天華百剣-斬-巫剣英雄譚~海のむこう~   作:えれく

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こんにちは!
全開に引き続き、閲覧してくださりありがとうございます。
この作品の舞台は日本が明治33年頃をイメージしているので、当時の技術を調べたりしつつ書いていました。
とはいえ時代考証にそこまで自信があるわけでもないのですが…

また、今回から銃火器がちらほらと登場するのですがもし興味があればどんな銃なのか調べてみてください。
マイナーというほどでもないのですが、ちょっと面白い銃を選んでみたつもりです。

それでは!


逃避行

◇◇◇

『…えーっと、整理するとキャリーさんはあいつ等に追われていて、うっかり捕まってしまったという事ですね』

『はい、アルジさん』

あれから俺たちは宿屋に戻った。そして彼女、キャリーの話を聞いていた。彼女の話によると、さっきの男たちはこの国で暗躍する裏組織「黒煙の徒」の所属であるらしい。

…というか名乗るのが遅れてアルジなんて呼ばれてしまってるが…まあいいか。

話を戻すと彼らは昨夜、突然キャリーの住んでいた屋敷を襲い、その場からは何とか逃げたのだそう。しかしあの場所で、疲れもあってか一人になってしまった瞬間を突かれ、あんなことになっていたらしい。

『本当に助かりました。今の私ではどうしようもなかったので…』

『あの人数では仕方ないですよ。まだ追っ手はいるのでしょうか?』

キャリーは渋い顔をして頷いた。

『「黒煙の徒」は大規模な組織と聞いています。一度私を狙ってきたとなるとそう簡単にはあきらめてくれないでしょう』

窓際に立っていた城和泉も少し悲しそうな顔になる。何となく事情を察したようだ。

…どうやら予想以上の面倒事に首を突っ込んでしまったらしい。御華見衆の任務もあるが…流石に放っておけない。覚悟を決めよう。

そう思った時であった。

「二人とも伏せて‼」

城和泉がとびかかるようにして俺とキャリーを床に倒した。

次の瞬間窓からを無数の鉛玉が飛び込み、頭上を掠めた。

「襲撃⁉尾行されたか‼」

『もう見つかってしまったの⁉』

「主‼一旦逃げた方がいいと思うの‼すごい銃撃よこれ‼」

確かにさっきから連射し続けている。ガトリング砲でも使っているのだろうか?

『あれはおそらくマキシム機関銃です!この国の最新鋭の銃器です!』

「なんだと⁉と、とにかく逃げるぞ‼」

壁に無数の穴をつくっていく銃弾の嵐をかわし、部屋を出る。

そして脱兎のごとく宿屋を後にした。

□□□

宿屋を出た後も追っ手は止まらない。俺がキャリーの手を引き、城和泉が後ろから続く。

その間も散々発砲される。撃たれているのは拳銃程度だ。走ってる相手にそうそう当たるようなものではないとはいえ、すぐ近くの石畳に着弾するのは恐ろしいものがある。

「ねえ主‼どこまで逃げればいいの‼」

「知るか‼だが撃ってくるんだから逃げないと‼」

すると一生懸命に走っているキャリーが息切れしながらも呼びかけた。

「ソコ、ミギニマガッテクダサイ‼」

「右⁉わ、わかった!」

わけがわからないが、彼女に言われた通り路地を右に曲がった。

「エット、ココ‼ココヒダリデス‼」

「左だな?急げ!」

その後もキャリーに言われるがままに路地を駆ける。忘れていたがこの国に関しては彼女のほうが詳しいのは当たり前だろう。こういう奥まった道も詳しいのかもしれない。

驚いていたのは道の舗装である。行く道すべてが石畳で整備されている。

おかげでとても走りやすい。車でも楽に走れるだろう。

入り組んだ道を進んでいたせいか、いつの間にか銃声も聞こえなくなっていた。

すると突然広い坂道に出た。石畳で舗装された緩やかな坂道だ。道幅は自動車二台が同時に通れるように設計されているようだ。実際数台の自動車がすれ違ったりしている。

「コッチ!アルジサン!」

キャリーに案内された先に一台の自動車と黒い燕尾服姿の老人が立っていた。

屋根のない、細い車輪の一般的なものだが、ちりばめられた装飾で高級な家の物だとわかる。

『お嬢様!ご無事でしたか!』

『爺や!あなたも無事でよかったです!』

老人はキャリーを見つけた途端、安堵の表情をした。会話から察するにどうやら二人は知り合い、もとい主従関係にあるようだ。

『それでお嬢様、そちらの方々は?』

『私の命の恩人様です!それよりも爺や、急いで車を!追手が来ます!』

『かしこまりました、お任せください!』

そうして二人が車に乗りこみ、キャリーが手招きした。

「よくわからないけど乗ればいいのよね⁉」

「それで大丈夫だ‼」

俺は助手席に、城和泉は後部座席に飛び乗った。

「わぷっ」

「ウヒャア⁉ダ、ダイジョウブデス?」

その拍子に城和泉はキャリーの胸に顔を突っ込んでしまっていた

「ごめんなさい!でも柔らかいのが…私より少し大きいくらいかしら…っくぅ」

「エット、ジョウイズミサン…?」

…まあ特に問題はないようだ。

その時、後ろの路地から真っ黒な車が飛び出してきた。ハンドルを切ったのだろう、飛び出したのと同時にこっちに向き直った。

「やはり撒いてなかったか…‼」

俺は懐から拳銃を取り出す。同時にキャリーが老人に叫んだ。

『追手が来ました‼出してください‼』

『しっかり捕まっていてくださいませ!』

タイヤが何度か空転し、煙を巻き上げる。

そして車体を左右に振りながら、勢いよく発進した。

「うおっ!」

急に加速したので体が車に押し付けられる。

後ろに顔を向けると三台の車が来ていた。そして車の横から拳銃が構えているのが見えた。

『姿勢を低くしろ!撃たれるぞ!』

言うや否や銃声が響く。全員頭を低くしたが、間近を弾丸が掠めていく。

「ごめん主!ちょっとこの距離じゃ応戦できない!」

「わかっている!城和泉はキャリーさんを守ってくれ!」

俺はボーチャードピストルにストックをつけ、後ろに向けて発砲した。

当てなくても牽制にはなる。撃つだけで向こうも射撃が止まる。

…あっという間に一マガジン撃ち切ったが一発も当たらん。自分でも元軍人とは思えない腕だ。

「主は本当に射撃下手よね…」

「うるさい!」

そういいながら空になったマガジンを外す。再装填している間は向こうもバカスカ撃ってくる。バキンッガキンッと音がした。目測でも十メートル以上離れているのに、車に当てられたらしい。大した腕だ。

『ぬぅっ!』

突然俺のとなりでうめき声が上がった。見ると運転していた老人が、左肩から血を流している。

まさか当てたのか⁉相手は予想以上に手練れのようだ。

『爺や!』

『お嬢様はお守りいたします…‼』

血を流しつつ老人はなおも車を走らせた。

大通りから逸れて再び狭い、車がどうにか通れるほどの道に入って停止させた。

停止させるなり老人は車から転げ落ちた。

『爺や!大丈夫ですか!』

キャリーが泣きそうな顔で老人に駆け寄る。

『申し訳ございません。爺はここまでのようです…』

『そんな!今傷の手当てを!』

ところが老人は俺のほうに目を向けた。

『お嬢様の命の恩人様、勝手ながら今一度お嬢様をお助けくださいませんでしょうか…

本来ならばわたくしの役目なのですが…』

老人が手を伸ばしてきた。俺は自然にそれを握り返していた。

『大丈夫、任せてください。お嬢さんは必ずお守りしますから』

そう答えると老人は微かに笑い、意識を失った。

『⁉爺や、どうしたのです⁉』

『安心しろ、気絶しているだけだ』

俺は慌てふためくキャリーをなだめ、その老人を座らせた。

「城和泉、奴らの足止めを頼む!俺はこの爺さんを安全な場所に連れて行く!」

「任せて!あなたの気配が動き次第追うわ!」

そう笑顔で答えた城和泉は即座に抜刀、駆け足で来た道を戻っていく。

俺は老人の止血をしながら用意していた包帯を取り出した。

『助かりそうですか?』

キャリーが祈るような姿勢で俺の手元を見ている。

『弾は貫通している。肩だし大丈夫だろう…ってすみません、つい雑になってました!』

『え、あ!大丈夫ですよ!かしこまられてはどうも落ち着かないので!』

彼女は少し笑った。まあ彼女がそういうならば、ここはそうさせてもらおう。

『…爺やは私の家の執事なんです。昨夜も爺やが私を逃がしてくれました…』

キャリーは俺が治療している間、この老人、執事のことを聞かせてくれた。

だが俺の視界の端では戦闘が始まっていた。

追っ手の車は三台。一台につき三人ほどは乗っているようだ。

城和泉は走ってくる車の正面に立ちふさがった。

『なんだ⁉サムライガール⁉』

『かまうな!轢き殺せ!』

一台が加速して突っ込んでいく。城和泉はすれ違いざまに横に移動、水平一閃。

次の瞬間一台の車が前方宙返りした。よく見ると前輪が無くなっている。

乗っていた三人は当然空中に放り出され、そのまま車の下敷きになった。

『なんだコイツ⁉化け物か⁉』

『まず先にコイツを仕留める、“怪物”を使え‼』

通り過ぎた二台が城和泉に向き直る。

その間も何発も発砲されているが、城和泉はそれをすべて躱した。

「飛び道具なんて…っ‼これはっ⁉」

しかし突然彼女は後ろに飛びのき、刀を構え直した。

「今のは禍魂の気配⁉それが何であいつらから…?」

彼女の見つめる先、彼らの車の後ろから大きな人影が立ち上がった。

 




第二話、いかがだったでしょうか?
実は各話の分割は以前ぷらいべったーに投稿した時と何も変わっていないんですよねw
一応、区切りの良い分け方にしているつもりなのですが、
「執筆して一定文字数になったあたり」という雑な分け方だったりもします。
当初はもう少し短い作品にする予定だったのですが、まだまだこれからなのでお付き合いください。

それではまた次回!次回更新も一週間後になります。
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