仁王 令和   作:tanazi1000

3 / 4
九十九ノ武器

「リロードする!」

「3時方向から撃たれまくってる!」

「武偵がなんぼのもんじゃい!」

「こっちたま足りねえ!じゃんじゃん持ってこい」

怒号と発砲音、硝煙が漂う戦場の中を、重い装備をつけた先輩を担ぎながら三浦は息を潜めつつ武偵側の領域にある侵入口へ移動する。

中腰の態勢に加えて重い者を運搬しているため三浦の息は乱れ、額には玉の汗が浮かんでいた。

『全強襲チームに告ぐ、目標の奪取に成功。直ちに撤退を開始せよ!繰り返す。全強襲チー厶に告ぐ……』

幸運にも作戦は成功し、撤退フェーズへ移行したが最悪な事が発生した。もう一歩のところで突破しようものならば確実に戦闘になりそうな場所に戦闘員が何名か武偵と撃ち合っていた、どうも武偵側の最前線に来てしまったようだ。

「逆に言えばここさえ超えれば後はなんとかなるんだがな……」

「流石にここ先輩担ぎながら突っ切るのはきついです」

どちらも射程がギリギリなのか中々に相手に着弾して戦闘継続不能まで持っていけないらしく膠着状態に陥っていた。

(どうする?一か八か、ソハヤで……)

拳銃をしまい、腰にポーチ類と一緒に装着した古い匕首に手を伸ばし、抜こうとしたその時

「Ok溜まった!飛ばしていくぜ!」

青い曳光弾のPDWをぶっ放していたとある男子武偵生の一人が大振りなフォールディングダガーを二本骨盤付近の左右のポーチ群から抜き、白兵戦に乗り出したのだ!

「おっしゃぁいってこい鎮!」

(鎮!マジ!?やったぜ)

銃撃戦の最中白兵をしだすとなると普通なら頭がイカれたとしか見えないが彼ならば問題ない、なぜなら……

「来い!【天眼孔雀】オン マユラキランテイ ソワカ!」

真言を鎮が唱えると、二本のダガーの刃だけが消滅し、柄だけになった。そして……

「【DS変体】」

両方のダガーにある柄頭を合わせた。すると、青い液体のような気体のような特殊な物質が発生し、長柄が生成されその先端にフォールディングダガー。

刃は姿を消し、長柄を構成している物質に置き換わり一回り大きく刃を形成した。

両剣と呼ばれる特殊武器の形をしたポールウェポンがそこにはあった。

九十九武器、精霊や神仏の力を武器に宿し振るう強大な降霊術の一種。その刃は悪鬼羅刹を切り裂き、常世を払う力があると言われている。

霊力を扱うことができ、なおかつ前述の守護がある者が振るえ得る一撃は、常識を超える。

多数のカラシの発砲音、宙に舞う空薬莢、そして鎮へと飛来する弾丸。

しかし、それらはすべて回転させた九十九両剣によって反射され、射撃主へと返される。

ぐるぐると両剣を回転させながら暴力団員への元へ走り出す鎮。

次々と反射された弾丸で負傷していく団員達、硝煙弾雨の中、飛来物を跳ね返しながら迫りくる謎の武器を持った武偵。

この状況で彼に畏怖せず立ち向かえるほど団員達の精神は強くはなかった。

「ば、バケモンだぁ!」

「お、おいどこへ行く!?」

一人が逃げだせば後は早かった。蜘蛛の子を散らすように後退を始めるならず者達、それでもなおその場にとどまり応戦する者もいたが虚しくも鎮の持つ九十九武器によって意識を刈り取られた。

衛が団員達をボコボコに叩いている間、その隙に最後の力を振り絞って負傷した先輩を担いだ三浦が前線のホットスポットを駆け抜けていく。

何とか金属の小型コンテナの影に滑り込み、肩を上下させ大きく空気を吸い込む三浦。

すぐに駆け込んできた闖入者が何かを肩に担いでいた事に気がついた強襲チーム配属の衛生科の知り合いがやって来た。

「負傷者だね、すぐに治療する。何か応急処置は?」

「【ハーミットスティム】を投与した、肉離れおこしてる」

「了解! この雷久保に任せな、とりあえず冷やしてテーピングから移動車両に運び込む。秀麗、あんたどこか怪我は?」

「私は大丈夫、今ドンパチやってる目的は?」

秀麗が聞き返すと、雷久保は瞬間冷却パックにパンチを噛ましてからそれを布で覆い、坂上の左脚に巻きつけつつも答えてくれた。

「今は撤退戦で逃げ遅れを待ってる、とりあえず地下に1個分隊で彼らはなんとか出れるらしいけども苦戦してるらしいよ。手伝ってあげれるなら行ったほうがいいかも」

「分かった、行ってくる、坂上先輩をよろしく」

「任せな!」

坂上先輩を預け、そのまま地下倉庫への入り口へ向かう秀麗。その途中

「おい、三浦! お前の弟のだが持ってけ、俺じゃ使えん」

鎮とバディを組んでいた男子が蒼と黒のツートーンカラーでスタイリッシュな外装に仕上げたPDWを渡してきた、見た目はM4、正式名称AR15のショートバレルカスタムに見えるが、弾薬が完全に霊力や、魔力といったエネルギーを変換してぶっ放す超兵器であり、銃器とは認められていない特殊な武装だ。

最も弾源が霊的エネルギーなので使える人物に限りがあるのが欠点だが、少なくとも霊能力の素質がある秀麗は問題なく使える。

銃火器を受け取って一度マガジン抜き、左手で握りこんで霊力を流し込む。マガジンの側面で光っているエネルギーの残量を示す青く輝くゲージが半分程度だったのがそれでマックスにまで戻り、今度は紅く輝き始めた。

マガジンを刺し直して、コッキングハンドルを操作。

「ありがとう、じゃあ行ってくる」

「致命的な怪我しないように気をつけろよ!?」




九十九武器
守護霊の力を武器に宿らせることによって、強力な攻撃を繰り出せる九十九武器が発動する。
守護霊はそれぞれ“火”、“水”、“氷”、“風”、“土”、“雷”の属性を帯びており、憑いている守護霊によって九十九武器の性質が変わり、敵の攻撃や相手への攻撃により霊力が減少していき尽きると効果がなくなる。
発動中の被ダメージは霊力が減るが守護霊が身代わりをするため多少の被弾ならば無視して攻撃の続行が可能だが油断は禁物である。
ちなみに鎮についている天眼孔雀はありとあらゆる属性に変化できるが彼が好んで使うのは水の属性である。

Voltk
ヴォルティックと読む。鎮が基礎設計を描き、千子一族の銃器技師が仕上げた霊力兵器。
持ち主の霊力や魔力といった超能力エネルギーを妖怪を調伏した際に落とす魂代を改造した機関部に使用してエネルギー弾を発射する属性銃。
形状がM4やAR15に似ているのはアフターマーケットの流通のパーツを流用しやすく仕上げたためである。
あと万が一の修理時にもコストが安く済む。
使用者の憑いている守護霊や使用する魔術の属性によって銃弾の属性が変わる。
鎮であれば水、秀麗であれば炎である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。