制圧済みの倉庫地下行下り階段を早足で駆けていく秀麗、そこそこ長いすでに段数半ばの場所ですらでグレネード系の炸裂音とライフル弾が連射される発砲音が響き渡っていた。
「フラッシュの準備しとくかぁ……」
秀麗はタクティカルベストに付けたピン部分を留具にかけた閃光手榴弾を取ると、安全レバーを握り込んで投擲準備を開始する。
階段を降り、しけたコンクリ壁だけしかなかった視界が開け、多量の物資が規則正しくそして多量に置かれた光景と共に目に入ってきたのはジャージやスカジャンを着込んだ等いわゆるチンピラ風の人物達。
事前に聞いていた地下に残された1部隊と撃ち合ってるのか秀麗には気づいておらず背中を見せて無防備な姿でロシアの軍用マシンガンPKシリーズを乱射していた。
これでは迂闊に真正面から撃ち合うことは不可能である、排除して進もうにも危険で出れないのも納得が行く。
たがそれこここまでである。
「フラッシュ投擲!」
警告と共に秀麗は閃光手榴弾を投擲、それと同時に階段の手摺を飛び越えて手頃な木箱の物陰に隠れ閃光から目を保護する。
バギィンと轟音が鳴り響き、チンピラ達が目を焼かれた苦しみからか喚き始める。
「今だ!撃て!」
取り残された部隊の隊長である2年生が部隊に指令を出し、視界を奪われたチンピラを制圧すべく射撃を開始し始める。
秀麗も負けじと障害物から身を乗り出してvoltkの引き金を引き、弾を送り出した。特にマシンガン持ちを優先して。
シュピピピピピとおもちゃのSEような発砲音が鳴り響くが、その正体は霊力を固形化して発射するエネルギーガンである。
しかもそういったオカルト系のエネルギーは気力を削りやすく肉体への損傷を最低限に抑えつつ気絶に持っていきやすい性質があり無力化に向いているのである。
マシンガン持ち2名をのしたあと、定番AKやどこから密輸入したのかShAK-12持ち等計4名を気絶に持っていったところでレシーバーが停止、放熱を開始し始めた。
どうも連続して射撃したのがまずかったのかオーバーヒートしたらしい。
こうなれば使い物にならないのは一目瞭然。近場のAK持ちに銃ごとぶん投げてまず怯ませると同時にハンドガンをホルスターからファストドローしつつ片手で発砲、2発目からは両手で銃をきちんと保持して2発の弾丸を利き腕と利き足であろう右側の二肢を撃ち抜いて行動不能へ追い込む。
「うごああああああああ」
背後から雄叫びが聞こえ、秀麗が振り向こうとした瞬間強烈な衝撃が身体にかかり吹き飛ばされ頭を打って地面に横たわる。
不幸中の幸いで強化プラスチック製のメットを被っていたため出血は無いが最悪な事に軽い脳震盪を起こしたのか軽い吐き気と目眩が発生し、身体をすぐさま起こすことが難しい状態だった。
物が二重に見える視界、その中で一際目立つかなり大きいガタイをした男が秀麗の元へ飛びかかってくるのが見えた。
飛び起きようにも身体は言うことを聴かず、男に馬乗される秀麗。そして男は秀麗の顔面にまず一発重い拳めり込ました。
男の拳が顔面にぶつかるのとは別にパキッゴリッという音が鼻筋から発生したのを秀麗は聞いた。鼻の骨が折れたと彼女は確信。
男、二撃目からは頬部位を連続して殴り始め、ゴスッ、ゴスッと音が鳴るたびに顔全体に衝撃が走り脳が揺れ意識が朦朧とする。
そんな中、秀麗は腰に手を伸ばす。
正確にはソハヤマルに―――
ソハヤマルの柄を掴むとそのまま引き抜き男の脇腹、それも肋骨部に柄頭をめり込ませた。
「フンッグッ!?」
不意打ち。しかも胸部、肺付近にだ。
打撃を受けた男はうめき声を上げるとよろめく、その隙に秀麗はソハヤマルを自身の丹田へと突き刺した。
秀麗から霊力が溢れ、翠色の浄の炎が彼女の付近で荒ぶり始める。
秀麗を殴っていた男はその炎に焼かれ一瞬で気絶した。
突発的に発生した異常現象にヤクザ側も武偵も撃ち合うことを一時的に止め、一部の者は口を空けた間抜けヅラで、ある者は固唾を飲み秀麗の居るであろう焰の荒れ狂う場所を見つめる。
そして少しして焰の渦が収まる。
その場には翠の靄を纏い、うつ伏せに倒れた先程まで秀麗をタコ殴りにしていた大男とーーー
「あークッソ!」
あぐら状態で悪態をついて鼻血を垂れ流している鼻の穴に指を突っ込みなにかしようとしている秀麗の姿があった。
彼女は指を使って鼻を上げ、悲鳴を上げた。
鼻の骨が折れたので応急処置で無理やり直したのだ。
「痛っったぁ!クソッ覚えとけよ!もーゆるさんからなぁ?」
そんなセリフと同時に彼女が立ち上がると、背後に翠色の半透明で鬼といしか言いようない容姿の何かがスゥーと現れた。
「ヒィッ!?」
秀麗の気迫もだが、背後の鬼の霊とも言うべき存在が手にした獲物を見てヤクザ達が顔を青くした。
「歯ぁ食いしばれ、クソども」
その手に七支刀を持った鬼霊が上段に構えた秀麗を真似て八相の構え、バッティングフォームに似た構えで刀を構え始めた。
PK機関銃
プリミョート・カラーシニカヴァの頭文字をとってPK機関銃と呼ばれるロシアが生んだ傑作機関銃、設計者はかのカラシニコフ小銃AKシリーズの生みの親ミハイル・カラシニコフ
1960年から2020年の今に至るまで使用されており東側の汎用機関銃の顔ともいえる。
給弾はベルトリンク方式で弾帯を使用する、弾薬規格は7.62mm×54R
ShAK-12
ロシア連邦保安庁(FSB)の要請で、KBP開発局の傘下であるTsKIB SOO(スポーツ及び狩猟用火器中央設計局)が2010年に設計
ボディアーマーや障害物越しの相手に対して高い貫通力とストッピングパワーを持つ、12.7mm×55弾を使用
機関部を後ろに下げたブルパップ方式を採用発射レートは分間600発ほど