破壊者はその世界で何を成す   作:ベリアロク

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第12話 招かれざれし客

「今日のヒーロー基礎学だが俺とオールマイト、もう一人の3人で見ることになった」

 

「”なった”……? 特例なのかな」

 

「さぁな」

 

「はいはーい! 何やるんですか?」

 

「災害水難なんでもござれ……救出訓練だ。コスチュームに着用は各自の判断に任せる。定刻にはバスに乗っているように」

 

 

 

そう相澤は目の前に着席する皆に対し告げ、教室を後にすると皆準備を始める。

数日前に行った戦闘訓練から委員長決めなどが行われ、士も緑谷らとともに特筆するようなこともない日常を送っていた。たった一つ、雄英に敵が侵入したという点を除いてはだが。

けれどパニックになった生徒らによる二次被害こそあれど誰も敵の攻撃を受けたり捕らわれたりしたわけではないらしく、爆弾などが設置されるようなこともなかったようだ。

大した被害もなく愉快犯の犯行ではないかと考える一方で、国内最高峰のセキュリティを突破されたことを重く受け止めセキュリティ向上までの間、万が一のケースに備え座学以外の授業は教師が2人以上付くこととなったのである。

 

 

「……」

 

「門矢君! ヒーローを目指す者として迅速な行動は大切だ。悠長にしているほど時間はないぞ!」

 

「行こう門矢君!」

 

「ああ……」

 

(ヒーローを目指すもの……ね)

 

 

緑谷らの声に応じ士は立ち上がると共に更衣室へと向かっていく。

更衣室に着いた彼らは各々コスチュームやジャージに着替えながらも談笑する……そんな中で士は一人物思いにふけていた。

これまで門矢士は幾つもの世界を旅してきた。ライダーの存在有無に関わらずどの世界でも正義と悪が存在し、そこに門矢士という部外者が加わることでその物語は良いようにも悪いように動いていくのだ。けれどこの世界で生活して既に半年が経過しているのにも拘らず、自分に対し敵意を向けてくるのは鳴滝のみ。それも警告のみで襲撃を受けたことは一切なく至って平和な暮らしを送っている。今までとは異なる世界の在り方に疑問を抱きながらも未だこの世界に拒絶されていないことからこの世界にいる意義が何かあると士は確信していた。

 

 

「皆着替えたな!……ム、門矢君は着替え終えてないのか? 出発時刻まで後少しだぞ!」

 

「悪いな。先行っててくれ、時間には着くようにするからさ」

 

「そうか……友人として置いていくのは心苦しいが僕は委員長として皆を牽引しなければ! 皆バスに向かおう!」

 

「先行ってるぜ門矢ー」

 

「僕も行くね!」

 

「ああ」

 

 

 

何人かが士に先に行くと伝えると飯田の先導の下、更衣室を後にバスへと向かっていく。

士はしばらく更衣室にある椅子にすわり頬杖をついていたが、手短に支度を済ませるとバスの方へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

「門矢君! もう時間だぞ、早く乗りたまえ!」

 

 

士がバスに向かって来たことに気付いた飯田が士に対し声を掛け、早く搭乗するよう急かす。

クラスの皆が搭乗しているバスの前には飯田が一人立っている。委員長として全員搭乗確認するまで待っていたのだろうか。責任感が強いというか馬鹿真面目というか、正に見た目通りの性格をしていると士は感じながら早歩きでバスへと搭乗した。

バスは市街地や都会の交通で見かけるオーソドックスなものであり、皆がワイワイ喋っている中緑谷の隣に空いた座席に士は向かうと腰を下ろす。尚運転席からすぐ近くの席に座る相澤から一瞬鋭い視線をぶつけられていたが士はそんなもの気にする素振りすら見せなかった。

 

 

「よし……相澤先生! 1-A組全員揃いました!」

 

「……了解。じゃ、出発だ」

 

 

 

 

 

「私、思ったことなんでも気になったこと言っちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「ハッハイ! 蛙吹さん!?」

 

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性……オールマイトに似てるわよね」

 

「えっ!? そ、そうかな!? で、でもオールマイトは僕なんか比較にならないくらい凄いし……」

 

 

突然蛙吹に投げかけられた言葉に緑谷はアタフタとする。

そんな緑谷の隣に座る士は元々女子に対する耐性がほぼ皆無であることを知っているものの普段以上に慌てふためく姿に何かひっかかるものを感じながらも黙って話を聞いていた。

 

 

「そうだぜ梅雨ちゃん。オールマイトは殴る時に怪我なんてしないぜ。自分の個性だっていうのに使うと怪我するっていうのは不思議だよな」

 

「お、遅れて発現したからさ……」

 

 

切島の言葉で梅雨ちゃんはそれもそうねと納得すると視線は隣の士へと移る。

 

 

「不思議と言えば……門矢ちゃんの個性も不思議よね。何でも出来そうだもの」

 

「何でもは出来ないが大抵のことは出来るな」

 

「入学初日のテストの素早さもこの間の訓練の一瞬で氷を溶かした炎も凄かったしな!」

 

「ッかーッ! 才能マンヤダヤダ!」

 

「轟も爆豪も強ェしこりゃクラス3トップは決まりか?」

 

「うっせェ! 俺が一番に決まってるだろうが!」

 

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけ」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

騒がしいバスの空気は相澤の一言で瞬時に切り替わりしんと静まる。

鎮まってからしばらくしてそれまで道路の横には木々が生い茂っていたが、開けた空間に出る。

バスの窓からは白い野球場のようなドームが見えていた。

 

 

 

 

「この中が訓練場だ。入ってすぐのところで説明があるから話が聞こえる位置にいるように」

 

 

施設内に足を踏み入れた士らは相澤の話が終わると同時に映画館の劇場への入り口のような見た目の扉に手を掛け開く。

 

 

「皆さん、待ってましたよ!」

 

「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」

 

 

次の瞬間目に入ったのは倒壊したビル群に燃え盛る街、湖にポツンと浮かぶ船に土砂崩れを起こす山などが災害のオンパレードがお菓子の詰め合わせのように一面に収まっている光景とそれを背にして立つ小柄な宇宙飛行士のような恰好をした者が立っている姿だった。

 

 

「スペースヒーロー13号! 災害救助を主に行っている紳士的なヒーローと会えるなんて…」

 

「私好きなの13号!!」

 

「見ろよあの湖! でっけーウォータースライダーあるぜ!」

 

「ドームの中にドームがあるのか。マトリョーシカみてぇだな」

 

 

「ゴホン……説明大丈夫かな?」

 

 

13号の一言で生徒らは一斉に口を閉じる。

目の前にあるのはおよそ学校教育の規模で存在しうるものではなく、齢15、16の少年少女だ。怒鳴られるくらいされないと黙らないかと思っていた士だが先ほどのバスといい、教師の一言で内緒話一つなく切り替えが行えることに士は少しばかり感心していた。

 

 

「ここには見ての通り様々な災害を想定した状況を意図的に作りだしている演習場です。嘘の災害や事故ルーム―――略してUSJ!」

 

((((その名前つけて大丈夫なのか……?))))

 

 

生徒らは皆そう考えたものの、13号が胸を張って言っていることと、演習場を見てどことなく「USJっぽい」なんて思っていたが為に口に出そうとはせず心の中に留めていた。

 

 

「13号オールマイトは? もう着いてる時間の筈だが」

 

「先輩……それが制限ギリギリまで活動してしまったみたいで。終わりには顔を出すそうです」

 

 

 

『本当に申し訳ないッ! 最後の方には何とか顔を出せるようにするからさ!』

 

 

 

「不合理の極みだなオイ……」

 

 

13号のハンドジェスチャーから相澤はオールマイトが電話越しに必死に謝っている様子が安易に想像できた

 

 

(まぁ念のための警戒態勢だ)

 

「仕方ない13号、始めよう」

 

「はい、では始める前にお小言を一つ、二つ……いや3つ、4つ……」

 

 

どんどん増えてくな……士を含め生徒の皆がそう考えていたその時だった。

ほんの一瞬、ラジオの波長を合わせる時のようなノイズが空気中に一瞬走る。

その音を士は見逃さなかった。

 

 

「まず皆さんに知っていて欲しいのが……」

 

「ちょっ、門矢君!」

 

「……」

 

 

士は何も言葉を発しないまま何十メートルも下方にある噴水を見つめる。

その行動にその場にいた者の視線は皆士へと集中した。

 

 

「門矢君、まだ僕の説明中なんですが……」

 

「オイ門矢、授業の妨げになる「何か来るぞ」――何?」

 

 

士の言葉に相澤は顔をしかめるも噴水をじっと見つめるその眼差しに嘘は無いように感じ、噴水の方へと視線を向ける……その時だった。

何かの予兆かのように先ほどまで流れ出ていた噴水の水は止まり、その代わりに噴水口から先が見えなくなるほどの漆黒の闇が噴水の施設ごと塗りつぶした。

 

 

「ッ、一塊になって動くな!」

 

「……何?何か始まった感じ?」

 

 

突然現れた闇の空間に良く見ようと少し背伸びをする。

暗闇の中に何かが光った次の瞬間、撃鉄音とともに切島の視界の大部分は黒いものに妨げられた。

 

 

「―――え?」

 

「少し下がっとけ切島。アレはお前には無理だ」

 

 

切島は士に手で胸を押され何が起こったか理解できないまま後退する。

ハッとして見ると士の手にはいつの間にか剣状態のライドブッカーがあり、その剣先からは焦げるような音とともにうっすら白い煙が昇っていた。

 

 

「門矢スマン助かった。だがお前も下がっとけ」

 

「先生! 一体何が……」

 

「訓練は中止……アレは、”敵”だ!!」

 

 

暗闇からぞろぞろと出てくるおぞましさを感じさせる者たちと相澤の一言で生徒らの中でも確信に変わり、そのことを心から実感した。

アレがこれから戦っていくべき敵なのだと。

けれど彼らの心にはまだ余裕があった。今の自分たちでもこいつらなら倒せるんじゃないか、と。

だがそんな余裕は瞬時に崩れ去ることとなる。

 

 

「おいおい……当たってないじゃんか」

 

「まァいいだろう? 当たってたら儲けものくらいでいいじゃないか」

 

「うるせぇな……ガキくらい一発で仕留めろよ」

 

「まぁまぁ死柄木弔。折角の助っ人なのですから仲良くやりましょう」

 

 

暗闇の中から人の手首を体中に張り付ける男に脳剥き出しの体長3メートルはあろうかと思えるほどの巨体の存在、そして姿は宇宙飛行士の服装に近しいものの胸部には惑星を模したかのようなリアクターがうっすらと光り、頭部には星座盤のようなものが埋め込まれている赤と青を基調とした毒々しい色合いの者が姿を現す。

彼らが醸す雰囲気は敵と対峙した経験の無い者にさえアレは別格だと思わせるほど重苦しいものだった。

 

 

「アレが……」

 

「敵っ……」

 

「13号、避難の準備を。門矢お前もだ」

 

「いや、俺のことは気にするな」

 

 

生徒らが敵の存在を前に恐怖を感じる中、士は相澤の指示も聞かず逆に前へ進み敵を見下ろす。

その行動は脳剝き出しの奴はともかくとして、毒々しい男を相手に出来るのは自分だけだという確信からだった。

 

 

「アイツの相手は俺がやる。後は任せた」

 

「アイツが門矢士、世界の破壊者か。面倒くさそうな相手だが取り敢えず挨拶でもしとくか……チャオ~!

 

 

世界の破壊者と星の破壊者はお互いを睨み合う。

ライダーの存在しなかったはずの世界は少しずつ狂い始めていた。

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