エロゲヒロインに転生したけど、隠しヒロインなら大丈夫だよね。   作:季高

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そのじゅう

 白狐クロ。

 ゲームにおいては四番目に登場する、金髪ちびっこ。半妖を自称する生まれも育ちも白狐の社な、妖牙に育てられた少女だ。

 彼女の魅力はなんと言っても二面性だろう、社と巫剣をつなぐ神官としての側面と、森育ちの野性的な側面。ちょっと独特な訛りも独特だ。

 

 社の代表を務めるだけあって、礼儀作法も完璧、金髪なのもあってお嬢様感は正直ヒツミちゃんより大きい。しかしその素とも言える状態は世間知らずの野生児。

 ソラくんと出会って少し、クロちゃんは学校に通うことになる、ソラくんもヒツミちゃんもミズキもまったく心配していなかったのだが、実は生活力皆無、人間社会への適正皆無だったクロちゃんは学校で盛大にやらかすことになる。

 

 その度に他のものがフォローに回るのだが……フォローすればするほど別の問題が発生し……といったところだ。とはいえ、そこからクロちゃんは成長し、最終的にはソラくんに手料理を振る舞うことになるのだが、まぁそこら辺は置いておこう。

 

 クロちゃんの最大のパーソナリティは半妖という立場である。ミズキのときに触れたが、そもそも半妖とは存在できないはずの種族だ。常に破壊衝動に襲われ、人間にも、妖牙にもなれず、討伐されなくてはならない立場の種族。

 半妖と本人が自覚しなければいいのだから、中には自分が半妖であることを知ることなく一生を終える者もいるだろうが、そもそもそれは半妖ではないのだ、だから半妖に人として、妖牙として生活できるものはいない。

 

 だというのに、クロちゃんは半妖だと自称する。そして、それが問題になっていない。ゲームにおいても、だ。ゲームにおける巫剣の上層部はヒツミちゃんが一掃してないのもあって、権利とか欲望で面の皮を厚くしている連中ばかりなのだけど、そういう連中もやり玉に上げない。

 何故か、といえばなんとなく察しが付くだろう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 純然たる人間だ。

 

 色々あって、森に捨てられた人間の子供、それを森の妖牙たちが拾って育てたのが、クロ。クロは人間であるが、妖牙たちの子供であるという自負から半妖を名乗り、しかしただの自称であるのでそういう事を気にする人間は何一つ気にしていない、というのが真相だ。

 とはいえ、クロちゃん自身は普通に自分を半妖だと思っているし、そうでないということは、彼女のアイデンティティを奪うということでもあるのだが――

 

 まぁそれはゲーム本編の話。

 この世界におけるクロちゃんはどうやら、俺の知らないうちに、俺の信者になっていたらしい。……頭が痛くなってきた。

 ああ、これ四人目のあの子はどうなるんだろう、普通な子だったんだけどな……

 

 

 

 <>

 

 

 

「――こちらでよろしかったでしょうカ」

 

『ありがとうございます』

 

 クロちゃんに案内されて、俺は目的地へとやってきた。俺がここにやってきた目的は三つ、一つは巫剣の代理としての役目。

 幸いなことに、現在社で大きな変化はなく――今の所――これはスムーズに片付いた。

 というか、これだけを目的とするなら、下っ端の天剣でも問題なくこなせるのだが、残念なことに巫剣家のある山と、白狐の社がある山は正反対の場所にある。

 

 四方を山に囲まれたこの街は、人口が軽く十万を超える大規模な地方都市である。端から端へ行って帰るにも何時間か経過してしまうため、人を遣わせるにも一苦労というわけだ。

 

 そして、二つ目――

 

「それにしてモ、“ヒラサカ”にご用とハ、何かあったのでしょうカ」

 

『ヒツミさん関連です、といえばわかりませんか?』

 

「あの方ですカ……納得でス」

 

 ――この社にある“ヒラサカ”の様子を見に来るためだ。

 ヒラサカ、というのは簡単に言うと神宝イザナミを納めておく場所である。黄泉平坂というやつだ。ヒツミちゃんはここを通って、イザナミを入手したのである。

 他にもここは、他の可能性の世界との交信にも使用できる。おそらくヒツミちゃんはここでラプラスの可能性を見て、結果としてラプラスに執着したのだ。

 

「ヒツミ様はイザナミを手に入れてかラ、変わられてしまいましタ」

 

『そうですね。でも、根底にあるのは変わっていないはずなんですよ』

 

 ヒツミちゃんとクロちゃんは当然ながら顔見知りだ。クロちゃんにとっても、ヒツミちゃんは幼馴染というべき存在なのだ。

 幼馴染が多すぎてまるでヒツミちゃんハーレムみたいだぁ。

 まぁ自分のルート以外だとソラくんを盗られるんですが。

 

「あの方ハ……何を思っテ、イザナミを身に纏ったのでしょウ」

 

『ヒツミちゃんは、ずっと思っているんです。自分には自分の役割がある、と』

 

「役割……ラプラス様はご存知なのですカ?」

 

『私は、同じですから』

 

 ――ラプラスとヒツミはその根底が似通っている。ヒツミちゃんはそれを知っているからラプラスに執着している。

 多分ヒツミちゃんは、俺を救うことが自分の役目だと思っているのだろう。

 

「……それハ、良いことなのでしょうカ?」

 

『わかりません。そのためにはこの中に入って、調査をしなくては行けないのですが、それは今じゃなくてもいいのですよね』

 

「……?」

 

 今日はあくまで様子見だ。見たところヒラサカに異変はない。もし異変があったら、白狐の社から巫剣に伝わっているだろうが、それでも自分で確認しておきたかったのだ。

 結果として、今は大丈夫という結論に落ち着く。――ヒツミちゃんのイザナミが暴走していないのと、同じ結果に終わった。

 

 そして、そもそも今日このヒラサカに潜るわけには行かないのだ。

 なにせ今日はゲームと同じスケジュールなら、あるイベントが起こるのだから。

 これだけブレイクしているのに、それが起きるのかと思うが、おそらく起きる。一日目に発生した改造妖牙もそうだが、今回のイベントもその改造妖牙絡みだ。

 

 つまり、この改造妖牙を繰り出す連中は、俺に執着していないのだ。まぁ、あの組織にヒロインの関係者はいないからな。

 

 さて、襲撃はまだなようなので、ここで俺は少し切り込むことにした。

 

『ところで』

 

「はイ」

 

 まぁ、俺がここに来た以上、触れなくてはならないそれはつまり――

 

 

『どうして社のあちこちに私の人形があるんですか?』

 

 

 この社のあちこちに所狭しと設置されたラプラス人形のことである。そのサイズは等身大から手のひらサイズ、デフォルメされたものなどなど、それはもう凄まじい種類だ。

 同じものも大量にあり、だいたいそれら一つ一つに複数の妖牙が礼賛している。

 

 異様な光景だった。

 これでは白狐の社ではなくラプラスの社である。

 

「はイ! 我々の信仰の証でス!」

 

『いえそうではなく』

 

 俺がそれを指摘するとクロちゃんはそれはもうすごい勢いで反応した。顔が近い、あっ、いい匂い。……いい匂い?

 

「我々は信仰に目覚めたのでス! ラプラス様! 貴方は私達の女神でス!」

 

『この社は白狐の社でしょう!?』

 

 ――白狐の社、名前の通りに、ここにはまとめ役がいる。

 クロちゃんの母親代わりとも言える存在であり――この社で祀られる神獣、とでも呼ぶべき存在である。それが――どうして俺にすげ変わっているのだ?

 

「もウ、言わせないでくださいよウ」

 

『恥ずかしがってないで……というか白狐はどうしたのですか』

 

 ――そして、ここの主であり、クロちゃんの母親でもある妖牙、“白狐”。彼女が現れないのは、そういうことならおかしい。

 なにせ、このラプラス信仰が白狐の意思なら、彼女こそ真っ先にここへ出てくるべき存在ではないか。自分で言うのも何だが、俺は彼女たちにとって、何よりも尊い存在のはずなのだから。

 

 実際、今もクロちゃんは俺に低姿勢だし……いや低姿勢すぎない? ちょっとスカートの中とか覗こうとしてない!?

 

「――チッ」

 

 あっ、今舌打ちした!?

 

『クロさん!?』

 

「いエ、なんでもないですヨ――?」

 

 この子、マジメではあるのだが、結構強かだ、ゲームでもそうだが、基本的に巫剣と社のバランサーとしての役割があるので、ゲームにおける腐った巫剣の連中と丁々発止やりあっていたのだから、当然といえば当然か。

 

 とりあえずペシッとしておいた。

 

「んんんんんん―――――!!」

 

 いかん、逆効果だ!

 

 びくびくと、その場で痙攣して動かなくなったクロちゃん。ああ、口から信仰が漏れている……

 

「……びゃ、白狐様でしたラ……」

 

 そして、その状態でちゃんと答えようとしている。俺はそっと制服のスカートを抑えつつ距離をとって、話に耳を傾ける。

 

 

()()()していまス」

 

 

『でかせぎ』

 

 そして、ちょっと理解できずにひらがなで打ち込んでしまった。

 いや、でかせぎ?

 

「……白狐様だけでなク、多くの妖牙が外に出ていまス。なぜなら――」

 

『なぜなら』

 

 どうやら、この場に白狐がいないということは確からしい。

 が、しかし、一体何のために――――?

 

 

 その時だった。遠くからけたたましい破壊音が響く。

 

 

 ――こんな時に!!

 襲撃だ。俺が想定していた三つ目の目的、改造妖牙の襲撃、それが起こってしまったのだ。こんな時に! ――直後、ガバっとクロちゃんが立ち上がる。

 

「何事ですカ!?」

 

 周囲に向かって叫び、音の方へ向かう。俺もそれに続いた。

 

 

 

 <>

 

 

 

 暴れていたのは、亀の妖牙だった。

 鈍重で、とにかく堅い。元は温厚だったかもしれないが、改造され、今は手当り次第に辺りを破壊している。隣では、クロちゃんが悲痛そうな顔でそれを見ていた。

 同じ妖牙として、これは見過ごせない事態だろう。

 

「アレハ……例の改造されたという妖牙ですカ、痛ましイ」

 

 そして、周囲の妖牙を下がらせる、彼らはクロちゃんがここに到着するまでの時間稼ぎを受け持っていたのだ。体のあちこちにキズが見える。

 

「――下がっていてくださイ、ラプラス様」

 

“疑問”

 

 俺はクロちゃんの言葉に待ったをかける。クロちゃんはどうやら一人であれを討伐するようだ。しかし、クロちゃんの力では、あいつは相性が悪い。

 なにせクロちゃんは手数で戦う。ゲームでは最初は意気揚々と一人で出ていったクロちゃんが、苦戦してヒツミちゃんたちの援護を受ける流れだった。

 

 だから――

 

「問題ありませン、私ハ、あの程度なら即座に片付けられまス」

 

 ああ、ゲームと同じセリフを――

 君の術式“タマモ”では、どうやったってあの亀は倒せない――――

 

 

「参ります。――“ハクメン”!」

 

 

 ――あれ?

 

 直後、クロちゃんの頭に耳が、背に尻尾が生えた。狐のものだ、ただし本物ではなく、光で作られた実体。背の尻尾は九つ、白面金毛九尾の狐というが、つまり彼女の術式はそういう代物だ。

 

 だが、しかし。

 本来彼女が使うのはタマモという術式で、それが生み出す尻尾は一つ、ハクメンという術式はゲーム終盤に会得する――覚醒した直後の必殺技というやつのはずだ。

 いや、それはミズキの完全覚醒も同様、しかしクロちゃんの問題は、これを使用する条件の一つに――

 

「――遅イ」

 

 思考している中、クロちゃんが駆ける。足元に狐火を出現させ、それをさながらブースターの如くふかして突撃するのだ。異能バトルの世界にあって、一人だけロボットものか何かのような機動で亀に肉薄したクロちゃんは、手を亀にかざす。

 

 そして、地面から強大な白い炎を炸裂させた。

 あまりの勢いに、亀が転倒する。そこへ両腕に狐火をまとわせ、素早さを生かした連打をたたき込む。甲羅は堅いが、しかしみせてしまった腹はわかりやすい弱点だ。

 みるみるうちにそこが傷つき、亀はけたたましい雄叫びをあげた。

 

「終わりでス」

 

 そして、一気に飛び上がると、無数の炎を生み出し、亀に叩きつけつつ、足に灯った狐火をライダーキックの如く亀に突き刺した!

 

 結局、亀は何一ついいところなく、消滅した。

 いや、強い……まぁ、これもある意味、当然といえば当然なのかもしれないけど――

 

「――ご無事ですカ? ラプラス様」

 

『大丈夫です。しかしクロさん。その術式は――』

 

「あア、これですカ?」

 

 ――――その術式は、()()()()()使()()()()はずだ。

 少なくとも、半妖を自称するクロには、使おうという意思も生まれないだろう。だと言うのに――

 

「――全てハ、ラプラス様のおかげでス」

 

 そう言って、クロちゃんは私にひざまずく。もしや、これは――

 

 

「ラプラス様が目覚めさせてくれたのでス、私は――そウ、人であるト!!」

 

 

 ――ああ、またしても。

 一体どこでどうなって、こうなったのだろう、たとえ直接的な原因は俺にあるとしても、きっとそこに至るまでのあれやこれやは、とんでもない七転八倒があったはずだ。

 ミズキだってそうだが、どうしてこうなったとしか言えないのは、一体全体なんなのだろう。

 

 ――――まだ、どうしてイザナミを纏ったのか、なんとなく経緯がわかるヒツミちゃんが、俺にとっては癒やしに思えてならないのだった。

 

 

 

 <>

 

 

 

『ところで』

 

「何でしょウ」

 

『私の人形はどこから来たのですか?』

 

 

()()でス。白狐様モ、通販でラプラス人形を買い漁るために出稼ぎに出ているのでス」

 

 

『なるほど』

 

 ――――なるほど!?

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