“魔弾の射手”って皆さんご存じですか?
オペラ作品としてより T.M.Revolutionの「魔弾~Der Freischutz~」のほうが有名かもしれませんね
魔弾の設定がなかなか厨二心を刺激するものなので、もし興味があれば調べてみてください!
それでは本編をどうぞ!
◇◇◇
俺は車を走らせ、応急処置を終えた執事を坂を超えた先の病院まで送り届けていた。
ちなみに車は日本にもあったので一応運転はできる。もっともこの車は性能が段違いで危うい運転になってしまってるが。
『これでひとまずは安心ですね、ありがとうございます』
『まだ何も終わっちゃいない、追っ手はすぐに来るだろう。それに…』
城和泉がまだ来ていない。気配は徐々に近づいてきているが、この感じは未だ戦闘中のようだ。彼女が苦戦するほどの敵がいるのか…?
『一旦城和泉を迎えに行く、合流してから逃げよう』
『そうでした!ジョウイズミサンが心配です!』
キャリーは執事に向けていたのと同じくらい城和泉を心配しているようだ。
流石はお嬢様といったところなのだろうか。
そんなことを考えつつ城和泉の気配を追っていくと、すぐに彼女を発見することができた。
「城和泉!こっちだ!」
「っ主!」
城和泉は俺とキャリーのいる道の、反対側を屋根伝いに走っていた。
建物の近くまで車を寄せて停まる。すると彼女は屋根から飛び降り、直接車に乗った。
「追っ手は⁉」
「まだ来てる!それより早く出して!」
「ああ、言われなくても!」
俺は車を急発進させる。その直後、後ろの路地から二台の黒い車が現れた
再び石畳の路地を車で競争する形だ。
「ジョウイズミサン、フクガ…!」
キャリーが不安そうな声を上げた。
「⁉城和泉、怪我してるのか‼」
一瞬目を向ける。すると彼女の右袖が裂け、若干赤い染みができているのが見えた。
「大丈夫!かすり傷よ!そんなことより主、あいつら禍憑呼び出したの‼」
「なんだと⁉そんな事がってうおっ‼」
城和泉の言葉はすぐに確認する事ができた。
車が走っていく先に轟音と共に一人の騎士が下りてきた。銀色の西洋甲冑で身を包み、同じく銀色の片手直剣と典型的な形の盾を装備している。
だが特筆すべきはその体格である。身長は二メートルを優に超えていて、着地した石畳が砕けていることから相当な体重だ。
そして兜の内側で目が赤く光っており、人間ではないのは明らかだ。
俺は咄嗟にハンドルをきり、建物の隙間に入った。
道は車一台がどうにか通れるほどの広さだ。
だがそれよりも、やみくもにこの道に入ったのでここがどこなのかさっぱりだ。
「アルジサン!ワタシ、イキタイトコアルマス!」
突然キャリーが叫ぶように言ってきた。日本語な上、自信のある声だ。
「行きたいところ⁉逃げ場があるのか⁉」
「ハイ!ソンナカンジデス!」
「わかった!案内してくれ!」
「ハイ‼ツギノカド、ヒダリデス‼」
キャリーの指示で車を走らせる。狭い路地を抜け、少し広い通りにでたかと思えばすぐに路地に戻るなどしている。
追っ手はなおも諦めずについてきている。
「主!さっきの禍憑も来てる!」
なんとさっきの騎士まで来ていた。その騎士は重そうな見た目に反して妙に足が速く、追っ手の車とほぼ並走しているらしい。
城和泉が言うにはあの騎士から禍魂を感じたのだそうだ。戦おうにも見た目通り刀が通らず、あらゆる攻撃がとても重いので受けることも難しいらしい。
「とんでもないやつだな‼しかもそれを使役してるというのか‼」
城和泉が腕に包帯を巻きながら「そんな風にしか見えなかった」と言う。
「アルジサン!ツギ、ミギマガッテ!カイダンオリテ!」
「右の階段だな‼ん?階段⁉」
「ソシタラ、モウスグデス‼」
思わず聞き返してしまった。だが信じるほかなさそうだ。
「ええい‼行くぞぉ‼」
車の右側を浮かせながら直角に右折、その先の下り階段を一気に降りる。
ガガガガッと車体の軋む音を響かせて階段を下りた先に道はなかった。
正確には階段の先はすぐに道が曲がって続くのだが、この速度で曲がることはできない。
まっすぐ行った先には落下防止の柵しか見えない。
「ちょっ噓だろ⁉」
「主⁉」
気づいたときにはもう遅い。車は柵を吹っ飛ばし、空を飛んでいた。
「うおおおおおっ⁉」
「きゃああああっ⁉」
俺と城和泉が絶叫する。一瞬だったのだろうが、とても長い時間に感じた。
すさまじい衝撃と共に車は着地した。車体がぐわんぐわんと左右に振られて激しく軋むが、なんとか壊れずに済んだようだ。
「し、死ぬかと思った…」
おもわずほっと息が漏れる。
「びっくりした…」
『うまくいってよかったです…ははっ…』
後ろの二人もなんとか無事のようだ。
見ると流石に追っ手もいなくなっている。あの段差を飛び越えた甲斐があったというものだ。
…ただ一人を除いて。
車のすぐ後ろで轟音が上がった。舞い上がる土煙の中で赤い目が輝く。
「あいつは…っ‼」
間違いない。さっきの騎士型禍憑だ。
『あれは“怪物”です‼黒煙の徒が使う切り札と聞いています‼』
後ろでキャリーが叫んだ。黒煙の徒、予想以上に厄介な組織らしい。
『やはり人為的なものなのか…。俺の国ではあれと似た化け物を禍憑と呼んでいるが』
『マガ…ツ、キですか。日本にもそのようなものがいるのですね…』
そうこうしているうちに土煙は切り裂かれ、中から騎士がゆっくりと立ち上がった。
『だが今は分が悪い、とにかく逃げるぞ‼道を教えてくれ‼』
俺はアクセルを限界まで踏み込む。タイヤが白煙を上げて高速回転し、再び走り出す。
かなりの高さから落ちたのだが、この車も大した耐久力だ。
『はい!まっすぐ行って先の公園です!』
『わかった!だがその前に…‼』
俺は一瞬後ろを見る。あの騎士が猛追してきている。
見るまでもなく気配でわかっていたが、やはり恐ろしいものだ。
「主、距離が詰められてる!もっと飛ばせないの⁉」
「わかっている‼だがこれが限界だ‼」
城和泉は抜刀して警戒してくれているが、巫剣とて走っている車の上では応戦できない。
俺は懐から一つの拳銃を取り出す。今度はウェブリーMk.Ⅳリボルバーだ。
「っ!、主それは…‼」
城和泉の声が途端に心配するときのものに変わる。
彼女は知っているのだから当然だろう。俺の切り札ともいえるこれを。
「“魔弾”を使う!伏せていろ!」
「でも主‼もう残弾が…‼」
「これであと一発になるだけだ!問題ない!」
俺は左手でハンドルを持ち、後ろから迫る騎士に向けて引き金を引く。
乾いた銃声が響き、弾丸が騎士のすぐ横を掠めた。
『外れました‼ってあれ、えぇぇ⁉』
キャリーが情けない声を上げている。
まあ外れたはずの弾丸が空中でとんぼ返りして騎士の頭を後ろから貫けば、普通はそういう反応になるだろう。
“魔弾”これは俺の装備の中でも切り札中の切り札だ。
計七発の必殺必中の弾丸。見た目こそ普通の拳銃弾だが、これは元の銃の射程・威力を無視するうえに、相手がどれほど躱し、隠れようとも絶対に当たる。
だが当然制限もある。一年間に使えるのはこの七発のみで、必殺必中となるのは六発までである。また、最後の一発は絶対に撃ってはいけない。
そして今、弾倉の残弾はあと二発。これがこの場で撃てる最後の一発となる。
「主‼それはもう使わないでって言ったじゃない‼またあの時みたいになったらどうしようかと…」
城和泉が少し泣きそうな、かつ怒ったように声を荒げた。
「すまない。だが、いま使うべきだったんだ。唯一俺が禍憑を倒せる武器だからな」
まあこれも仕方ないだろう。彼女はかつて俺が魔弾の最後の一発を使ってしまった結果起きたことを知っているんだった。
後ろでガシャンッと音が聞こえた。どうやらあの騎士は無事倒せたようだ。
程なくしてキャリーが案内した公園についた。柵に囲まれたずいぶん大きい公園のようだ。
「コッチデス!」
俺たちは車を降り、キャリーに連れられるがままに奥へと進んでいった。
「一体こんなところに何が…」
不思議に思いながらしばらく走っていると、奥に大きな湖が見えてきた。
『なんで湖に来たんだ?ここでは隠れるのは不可能だぞ?』
『隠れるわけではありません、ここには…』
キャリーがそう言いかけた瞬間であった。
突然城和泉がキャリーを背にして立ち、勢いよく刀を抜いた。
直後銃声と同時に火花が散り、金属がぶつかり合う音が響く。
「狙撃よ!もう敵が来てる!」
「ア、 アリガトゴザイマス!」
城和泉は狙撃される瞬間、弾丸をはじいていたのだった。流石の反応速度である。
すると奴らはもう狙撃をあきらめたのか、木の陰から次々姿を現した。
全部で三人。さっきの生き残りだろう。
「こいつらが黒煙の徒、か…ここでやるしかなさそうだな。城和泉、なるべく殺すな。できるか?」
「当然よ、キャリーさんも主も私が守ってみせる!」
俺はボーチャードピストルを出しつつ抜刀、城和泉も刀を八相に構えなおす。
湖まであと少し距離はあるが、さながら背水の陣である。
奴らもじわじわと距離を詰めてくる。銃は通じないと思ったのか、刃物を構えていた。
なかでも一人、長いサーベルとウィンチェスターライフルか?両手に長物を持つという不思議な二刀流の男がいる。銃のほうは見た限り散弾銃の口径ではなさそうだ。
『なんだって日本の軍人が邪魔をしているんだ…今すぐその女をこちらに渡せ!』
男が俺に向かって吠えた。俺の相手はこの男らしい。
他の二人は城和泉を狙っているようだ。彼女は二対一になるが、相手は所詮人間だ、任せてよいだろう。むしろ問題は俺のほうか…
『それはできない相談だ。なによりあんなものを使役するお前たちを放ってはおけない。』
『そうかよ、なら女はお前もろとも殺してやる‼』
あえて淡々と答えてみたが、挑発は成功したようだ。まだそれなりに距離が空いていたのに、いきなり右手のサーベルで斬りかかってきた。俺はそれを右手の刀で受け止める。
すると男は後ろに飛びのき、すぐにライフルを撃った。俺は体を傾け、間一髪これを躱す。
俺は体を傾けた勢いで撃ち返す。まあ当たらんが、牽制にはなる。
それにしてもこいつ、剣を受け止められた瞬間、すぐに距離をとったか…。
「面倒だな…」
今の動きだけでわかる。こいつは俺と似た戦い方をする男だ。
加えて銃はおそらくM1892カービン、他の二人が拳銃であること、それと今の銃声からして狙撃をしたのもこいつだ。
そうなると向こうの残弾は八発、こちらは七発だ。
さて、どうしたものか…。
今回で大体折り返し地点です。
ちなみにウェブリーMk.Ⅳリボルバーってどんな銃かご存じですか?
某スパイアニメに登場したので意外と知名度は高いかもしれませんがw
次回以降も閲覧していただけると嬉しいです!
次回更新も一週間後になります。