変態だけど異世界で美少女になったので赤髪少女や巨乳エルフ、その他大勢とたわむれます。   作:ナムヲ

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7 逆腹パン!?

 「……ぐぬおぉぉぉ……」

 

 呻く俺は今、フレイ宅のベッドの上。

 そこで、脂汗を垂れ流し、お腹を押さえて苦しんでいるのだが……。

 

 「……たちゅけて……たちゅけて……」

 俺は細く白い腕を、フレイと伸ばしたのだけど。

 「プフゥー!! だから言ったのにー、プフゥー!!」

 内に手を当て煽っている姿が、俺の瞳に映ってる。

 

 ……チクショウが!!。

 

 心の中で毒づいちゃうけど、俺の腹痛は変わらない……。

 

 「……おほぉぉぉぉ……」

 「プ、プ、プフゥー!!」

 悲惨な状態な俺に、フレイは煽り続けている……。

 

 何故そうなっているか、時は少し遡る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ここはお高めのレストラン。

 店内は煌びやかなドレスコードを着た客が、まばらに席へと座り、優雅に夕食を楽しんでいる光景が、俺の視界に映ってる。

 その店内の一画に居る、緊張気味な、場違いな恰好をするバニーガールの俺と、正面に座る赤色のローブ姿のフレイが席へと座り品を待っている所。

 

 アワワ、アワワ、ちょっと緊張してきたぞ……。

 

 何故なら、高級レストランでの食事なんてのは、人生で生まれて初めてだから。

 それでもって場違いな自身の恰好に、少しだけ恥ずかしい気持ちが湧いてくる。

 

 視線をキョロキョロと動かして、フレイに向き直した俺は。

 「なぁ、ここって……、超高いんじゃないの? 超お高いんじゃないの?」

 「そんなに高くないわよ? それよりもほら、お肉が来たわ」

 フレイの視線の先を同じように辿るとタキシードを着た店員が此方へとステーキを運んで来るのが見えた。

 その足取りは優雅で迷いなく此方へと向かってくる。

 

 「お待たせ致しました、此方はドル王国産最高級のフィレでございます」

 「あ、どうも」

 社会人の癖なのか、店員さんに頭を下げて、ステーキ皿を受け取る。

 

 バターが乗った美味しそうな肉の塊がジュウジュウと音を立ててそこにある。

 

 ミソギ自身テーブルマナーはある程度知ってはいるがもう既にお腹は空き過ぎていて齧り付きたい衝動に駆られている。

 口からはヨダレが伝い身体はもう限界だとばかりに食欲が理性を押さえつけていた。

 

 「は、は、早く食べよう! 熱いうちに食べよう!」

 「はいはい、それじゃいただきまーす」

 

 ナイフで一口サイズに切り分けるとすぐさま口へと放り込むと。

 その一口目の感想は『ヤバイ』だった、語彙力はない。

 肉が溶けるような感覚と柔らかすぎる肉にバターが上手くマッチして文字通り『頬が落ちる』と言う表現を身体で理解してしまう。

 

 「ヤバっ! ヤバっ! ウマ!」

 「美味しいでしょ? ここアタシのお気に入りなの!」

 

 口の中の肉をまき散らしながら感想を伝える俺にフレイは嬉しそうだ。

 自身とは違いフレイは優雅に食事を続けている。

 

 肉を頬張りながら食べ続けていると不意にお値段が気になって来る。

 美味しいくて柔らかい、絶対にお高いはず。

 

 「……このお肉……おいくら位するの?」

 「んー? えーっとね、ミソギのバニースーツと同じ位ね、あまり高くはないわよ?」

 

 …………え?。

 

 それを聞いた瞬間、俺の顔が青ざめた。

 

 ここに来る道中で、果物の屋台に掛かれていた数字がリンゴ一つが100Gだったような……。

 確か、日本のスーパーでもそれ位だった気がする。

 ……つまり1円=1Gだと思う。

 

 バニースーツ1着は2万G、つまりこのお肉は2万円位。

 そしてギルドで、スライム討伐で得たお金は10匹で銀貨4枚、4000G。

 このお肉1枚食べようとすれば、5倍スライムを倒さなきゃいけない……。

 

 ……ヤバイ、高い、すっげぇ高い。

 

 目の前のお肉は、社会人時代の俺の給料の10分の1もするようで。

 こんなお肉を気軽に食べられるフレイって、やっぱりお金持ちなのか?。

 

 俺は、恐る恐るフレイの顔を見ながら聞いてみた。

 「もしかしてフレイってお金持ちだったりする?」

 「そんな事ないわよ?これ位なら毎食出してるしね、だからいっぱい食べなさい」

 なるほど、無自覚か……。

 「……あっ、お金持ちなんですね」

 

 理解した、フレイはお金持ちだった。

 

 それも無自覚お金持ちと言う、俺みたいな無職のヒモにとっては、最高の依存相手。

 フレイに拾われた自分は、最高の運を持っているのかもしれない。

 ……バニースーツを渡してさえ来なければ。

 

 モクモクと口に肉を放り込む俺に、フレイが笑顔で。

 「気に入ったようで、アタシも嬉しいわ? ほら、いっぱい食べなさいな」

 「あじゃます!! あじゃます!!」

 俺は、口の中でモグモグしてた肉を、テーブルへと撒き散らしながら感謝する。

 ……なんて良い娘なんだろう!!。

 

 異世界に来て、多少なりとも不味いご飯を食べる事があるのだろうと思っていたが、どうやら杞憂に終わるみたいで嬉しい。

 

 そうだ!! 毎日フレイに奢って貰おう、いや養って貰おう。

 ヒモ万歳!! ヒモ最高!! 俺はヒモになる為に生まれてきたんだ!!。

 

 生まれてきた意味を確信した俺は、満面の笑顔をフレイへと向けて。

 「俺、フレイさんに一生ついていきます!!」

 「え? ……フフフ、じゃー明日も明後日もよろしくね? お代わりもしていいわよ」

 フレイは俺に笑い掛けてくれる。

 

 その笑顔にドキドキしながら。

 「あじゃます!! あじゃます!!」

 俺は、さらに肉をまき散らして、心の中でガッツポーズをしている。

 

 「美味しい! 美味しいよ! フレイ!!」

 「そう、良かったわね!」

 

 夢中でお肉を頬張っていると。

 すこしだけ、お腹が苦しくなって来る。

 

 ……あれ? いつもならもっと食べられるのに……。

 あっ、そうか!! 今は少女の胃袋だから、あんまり食べられないのか……。

 

 俺は手に持っているフォークとナイフが、ピタリと止まってしまう。

 そんな俺の様子にフレイは『どうしたの?もうお腹いっぱい?』と聞かれた瞬間だった。

 

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 胃の拡張をしました。 

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 ……!?。

 

 空中に突如現れたステータスウィンドウ。

 それと同時に急にお腹が減り始める。

 

 ……ステータスさんナイス! これでもっと食べられる!。

 

 お腹を撫でると、まだまだお肉が入り込む余地がある。

 俺は、すかさず口の中へお肉を詰め込む作業に没頭した……。

 

 「店員さん!お代わりお願いしまーす!」

 ウキウキしながら、店員さんへと注文をする俺。

 

 そして、お肉がやって来る。

 また苦しくなって来ると、ステータスが『胃の拡張をしました』と表示される。

 それは限界が来るまでの幸せの無限ループ状態。

 

 「良く食べるわねぇ……、大丈夫かしら?」

 「大丈夫!!大丈夫!!」

 

 心配しつつも呆れるフレイを尻目に、ガツガツとお肉を頬張る俺は幸せを感じる……。

 もう最高の気分だった、その時だけは、本当にその時だけは。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あの後、俺は、フレイに招待されるがままにお家へと来ている。

 ドキドキしながら、初めて女の子の部屋に入ったが、中は簡素で物が少ない印象で。

 もっと女の子っぽい、オシャレな部屋を想像していたのだけども、ちょっと違うみたいで残念だった。

 

 そんな事を思う俺は、膨らんだお腹を撫でながら、ベッドの上へと仰向けで倒れ込んでいる。 

 そのままの姿勢で、周囲を見渡すと。

 「すっげぇ広いなぁ……、俺の借りてた部屋より広いなぁ……」

 それを聞いたフレイが、椅子に座りながらも。

 「そうかしら? 普通じゃないかしら?」

 

 

 やはりお金持ちだったフレイ。

 本人曰く『実家と比べると小屋』と言っていたが、実家はどんな広さなのだろうと想像してしまう。

 

 椅子に座っているフレイが立ち上がり、俺へと話しかけて来る。

 

 「いっぱい食べたわねー、お会計がアタシと合わせて10万G超えたわ、大丈夫なの? 食べ過ぎじゃない?」

 

 ……うんうん、俺もそう思う。

 金額聞いただけで、すっげぇ食べ過ぎたとか思っちゃう。

 

 コクコクと頷きながらも俺は。

 「大丈夫! ご馳走様でしたフレイさん! あざます!!」

 「良いわよ、それよりも今日からここに住みなさい、どうせ泊る場所ないんでしょ?」

 ……!?。

 マジかよ、やっぱりこの娘、最高じゃん!!。

 

 「…マジで? フレイさんマジ天使、もう添い遂げます!」

 「何言ってんのよ、アンタ女でしょ? そんな事よりもアタシはお風呂入って来るから後で入りなさいよ?」

 そう言いつつ部屋を出るフレイ、それに俺は……。

 

 ……ほう?

 …………ほほほう?

 

 突然、俺の中の心の神は囁いて来る……。

 『一緒に風呂に入れ』と『覗いちゃえYO!!』と。

 

 ……。

 …………。

 いいのだろうか? いやいや、ダメだ……いやどうだろう……。

 

 ベッドの上で、少しだけ悩んでしまう。

 相反する感情が、俺の中で揺れ動くのを感じる。

 だが今の俺は、お腹いっぱいお肉を食べて、女の子のお風呂を気兼ねなく覗ける位に、精神は回復している。

 そして、初めてのシチュエーションに心が躍っているのが分かる……。

 

 「……ならば、これは行かなくてはならない……」

 大きなベッドの上で、大の字になって握り拳を作りながら、小さく呟く。

 

 これは異世界の神様がくれたチャンスなのでは?。

 

 「行くべきだ……」

 

 罪悪感? そんな物は『エア友エア友~』と煽られた時に、あの場所に、あの草原に置いて来た。 

 これはもう義務、逆にここで行かないのは失礼になる。

 

 「……仲間だしー、今は女だしー、別にいいよねー?」

 声に出し自身の正当性を確認する、そうする事で残り少ない罪悪感が消え去った。

 

 「よし!行くか!」

 

 そう決心した俺はベッドから身体を起こした瞬間だった。

 

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 胃の拡張を消去しました。 

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 「……は? ……は? ……え?」

 

 突然の事過ぎて理解出来なかった。

 ステータスウィンドウが表示されて、少し後から来た『ボコン』と言う音。

 それは俺の体内から発する音。

 

 「ぐほぉ!?」

 

 思わず変な声が出てしまっていた。

 そして徐々に来る不快感と痛み。

 

 それはまるで胃の内側から殴りつけられたかのような感覚。

 身体が委縮し目から涙が止まらない。

 痛いのと苦しいのがミックスしてベッドの上でのたうち回ってしまう。

 

 「……ぬおぉぉぉぉ、ぬごぉぉぉぉ」

 

 お腹を抱えていると脂汗が額から流れる。

 今の俺の顔は涙と鼻水とヨダレで酷く歪んでいる事だろう。

 不意に脳裏に過ぎってしまう『これ、逆腹パンじゃね?』と。

 

 アホな事を考えて痛みをごまかそうとしても紛れない。

 

 「ス˝テ˝ータ˝ス˝ぅぅぅ、裏切った˝な˝ぁぁぁ、ぎざま˝ぁぁぁ」

 

 目の前に表示されるステータスウィンドウには『ザマァ(草)』と書かれている。

 手を伸ばして掴もうとするがステータスは華麗に避けて来る。

 『動けるのかよ』と思ったがそれどころじゃなかった。

 

 「ぎざま˝ぁぁぁ、ぎざま˝ぁぁぁ、ゆるじでぇぇぇ、覗こうとか思ったのゆるじでぇぇぇ」

 

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 胃の拡張をしました。 

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 表示された瞬間、胃からの不快感と痛みが消える。

 

 「ステータスさん! ありがどぉぉぉ!」

 

 鼻水と涙を流しながら、感謝の気持ちを伝えた瞬間だった。

 

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 やっぱり消しました(はぁと)。

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 そしてまた身体から『ボコン』と鳴る音に俺は絶望した、酷い。

 




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