破壊者はその世界で何を成す   作:ベリアロク

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中々USJ編長くなりそうです、はい。


第14話 劣勢のエンターテイナー

「はぁッ!」

 

「おおっと!」

 

 

ディケイドとエボルトは剣と剣を交え合い、ギリギリと火花が散る。舞台はUSJ(嘘と災害の事故ルーム)、その広場。彼らは一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 

「中々痺れさせてくれるねぇ。剣を持つ手が痛くてしょうがない」

 

「そうかよ……ならささっと全身痛めて退場しやがれ!」

 

「オイオイ焦るなよディケイド。……そんなに奴が心配か?」

 

 

エボルトは交える剣から片手を離し、腰からスチームガンを取り出すと真横に向け構える。銃が向けられたその先には傷つきながらも脳無と戦う相澤の姿があった。エボルトが引き金に手を掛けようとするその前にディケイドも剣を片手で持つことで空いた拳をエボルトに放つ。それを察知したエボルトは後方へ大きく跳躍し距離を取った。

 

 

「余所見とは随分と余裕だな、エボルト」

 

「俺からすればそっちの方が余裕そうに見える……いやそうでもないか。平静を装ってるだけでお仲間が無事逃げれたか不安なんだろう? 破壊者サマも義理人情に厚いねぇ」

 

「……フンッ!」

 

 

おどけた口調で喋るエボルトに対しディケイドは間合いを瞬時に詰めるとエボルトの言葉を遮るようにブレードで切りかかる。その攻撃をエボルトは剣で受け止めると蹴りを腹に叩き込み、とんぼ返りのようにディケイドを後方へと吹き飛ばした。

 

 

「だから焦るなって、今頃お仲間はウチの奴らと遊んでるだろうからよ。ま、誰か死んでるかもしれないがねぇ」

 

「わざわざ情報どうも。なら……コイツの出番だ」

 

 

大方お前らのせいで蹴散らされたがな、なんて言うエボルトを前にディケイドは新たにカードを一枚取り出す。それは二つの科学の力を用いて愛と平和の為に戦うヒーロー、その姿の一つが表れたものだった。

 

 

FORM RIDE…BUILD  NINNIN COMIC

 

《忍びのエンターテイナー! ニンニンコミック! イエーイ!》

 

 

「ほぉビルドじゃないか。鳴滝から聞いてはいたが本当に他のライダーに変身出来るんだな」

 

「やっぱり鳴滝が関わってるか。なら、やることは決まったな」

 

《四コマ忍法刀!!》

 

 

「お前はとっ捕まえて、仲間は助ける!」

《分身の術!!》

 

 

ビルドへと変身を遂げたディケイドが忍法刀のトリガーを引くと周囲に煙幕が立ち、ディケイドの姿が煙の中に消えた。だがその煙は身を隠すものに非ず。数秒と経たず煙は晴れるとそこには黄と紫の鎧を纏うディケイドが4人立っており、煙が晴れ姿が露わになると同時に分身は四方へと飛び立っていった。

 

 

 

「グアァアァゥッ!!」

 

「チッ、何とか活路を……」

 

「引け相澤!!」

《火遁の術!!》

 

 

分身の内一体が相澤の元へ駆け付けると炎を纏った灼熱の剣撃を脳無に向け放つ。その猛火に脳無が怯む隙に相澤は分身とともに一旦距離を取る。その様子を少し遠くから懐かしむような目でエボルトは見ていた。

 

 

 

「懐かしいねぇ。戦兎が作る武器には手を焼いたもんだ……が、生憎俺はニンニンコミックの手の内は知ってるんでね」

 

「それが……どうしたッ!」

 

 

地を蹴りディケイドへエボルトは切りかかる。けれどその攻撃はエボルトの持つ剣で簡単に受け止められ、剣での競り合いの末逆に膝を付かされてしまった。

 

 

「今の俺は本調子には程遠いが……ニンニンコミックじゃあ俺には及ばない」

 

「くっ……」

 

「確かニンニンコミックの分身を維持するにはその姿でいなくちゃならない筈だよなァ? ここだけの話こっちの職場結構ブラックでな、お前を消せっていう命令はあるが……お前相手に溜まってる鬱憤晴らさせてもらおうか!」

 

 

《風遁の術!!》

 

 

エボルトが剣に込める力を更に強めディケイドを地に伏せようとしたその時、剣から突如発せられた風にエボルトの身体は宙に浮く。そしてその隙を狙いディケイドは跳躍すると業火を纏った刃を叩き込み地へと叩き落した。

 

 

「アッチチチ! ったく熱いじゃねぇか」

 

「悪いがサンドバックになるつもりはないんでな」

 

 

 

 

 

ディケイドとエボルトが広場で激しい戦いを繰り広げる一方、そこから離れた疑似湖の上に浮かぶ船に緑谷らはその身を乗せていた。

 

 

「どうするよ緑谷! 囲まれちまってんだぞ!」

 

「落ち着いて峰田ちゃん。今は状況を把握しましょう」

 

「ありがとうあすっ……梅雨ちゃん。今はこの状況を把握するのが最優先だ」

 

 

緑谷は甲板に腰を下ろし、顎に手を当ててその場に座り込む。まずここまでの状況をまず整理しよう。士と相澤が敵に向かっていった後、黒い靄の敵が突如現れたかと思えば緑谷ら1-A生徒の多くはその靄に飲み込まれ次の瞬間緑谷の身体は宙に浮き、湖に落下していたのだ。湖には数十名はいると思われる敵が待ち構えていたが一緒にここへ飛ばされた蛙吹のおかげで峰田共々傷一つ無く船の上に避難することが出来たというわけである。

 

 

「船のエンジンは動きそうにないわね……壊されちゃったのかしら」

 

「船は動かず陸からも遠い……泳いで逃げるのも得策じゃなさそうだね。敵を見る限り皆水場での動きを得意としてる個性ばかりだ。あす……梅雨ちゃんはまだしも僕ら二人は逃げてるうちにやられちゃうだろうね」

 

「オイオイオイオイ、じゃあどうするんだよ! 成す術無しなんじゃねぇか!?」

 

「峰田ちゃん落ち着いて」

 

 

緑谷の冷静な分析に反して慌てふためく峰田を蛙吹は軽く小突く。どれだけ慌てようとパニックになろうと状況は微塵も良くはならないのだ。この厳しい状況だからこそ冷静であることはとても大切だと言える。

 

 

「成す術が無いってわけじゃないよ峰田君。あくまで僕の推測だけど……敵は僕たちの個性を把握してないんじゃないかな」

 

「なんでそう言えるのかしら。教えて頂戴緑谷ちゃん」

 

「まず一つはあす……梅雨ちゃんがここに居ること。もし敵が僕らの個性を把握してればここに転送しようとは思わないと思う。そしてもう一つは敵の動きだよ」

 

 

緑谷は湖の上で不気味な笑みを浮かべながらこちらの様子を窺う敵の姿を指さす。

 

 

「僕らは3人、敵の数はざっと見た感じ20人近くはいる。だけど攻めてこないってことは僕らの個性を知らなくて警戒してるからってことなんじゃないかな?」

 

「確かにそうね。可能性は高そう」

 

「だ、だったらそうするんだよ。結局不利なのは変わらないじゃんか!」

 

「確かに人数差を見ればそうだね。だけどその人数差故敵は油断してると思う」

 

 

何かめちゃくちゃ笑ってるし、と湖の上の敵たちを指さし緑谷は話を続ける。

 

 

「人数差、そして相手は年端も行かない学生相手だという慢心が必ず生まれてる筈だ。『高校生に成りたてのガキは泣いて逃げるだろう』ってね」

 

「ケロ、そこを利用するって訳ね緑谷ちゃん」

 

「そうだねあすっ……梅雨ちゃん」

 

「自分のペースで良いのよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! オイラだけ話ついていけてないんだけど! 説明してくれよ緑谷!」

 

「なら作戦会議をしましょう。お互いの個性についても詳しく知っておいた方が良いわ。私の個性は――」

 

 

緑谷らは力を合わせ策を練る。甲板の見えないその麓では敵が船の側部と睨めっこをし、ひたすらに攻撃をしたいという衝動を抑えていた。

 

 

「なァまだダメか? ガキなんてすぐだろう?」

 

「どんな個性持ってるかわからんから相手の動きを見ろって言われただろ? まぁ結局ガキだからなぁ……」

 

「もー我慢の限界だ! 船沈没させればこっちのモンだろ!!」

 

 

敵が遂に痺れを切らし、船を沈没させようと攻撃を始める。正にその時だった。水面に映る小さな影が敵を照らしていたライトを遮る。ふと視界が暗くなったことに気付いた敵が上を見上げるとそこには紫髪の小柄な男が船から上空に飛び出していた。

 

 

「いたぞ、ガキだ!」

 

「やっちまえェー!!」

 

 

「うおおおおおッ!! もうどうにでもなりやがれ!!」

 

 

敵の獲物を狙うような視線を一身に浴びながら峰田はボール状の髪をちぎっては投げるを繰り返す。恐怖は小さなこの身から溢れそうなほどあったが、作戦を信じ投げ続ける。窮地でも冷静で、それでいて仲間の為に動こうとする友人の作戦を。

 

 

『――敵はまさか正面突破してくるとは思わないだろうし、してきても自暴自棄の行動だと考えると思う。だからそこを利用するんだ』

 

『利用するって具体的にはどうすれば良いんだ?』

 

『峰田君の個性は確かくっついて離れなくさせるボールを飛ばせるんだったよね。ならそれをひたすら海にいる敵にひたすら投げつけてほしい。自暴自棄になったと見せかけてさらに敵を油断させるんだ』

 

 

 

「何だコレ、気持ち悪っ」

 

「うえぇ何かくっついたんだけど……お前取ってくれよ!」

 

 

 

「まだ、まだだっ! オイラだってェェェェ!!」

 

 

頭から血を流しながらも峰田は髪をちぎり、その球状の髪を投げることを止めない。先ほどまでただただびくついていた自分との決別かのように自分を奮い立たせる。

 

 

『救助を待つのじゃ……ダメなのか?』

 

『飯田君が助けを求めに走り出すのは辛うじて見えたけど……救けが来るのはいつかはわからない。それに今、相澤先生と門矢君は敵と真っ向勝負をしてるんだ。救けを待つんじゃなく、僕らが彼らの救けにいかないと……』

 

 

 

『救けてこそ、ヒーローなんじゃないかな』

「ナイスだ峰田君!」

 

 

峰田に続くように船から飛び出した緑谷は峰田を宙で抱えると後方の蛙吹に預け、自身のすべきことのための構えを取る。目の前で恐怖をこらえ必死に行動した彼のためにも拳を強く握り、一本の指に力を込める。

 

 

「DELAWARE SMAAAAASH!!!!」

 

 

俗に言うデコピンから放たれた衝撃は突風を巻き起こし、湖に巨大な穴を空ける、水はその空いた穴に流れ込んでいき巨大な渦潮がUSJ内に発生した。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ぬ、抜け出せないィィ!!」

 

「この変なボールのせいで余計に身動きが……」

 

 

 

「くッ……」

 

「凄いわ二人とも。無事突破よ」

 

「ありがとう梅雨ちゃん……」

 

「もうー今日もぎもぎは投げられないぜ……」

 

 

敵が皆渦潮に囚われている間に二人は蛙吹に抱えられ、その場を脱する。緑谷は中指を、峰田は頭部に傷を負ったが無事敵の包囲網を突破することが出来る……そう思われた時だった。

 

 

「こんのガキィィィ!!」

 

「待ちやがれェ!!」

 

 

「渦潮から逃れた敵もいたのかっ……」

 

「ケロ、不味いわね……峰田ちゃんはキツそうだし緑谷ちゃんお願い出来るかしら」

 

 

陸地まで後数メートルというところで渦潮から逃れた敵が緑谷らの下に迫る。蛙吹は二人を抱えているため攻撃手段はなく、峰田は疲労困憊。残る緑谷が抱えられるがために揺れる視界の中、痛みをこらえながらも先ほどと同じ攻撃を放とうと指を構える。

 

 

「ブッ殺してやるよォ!!」

 

「ヒャッハ――ッ!!」

 

 

「ーーッ! ……くそっ」

 

 

だが負傷した指が水に浸かったことで指に激痛が走り、緑谷の拳から力が抜けた。

敵はもう目と鼻の先の場所にまで来ている。

 

 

「緑谷ちゃん!?」

 

 

「よくも散々な目に合わせてくれたなァ……」

 

「3人纏めて”教育”してやるよォ!!」

 

 

敵の凶器が蛙吹の身体を突きさそうとするその瞬間だった。

 

 

《風遁の術!!》

 

 

蛙吹らと敵との間に流れた風は不可思議にも蛙吹にとっては追い風に、敵にとっては向かい風となり数秒経たずで凄まじい勢いとなったその風は敵を渦潮の所まで吹き飛ばし返した。

 

 

「ケロ……一体何が」

 

「俺がやったんだ。ほら」

 

 

緑谷らの下まで飛んできていたディケイドが陸地へ何とかたどり着きそこに倒れこむ蛙吹に手を差し伸べる。

 

 

「まさか……敵!?」

 

「あー、いや俺だ、門矢だ。訳あって今はこんな姿だがな」

 

 

目の前の黄色と紫の姿の存在に警戒する蛙吹だったが声色から士であるとわかるとホッと一息を吐き、差し伸べられた手を掴み立ち上がった。緑谷と峰田も同じく差し伸べられた手を掴み何とか立ち上がった。

 

 

「よし、皆無事みたいだな」

 

「なんとかな……本当死ぬかと思ったぜ」

 

「私も正直生きた心地がしなかったわ……」

 

「本当にね……」

 

 

皆、敵から無事逃げることが出来たという安心と敵に単身向かっていった士に無事会えたという喜びから緊張の糸が途切れる。それもそのはず齢15歳の少年少女が殺意というものをしばらくの間ぶつけられ、恐怖を味わったのだから至極当然と言える。だが緊張を解くには些か早すぎた。

 

 

「無事なら早いとこ避難しろ」

 

「ど、どうして? 門矢君がここに居るってことはあの敵は倒したんでしょ?」

 

「まだだ。正直今の状況、俺と相澤の手にあま――――」

 

 

本体とエボルトが戦う広場の方を見ながらディケイドがそう言い切ろうとする、その瞬間ディケイドの視界は青黒いもので埋め尽くされる。それは壁というにはゴツゴツしていて、何よりそこには”生命”がある。見上げればリンゴなどいとも容易くすり潰してしまいそうな極厚な歯と生気を感じさせない目を持ち、象徴とも言えよう剥き出しの脳を持つ存在――――脳無の姿がそこにはあった。

 

 

「え――――」

 

「な――――」

 

 

《風遁の術!!》

 

 

完全に不意を突かれた状況で脳無は容赦無く拳を繰り出す。その拳の速度はとても一学生が反応出来るものではなく、理解出来ぬままに突如発生した風にその身を飛ばされた。風に飛ばされながら開かぬ目を何とか開いて何が起こったか焦点を定め見てみると脳無の放った拳の圧が砂煙を立てながら地面をえぐっていた光景で、そこにいたであろうディケイドの姿は塵一つなくなっていた。

 

 

「に、逃げなきゃ……」

 

「ケ、ケロ……だけど足が動かないの」

 

「やばいって……早く逃げなきゃやばいって!」

 

 

風に飛ばされ少し遠くで着地した彼らが感じたのは本当の恐怖。先ほどまでのチンピラの殺気など比べれば可愛らしいものだったと思えるほどの圧倒的恐怖だった。峰田の恐怖の叫びで気づいたのか、はたまた彼らの恐怖自体に気付いたのか脳無は180°首を回転させ緑谷らを視認すると一瞬の静寂の後、一直線に走り近づいてくる。人間の形は保っているも走り様子は正に獣のそれであった。

 

 

(動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!)

 

 

緑谷は震える足を叩いてその場から脱しようとするもその想いと反して身体は一切動かない。それが恐怖によるものなのか疲労によるものなのかはもはや緑谷にはわからない。言葉では形容しがたい感情が緑谷の心の中にはあった。

 

 

(せめて二人だけでも……!)

 

 

ここから動くことは叶わないと直感した緑谷は自らを盾とし脳無の前に触れながらも何とか立ち上がり拳を構える。震えで力は入らず、器もギリギリ限界の自身のワンフォーオールを一か八かで撃つ他ない……そう心に決めていた。脳無はすぐそこにまで来ている、全身全霊の一撃を放とうと姿勢を構えたその時、USJの扉が大きな音を立てて吹き飛ばされたのを視界の隅でとらえた。

 

 

「皆、もう大丈夫。私が来た!!」

 

 




今回試しに地の文を改行せずに続けてみましたがどうでしょう?多分アンケートか何かを用意してると思うのでそちらにご意見をお願い致します。

地の文 改行

  • 今までのが良い
  • 今回の(改行なし)が良い
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