仁王 令和   作:tanazi1000

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強襲中

「……!?なにか動いたっ!」

目のいいやつが居たのだろう、人員出入り用のドアが少しだけ動いた瞬間を見逃さなかった。

だがそれが命取りになるとは知らずに……

複数の少し開いた扉からまず一つカラリンと音を立てて何かが投げ込まれた。その音を聞いた瞬間、三浦は片目を閉じた。

一瞬後、投げ込まれた何かは爆音と閃光を放ち爆発を起こし、近くにいた人間の視覚と聴覚を奪った。フラッシュバンだ。

「め、目がぁ!」

「あーくっそ!」

扉付近に居た警備を行っていた人物達は目や耳を押さえて悶苦しみ始めた。

「一斉に、突撃!」

その機を逃さず、バゴォンと音がなって複数の扉が蹴破られ、ボディーアーマーやヘルメットで身を固めた学生武偵の強襲科が突入を開始し始めた。

「スタンを投げる!」

ポイントマン達がスタングレネードをフラッシュの被害が軽かった中央へぶん投げつつ、侵入口付近に居た戦闘員手足を撃ち、戦闘不能にしてゆきカバー箇所を確保していく。

ドンパチしている間に、諜報科が地下や地上の証拠物品を摘発、回収して離脱していくのが今回の作戦である。

「リロードする、弾が足りない!」

「学生がなんぼのもんじゃぁ!お前らやってしまえ!」

ガサ入れ班所属の強襲科とカラシ持ちが撃ち合いをしてる最中、地上に降りた坂上はと言うと……

「シッフッフッ!」

足技とUZIの連射による近接戦闘術で敵をぶちのめしていた。

武探が使う近接戦闘術アル=カタの一種、フランス系の技ラ·カンを用いて戦っている。

とはいえ練度が甘いのか度々背後を取られそうになっているので……

「正しい見出し 正しい引きつけ……」

銃本体に載せられたチューブタイプの3倍率ドットサイトの照準を合わせて引き金を引く。ドゥンと言う音と共にリコイルの衝撃が肩に伝わる。

坂上を狙っていた小銃持ちのタンクトップ野郎の利き腕、前腕にスラグが食い込む。

「正しい頬付け コトリと落ちるように」

再び照準を合わせて引き金を引いてタンクトップ野郎の後ろにいた小柄な男の利き腕にスラグをのめり込ませる。

「リロード!」

銃の根本にあるレバーを操作して折るとイジェクターが作動してからのショットシェルが吐き出された。

シェルホルダーからスラグ弾を2発取り出し、中腰の姿勢でキャットウォークにつけられた鉄板に身を隠しつつ場所を移し、シェルを薬室に入れ込んで右手を振り、折状態から撃てる状態に戻した。

「す、スナイパーだ!」

「うっ……撃たれた……」

「くっ、くそうなんだっていうんだ」

次々と倒れるカラシ持ちの団員達、そしてその指導者と思われるスーツ姿の男へ坂上が歩み寄り……

「リーダーはお前かぁ!」

地面を蹴って回し蹴りを男の首に叩き込みにかかる坂上。

「ヒィイ!先生お助けをー!」

男の首へ渾身の一撃が刺さろうとしたその時、坂上の脚が明後日の方向へ弾かれそして坂上が吹き飛ばさた。

粉袋が破けたのだろうか、あたり一面に白煙が立ち込めた

「たっく、今の極道は骨無しかよ……まあ、学生とはいえ武偵を侮るなって教訓は十分理解出来ただろうが」

男の声、そして彼はプッと何かを吐き出し、地面にそれが転がった。吸い殻だ。

「なるほどな。一人がガンカタでインファイト、そしてもう一人が狙撃で援護か。まさかスラグ撃ってくるとは思わなかったが……」

ドォウンドゥウン重い発砲音とともに4発の銃弾が白煙から飛び出し、三浦が隠れていた鉄板を固定するネジを見事撃ち抜いた。

ガコンと言う音と共に落ちる鉄板。白煙が晴れ、男が銃を三浦がいるであろう二階のキャットウォークに向ける。が……そこには誰もいなかった。

「見当違いか?」

眉根を顰めた男、肌は浅黒いが他は一見すると高身長な一般男性に見えるがその道のものから見れば身体を鍛え上げていることは分かる。茶色のロングコートとガンマンが被るようなテロガンハットをかぶっていて素性が分からないが間違いない。

「武偵崩れか……」

鉄板の落下と同時に一階に降りた三浦が顔を歪ませる。

武装探偵は法の下犯罪と戦うが、稀に裏社会へ溶け込んで犯罪に手を染める者もいる。普通は小悪党止まりだが中にはこのように強大な戦闘力を持ちつつ裏社会を渡り歩く厄介な者もいる。

現に今目の前にいるは男子高校生の放った飛び回し蹴りといえどそれを防ぎ、なおかつ本人を飛ばした者だ。相当な人物と言えよう。

とはいえ三浦を見失っている今が好機なのは間違いない、わざとと遠回りして鉄板の墜落現場から離れると木箱の角に銃を固定して照準を合わせる。

「目標は奴の右腕」

しっかりと狙いを定めて引き金を引いた。

ドゥンと発砲音と同時に銃口から発煙とマズルフラッシュ、そしてスラグが飛び出し武偵崩れの腕へめがけて飛翔していく……が。

ドゥォン、カァン、キュゥンとまたもや武偵崩れの持つ拳銃から重い発砲音が鳴り響きそして金属同士がぶつかり合う音……

「チッ、衝か」

源氏の一族に伝わる矢返しの法、飛び道具の矢弾を撃って被弾を避ける特殊な戦闘術。技名は違えど術理が同じような技は世界中にあり、現代の武偵も使うことがある。

もっとこれが使えるということは相当な反射神経と頭の回転、そして銃撃戦のセンスがあるということでもあり、手強い相手でもある。

既に撃って場所がバレており、矢弾撃ちの技術持ちとなれば725は要らないと判断して輸入品の木箱に得物を立て掛け、肩を回しながら隠れていた物陰から出ていき、敵へと歩み寄る。

「ほう、やれるのか?楽しませてくれれば幸いなんだがな」

褐肌の男は逃げも隠れもせず出てきた三浦を見据えながら銃口を向ける。

獲物はデザートイーグル50AE、自動拳銃界では最強クラスの弾薬を使用するマグナム拳銃だ。

「それはやってからのお楽しみだッ!」

左太腿に巻きつけた投げナイフを左手で抜き、そのまま腕を振るって勢いをつけて男の足首へと投擲する。

無論、先程のスラグ弾と同じように銃弾で弾き飛ばされる。元々当たるとは思っていない捨て駒なので問題はない。

そして右太腿の巻きつけたレッグホルスターからカスタムにカスタムを施しトリコロールの塗装を施され、45winマグナム弾を発射できるようにしたクローンガバメントをファストドロー、男の元へ走りつつ銃口下部に着けたレーザーエイミングモジュールを頼りに彼の脚部めがけて3回引き金を引く。右手に重いリコイルショック、薫る硝煙。

放った3発の内2発は外れ、1発は再び50AE弾で撃ち弾かれる。それと同時に男の持ったDEのスライドがホールドオープン状態になる。弾切れである。

目視でそれを確認し、歩法を変える。

閃歩と呼ばれる、一瞬で中距離を詰める特殊な足捌きで一気に肉薄すると男、予想できなかったのか咄嗟に行動を起こせず硬直してしまった。

その隙に左拳を握りこむと、アッパーを男の顎めがけて叩き込んだ。

膂力の問題で吹き飛ばすことはできなかったが、顎にクリーンヒットしたため軽い脳震盪を起こしたのか立ちくらみを起こす武偵崩れ。

winマグナムを2発胸部に放ち追撃、ロングコートは防弾素材で出来ていて、弾丸自体は食い込んでひしゃげた金属片になって地面にチリンと音を立てて落ちるが、撃たれた本人は肺腑に直接ダメージが入ったのか噎せる。

間髪入れず回し蹴りを側頭部に一発、そして続け様に喉に蹴りを入れ、そこから清流の如く滑らかな動作で蹴りを胸部に叩き込んでから背後を向き、宙返り。丹田を軸に空中で一回転すると両足の踵で蹴り落としを頭頂部に決めた。

通称五月雨蹴り。三浦の収めた武術、安針流戦闘術手甲ノ型では基本の武技であり崩しの性能に長け、なおかつ与えられるダメージも高くかなりお世話になっている。

上半身、特に首から上の急所に打撃を叩き込まれかなり朦朧とした武偵崩れに最後の一撃を決めるべく三浦は五月雨蹴りの隙を消しつつ次の動作に備え構え直す。

地味ではあるが安針流の根幹とも言っていい武技、残心。

攻撃行動終了時に息を整えつつも次なる一手を放てるよう構え直すこの技は安針流特有の攻撃の連綿を成すにはなくてはならない技術であり、修了者は確実に会得している程には基礎中の基礎である。

「先生ッ!」

「チクショォ!撃てぇ!」

近くにいた組員達がボコボコに蹴られた武偵崩れの姿を見て、カラシニコフの銃口を三浦に向けた。

「ちょっ!?AR数名は普通にキツイっての!」

浦風と呼ばれる回避法(といっても側転やバク転を組み合わせただけの移動法である)でちょこまかと射線を切りつつ移動し、途中で中折散弾銃を回収して木箱の影に潜り込み射線を切る。

「どうすっかなぁ……これ……てか粉のせいで咽そう」

拳銃の弾倉を交換して散弾銃の空シェルも新品のスラグシェルに変えた後、舞い上がった粉の煙幕の中でこの後の行動をどうすべきか考えていると……

「み、三浦か?」

聞き慣れた声とはいえ戦場真っ只中な場所のため反射的に声の聞こえた方向へ散弾銃を構える三浦。

「坂上先輩?無事ですか!?」

「ああ、そうだ。すまん痛み止めか何かないか?ないと思うが……」

初め眉間に皺を寄せていた三浦だったが声の主がバディだと判明すると散弾銃の銃口をおろして坂上の方へ移動する。

全身粉まみれで真っ白になった坂上、ヘルメットを被っていないことに気がつく

「メット割れました?一応自分以外の人に投与すると効き目薄いんですけど治癒促進剤のスティムあるんで打ちますね」

「よくわかったな、箱にぶつかったときにヒビ入って使いもんにならなかった、すまん。右脚あいつに殴られて肉離れか何か起こした感じなんだ」

「ちょと見ますね……あっこれ完全に肉離れですわ……スティム一本打ちます」

「足引っ張って済まない、先輩のメンツが丸つぶれだぁ」

「まだ生きてるだけ儲けものですよ」

先輩のズボンの裾をめくりあげ、スティムのキャップを口で噛んで外すと赤く腫れたふくらはぎに無痛注射針を刺して、薬液を注射した。

「これ回復力は超能力者の素質がある人以外では効き目薄いんで、一応痛み止めは一般の入ってるんで大丈夫ですけど」

「無いよりかはマシだ、とりあえず俺はお荷物になりそうというか今からなるんだが、ここから出て衛生科世話になる、すまないが運んでくれるか?」

「お安い御用ですっ!おっもっ」

強襲用の装備はそれ単体で20kgはある、そして武偵の強襲科は大抵が鍛えて筋肉量が多い、筋肉は脂肪より重い。結果素の体重が大きいため装備合わせるとかなりの重さになる。

「大丈夫か?」

「大丈夫です、その代わりこの任務終わったら何か美味しい店で飯でもおごってくださいなッ」

左肩に先輩を担ぎ、右手でガバメントを保持して中腰姿勢で移動を開始した。




登場した銃火器についての説明

CITORI725
ミロク作製所製の日本産中折式上下2連散弾銃。使用弾薬規格は12GA(いわゆる普通のショットガン用の弾薬)
クレー射撃や銃を用いる猟などで現実での日本でも使われている散弾銃の一つ、主人公である三浦はロングバレルに3倍率スコープを搭載し、さらにスラグ弾(でかい1発弾を放つ弾の規格)で精度を高め中距離からの狙い撃ちに特化させている。

UZI
ウージーまたはウジと読む。イスラエルのIMI社(現 IWI社)製の短機関銃。戦後第一世代を代表する短機関銃。
形状はT字型。イスラエル初の国産兵器として1951年に開発、同年に製造を開始。1956年の第二次中東戦争で活躍したとのこと。
使用弾薬は9mmパラベラム、原作主人公遠山キンジの愛銃ベレッタM92改と同じ規格。
世界各国で使われているH&K社のサブマシンの方が現在短機関銃として主流ではあるものの、こちらコストが高いのであまり高いのを使いたくない武偵では重宝されている。

デザートイーグル50AE
デザートイーグルは、アメリカ合衆国ミネソタ州のミネアポリスにあるM.R.I.リミテッド社が発案し、イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社(現IWI)とマグナムリサーチ社が生産している自動拳銃。意味は英語で「砂漠の鷲」
使用弾薬の50AEは、発売当時、最強の威力を持つ拳銃用弾薬とされており、現在でも一般販売される自動拳銃用弾薬としては最大級の威力を持つ
強力なマグナム実包を安全に使用するため、自動拳銃では珍しいガス圧作動方式(ショートストロークピストン方式)を採用
発射された弾丸の運動エネルギーは、AK-47などに使用されている7.62x39mm弾と同等であり、NIJ規格レベルIIのボディアーマーを貫通する能力を持っている
拳銃による狩猟が認められているアメリカの一部地方では狩猟用としても使用されている。価格は$1,249、日本円(1ドル=120円を前提で)換算すると約15万円程度と、拳銃としては比較的高価
マグナムにありがちな「小柄な人間や女性・子供が撃つと肩の骨が外れる」など誇張した表現がまま見受けられるが、射撃姿勢や扱い方の影響が大きいので、姿勢を崩すと腕力が強くてもバランスを崩しやすく事故の原因となるが、逆に非力な人物でも正しい姿勢ならば、デザートイーグルを撃つことは可能である。
射撃時の反動は非常に大きいが、銃自体の質量も大きく、ボルトやスライドの後退動作によって、射手への反動の伝達が遅延され体感される反動は同種の弾薬を使用する回転式拳銃に比べれば小さい。
自動車を破壊するなど、.50AE弾や.44マグナム弾の威力は誇張して描かれることがあるが、実際には自動車のエンジンなどの厚い鋼鉄製の物体は、フルサイズ小銃弾クラスのエネルギーで徹甲弾を撃ち込まなければ貫通できない。

M1911A1orM45
2000年初頭、アメリカ海兵隊はMEUピストルに代わる新型ハンドガンを制式採用。コルト社が手がけたM45A1 CQBピストル。
各部には命中精度を追求するカスタムガンなみの加工を施し、新たにレイル一体型フレームやG10素材の特徴的な積層グリップ、スライドには間隔が広いセレーションを採用。また、大部分の外装をタンカラーで仕上げるなど、MEUピストルの後継としてふさわしいモデルとなったいわば現代改修版M1911
原作では神崎アリアがカスタムして使用していた様に、銃のライセンス系統が無効となっているためこれを元に開発されたトンデモ銃が多数存在している。
三浦のカスタムの場合.45 Win Mag弾と呼ばれる45ACP弾をマグナム化した弾薬を装塡。強力な反動のため内部スプリングは1000発前後で交換しなければならないとちと使い勝手は悪め。
また、LAM(レーザーサイト)を装着している他、マズル面がスパイク状に加工されたストライクプレート・コンペンセイターを装着、万が一スライド部分を掴まれてもスライドの動きを阻害されないようにする他、接近戦で銃口を相手の体にめり込ませての発砲も可能になっている。もちろんコンペンセイター(反動軽減装置)の役割もなすので強力な弾薬での銃口跳ね上がりも抑えられるようになっている。

AK47
ミハイル・カラシニコフが設計し、1949年にソビエト連邦軍が正式採用した自動小銃
実戦の苛酷な使用環境や、戦時下の劣悪な生産施設での生産可能性を考慮し、部品の公差が大きく取られ、卓越した信頼性と耐久性、および高い生産性を実現した。
この特性から、本銃はソビエト連邦のみならず、全世界に普及した。基本設計から半世紀以上を経た今日においても、本銃とその派生型は、砂漠やジャングル、極地などあらゆる世界の地帯における軍隊や武装勢力の兵士にとって最も信頼される基本装備になり、『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されている
余談だがロシア等で作成されたAKはある種のブランドなので結構値段が張る。逆にアメリカ国内等で作成されたAKバリアントは給付金の10万等で買えてしまったりする(セミオートなのが多いが)

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