがとう。そうね、それもあるのだけど……やっぱりレベルが上がったからじゃないかしら?」
アイギスは褒めてくれているようで、耳がぴょこんと跳ねている。
……だけど全然足りない、褒められ足りない。
ミソギだったら『マジぱねぇっす!! フレイさんマジ最高っす!! あのファイアーボールの軌道がマジリスペクトっすわ!!』と、あの可愛らしい顔を崩して、間抜け顔で褒めてくれるのに。
「確かレベル15でしたっけ? 凄いですね、僕なんて、まだ10なのに……」
「大丈夫よ? アイギスもその内、沢山レベルアップしていくと思うわ。だから、そう悲観せずに一緒に頑張りましょう?」
「そうですね!! お風呂に入るのを我慢すれば、もう少し強くなるのになぁ」
真剣に悩むアイギスなのだけど。
……夏場とかヤバそうね……。
そんな失礼な事を思いながら、アイギスへと真顔で答える。
「……毎日お風呂には入りなさいな? またミソギに『しゃぁぁぁ!!風呂行くぞぉぉぉ!!』とか言われてゴシゴシされるわよ?」
「……すっごく言い方が似てますね!! けど、あのゴシゴシ、すっごく痛いから、もうちょっと手加減して欲しいです……。あっ、クエスト完了してました、後は報告だけみたいです!」
アイギスはカバンから取り出したギルドカードを見せてくる。
そこには『5/5』と表示されていて、クエストの終わりを告げていた。
「それじゃ、帰りましょうか。ミソギが帰って来るまで、後4日でしょう?」
「そうですね! 騎士団の人達が言ってました! けど、ちょっと不思議に思ってる事がありまして……」
「……何かしら?」
何やら神妙な面持ちで立ち上がるアイギスは。
「あの200万って、肩代わりしてあげられなかったのかなって思いまして……、僕達が使ってしまったのもありますが、やっぱりちょっと罪悪感が……」
「うーん、アタシも一応貴族の娘なのだけど、使えるお金はあまりないのよ。それに関しては、確かにアタシも悪い事しちゃったなって、思うわね……」
アタシ達はちょっとだけ雰囲気を落としながら、帰路へと歩く。
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