仁王 令和   作:tanazi1000

1 / 4
ガサ入れ

マル暴倉庫ガサ入れ作戦

2025.01.20 02:00

東京都某所

東京武偵高等学校強襲科2年及び1年混成部隊

 

上下二連散弾銃に備わっているロックレバーを操作して機関部を露出、名前の通り上下に2つ空いた穴へショットシェルを2つ嵌め込む。

銃本体自体は折れたままにしておいて、ハンドガードを握りこむと銃身を肩に立て掛けて得物を抱える。

目の前のMP5を持った先輩や愛銃のベレッタm93rをこれでもかと穴が開くほど見つめている同学年の生徒、他にもPDWやSMGで武装した少年少女達が防弾仕様の人員輸送車に乗り込み揺られている。

彼らは共通してヘルメットを被り、防弾プレート入りのタクティカルベストに防弾繊維性のトラウザー(ズボン)、そして足元はブーツで身を固め銃器を所持していた。

危険度の高い作戦に挑むとあってか、車内の空気は緊張からかかなり張り詰めていた。

その空気に耐えられず、幾度目かになるかわからない重化投げナイフとスティムの位置の確認作業をしていると、なあなあと言う声と共に隣から脇腹を突かれた。

無視しても良かったが、張り詰めた空気から逃れたい気持ちが大きく出て会話に乗ることにした。

「どうしたの、柳井」

「当たり前のこと聞くが緊張してるか?三浦」

顔を動かして脇腹を突いてきた柳井という苗字の男子に顔を向ける、やはりというべきか緊張からか顔が強張っている。

「まあカチこむ時は何時もこんな感じだし、むしろ緊張しない方が少ないかな」

そんな返事をすると柳井が少し驚いた表情を見せた。

「お前でもカチコミの際は緊張するんだな、意外だったわ」

「意外って……えぇ……」

一体自分は普段どのように見られているのか気になり、それを口に出そうとしたときだった。

車体が減速し始め、エンジンの駆動音が小さくなる。現着だ。

「さーて一年共お喋りは終わりだ、ほら出た出た」

車体の中程に居たMP5先輩が立ち上がると観音開きで車体後部のドアが開き、それを合図に靴音を鳴らしながら順番に搭乗者が降りていく。

車体から降りてまずはじめに迎えてくれたのは潮の独特な匂いと湿った風、次にあちこちで光るライトの投射光が目についた。

灯台の光やあちこちで光を放っている懐中電灯や目標の建物自体が光っていたため、蒲鉾形の倉庫は見えた。が……

「おい、事前情報より多いぞ……」

MP5先輩が苦虫でも噛み潰したように顔を歪ませた。

「こりゃ情報科がやらかしましたね、それか漏れたか……どちらにせよお札がある以上引くという選択肢はほとんど内に等しいですがどうします?」

「……よし、作戦を少し変更する」

少し思考を巡らせてからMP5先輩が口を開いた。

元々多少の妨害は想定しており、そのため強襲科の好成績な1年と中堅2年で編成された隊でやってきていたため交戦はさほど問題無いむしろそれが主作戦でもある。

問題は相手の数が多すぎる点である。いくら鍛えられた武装探偵であっても装備は規制の関係上アサルトライフルを持つことが難しいので火力に限りがある、しかも相手は事前情報からするに違法輸入したカラシニコフ系列の自動小銃を装備しており非常に厄介だ、おまけに学生のため練度はそこまで高くない。正面切っての撃ち合いとなるとジリ貧になるのが目に見えていた。

だが正面からの話であって、違う方法ではまた別の結果になる。正規の軍人や特殊部隊とは少し違う戦い方を取れるのが武偵の長所の一つと言われている。

「俺と三浦の隊は正面で撃ち合い、側面から残りの二隊が掃射をかける。交戦中に諜報科がガサ入れでエンドだ配置は……」

テキパキと全員が頭の中に叩き込んだ見取り図を元に配置を指示していくMP5先輩。だがなにか引っかかるのか時折言葉に詰まったり、少しの間黙って何かを考える素振りを取っていた。

「隊長、どうしました?」

区切りの良いところで衛生科の生徒が隊長に話しかけた。

「どうとは?」

「いや、さっきからなにか何かが引っかかってるような素振りをするものですんで……」

 それを聞いたMP5先輩は顔に出てたか言って少し困った様な表情を見せたあと、すぐに真面目な顔つきで話し始めた。

「最悪の一歩手前を想定してたんだが。この異様な数の警備、もし情報が漏れていたとしたら内部潜入の諜報科が来ることが既にバレているかもしれない」

そのセリフでその場にいる全員が強張った、本当だとすればガサ入れの成功率がかなり下がってしまう。

武装探偵ではあるので銃撃戦は問題ないとはいえ、諜報科は強襲科と比べると戦闘技術はそこまで高いものではない。むしろ戦闘を避け、潜入し破壊工作や情報収集を担当するのが諜報科だ。

一応護衛の強襲科が数名付いてはいるものの、本格的な戦闘となるとかなり不利なのは明白だった。

『こちらガサ入れ班から陽動班。内部の警備数が想定よりも多い、そちらから数名こちらへ回せないか?どうぞ』

「やはりか……よし。三浦、隊の指揮権を明石に譲渡して坂上と一緒に倉庫内潜入の諜報科の護衛に回れ、今回の山場おそらく情報が漏れてる」

ガサ入れ版からの通信が入った。どうやら内部も想定以上の人員が動員されているようだ。

「ちょ、おい木村!」

「坂上、憲章5条および7条だ。外側で想定外が発生している以上内側も何かしらの予防策が取られてる可能性が高い。バックアッププランのB-12、非常階段から2階に侵入して内部にてガサ入れ部隊の援護と護衛だ」

「……くっそ、分かったよ。おい三浦!行くぞ、折ってるのもとに戻しとけ」

「了解です、坂上先輩」

安全策の解除指示が出たので中折れ状態のCITORI725を元に戻すと、銃口を下げる。

『こちら陽動班、想定していたより外の敵も数が多い。が、2名援護に行かせる。2年坂上と1年三浦だ、それ以上は送れないどうぞ』

『こちらガサ入れ班、突入するかどうか迷っていた援護感謝する。通信終了』

ブツッと通信が切られ、人員の配置及び突入準備と交戦準備が開始。

人目を盗んで、暗がりを移動する坂上と三浦の二人。ラペリングを使用して管理及び非常扉へと配置につく。

ズリズリとザイルロープを登りきり、扉の前で坂上が到着すると同時に膝立ちになるとツールキットからキーピックを取り出した。

後から登って追いついた三浦がザイルロープを回収後、坂上の背後をカバーするように片膝立ちの姿勢で725を構え辺りを警戒し始めた。

『こちら坂上、配置についたどうぞ』

キーピックで二階非常扉の鍵穴を弄りながら坂上が木村、MP5を持った2年の先輩、陽動班の班長に無線で連絡を入れた。

『陽動班了解、ガサ入れ班準備は? どうぞ』

『ガサ入れ班、突入前に内部の状況を知っておきたい坂上頼めるか? どうぞ』

『坂上了解、今より入る 通信終了』

カチャリと鍵が解錠される。ドアノブをゆっくりと回し、UZIを構えた坂上が扉の開く音がしないように細心の注意を払いながら内部を覗き見てクリアリングを始める。

「クリア、二階に敵影なし入るぞ。ポイントマンは俺だ」

30秒ほどで索敵を終えて敵がいないことを確信した坂上が先頭に立ち、内部に侵入し始める。

「了解」

ほんの少し開けた扉の隙間から倉庫二階に侵入、当然扉の開閉音が響き渡らないようにしんがりの三浦がゆっくりとドアをしめておいた。

外に光が漏れていた時点で分かってはいたが内部は電灯によって明るく、敵影が肉眼で視認可能な状態だった。

「なんだこの数……しかも全員カラシ持ちかよ」

「最悪ですね、これ……ガサ入れ班が入ってきそうな場所は全部見張られているし」

一階のありとあらゆる入口の前で見張りが立っており、侵入者を排除しようとする意思が見て取れ、しかも日本国内では武偵であっても認可の降りにくいアサルトライフルの一種カラシニコフ小銃を全警備員が所持していた。

『坂上よりガサ入れ班へ、ありとあらゆる入り口は全部見張りが立っている どうぞ』

『ガサ入れ班、了解。陽動班、始めてくれ。バックアッププランB-12で行く。作戦開始だ 通信終了』

通信直後、倉庫の外側で発砲音が鳴り響き、続いて小銃の連射音が響き渡る。

「お前らぁっ! 学生さんのご登場だ、全員心してかかれよぉ?」

「「オイっす!」」

活きのいい掛け声が倉庫中に響き渡った。

「おうおう、そこまでバレてるのか……あとで情報科にきつく言っとかないと駄目だなこりゃ」

「で、先輩これからどうします?」

と三浦が聞くと……

「三浦、お前上下のやつスラグだったよな?」

「はい」

少し坂上は考えてから、自身の腰に吊り下げたワイヤーの先についた鉤爪を自身の居るキャットウォークの手すりに引っ掛けた。

「なら上で援護してくれ、下でガサ入れ班の強襲科のやつと一緒に暴れてくる」

「了解、ご武運を」

「そっちもな、一応相手カラシだから気をつけろ」

そう言い残して坂上は下に降りていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。