変態だけど異世界で美少女になったので赤髪少女や巨乳エルフ、その他大勢とたわむれます。   作:ナムヲ

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9 ベトベトバニーガール……

 黒く焦げ付いた地面を眺める俺達は、無言で佇んでいる。

 融解した地表を眺めるフレイの視線は、こちらへと向いた。

 ……うん、わかってる……。

 その表情は引き攣っていてちょっと怖い。

 

 「……」

 

 フレイのその無言の表情に、瞬間的に『……これ、ヤバイんじゃね!? 』と思ってしまった。

 自分はこんな超火力の危ない代物を、気軽にぶっ放す危ない奴と、思われてしまう可能性がある。

 このとんでもない威力に、そういう目で見られても仕方ない……。

 

 だから俺は、すかさずフレイへと抱き着いて。

 「フ、フレイさん見捨てないでぇぇぇ!!」

 と、まるで寄生先の女性へと、ヒモ男が縋り付くように懇願してみた。

 

 実際、フレイの身体に鼻水を垂れ流してる俺が、抱き着いているから間違いは無いと思う。

 ……今はチンコ無いから女だけど!!。

 

 そんな様相の俺に、フレイは訝し気な表情で。

 「……それで今のは? アンタ、何やったの?」

 「……」

 

 無言の俺を、特に引き剝がすような様子もなく、淡々と聞くフレイ。

 ……いや、知らんし。 

 

 ちょっとだけ冷静になった俺は、深呼吸した後にフレイを見上げて……。

 「ち、違う! なんかこう……多分ブワッって! とりあえずグオって感じで!!」

 「何? そのフワっとした表現は……」

 

 いつもなら理路整然と伝える事が出来る、伊達に社会経験を積んでいる訳じゃない。

 30歳、男の精神を持つ、少女の身体の俺なのだが、フワッとした表現なのは理由があった。

 

 ……それはステータスがやった事、自分じゃない。

 勝手に初級魔術が獄炎魔法へと変換ちゃった……。

 

 だけどステータスは、フレイには見えないのは知っている。

 だからこう……フワッとした表現になってしまう。

 

 結論、つまり俺は悪くない。

 

 「そう! なんか出たんだよ! こう、モワッと、ブワッって感じで! 多分そう! そんな感じ!!」

 「そ、そうなのね、モワッとブワッて出たのね、ちょっとよく分からないわね…」

 身振り手振りで表現している様相に、フレイも呆れた様子で答えてくれた。

 

 ……これはもうこのままゴリ押しで行けるのでは? だってこの子はチョロイ。

 優しくてチョロイくて可愛い……。

 

 さらにここで、畳みかけなくてはならない。

 とりあえず涙も出してみよう。

 

 顔を伏せながら、フレイからは見えないように、自身の細い指で目玉をブスッと突き刺す。

 ……あっ! 痛い!!。

 だが、我慢しなくてはならない……。

 

 プスプスッとしていると、俺の紅い瞳から、薄っすらと涙が出て来たのを感じる。

 完璧だ……。 

 

 「……だから俺の事見捨てないでぇぇぇ!!」

 「わかったから離れなさいな、鼻水と涙が垂れてるわよ? もう……そんな事で見捨てる訳ないでしょ?」

 

 ……あ、やっぱチョロいわ!!。

 

 俺へとハンカチを渡してくる、フレイさんはマジ天使だと思う。

 コスプレ衣装に高級お肉、さらには宿泊先や魔術まで教えてくれるフレイに、見捨てられたら俺の人生が終了してしまう。

 大事な寄生先……、路頭に迷うのはゴメンだ。

 

 「あ˝り˝がどう˝、あ˝り˝がどう˝、フレイざぁぁん……」

 何となく、涙を流しながら、フレイに感謝してみると。

 「はいはい、それじゃもう一回やってみましょうか、まだ成功してないでしょう?」

 「……え˝?」

 

 目の前に落ちている魔術書を拾い、土を落として俺へと渡すフレイ。

 ……マジかよ、もういいだろ……。

 と、冷や汗が流れ落ちる。

 

 「ほら、どうしたの? 早くやってみましょうよ!!」

 「……」

 

 フレイは笑顔で、俺を見つめるのだが……。

 やりたくねぇぇぇ……、やりたくねぇよぉぉぉ……。

 

 頭を抱えるのだけど、そうもいかないこの状況。

 まさに詰んでいるのではないか?と思ってしまう。

 

 ……ステータスさん、本当に余計な事するんじゃない!! お願いします!!。

 

 心の中でお願いしつつ、空中に浮かぶステータスを見ると『おっほほう!!』と表示されている。

 ……クソがぁぁぁ!!。

 俺の額から流れる、冷や汗が止まらない。

 

 だが、無理やり大きく深呼吸をすると『ゴフォ』とちょっとムセたけど、どうにか心は落ち着いて来た。

 

 ……よし行くぞ、だけど保険は掛けよう、絶対に。

 

 もう一度右手へと集中すると、また感じる熱い感覚。

 ステータスをガン見しながら発動させる。

 

 「プチ『絶氷魔法へ変換しました』…………」

 おい。

 「プチファイ『絶氷魔法へ変換しました』オー」

 おおい。

 「プチファイア『絶氷魔法へ変換しました』ー」

 おおおいぃぃぃ!! 邪魔すんじゃねぇぇよぉぉぉ!!。

 

 詠唱をせず、フェイントを掛けて正解だった。

 もうステータスさんのやる事は、理解出来てきている。

 大抵、俺の邪魔をするコイツは、有益だった事なんてあんまりない。

 

 「……」

 少しの沈黙後、ステータスウィンドウが『グヌヌ…』と表示されたその瞬間。

 「プチファイヤー!!」

 そう叫ぶと、小さい火の玉が空を飛んでいき、徐々に小さくなって消えてゆく。

 

 ……おおお、すげぇ……。

 初めての魔術が発射された、それは感動的だった。

 

 喜びを分かち合う為に、フレイへと振り向き。

 「おおぉぉぉ! これ凄いな! 手の平から、フワーって火の玉が飛んでった!!」

 「おめでとう! ミソギも火の属性持ちなのねー、アタシと一緒ね!」

 属性とかちょっと良くわからないが、拍手をしてくれるフレイに感謝しなくてはならない。

 

 だけど、これをもっと試したくなって来るのは男の性。

 「ちょっとこれスライムで試してくるわ! お昼位にギルドで集合な!」

 

 すぐさま駈け出す俺にフレイは何か言っているは聞こえた。

 だけど逸る気持ちが我慢出来なかった。

 

 「おほぉぉぉ! スライム狩りだぁぁぁ!!」

 

 テンション高めな、魔術書を持つバニーガールの痴女が草原を駆けていく。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 2発、3発、4発と撃っていくにつれて、テンションが湧き上がって行く感情。

 まるで子供の頃に買って貰ったゲーム機で、初めて遊ぶような感覚、超楽しい!。

 

 「プチファイアー!プチファイアー!うっひゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 もう既に、10発から先は数えていない。

 かれこれスライムを10体以上討伐しただろうか。

 目の前で、当たって弾けるスライムを眺めるているのは、最高の気分だった。

 

 だけどステータスが邪魔をしないのは何故だろう、もしかして拗ねた?。

 そう思った瞬間だった。

 

 「うへへ! プチファイヤ……ぁ?」

 

 途端に腕が上がらなくなって来る。

 足もガクガクと震えてしまった。

 身体に力が入らない。

 

 もっと魔術を放ちたいのに魔術書を手放し身体が地面へと吸い込まれていく。

 

 「なんだ……これ……グヘェ……」

 

 顔から突っ込み、地面へと倒れ込んでしまう。

 

 「……たちゅけて、たちゅけて、フレイさん、たちゅけて……」

 

 助けを呼ぶも、肝心のフレイはここには居ない。

 だって一人でここまで走って来たから。

 

 「……ステータスさん、たしゅけて、たしゅけて……」

 

 頼みの綱のステータスウィンドウが、すぐさま表示されるのだけど。

 あいもかわらず『おっほほう!!』と表示されていた。

 ……クソがぁぁぁ!!。 

 

 心の中で毒づいていると、スライムが数体、こちらへと跳ねて来ているのが分かる。

 ……やべぇ……。

 指一本動かないこの状況、最悪だった。

 

 スライムの1体が、俺の横腹に突っ込んで爆ぜた。

 そして飛び散る粘液。

 痛くはないが、その爆ぜた周囲はベトベトになる……。

 

 「おい……、まて……、やめろ……、おい……、ベトベトになるだろ……」

 それは、痛い事よりも屈辱的だった。

 

 次々と突撃慣行するスライムに動けない俺に。

 2匹、3匹、4匹と次々と爆ぜていく……。

 何故そこまでスライムは、爆ぜたがるのかちょっと語り合いたいくら爆ぜる。

 

 「……」

 うつ伏せの俺は無言で耐えるしかないのだが……。

 

 ……10を超えた辺りから数えるのを辞めた。

 もう体中の至る所が粘液でベトベトだった。

 今の俺はバニーガール姿の粘液塗れ。

 

 最悪だ、生暖かい汁が体中を埋め尽くしているこの状態は最悪だ……。 

 

 「……」

 

 もう既に諦めている、泣きたい気持ちを堪えて唯々されるがままにベトベトになって行く。

 すると突然ステータスウィンドウが表示される。

 

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 ……しょうがないにゃぁ。

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 「……それ、使いどころ間違ってる……」

 

 ツッコミを入れるだけの体力は残っていたみたいで。

 そのまま動かずに、ボッーと眺めていると『魔力を回復しました』と表示される。

 

 …………もっと早くに……いや、もはや何も言うまいて……。

 そんな思いと裏腹に、身体が動くようになっている。

 

 俺は、ゆっくりフラフラと立ち上がる。

 すると身体中から粘液が『ボトン、ボトン』と滴り落ちていく。

 

 ……この状態で町まで歩くのか……。最悪だ、最悪だ、ああああぁぁぁ……。

 

 すぐさま、精神を安定させる為に、慣れた手付きでポーチの中のふぐりを、握り締めようとするがどこにもない。

 

 ……最悪だ、これ以上の最悪はない。

 多分何処かで、ふぐりを落としてしまったようで……。

 「あぁぁぁぁぁ……」

 

 

 悲痛な叫びを上げた、粘液でベトベトなバニーガール痴少女が、草原で黄昏ている姿がそこにある。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 黄昏ながらフレイ宅へと帰って来ている俺は今、お風呂の中で、粘液を落としている最中。

 ……あぁ、気持ち悪い。

 泡立てた石鹸をタオルに付けて身体を洗う、流石はお金持ちが買う石鹸だった。

 いい匂いがして泡立ちが良い。

 

 ゴシゴシ洗うと瞬く間に、ベトベトが落ちていく。

 そうしていると、扉越しにフレイが語り掛けて来た。

 

 「ミソギー? ちゃんとベトベト落としなさいよー? ベトベト……プフゥー!!スライム程度に……プフゥー!!」

 「……」

 

 ……あぁ、ふぐりを握りたい。

 今は切実にそう思う。

 後でふぐりを探しに行かなくてはいけない……。

 

 今なら、秒間100回は握れそうな精神の荒れようで。

 ふぐりがないと、今夜は眠れないかもしれない。

 

 「タオルとか……プフゥー!! 置いて……プフゥー、……プフゥー!!」

 フレイが扉越しに、煽りまくっているのがわかる。

 俺は、それを掻き消すように……。

 「ぬおぉぉぉぉぉぉ!! 泡立てぇぇぇぇ!! ぬおぉぉぉぉ!!」

 「プププ、プフゥー!!」

 フレイの煽りを受けながら泡立てた石鹸を髪へと付けてワシャワシャと洗う。

 

 ……今日はもう家で大人しくしていよう、明日から頑張ろう。

 ふぐりはまた今度探しに行けばいいさ……。

 

 

 お風呂から上がった俺は、フレイに魔術の勉強をしてもらいながら、ゆっくりした1日を過ごす……。

 

 


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