凌辱エロゲーの世界のはずなのに、いったいどうなってんの??   作:tiwaz8312

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(オリジナル兼練習作は)初投稿です。



ファンタジーで雄だけの種族にも雌が居ても良い。それが自由だ

 5歳の誕生日を迎えた翌日に、硬いベッドの上で前世の記憶を思い出した私は頭を抱える事しかできなかった。

 異世界転生。それはまぁ良いとして。

 

 なんで、凌辱エロゲーの世界なん??? しかも、絶対に救われない全種族コンプリート少女に転生とか????? 主人公こと、この中世ファンタジー世界に迷い込んだ勇者君の行く先々で「んほぉ~~」とか「りゃめぇぇぇ」とか「ひぎぃぃぃいいぃぃ」とか言いたくないんですが??????

 前世女の私が今世でも女なのはとても良いとして。なんでよりによって全種族コンプリート少女? 

 前世を思い出した瞬間は、辺境貧乏貴族とは言え貴族の一人娘だヤッター! そう思っていたのに、そう思っていたのに、3歳の時にお母様が亡くなってお父様に大事に大事に育てられて、辺境貧乏領地のなんちゃって貴族だから好きな人と結婚して良いし、他の貴族との付き合いは無いから社交とか気にしないで良いと言われたのを思い出してヤッター! ラッキー! 慎ましく生きればイージーモードやん!! なんて思っていたのに。思っていたのに。なんで──人生ハードモードを通り越してルナティク・インフェルノ・デス・ベリーハードの頭おかしい難度なんです?? 前世で犯した罪なんて信号無視ぐらいですよ?? 身も心も清いまま死んだ私にこの仕打ちは酷くない???

 ゲームに出てくる敵役全種族に凌辱され、敵役全種族の赤ちゃんを産んだ唯一の女の子。それが今世の私ですよ。エロゲーのご都合でモンスター相手の妊娠出産が一週間ですむとは言え、敵役全種族である。

 

 辺境貧乏領地に攻め込んできたオーク率いるゴブリンとコボルトの混成軍に敗北して領地壊滅。お父様含めた男達と御年配の方々に幼い男の子達が皆殺しにされて、その屍の前で生き残った年齢様々な女性達と一緒にオークにボッコォからの「ひぎぃ」され、その後にゴブリンとコボルトに下げ渡され、心がぶっ壊れた頃に勇者君率いるハーレムパーティーによって唯一の生き残りとして救助されるのが私です。

 その後、預けられた小さな村で、村人達のお陰でぎこちないながらに笑顔を浮かべられる様になったら、ヒッャハーな人間族の山賊集団に村を滅ぼされ、そこでも「らめぇ」され、奴隷商に売り渡されたら、ゲスでグズでゲドウな悪徳貴族に婬紋刻まれて「んほぉ~」されるのが私です。

 飽きられて、オーガの巣に両足の健を切られた状態で棄てられ、家畜として「ぬほぉぉ」されている頃に勇者君パーティーが助けてくれるのだが、今度は小さな町の教会に預けられ、神父や教会で保護されている孤児達のお陰でまた笑みを浮かべられる様になったら、ドレイク族の「町を滅ぼされたくなければ生け贄を捧げろ」との言葉に恩を返すチャンスと自ら立候補して、「いっひぃぃ」と調教されたあげくに「町ついうっかり滅ぼしちゃった」の言葉に生きる屍となり打ち捨てられるのが私です。

 その後、リザードマンにお持ち帰りされて「んひぃぃ」された後に、ポイ捨てからの奴隷商に見世物娼婦として売り払われて、動物・植物型の魔物に公開「ひぎぃ」を言わされるのが私です。

 見世物娼婦として強制的に働かされていると、魔族が攻めてきて「あひぃ」からのお持ち帰り「ぬほぉぉ」されて、洞窟に棄てられてスライムに「らめなの」されて、最後はローパーに笑い狂いながら凌辱されているところを勇者君に助けられて、その勇者君に介錯という救いをもたらされるのが私です。

 

 一応。別のルートも有る。

 周回プレイでLvカンスト&最強装備の勇者君パーティーが転落人生の切っ掛けの襲撃を撃退成功すると唯一の生存ルートに入れるのだ。

 だがしかし!! 襲撃で領地がズタボロになり困ったお父様が国王陛下を頼るのだけど........魔族とモンスターの動きが活発になってるせいで援助をしてもらえない。

 その結果。国で一番お金を持っているゲスでゲドウでグズな悪徳貴族に頭を下げる事になってしまう。そして、私とお父様の転落人生か始まる。

 悪徳貴族は一人娘の私を対価として求め、お父様は領民を救うために頷くしかなかった。

 私が悪徳貴族に「らめぇ」される光景を、領民の為に抵抗できないお父様に見せ付け、悪徳貴族のペットのゴブリンやオーク等のモンスター達に集団「ひぎぃ」される光景を肴にワインを飲ませた上に、お父様に「この光景は最高の肴だ」と無理矢理言わせたり、私に遅効性の毒を飲ませて一人娘を助けたかったら「んほぉ」させろと命令とかしてくるのだ。ちなみに、この時に娘の私がお父様の子をにっんしっんしたりする。

 最後には、武骨な石造りの広大な地下室で領地に居るはずの女性達がモンスターに凌辱されていて、その背後の巨大な棚には領地の男達の生首が綺麗に並べられている光景を、私とお父様は見せ付けられるのだ。悪徳貴族の「ご要望通りに、男共には死という救済を与え、女共には快楽という救いを与えてやったぞ。寛大な私に感謝し感涙するがいい」等とほざくのだ。

 当然の如く激怒したお父様が悪徳貴族に襲いかかるも、悪徳貴族が飼っているモンスターにアッサリと殺されてしまう。そして、私に「女共を助けたければ、その男を食え」と命令する。凌辱されていている女性達の中には、亡きお母様の代わりに私の面倒を見てくれた母親代わり兼姉の様なメイドさんも居るために、嘔吐しながら私はお父様を食べるのだ。その結果、女性達にも死という救いがもたらされてしまう。

 この件で完全に壊れてしまった私は放逐され、お父様の頭蓋骨と赤ちゃんのミイラを大事に抱えながら、クスクス笑って森をさ迷っているところを勇者君に発見されて、教会の保護をされ気狂いのまま生き続けるわけである。

 更に言ってしまえば、凌辱フラグを一度へし折れば他のキャラ達は助かるが、私だけ、私だけ、助からないのである。しかも、メインヒロイン達は勇者君とのラブラブしか無いのだ。つまり、凌辱されるのはサブヒロインからであり、そのフラグも一度へし折れば安寧の未来が約束されている。私以外はな!!!

 

 私はエロゲーが大好きだ。特に凌辱エロゲーは大好物だし、凌辱されているキャラを自分に置き換えて妄想するのは大得意だ。でも、妄想は妄想だからこそイイのであって、実際に体験するのはノーサンキュー。現実と妄想をきっちりと区別して身も心も清いまま死んだ私には、全種族コンプリート少女の人生は無理。

 だからこそ、私は賢くない頭で必死に考えた。暗い絶望暗黒未来を回避する方向を考えて考え抜いて──考えるのを放棄した。

 いや、だって、家は貧乏辺境領地。特産品なんて無いし、観光名所も無い。お金も無い。人口二百人の小さい辺境領地に人を呼び込むモノなんて無いです。有るのはこじんまりとした領地を囲む森と山と原生林ぐらいですよ。そして大自然からの恵みは何処にでも在るものばかり。どうしろと?

 なら、元々居る領兵を強くしようとしても、兵士とは名ばかりの青年団が三十人。防具は木と皮を組み合わせた物で、武器は剣擬きのナタと良く手入れをされた狩猟弓と使い古された槍。しかも、主な仕事は畑仕事や狩りや林業である。ぶっちゃけ、彼らが領民の食い扶持や国に納める税を稼いでくれているので、そこに兵士としての本格的な訓練も追加するなんてできない。ただでさえ負担をかけている彼等にこれ以上の荷物を背負わせる事なんてできない。

 なら、国軍を頼るのかと言うと、国軍を呼び維持するのは非常にお金がかかるのだ。税をお金ではなく農作物や獸肉で払っている家にそんなお金は無い。

 前世の知識で私スッゲェェエは一番無いです。経済・内政・軍事・外交知識とか知りません。火薬の作り方とか知りません。脱穀機? 普通に普及してますが? 上下水道? 寒村ですら完備してますが何か? 寒村以下の家には下水道すらありませんけどね! つまり、後悔したくなければ何歳になっても勉強はしろよな。て事である。

 私の転生チートどこぉぉ?? 秘められた力どこぉぉ?? てなわけで、私つぇぇぇぇも無いです。無理。

 そして、ナニよりも諦めた最大の理由は、原作との壮絶な隔離である。自国や他国の名前やお父様やお母様やメイドや私。つまり、名前や地名等は原作通りなんだけど、同じなのはそれぐらい。

 まず、原作では救い様の無い暗愚王アズラエルは、ゲームのメイン舞台アムドニア王国の長い歴史でも類を見ない仁王として君臨している。しかも、その一番の側近は――原作では、プライドがヒマラヤよりも高くドSで鬼畜なドレイクだそうです。なんでも、アズラエル王の幼少の頃からの専属メイド兼専属乳母兼専属家庭教師であり、お父様曰く。王が一番心を許している存在なんだそうです。

 どう言うことなの?? 原作ボスすら見下しバカにしていたあのドレイクが人間に仕えるて、あり得ないんですが?? 頭パッパラパーな暗愚王が仁王てナニ。理解できない。

 次に、ゲスでゲドウでグズな悪徳貴族こと、ゲスール・ゲッドー・デ・グズオール。原作では顔はヒキガエルを醜悪にして体はブクブク醜く肥えた豚。この世界では顔は原作通りで体は鍛え上げられた鋼の肉体らしい。

 そんな彼は──"ナイト・オブ・ロード"や"ナイト・オブ・ナイト"と他称されるほどの大英雄に成ってるそうです。どう言うことだよ。本当に?? 

 しかも、家庭教師の先生の話によれば、私が生まれる数十年前に終結した人魔大戦で大活躍したそうです。なんでも、何故か顕現した原作隠しラスボス"轟魔神皇帝"率いる魔神軍団と対抗する為の旗柱として行動し、轟魔神皇帝を恐れ絶望して防衛すら破棄した国々の騎士達に呼び掛けて共に戦って貰ったらしい。更に、個別に戦っていた人間族やドワーフ族にエルフ族やゴブリン族等々を説得して一つの軍勢として纏め上げたらしいです。どうやって? 

 更に更に、ゲスールは轟魔神皇帝と一騎打ちを行い。聖なる力を持つ勇者君以外には掠り傷一つ付けられないはずなのに手傷を負わせる事に成功して、何度も何度も倒れそうになりながらも絶対に倒れなかったらしい。最後には、その雄姿が隠しヤンデレヒロインの星の意志に認められ"星槍レゴール"を絶体絶命の最中に手に入れて逆転大勝利したそうです。なんで勇者君最強装備の一つをゲスールが手にいれてるの? と言うか、アレって設定上は星の守護者に任命された人が持つモノだったような? 別名は結婚指輪ならぬ"結婚槍レゴール"。星の意志さん、勇者君はどうしたの? いや、本当にゲスールが私の知ってるゲスールとかけ離れすぎてるんですが?? 生存凌辱ルートが潰れたと思えばラッキーなんだけど、いや、本当にあのゲスールなの??

 次は人族である。原作では人族は人間・ドワーフ・エルフ・ホビット・ノーム・獣人達だったのに対し、この世界はゴブリン・オーク・オーガ・トロール・リザードマン・ドレイク等々の人型モンスターとそのハーフ達が加わっている。ちなみに、亜人は彼等の侮蔑言葉なので使ってはいけないらしいです。どう言うことなの??

 

 凌辱モノ定番の性欲の権化オークは、その性欲が戦闘欲に変換されているらしく、戦士の種族として知れ渡って居るそうです。原作ではラスボスより強いと評判の魔獣と一騎打ちをして勝つと"戦士"を名乗れ、五匹以上一騎打ちで狩ると"大戦士"を名乗れるそうです。そして、種族の命題が"戦いに生き、戦いに死ぬ"で、なんでも、そう生きれば死後の世界で名のある戦士達と戦う資格が得られるんだそうな。だから、オークは成人したら戦いを求める放浪の旅をするのが習わしなんだとか。

 その上、種族として愛情が一途らしい。どれぐらい一途かと言うと、伴侶を得たら戦いの旅を辞めて、その生涯を伴侶に全て捧げるんだとか。オークの平均寿命が三百年ぐらいで伴侶がそれ以下の寿命の場合、子供が成人するまでは確りと子育てをして、子供が成人したら──伴侶のお墓の側を離れないで長い人生を終えるそうです。

 ちなみに、魔獣は高レベルかつ最強装備の勇者パーティーが全力で戦ってようやく勝てるぐらい強い。それを一騎打ちで倒すてどう言うことなの??? オーク強すぎない?? 後、一途過ぎない?? 女と見れば直ぐに襲いかかるあのオークはドコ??

 

 次にゴブリン。集団凌辱の定番キャラが、この世界ではエルフとノームに並ぶ賢者の種族として名を馳せてます。どれぐらい凄いかと言うと、"ゴブリンの体重の十倍の金貨以上の価値"や"エルフ・ノーム・ゴブリンの三賢者が一人でも得られれば繁栄は確約される"や"三賢者を得られるのなら全てを失っても構わない。何故なら後で幾らでも取り戻せるからだ"なんだそうです。

 集団ヒッャハー軍団どこ行ったの?? 緑の賢者てナニ??

 ちなみに、私の家庭教師の先生は黒淵眼鏡を掛けた女性でゴブリンと人間のハーフです。頭がめちゃくちゃいいです。生きたスーパーコンピューターかと思うぐらい頭がいいです。そのゴブリンハーフの先生が「ここまで繁栄する要素が無い土地も珍しい」と太鼓判を押すのが家です。誰か助けて........

 

 次にリザードマン。ゴブリンに並ぶ集団ヒッャハー軍団のはずが、この世界では騎士の種族として有名。どれぐらい有名かと言うと、各国が喉から手が出るほどに欲し、手にいれるために自国の王侯貴族の姫君を嫁がせる事に腐心するぐらいである。なにせ、騎士道を厳守するのが種族の命題である彼等は、忠誠を誓った相手を絶対に裏切らないし、命懸けで進言・諌めてくる。理不尽に死を命じられても一言二言思い直す様に諌めてもダメなら命令通りに自ら命を絶つらしいです。

 そして、騎士としての能力も高く。他種族の多くの騎士が"リザードマンの様にあれ"とか"リザードマンこそが騎士道の体現者"と誉め称えるほどらしい。

 ナニがどうやってこうなったの?? 強い者に媚びて弱者にはヒッャハーしまくってたリザードマンが、なんで誇り高き騎士の種族なんて呼ばれてるの???

 

 次にコボルト。集団ヒッャハー要員であり、その弱さから様々な種族に玩具・奴隷として飼われていた。それなのに、この世界ではオークに対をなす戦士の種族らしい。

 単体戦闘のオークと集団戦闘のコボルト。その精強さは他の種族に追随を許さないほどなんだとか。傭兵業を種族単位で営んでいて、弱小国は挙ってコボルトを雇用するんだとか。

 序盤のレベル上げ要員どこ行ったの?? 集団戦闘を学ぶならコボルトを雇えてナニ? ちょっと意味がわからないです????

 

 トロール。オークと同じく定番要員。のはずなのに、慈悲深く思慮深い信仰種族てなんでですか? 種族の命題が"他者を慈しみ癒す"て意味がわからないです。

 孤児や恵まれない者の為に全てを捧げる種族になってるの?

 

 ドレイク。傲慢で全種族をナチュラルに見下してるドSで鬼畜で愉悦スキーが、なんで、執事・メイドの奉仕種族になってるの? オマエラは戯れに人間族の町村都市を滅ぼして「脆弱で愚かな人間の悲鳴と絶望でワインがウマー」な種族でしょう? どうして、「愚かな子ほど可愛い。私が守護して導かなきゃ!」になってるの? 

 ちなみに、アズラエル王に使えているドレイクは、王が幼い頃はそのダメダメ具合にゾッコンで、現在は立派な王に成ったアズラエル王にやっぱりゾッコンらしいです。

 つまり、ドレイクが喜んで仕えてる人はダメダメな人で、ドレイクが仕えていない私はダメダメではない。と証明されているわけです。

 

 オーガ。オークとトロールと同じくヒッャハー要員。そのはずが、種族の命題が武士道。"忠義こそが種族の往く道"で"義を見て動かざるはオーガに在らず"なんだそうです。なんでそうなったの? 

 この世界で、強国が弱小国に侵略戦争を吹っ掛けない理由が、オーガが無償で弱小国の味方をするからだそうです。弱小国を蹂躙してやるぜーと侵略したら目の前には精強な鎧武者姿のオーガの軍勢。強国は咽び哭いていい。

 

 等々とこれだけ原作と掛け離れていれば、モンスター軍団の襲撃からの凌辱転落人生は回避できたと思えるかも知れない。だけど、人生そんなに甘くない。

 人間に善人が居れば悪人が居るように、どの種族にも善人も悪人も居るわけで、種族の命題から外れたオークとかが野盗や山賊等としてヒッャハーしてるのが現実。つまり、私の凌辱フラグは未だに折れてない。むしろ、強種族と化したオークとゴブリンとコボルトの混成軍が攻めてくる絶望。

 どうしろと? ゲスールに全部ぶちまけて泣き付けばいいの? 仁王アズラエルに無料で国軍を貸してくださいと頼み込めばいいの? オーガを頼って護って貰えばいいの? 前世思い出して、いの一番に相談した専属家庭教師のセレン先生が、そのどれもが非現実的で無理て言ってた。

 襲撃が本当に起こったとしても、国軍やオーガの軍勢やコボルト軍団を招き入れる食料や寝床が準備できない。

 ゲスールにすがろうにも、ゲスールの治めるグズオール領までは片道一ヶ月。襲撃は私が13歳の頃に起こるけど正確な日付は不明。一領主を私の13歳の誕生日から拘束する事は不可能。

 食料や寝床を用意するお金をアズラエル王に出して貰うにしても、前世の記憶なんて根拠でお金を出せるわけがない。

 そして、集団戦闘のスペシャリストのコボルト達を雇うお金や代わりに支払う現物なんて、どうやっても捻出できない。

 騎士道を重んじるリザードマンを雇うか助力を仰ぐにしても、彼等はあくまでも集団戦闘を得意する種族であり、単体戦闘を得意するオークを単独ないし少数で相手するには部が悪すぎるし、集団戦闘を同じく得意とするコボルトを相手するには同数か近い数が必要で、そんな数を迎え入れる余裕なんて無い。

 なら、避難して襲撃をやり過ごす? そんな余裕無いです。それを可能にする人脈も無いです。

 迎え撃つ為の防衛準備をする。罠とか仕掛けても叡知の種族たるゴブリンや集団戦闘特化のコボルトが居るし、罠なんて踏み潰せば良いのオーク相手では無意味。

 結論。私はどう足掻いても「らめぇ」される運命。

 私一人逃げても、どうせろくな結末にならないし、小さい頃から私の面倒見てくれた領民見捨てて、その領民を最後まで見捨てられないお父様。そして、そのお父様に恋い焦がれているメイドさんのコーネリアを捨てて生き残っても──私は幸せに成れない。

 なら、自分でなんとかするのを諦めても良いよね?

 

 そんなわけで、辺境貧乏領ことカイセル領のナザール・アルト・カイセルの一人娘。アイリス・アルト・カイセル。つまり、私は暗黒絶望未来を何とかしてくれる御都合主義の奇跡に丸投げして気儘に生きる事にしたのでした。

 この世界の救世主たる。現代地球から迷い込む18歳の少年。山本勇気君とそのエターナルロリータハーレム達に託すのでした。

 

 

「ねぇ。私の百倍は頭が良いセレン先生。本当にどうしようもないの?」

 小川のせせらぎが心地良い草花の絨毯に、行儀悪く大の字に寝転がっている私は、収納魔法で椅子を取り出して優雅に読書を楽しんでいる質素なワンピースを着た緑色の小人──ゴブリンハーフのセレン先生になんとなく話しかける。

「説明しただろう。金も物も何にもないカイセル領にできる事なんて何もないと」

 文庫本を片手にペラペラとページを捲りながら、チラリと私の方を見るとセレン先生が態とらしく嘆息する。

「スカート姿で両足広げながら寝転がるのは辞めな。淑女にあるまじき行為だよ」

 セレン先生の小言をまるっと無視して、私は雲一つ無い青空を眺めながら「あ~ 勇者君が周回プレイしてくれてればワンチャンなんだけどな~」と呟く。するとセレン先生がまた嘆息した。

「また、前世の話かい? 言っちゃなんだけどねぇ........信じられないてのが本音だね」

 パタンと本を閉じたセレン先生が私の方に首を向ける。

「信じてよ。私は嘘付いてないよ」

 うらんげな視線を投げ掛けるセレン先生に、少しだけ眉をしかめると私は大きな欠伸を吐き出しながら、お昼寝のために目を閉じた。

 小川のせせらぎに心地好いそよ風。そして、そよ風が運んでくる草花の仄かな香り。ぽかぽかと暖かい日光。前世が生まれも育ちもちょっとした都会だった私には、かなりの贅沢なお昼寝タイム。それを満喫できる今の生活を失いたく無いなぁ........

「あんたが下らない嘘や戯言を言う子じゃないの知ってるさね。でもねぇ.......あんたはアホの子だからねぇ」

 ウトウトとしていた意識が、聞き捨てならない言葉に急覚醒する。

「セレン先生。私はアホの子じゃないです。前世は60後半まで生きたんですよ。そこら辺のお子ちゃまと一緒にしないでください」

 不愉快さを隠さずにセレン先生を睨み付けるが、そんな視線を平然と受け止めながら、如何にも、しょうがない子だねぇ。と言わんばかりに幼子を見守る親の様な優しい表情をセレン先生は浮かべる。

「アホの子だろう? 簡単な優しい読み書きの授業ですら理解できずに居眠りしてるじゃないか」

 その言葉に、私がうぐっと言葉を詰まらせると、ふんわりとした上品な微笑みを浮かべたセレン先生が言葉を続ける。

「前の歴史の授業でも教えたように、この世界には転生者や転移者と呼ばれる者達が現れたりする。それらは福音や災いをもたらすのさね。もっとも、毒にも薬にもならない者だっているがねぇ」

 上品な微笑みを浮かべたままに、ちゃんと授業内容を覚えてるのか? と言わんばかりの視線を投げ掛けてくるセレン先生に、ソッポを向くことで私は対抗した。すると、その様子が面白かったのか小さくクスクスと笑う声がセレン先生から聞こえてくる。

「大抵の転生者や転移者はあんたらで言うチートてのを持ってたりするもんさ。持ってない者が珍しいくらいにね。また、何らかの知識や技術を身に付けてたりとソコソコ役に立つ連中さね。それなのにアンタは........」

 セレン先生の意地悪な言葉に、私は慌てて両手で耳を塞ぎ「あ~ あ~ 何にも聞こえないなぁ! 聞こえないなぁ!」と叫ぶ。

「ほら。やっぱり、アホの子じゃないか」

 副音声で、面白い子だね。と聞こえてきた私はむすっとした表情を浮かべながらゴロリと仰向けからうつ伏せに体勢を変えて、ヘナリどころかベシャリと擬音が聴こえて来そうなぐらい力を抜くと同時に「うぼぁ~」と間の抜けた声を上げる。

「私。5歳児だから、わ~か~ん~な~い~」

「60後半と言ったり、5歳児と主張したり、忙しい子だねぇ」

 これが大人の余裕ですよ。と言わんばかりの態度を取るセレン先生に、私は不貞腐れる事しかできない。

 ゴブリンハーフのセレン先生の姿は、ファンタジーに出てくるゴブリンそのもので、違いと言えば耳が尖っていなくて全体的に少し丸みを帯びているぐらいなのに、なんでこんなに上品で知的で所作の一つ一つが高貴で艶やかなのか。この人はゴブリンの王族に列なるお方です。と言えば誰もが無条件に信じてしまうだろう。

 そんなセレン先生に貴族としての教養とか教わっておきながら、私はこんなんである。なんと言うかこう。女性として完全敗北をしてしまっているのだ。

 時折、思うのだ。セレン先生に勝てる要素は何も無いのでは無いかと。

「どうしたんだい? 難しい顔をして」

 サクッとなんて事ないように、見えていない私の表情を言い当てたセレン先生に更なる敗北感を感じつつ、私はフッと思った事をそのまま口にした。

「私がセレン先生に勝てそうなのは若さぐらいだなぁ。と思っただけです」

 この体は5歳。前世の年齢を足しても70前半。セレン先生はゴブリン族なので寿命は200歳ぐらいで、年齢は98歳。つまり、私の方が圧倒的に若い。圧勝である!!

「若いなら若いなりの。歳を取ったなら歳を取ったなりの。それぞれの魅力てものがあるのさね」

 声色はとてつもなく優しくて重みのある声に、勝っているはずの私は何故か敗北感を味わってしまった。

 そんなうちひしがれる私に構わずに、セレン先生は更なる追い撃ちをかけてくる。

「前世の話を聞けば、生涯独身で子供も居なかったんだろ? 今生でも女の幸せを味わえるのか心配だよ。わたしゃ」

 あんまりな追い撃ち。あまりなも無慈悲な口撃に、私はガバッと立ち上がり、草が服や頭にくっついているのをそのままに反論を開始する。

「先生。ジェンダンフリーです。女だからとか、男だからとか、古いんです。男女平等。女だから、子供を産まないといけないなんて決めつけるのはよくないです!」

「ジェンダーフリーだよ。そして、あんたの言葉はただの言い訳さね。そして、あんたが子供を産まないとカイセル家は断絶だよ。いいかい? ジェンダーフリーてのはね──」

 反撃したら正論でボコられました。

 ジェンダーフリーのちゃんとした意味と私の主張の違い。ジェンダーフリーとジェンダーレスの違い。それらの考え方と次期領主としてどう対応していくべきか。朗々と語られる言葉の羅列に、私の頭が熱を持ち始める。

「男女と言う区分があり、其処に明確な機能差がある以上、性別を理由にした生物的な役割・仕事はなくならないのさね。それに、生物的な男の幸せと女の幸せ。そして人としての幸せ。それらも大切なモノなのさ。ざっくりと言ってしまえば、生物的幸せと社会的幸せのバランスの問題さね。ここら辺は治療を受けて肉体を変えればいい性同一性障害と違うところさね。そして、なによりも、幸せてのはね。幾ら有っても足りないモノなんだよ」

 頭脳がオーバーヒートを始め、ぷすぷすと煙が出るのではと真剣に心配しだした私を、慈しむ目で見ているセレン先生が更に口を開く。

「あんたの事だから、おおかた仲の良い女友達に"ずっと友達で居ようね。一生独身でずっと一緒だよ"なんて言われて、その言葉を真に受けたのはあんただけで、ほとんどの女友達は家庭を持って子育てしてたり、夫や子供は居ないけど、恋人が途切れなかったり」

「やめてくださぃぃいぃぃ!? 死んでしまいますぅぅ!?」

 ひた隠しにしていた秘密を言い当てられた私は、その場に崩れ落ちた。

「ずっと一緒だよ。て、約束したのに........男なんてめんどくさいだけだよね。て、みんな言ってたじゃないっっ」

 セレン先生の憐れみの視線を全身に浴びながら、私は慟哭する。しかし、セレン先生は追撃を止めてくれない。

「あんたは本当にわかりやすい子だねぇ。わたしゃ、本当に心配だよ」

 えぐうぐと涙を流している私は、とあることを思いだし拳を強く握り締める。そうだ。前世はアレだったけど、今世は違うのだ。

 私には幼馴染みのカイト君がいる。お母様が亡くなった時に、大泣きする私を必死に懸命に慰めてくれて、将来を誓い合ったカイト君がいる。両足に力を入れろ。立ち上がり、98になっても独身で暴虐なセレン先生に一撃をいれるのだ!!

「ちなみに、あんたの幼馴染みのカイト君は三軒先の3つ年上のミランダちゃんに惚れてるよ」

 セレン先生が即死の呪文を唱えた。

 私は立ち上がると同時にその場にうつ伏せに倒れ付した。

「なんでぇぇ........ずっと一緒に居てくれるて言ってたのにぃぃぃ」

 うぐえぐとすすり泣き始めた私の頭を、憐れんだセレン先生はとても良い笑顔を浮かべながら、優しく撫で始める。

「男はカイト君一人じゃないさね。自分を磨いて男を惹き付けな」

「私、先生の様に、探求が夫で、解明が子供な、独身で終わりたくないです。今世こそ、恋人が欲しいです。結婚したいです」

 さわさわとした優しい手のお陰で回復してきた私の言葉に、セレン先生が小さく呆れたように息を吐いた。

「自慢になるから言わなかっんだけどねぇ──未来のあんたが全種族の男に凌辱された女なら、わたしゃ全種族の男にプロポーズされた女なんだよねぇ」

 その言葉を、一瞬。脳が拒絶して。その次に、その意味を脳が理解した。

 

 

 全種族の男にプロポーズされた女(ゴブリンハーフ)

      vs

 全種族の男に「らめぇ」された女(人間族の貴族令嬢)

 

 うぃな~  ゴブリンハーフのセレン・オールド

 

 

「私、セレン先生の様な素敵な女性になりたいです。これからも御指導お願いします。そして、私の凌辱フラグをへし折ってください」

 倒れ付したままで、セレン先生に頭を撫でられながら、私はセレン先生に着いて行こうと決意する。

「あんたと私じゃ、在り方が違いすぎるからねぇ........止めといた方が利口さね。そして、どんなに知識・知恵があっても無い袖は振れないさね」

 あんまりな言葉に、止まった涙が私の頬を伝い流れ始める。

「まぁ。あんたの言う未来が正しいなら、13歳まで猶予がある。それまでに、無い袖を用意して準備するしかないねぇ」

 身が凍てつき心が底冷えする声の方に、うつ伏せに寝転がったまま顔を向けると、セレン先生が見たことがない獰猛な笑みを浮かべていた。

「あんたの一億倍以上に頭の良い私に任せな」

 その頼もしい笑みに、私は思わず「セレン先生。結婚して」と呟いてしまう。

「本当にアホの子だねぇ。女の私と結婚してどうするんだい」

 本当にどうしょうもない子だねぇ。と物語っている優しい目をしたセレン先生が、流れる涙が止まり寝落ちするまで私の頭をさわさわと撫で続けた。




主人公の女の子はアホの子で残念な子。
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