今回は初回なので軽く前提となる設定を添えておきます。
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巫剣:少女の姿を持つ刀剣。剣聖を超える剣の使い手であり、超常的な力も使える。
禍憑を唯一倒せる存在。
御華見衆:禍憑に対抗するべく組織された巫剣たちをまとめる特殊機関。
禍憑(まがつき):人に害なす邪な存在の総称、亡霊・鬼の類。
巫剣使い:巫剣の力を最大限引き出す能力を持つ人間。稀に特異な力を持つ。
どうしてこんなことになったのだろう。
俺は石畳で舗装された路地裏を駆けていた。
少し後ろには一緒に来た愛刀、城和泉正宗が続いている。
そして俺の手を懸命に握っているのは金髪の少女であった。
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時は少々遡る。
俺と城和泉は本部の司令によって遠い異国の地まで来ていた。
「ようやくついたわね、私こんなところまで来たの初めてよ!」
城和泉がはしゃいでいる。まあこれまで国を出たことがなければそうもなるだろう。
今の彼女は普段の装備から鎧を外した格好をしている。もともと和洋合わさったような服装なのでここでもそこまで違和感はない。何より彼女の正装といえばこれらしい。
「それにしても任務とはいえ、海外遠征とは…」
遠くに巨大な時計塔が見える。上野とは比べ物にならないほど整備された街だ。
本部からの指示はこの国で発生する危険があると予知された強大な禍憑、その調査である。
これを見過ごせばやがて日本にまで侵攻し、彼岸五将と同等もしくはそれ以上の脅威になるかもしれないそうだ。
「それで主、調査ってどこへ行けばいいのかしら」
城和泉の声で我に返る。俺もこの街に圧倒されていたらしい。
「いや、まずは滞在先の宿にいこう。荷物もそこに置いていかなくてはな」
俺は軍服のポケットから一枚の紙きれを取り出した。そこには簡単な地図と共に宿の名前が書かれている。
「わかったわ。…これが任務じゃなければよかったのにね」
「まあ任務だからこそ来れたのかもしれないが…無事に終わったら少しくらい観光してもいいだろう」
「いいの⁉今言ったからね!約束よ!」
「ああ、約束だ。でもその前に任務だ。」
そうして俺たちはあらかじめ手配しておいた宿屋へ行き、とりあえず荷物だけを預けて早速調査に出た。
城和泉が言うにはあちこちで妙な気配がするのだという。微弱ながら霊脈の乱れもあるようだ。
大通りを離れた路地裏に入るにつれてそれは強くなっていった。
「ここ、なんか嫌な雰囲気ね…」
「そうだな。都市が急速に発展していった影響なのだろうが…」
路地裏は昼間だというのに薄暗く、景色も全体的に灰色に見える。道行く人も大通りとはずいぶん異なり、薄汚れて乱れた服を着ている人が多いように見える。
「気配はどうだ?禍魂が蓄積されてもおかしくない環境だが」
「ごめん主、ここはいろんな気配が混ざってちょっと…」
「まあそれはそうか。こうした貧民街では…っ⁉」
その時別の気配を感じた。一瞬だがこの感じは巫魂だ。
だがここには城和泉以外の巫剣は来ていないはずだが…。
「ちょっと主!あれって!」
城和泉が突然叫ぶ。見ると彼女の指さす先で一人の少女が複数人の男によって建物の陰に引きずりこまれていくのが見えた。言うまでもなく誘拐だろう。
「見過ごすわけにはいかんな、助けるぞ!」
「さっすが私の主ね!そういうと思ってた!」
そして俺たちは彼らに向かって即座に駆けだす。ここから視認できるだけでも八人。もちろん全員人間だ。となると城和泉に斬らせるわけにもいかない。
「城和泉、先回りして奴らの注意をひいてくれ。抜刀及び火の使用を許す。」
「わかったわ、主も気を付けて」
「人間相手に遅れはとらんさ」
城和泉はガレキを踏み台にして建物の屋根に上っていった。やはりとんでもない身体能力だ。男たちは狭い建物の間を進んでいる。少女は口をふさがれてぐったりしている。睡眠薬でも吸わされたようだ。俺はそれを気づかれないよう尾行する。男たちは手に拳銃で武装しているようだ。一人は少女を両手で抱えているが、微妙に服が傾いていることからおそらく服の下に銃をもっている。やはり日本よりもこういった近代兵器がここでは充実しているのだろうか。念のため俺は携行している拳銃、ボーチャードピストルのマガジンを抜いて残弾を確認、いつでも撃てるようにした。
程なくして彼らの前方に城和泉が現れた。屋根の上から派手に着地し、抜刀しているのが見える。そのまま鎌倉武士のように名乗っているがそこまでしろとは言ってないのだが…。
第一言葉通じてないだろうに。だが陽動としては完璧だ。俺は少女を捕まえている男の後ろを取った。
(まずは少女を開放せねば…なっ)
拳銃で男の後頭部を殴りつけ、声も出させないまま気絶させる。
その隙に手早く少女を救出、少し離れたところにもたれさせた。
しかしこれで気づかないほど相手も間抜けではない。
『な、なんだお前は‼!』
真っ先に振り向いた男が叫ぶ。英語のようだ。
拳銃が即座に向けられるが、もう遅い。既に間合いに入っている。
次の瞬間には彼の手首は宙を舞っていた。まさかこんなところで居合抜きをするとは思わなかったな…。右手が無くなった男が地面に倒れ伏す。
『サムライ⁉』
いい加減彼らも戦闘態勢だ。次々発砲し始めたが、もう遅い。
城和泉は刀を鞘ごと振るうことで骨を折る、気絶させるといった攻撃を行っている。
また彼女が至近距離の銃撃程度躱せないはずがなく何とも一方的な戦いになっていた。
今一人が彼女に向けて銃を構えようしたが、即座に逆袈裟斬りではじき飛ばされる。同時に男の手の骨が砕け、体勢が崩れた。そして返す刀で頭を殴打されて男は倒れた。彼女が本気で振るえばその頭はなくなっていただろうが、うまく加減したようだ。
俺はそんな器用な事は出来ないので、せいぜい急所を外して斬り飛ばすくらいだ。
城和泉が倒した三人は全員脳震盪で気絶、たまに腕が変な方向になっている程度だが、俺が倒した四人はもう自分の手足で暮らすことは難しくなるだろう。
「なんとかおわったわね。主は怪我無い?」
「大丈夫だ。にしても流石だな城和泉」
「あなたの刀だからね!でも主はちょっとやり過ぎなのよ…」
彼女が血みどろの惨状を見ながら呆れている。確かに俺の斬った男たちは死んではいないとはいえ、それだけだ。
「まあ止血はしてやった。そんなことよりこの娘を安全なところに連れて行かなくてはな」
俺は物陰に隠していたその娘を抱き上げた。
細身な女の子だ。歳は十代半ばといったところか。金色の美しい長い髪が印象的だ。
「わぁ…近くで見るとすっごい可愛い娘ね…お人形さんみたい」
城和泉が顔を覗き込んでいる。彼女の言う通り目鼻立ちが整った文字通りの美少女であり、透明感のある白い肌がまぶしいほどであった。服装こそ質素な白いドレスだが、この娘ならどんな服だって似合ってしまいそうだ。
『あれ…私…?』
その時少女が目を覚ました。外国人らしい澄んだ青い瞳だ。
『大丈夫ですか?』
日本語が通じるとは考えにくいので英語で話しかけた。
『うひゃあ⁉あなた誰ですか⁉』
『驚かせてすみません、あなたが誘拐されそうだったのを見かけたので助けた者です。』
少女は俺の腕の中で目をぱちくりさせ、周りを見渡した。
『あ、なるほど…つまりあなたは命の恩人という事ですね!』
妙に物分かりがいい。この惨状を見て動じないのも不思議だ。
『当然のことをしただけですよ。立てますか?』
『はい、ありがとうございます。』
俺は彼女をおろした。立ち上がった彼女を見ると少し城和泉より背は高いようだ。
「あなた怪我はない?私も応急処置くらいはできるんだけど…」
城和泉が心配そうに声をかけた。だが日本語では通じないのではないか?
『あら、もしかしてお二人は日本の方なのですか?でしたら…』
意外にも言葉がわかるらしい彼女は軽く咳払いをし、
「ダイジョブデス。タスケテクレテ、アリガトゴザイマス!」
若干片言の日本語で、はじけるような笑顔で答えたのだった。
この作品は半年くらい前に書いた作品です。
二次創作なので当時はぷらいべったーでのフォロワーさん限定公開だったのですが、せっかくなのでここにも投降してみました。
全五話の予定ですので気長にお付き合いくださるとうれしいです!
それでは!